令和元年11月
熊本国税局

1 調査等の状況

1 平成30事務年度における所得税の調査等の状況

(1) 調査件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

実地調査の件数については、特別調査・一般調査が1,752件(前事務年度1,320件)、着眼調査が490件(前事務年度283件)であり、簡易な接触の件数については15,394件(前事務年度16,373件)となっています。
 これらの調査等の合計件数は17,636件(前事務年度17,976件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は、9,241件(前事務年度9,642件)となっています。

(2) 申告漏れ所得(調査等の対象となった全ての年分の合計)金額の状況

実地調査により把握された申告漏れ所得金額は、全体で144億6,200万円(前事務年度102億3,500万円)であり、このうち特別調査・一般調査によるものは137億円(前事務年度98億4,200万円)、着眼調査によるものは7億6,200万円(前事務年度3億9,300万円)となっています。
 また、簡易な接触によるものは68億6,600万円(前事務年度72億2,800万円)となっており、調査等合計では213億2,800万円(前事務年度174億6,300万円)となっています。

(3) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含む。)の状況

実地調査による追徴税額は、全体で24億900万円(前事務年度17億5,400万円)であり、このうち特別調査・一般調査によるものは23億5,600万円(前事務年度17億3,600万円)、着眼調査によるものは5,300万円(前事務年度1,800万円)となっています。
 また、簡易な接触による追徴税額は4億6,000万円(前事務年度4億7,100万円)となっており、調査等合計では28億6,900万円(前事務年度22億2,500万円)となっています。

(参考)

  • 1 特別調査・一般調査とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人等を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものです。
  • 2 着眼調査とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。
  • 3 簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

所得税の調査等の状況

区分 実地調査 簡易な接触 調査等合計
項目 特別・一般 着眼 小計
1 調査等件数 1,320 283 1,603 16,373 17,976
1,752 490 2,242 15,394 17,636
2 申告漏れ等の
非違件数
1,161 199 1,360 8,282 9,642
1,554 276 1,830 7,411 9,241
3 申告漏れ
所得金額
百万円 9,842 393 10,235 7,228 17,463
13,700 762 14,462 6,866 21,328
4 追徴税額 本税 百万円 1,438 15 1,453 464 1,917
1,956 47 2,003 457 2,460
5 加算税 百万円 298 3 301 7 308
400 6 406 3 409
6 百万円 1,736 18 1,754 471 2,225
2,356 53 2,409 460 2,869
7 一件当たり 申告漏れ所得金額 千円 7,456 1,389 6,385 441 971
7,820 1,554 6,451 446 1,209
8 追徴税額 本税 千円 1,089 52 906 28 107
1,116 96 894 30 140
9 加算税 千円 226 11 188 0.4 17
228 12 181 0.2 23
10 千円 1,315 63 1,094 29 124
1,344 108 1,075 30 163

(注)

  1. 1 平成30年7月から令和元年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
  2. 2 上段は、前事務年度の計数である(上段・下段どちらも、資産課税部門職員の行った調査等の計数を含む。)。
  3. 3 「簡易な接触」の件数には、添付書類の未提出に対する提出依頼を行った件数等を含む。
  4. 4 追徴税額(本税)には、復興特別所得税額を含む。
  5. 5 実地調査の件数は、所得税と消費税の実地調査件数である。
(参考) 譲渡所得の調査等の状況
 所得税のうち譲渡所得に係る調査等の件数は、622件(前事務年度963件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は、516件(前事務年度607件)となっています。申告漏れ所得金額(調査等の対象となった全ての年分の合計)は、32億8,700万円(前事務年度29億6,700万円)となっています。
事務年度 平成29事務年度 平成30事務年度 対前事務年度
 項目
@        
 調査等件数 963   622   64.6  
   土地建物等 921   573   62.2  
   株式等 42   49   116.7  
A        
 申告漏れ等の
 非違件数
607   516   85.0  
   土地建物等 573   472   82.4  
   株式等 34   44   129.4  
B         ポイント
 申 告 漏 れ 割 合
 (A/@)
63.0   83.0   20.0  
   土地建物等 62.2   82.4   20.2  
   株式等 81.0   89.8   8.8  
C     百万円   百万円  
 申告漏れ所得金額 2,967   3,287   110.8  
   土地建物等 2,841   3,040   107.0  
   株式等 126   247   196.0  
D     千円   千円  
 1件当たり申告
漏れ所得金額
(C/@)
3,081   5,284   171.5  
   土地建物等 3,085   5,304   171.9  
   株式等 3,000   5,049   168.3  

(注)

  1. 1 土地建物等は、土地建物(分離課税所得)、金地金等(総合譲渡所得)である。
  2. 2 土地建物等は、課税年分ごとに1件としている。

2 平成30事務年度における消費税の調査等の状況

(1) 調査件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

実地調査の件数は、特別調査・一般調査が1,163件(前事務年度869件)、着眼調査が308件(前事務年度229件)であり、簡易な接触の件数は2,029件(前事務年度2,790件)となっています。
 これらの調査等の合計件数は3,500件(前事務年度3,888件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は、2,612件(前事務年度2,644件)となっています。

(2) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含む。)の状況

実地調査による追徴税額は、全体で10億6,900万円(前事務年度7億1,800万円)であり、このうち特別調査・一般調査によるものは10億800万円(前事務年度6億5,700万円)、着眼調査によるものは6,100万円(前事務年度6,100万円)となっています。
 また、簡易な接触によるものは2億2,600万円(前事務年度3億700万円)となっており、調査等合計では、12億9,500万円(前事務年度10億2,500万円)となっています。

消費税(個人事業者)の調査等の状況

区分 実地調査 簡易な接触 調査等合計
項目 特別・一般 着眼 小計
1 調査等件数 869 229 1,098 2,790 3,888
1,163 308 1,471 2,029 3,500
2 申告漏れ等の
非違件数
729 205 934 1,710 2,644
1,002 244 1,246 1,366 2,612
3 追徴税額 本税 百万円 548 51 599 294 893
836 50 886 218 1,104
4 加算税 百万円 109 10 119 13 132
172 11 183 8 191
5 百万円 657 61 718 307 1,025
1,008 61 1,069 226 1,295
6 一件当たり 追徴税額 本税 千円 631 222 546 105 230
719 164 603 107 315
7 加算税 千円 125 43 108 5 34
148 35 124 4 55
8 千円 756 265 654 110 264
867 199 727 111 370

(注)

  1. 1 平成30年7月から令和元年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
  2. 2 消費税の追徴税額には、地方消費税(譲渡割額)を含む。
  3. 3 上段は、前事務年度の計数である。

2 主な取組

1 富裕層に対する調査状況

有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人など、「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に積極的に調査を実施しています。

  •  平成30事務年度においては65件(前年比135.4%)の実地調査を実施し、追徴税額は総額で2億4百万円となっています。
  •  また、富裕層の実地調査1件当たりの追徴税額は314万円で、所得税の実地調査(特別・一般)1件当たりの追徴税額134万円の約2.3倍となっています。

「富裕層」に対する調査状況

事務年度等 29事務年度 30事務年度     30事務年度実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 48 65 135.4%   1,752
申告漏れ等の非違件数 35 53 151.4%   1,554
申告漏れ所得金額 百万円 152 419 275.7%   13,700
追徴税額 百万円 109 204 187.2%   2,356
一件当たり 申告漏れ 万円 317 644 203.2%   782
所得金額
追徴税額 万円 228 314 137.7%   134

2 無申告者に対する調査状況

無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施しています。

<所得税無申告者に対する調査状況>
  •  平成30事務年度における所得税無申告者に対する実地調査(特別・一般)の調査件数は、238件となっています。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、1,630万円となっており、実地調査 (特別・一般)全体の申告漏れ所得金額782万円の約2.1倍となっています。また、申告漏れ所得金額は総額で38億7千9百万円となっています。
  •  1件当たりの追徴税額は250万円で、その総額は5億9千4百万円となっています。
<消費税無申告者に対する調査状況>
  •  平成30事務年度における消費税無申告者に対する実地調査(特別・一般)の調査件数は、417件となっています。
  •  1件当たりの追徴税額は、153万円となっており、消費税の実地調査(特別・一般)全体の追徴税額87万円の約1.8倍となっています。また、追徴税額は総額6億3千7百万円となっています。

所得税無申告者に対する調査状況

事務年度等 29事務年度 30事務年度     30事務年度所得税実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 179 238 133.0%   1,752
申告漏れ所得金額 百万円 2,350 3,879 165.1%   13,700
追徴税額 百万円 224 594 265.2%   2,356
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 1,313 1,630 124.1%   782
追徴税額 万円 125 250 200.0%   134

消費税無申告者に対する調査状況

事務年度等 29事務年度 30事務年度     30事務年度 
消費税実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 283 417 147.3%   1,163
追徴税額 百万円 397 637 160.5%   1,008
1件当たり追徴税額 万円 140 153 109.3%   87

3 インターネット取引を行っている者に対する調査状況

シェアリングエコノミー等の新たな分野の経済活動をはじめ、インターネット取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。

  •  平成30事務年度におけるインターネット取引を行っている者に対する実地調査(特別・一般)の調査件数は、56件(平成29事務年度44件)となっています。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は、858万円(平成29事務年度942万円)で、実地調査(特別・一般)全体の申告漏れ所得金額782万円(平成29事務年度746万円)の約1.1倍となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は、4億8千1百万円(平成29事務年度4億1千5百万円)となっています。
  •  1件当たりの追徴税額は163万円で、追徴税額は総額で9千1百万円となっています。

インターネット取引を行っている個人に対する調査状況

事務年度等 29事務年度 30事務年度   30事務年度実地調査
項目 対前年比   (特別・一般)全体
調査件数 44 56 127.3%   1,752
申告漏れ等の非違件数 34 44 129.4%   1,554
申告漏れ所得金額 百万円 415 481 115.9%   13,700
追徴税額 百万円 75 91 121.3%   2,356
一件当たり 申告漏れ
所得金額
万円 942 858 91.1%   782
追徴税額 万円 171 163 95.3%   134

(参考)令和元年6月記者発表資料

4 海外投資等を行っている者に対する調査状況

経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外投資資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、積極的に調査を実施しています。

  •  平成30事務年度における海外投資等を行っている者に対する実地調査(特別・一般)の調査件数は59件(平成29事務年度51件)となっています。
  •  1件当たりの申告漏れ所得金額は677万円(平成29事務年度582万円)となっており、 また、申告漏れ所得金額の総額は、3億9千9百万円(平成29事務年度2億9千7百万円)となっています。
  •  1件当たりの追徴税額は128万円(平成29事務年度168万円)となっており、また、追徴税額の総額は7千6百万円(平成29事務年度8千6百万円)となっています。

調査状況(取引区分別)

1件当たりの申告漏れ所得金額(取引区分別)

3 参考計表

事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

順位 業種目 1件当たりの
申告漏れ所得金額
1件当たりの
追徴税額
(含加算税)
直近の年分に係る
申告漏れ割合
前年の順位
    万円 万円
1 一般土木建築工事 2,217 818 77.1% -
2 スナック 1,577 248 76.1% -
3 畜産農業(肉用牛) 1,509 536 36.1% 19
4 土木工事 1,057 206 54.5% -
5 板金工事 1,006 198 43.3% -
6 建設、設備工事労務者 994 109 68.2% -
7 大工工事 990 138 60.5% -
8 水産養殖業 924 117 32.0% -
9 一般自動車整備 921 108 69.1% 1
10 鉄骨、鉄筋工事 919 129 52.5% -

(注)

  1. 1 上記調査事績は、特別調査及び一般調査に基づく実施結果である。
  2. 2 「直近の年分に係る申告漏れ割合」は、(申告漏れ所得)/((調査前所得)+(申告漏れ所得))で算出している。
  3. 3 「前年の順位」は、事業所得を有する者の前年の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位20位に該当するものについて、その順位を記載している。