1 事前照会の趣旨

A市は、A市内に存する空き家の有効活用を通して、定住促進による集落の維持及び活性化並びにA市民と市外居住者との交流拡大を図るため空き家バンク制度(以下「A市空き家バンク」といいます。)を設けています。

このA市空き家バンクの利用促進を図るため、一定の要件の下、A市空き家バンクに登録された空き家について、賃貸借若しくは使用貸借契約又は売買契約を締結した場合には、当該空き家を登録した者に対して、A市から空き家成約奨励金(以下「本件成約奨励金」といいます。)を交付することとしています。

本件成約奨励金の所得区分については、一時所得と取り扱って差し支えないか、伺います。

2 事前照会に係る事実関係

  1. (1) A市空き家バンクの概要
     A市空き家バンクは、空き家の所有者、その対象となる空き家及び空き家の利用希望者等の情報をA市が集約し、A市が空き家に関する情報提供等を行うものです。
     なお、A市空き家バンクに登録できる空き家は、A市内に居住を目的として建築され、いわゆる不動産業者による紹介や斡旋がなされていない建物です。
  2. (2) 本件成約奨励金の概要
     本件成約奨励金の交付等について定めた要綱には、要旨、次のとおり定められています。
    • イ 交付対象者
       本件成約奨励金の交付を申請した日において、次に掲げる要件を全て満たした者を対象に本件成約奨励金を交付します。
      • (イ) A市空き家バンクに空き家を登録している者であること。
      • (ロ) A市空き家バンクに登録した空き家について、賃貸借若しくは使用貸借契約又は売買契約を締結していること。
      • (ハ) 賃貸借若しくは使用貸借契約又は売買契約を締結し、空き家に入居する者が本件成約奨励金の交付申請者の3親等以内の親族ではないこと。
    • ロ 本件成約奨励金の交付申請等
      • (イ) 本件成約奨励金の交付対象者は、交付申請書に賃貸借若しくは使用貸借又は売買の契約書の写しその他一定の書類を添えてA市に提出する。
      • (ロ) A市は、当該書類を審査し、本件成約奨励金の交付決定通知書を送付する。
      • (ハ) 当該交付決定通知書を受けた交付対象者は、本件成約奨励金の交付請求書を提出する。
        ※ 本件成約奨励金の交付申請時に提出した書類に偽りその他不正があったときなど一定の場合には、A市長は交付した本件成約奨励金の返還を命ずることができます。
    • ハ 本件成約奨励金の額
       A市空き家バンクに登録している空き家1件につき、1回限り10万円を交付します。
  3. (3) 本件成約奨励金について
     本件成約奨励金は、A市空き家バンクの利用促進を図ることを目的としており、A市が定めた要綱に基づき、上記イの要件を満たした場合に交付するものです。そのため、本件成約奨励金は、賃貸借若しくは使用貸借又は売買に係る経費の支出をしたか否かに関わらず交付するものであって、その使途を限定することもありません。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

本件成約奨励金は、賃貸借若しくは使用貸借契約又は売買契約を締結した場合に交付されるものですが、本件成約奨励金は、A市が定めた要綱に基づいて交付されるものであり、本件成約奨励金の交付対象者とA市との間には、賃貸借若しくは使用貸借契約又は売買契約が締結されるものではなく、交付対象者からA市に対して空き家の貸付けや譲渡の行為が行われるものでもありません。また、本件成約奨励金は、賃貸借若しくは使用貸借又は売買に係る経費の支出をしたか否かに関わらず交付され、その使途も限定されていませんので、必要経費に算入される金額を補塡するものにも該当しません。
 そうすると、本件成約奨励金は不動産等の貸付けによる所得である不動産所得(所法26)又は資産の譲渡による所得である譲渡所得(所法33)には該当しないと考えられ、また、利子所得、配当所得、事業所得、給与所得、退職所得及び山林所得のいずれにも該当しないことは明らかです。
 したがって、本件成約奨励金の交付に当たって、A市に対して何ら労務の提供等が求められることではなく、登録した空き家1件につき1回限り10万円の本件成約奨励金が交付されることからすれば、本件成約奨励金は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得として、一時所得と取り扱うのが相当と考えられます。