別紙1 事前照会の趣旨

民法第34条の規定により設立された公益法人である社団法人宮崎県林業公社(以下「林業公社」といいます。)は、分収造林契約に基づき保育してきた立木(以下「公社営林立木」といいます。)の売払いを、平成17年度から本格的に開始します。
 また、その売払いの方法は一般競争入札によるところ、当該入札の参加資格については、平成17年度から素材生産業を営む者に限定します。
 このような形態による平成17年度以降の林業公社における公社営林立木の売払い行為は、法人税基本通達15-1-9《物品販売業の範囲》にいう「特定の集荷業者等に売り渡すだけの行為」に該当するものとして、法人税法上、収益事業に該当しないと解して差し支えないでしょうか。

別紙2 事前照会に係る取引等の事実関係

1 林業公社は、昭和42年9月1日に民法第34条の規定に基づき社団法人宮崎県造林公社の名称で設立された公益法人であり、その後、昭和59年12月15日に現在の名称に変更し、また、昭和60年1月10日に宮崎県知事から分収林特別措置法第9条に規定する森林整備法人の認定を受けています。

2 林業公社の目的は、宮崎県において造林、育林等の森林及び林業に関する事業その他緑化に関する事業を行うことにより、県土の保全及び森林資源の培養を図り、その他緑資源のもつ多面的な機能を総合的かつ高度に発揮させ、もって地域経済の振興と住民の福祉の向上に寄与することにあります。

3 林業公社は、上記目的を達成するため、分収林特別措置法に基づく分収造林事業を行っています。

分収造林事業とは、林業公社が造林者(造林をする者)兼造林費用負担者(造林に要する費用の全部を負担する者)となって、土地所有者との間で分収造林契約(以下「本件契約」といいます。)を締結し、本件契約に基づいて、土地所有者は、同者の所有する土地について林業公社のために造林を目的とする地上権を設定し、林業公社は地上権者となって、苗木の植栽、下刈り、つる切り、除伐、枝打、間伐等の保育事業を行い、伐期が到来した際は、公社営林立木を売払いし、その販売収益を本件契約において定めた分収割合に応じて双方で分収するというものです。

(注)売払い前の立木は、林業公社と土地所有者との共有物(共有割合は上記の分収割合と同一)となっています(分収林特別措置法第2条第1項第4号、5号、6号)。

4 公社営林立木の売払いの方法は一般競争入札によることとしています。当該立木の売払いは、平成17年度から本格的に始まり、平成80年まで継続的に行うことが予定されています。

5 林業公社は、平成17年度以降における公社営林立木の売払いに係る一般競争入札への参加資格を、素材生産業を営む者に限定することとします。素材生産業を営む者とは、立木を自ら伐採、枝払いして樹幹部を所定の長さに切りそろえ、それを搬出して木材市場等へ搬入し、売り払う者です。

6 売払いされる公社営林立木には根株部分は含まれておらず、落札した買受人は、根株部分に極印があるときは、その上部から伐採しなければなりません。また、買受人は、買受量(立法メートル)に応じて定められた搬出期間内までに伐採を行い、搬出を完了させなければならないことになっています。

別紙3 事前照会者の求める見解となることの理由

1 林業公社は、民法第34条の規定に基づき設立された社団法人であり、法人税法上の公益法人等に該当します(法人税法第2条第6号、別表第二)。

公益法人等の納税義務について、法人税法は、収益事業を営む場合に限り法人税を納める義務がある旨規定しています(法人税法第4条第1項)。そして、当該収益事業について、法人税法は「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて営まれるものをいう。」と規定し(法人税法第2条第13号)、当該「その他の政令で定める事業」については、法人税法施行令第5条第1項で物品販売業等の33の事業が個別に限定列挙されています。

2 本件における分収造林事業は、林業公社が地上権者として、自己の責任と費用負担によって、苗木の植栽から伐採期までの間の保育事業を行い、収穫の時期を迎えた立木の売払い代金を土地所有者との間で分収するというものです。

このような事業内容からすると、本件における分収造林事業は、一義的にはいわゆる第一次産業としての林業に該当すると解されますが、法人税法施行令第5条第1項に列挙されている事業には、林業をはじめ農業、漁業、水産養殖業は含まれていません。

これは、林業や農業等が「特定の集荷業者等に売り渡すだけの行為」、換言すれば、その生産物等をそのまま集荷業者等に「卸売り」する事業であることが予定されていることによるものですが、卸売りとはいえない販売、すなわち直接不特定又は多数の者に「小売り」する場合には、物品販売業(収益事業)に該当するものとして取り扱われます(法人税基本通達15-1-9)。

3 公社営林立木の売払い方法は一般競争入札によるところ、当該入札の参加資格は、素材生産業を営む者に限定されていますから、不特定多数の者が自由に買受けすることや当該入札に参加することはできません。

このようなことからすれば、公社営林立木の売払いは、直接不特定又は多数の者に「小売り」する場合に該当するとはいえず、「特定の集荷業者等に売り渡すだけの行為」の域を出ていないと解されます。

4 以上のことから、平成17年度以降における林業公社による公社営林立木の売払い行為は、物品販売業には該当せず、したがって、収益事業に該当しないと解されます。