1 事前照会の趣旨

骨髄及び末梢血幹細胞(以下「骨髄等」といいます。)を提供されたドナーのための助成制度が全国の地方自治体で導入されているところであり、大田原市でも、公益財団法人日本骨髄バンク(以下「日本骨髄バンク」といいます。)が実施する骨髄バンク事業(以下「本件骨髄バンク事業」といいます。)において、多くの骨髄等の移植の実現とドナー登録者の増加を図るための経済的な支援を行うため、本件骨髄バンク事業において骨髄等を提供した一定の方(以下「本件ドナー」といいます。)を対象として、大田原市骨髄移植ドナー支援事業奨励金交付要綱に基づく大田原市骨髄移植ドナー支援事業奨励金(以下「本件奨励金」といいます。)を交付する予定です。

本件ドナーが交付を受ける本件奨励金については、一時所得と取り扱って差し支えないか、伺います。

2 事前照会に係る事実関係

(1) 本件奨励金の交付対象者

日本骨髄バンクが実施する本件骨髄バンク事業において骨髄等を提供した方で、大田原市に住所を有し、日本骨髄バンクが発行する証明書の交付を受けた方(本件ドナー)を対象に本件奨励金を交付します。

ただし、市税等の滞納がある方(その世帯員を含みます。)は対象となりません。

(2) 本件奨励金の交付金額

本件奨励金は、本件ドナーが次に掲げる通院等を行った場合に、その通院等に要した日数に応じて1日当たり2万円(上限7日14万円)が一括して交付されます。

  • イ 健康診断に係る通院
  • ロ 自己血貯血に係る通院
  • ハ 骨髄等の採取に係る入院
  • ニ 日本骨髄バンクが必要と認める通院、入院及び面接

(3) 本件奨励金の交付申請手続等

  • イ 本件奨励金の交付を受けようとする本件ドナーは、骨髄等の提供が完了した日から60日以内に、大田原市長に対し、本件骨髄バンク事業に関する手続きがなされたことを証明する日本骨髄バンクが発行する証明書その他市長が必要と認める書類を添付した「大田原市骨髄移植ドナー支援事業奨励金交付申請書(ドナー用)」を提出する。
  • ロ 大田原市長は、本件ドナーから提出された上記申請書の内容を審査した上で、「大田原市骨髄移植ドナー支援事業奨励金交付決定通知書」によりその交付の可否及び交付金額を本件ドナーに通知する。
  • ハ 交付の決定を受けた本件ドナーは、「大田原市骨髄移植ドナー支援事業奨励金請求書」を大田原市長宛に提出し、本件奨励金の交付を受ける。

(4) 本件骨髄バンク事業について

日本骨髄バンクが行う本件骨髄バンク事業においては、骨髄等の提供のための検査費用、入院費(術前健診費・自己血採血・採取費用・術後健診費)は、骨髄等の提供を受ける患者の保険により支払われますので、ドナーが負担することはありません。ただし、ドナー登録手続きの際の交通費はドナーの自己負担とされています。また、ドナーが登録や骨髄等の提供のために仕事を休んだとしても日本骨髄バンクからの休業補償はありませんが、ドナーが勤務先の休暇制度等を希望する場合には日本骨髄バンクから証明書が発行されます。

なお、骨髄等の提供は、ドナーの身体への影響を考慮して現在最高2回まで可能とされています。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

上記のとおり、本件骨髄バンク事業においては、ドナー登録手続きの際の交通費はドナーの自己負担とされており、また、ドナーが登録や骨髄等の提供のために仕事を休んだ場合の休業補償もないとされているところ、本件奨励金の交付は、多くの骨髄等の移植の実現とドナー登録者の増加を図るための経済的な支援を目的とするものですので、本件奨励金に交通費の実費弁償としての性格や休業による逸失利益の補填としての性格も含まれているのではないか疑問が生じます。

しかしながら、骨髄等の提供を行った本件ドナーの就労等の状況や骨髄等の提供に係る交通費の有無等については、本件ドナー各自において事情が異なるものですので、本件奨励金はこれらの事情を考慮することなく、通院等の日数に応じて一律の金額を交付するものです。また、本件奨励金はその使途に制限はなく、生活費や遊興費など各自の自由裁量で使用することができます。したがって、本件奨励金は実費弁償や逸失利益の補填としての性格は有していないものと考えます。

一方、本件骨髄バンク事業における骨髄等の提供は、ドナーの善意に基づき無償で行われるもので、営利を目的としていないことは明らかであり、その性質上、繰り返し行われるものでもありません。そして、本件ドナーによる骨髄等の提供は、大田原市に対して行われるものではありませんので、本件ドナーの行った骨髄等の提供と本件奨励金は対価関係にありません。

これらのことからすれば、本件奨励金は、営利を目的とする継続的行為から生ずる所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであることから、一時所得に該当すると考えられます(所得税法34@)。

なお、本件奨励金については、大田原市が所定の審査を行った上で、その交付の決定及び交付金額に係る通知を行いますので、その通知を受けた日の収入とするのが相当と考えられます。