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- 市が独自で実施している介護保険の対象者以外の高齢者に対するデイサービス事業の委託費等に係る消費税の取扱いについて(照会)
別紙
1 事前照会の趣旨
当法人は、特別養護老人ホーム(第一種社会福祉事業)及び老人デイサービスセンター(第二種社会福祉事業)の経営及び当該施設における介護サービス(介護保険法に定める指定居宅サービス事業者に該当)等を行う社会福祉法人です。
当法人においては、A市(以下「市」という。)から「在宅高齢者生きがい対応型デイサービス事業」(以下「本件委託事業」という。)の委託を受け、自己の所有施設(以下「本件施設」という。)において、本件委託事業を実施しています。
本件委託事業は、介護保険の対象とならない高齢者等に対し、市の独自事業(在宅福祉サービス)として、日常動作訓練、レクリエーション、食事等のサービスを提供するもので、その費用は、原則として、市が委託料として9割、利用者が利用料として1割(生活保護世帯においては市が全額負担)(以下、併せて「本件委託料等」という。)を負担することとしています。
本件委託事業については、消費税が非課税とされる消費税法別表第一第7号イに規定する介護保険法の規定に基づく居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス等(以下「介護保険サービス」という。)又は同号ロに規定する社会福祉法に規定する社会福祉事業に該当するものではありませんが、社会福祉事業に類する事業として、同号ハ、同施行令第14条の3第6号及び平成3年厚生省告示第129号「消費税法施行令第14条の3第6号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する資産の譲渡等を定める件」(以下「告示第129号」という。)第1号ロに掲げる事業に該当し、本件委託料等は消費税が非課税となる資産の譲渡等の対価に該当すると解して差し支えないか、お伺いします。
(注)
1.
当法人においては、本件委託事業の実施に当たり、本件施設についての介護保険法に規定する指定居宅サービス事業者の指定に係る申請並びに老人福祉法及び社会福祉法に規定する県知事への社会福祉事業開始の届出を行っていません。
2.
本件施設は、当法人が経営している特別養護老人ホーム及び老人デイサービスセンターとは別の施設であり、本件委託事業は、これらの社会福祉事業とは関係のない事業として行われます。
2 事前照会に係る取引等の事実関係(本件委託事業の内容)
本件委託事業の内容は、「A市在宅高齢者生きがい対応型デイサービス事業実施要綱」及び「平成○年度A市在宅高齢者生きがい対応型デイサービス事業業務委託契約書」によれば、次のとおりです。
委託事業の目的
- 家に閉じこもりがちな在宅のひとり暮らし高齢者等を身近な施設に通わせ、必要なサービスを提供することにより、当該高齢者の自立的生活の助長、社会的孤立感の解消及び要介護等状態になることの予防を図ることを目的としています。
利用者
- 市内に住所を有するおおむね65歳以上の在宅のひとり暮らしの高齢者等で、単身世帯、高齢者のみの世帯及びこれらの世帯に準ずる世帯に属する当該高齢者等であって、家に閉じこもりがちな高齢者、要介護等状態になるおそれのある高齢者とします。ただし、介護保険法第19条第1項に規定される要介護認定及び同法第19条第2項に規定される要支援認定の結果、同法第7条第3項に規定される要介護者又は同法第7条第4項に規定される要支援者に該当する者は除かれます。
なお、本件委託事業によるデイサービスを受けようとする場合には、本人又は家族が市に申請することとされており、市は当該申請に対して必要性の適否を審査、決定し、申請者に対して利用承認又は利用不承認の決定通知を行うこととされています。
(注)
1.「高齢者等」とは、65歳以上の者及び障害者など市長が高齢者に準ずる者と認めた者をいいます。また、「これらの世帯に準ずる世帯」とは、例えば日中において家族が不在となる世帯をいいますが、その場合であっても利用者となるのは要介護等状態になるおそれのある高齢者に限られます。
2.要介護等状態になるおそれについては、市の認定調査員が介護保険法に規定する要支援又は要介護の認定基準に準じて日常生活における支障の程度等により判断されることから、要介護等状態になるおそれにより当該利用承認を受けることは、日常生活を営むのに何らかの障害がある者となります。
サービス内容
-
サービスの種類 |
内容 |
基本サービス |
必須メニュー(いずれか1つ以上)
・身体機能の維持に繋がる運動
・認知症の予防に繋がるもの
・食生活の改善に繋がるもの |
選択メニュー(希望に応じて)
・教養講座
・スポーツ、創作、趣味等の活動
・入浴 |
給食サービス |
昼食(希望に応じて) |
送迎サービス |
往復(希望に応じて) |
- 基本サービスの選択メニューにある教養講座及びスポーツ等の活動は、身体機能の維持及び認知症の予防の観点から、市が本件委託事業に取り入れているものです。
これは、利用者個人の趣味に合ったものを選択し、継続して行うことにより、身体機能の維持及び認知症の予防が図られることによるもので、養護老人ホームや老人デイサービスセンター等においても介護その他の日常生活上の支援及び機能訓練として行われているものです。
当法人としては、告示第129号は、老人福祉法に規定する老人居宅生活支援事業等に類するものを対象とするものであるところ、告示第129号第1号ロに掲げる事業は、通所サービスである老人デイサービス事業に類する事業と同様のものがこれに該当すると考えますから、教養講座及びスポーツ等の活動については、老人デイサービス事業として実施されている状況を踏まえれば、告示第129号第1号ロに掲げる「機能訓練」又は「その他の便益」に該当するものと考えています。
また、送迎サービスについては、施設において利用者にデイサービスを提供するために、事業の一環として送迎を行うものであることから、送迎サービスのみの提供は行っていません。
実施場所
- 本件施設を中心として行います。
委託料等
- 委託料は、利用者1人1日につき、次の表に対応した額です。
なお、当法人は、利用者から費用の一部を利用料として徴収するものとされています。
○委託料(本件委託事業の市負担分)
委託料 区分 |
提供するサービス |
基本事業 |
送迎(片道) |
1日4時間以上の利用の場合 |
一般世帯 |
2,700円 |
450円 |
生活保護世帯 |
3,000円 |
500円 |
1日4時間未満の利用の場合 |
一般世帯 |
1,890円 |
450円 |
生活保護世帯 |
2,100円 |
500円 |
○利用料(利用者の自己負担分)
利用料
区分 |
利用するサービス |
基本事業 |
送迎(片道) |
1日4時間以上の利用の場合 |
一般世帯 |
300円 |
50円 |
生活保護世帯 |
0円 |
0円 |
1日4時間未満の利用の場合 |
一般世帯 |
210円 |
50円 |
生活保護世帯 |
0円 |
0円 |
(注)
1.
給食サービスを利用した者については、別途食材料費等の実費600円(全額利用者負担)を請求します。なお、給食サービスのみ、送迎サービスのみは行っていません。
2.
本件委託料等については、それぞれ1月分まとめて市及び利用者に請求しています。
3.
本件施設の1日の利用者数は、18人以内とされています。
3 事前照会者の求める見解となることの理由(本件委託料等に係る消費税の取扱い)
- (1) 介護保険サービス又は社会福祉事業に該当するか
-
本件委託事業が、介護保険サービス又は社会福祉事業に該当するかについては、次のとおりとなると考えます。
介護保険サービス
本件委託事業は、介護保険法に規定する「要介護者」又は「要支援者」(以下「要介護者等」という。)を除く高齢者等を対象とするものですから、介護保険の対象とならない事業です。
したがって、本件委託料等は、消費税法別表第一第7号イにより消費税が非課税とされる介護保険サービスとして行われる資産の譲渡等の対価には該当しません。
なお、当法人においては、本件施設についての介護保険法に規定する指定居宅サービス事業者の指定も受けていません。
社会福祉事業
本件委託事業と類似するサービスを提供する事業としては、老人福祉法に規定する老人デイサービス事業(第二種社会福祉事業)がありますが、当該老人デイサービス事業は、介護保険法に規定する通所介護に係るサービス費の支給を受ける者等を対象とするものであるところ、本件委託事業は、上記
のとおり、介護保険の対象外の者を対象とするものですから、老人デイサービス事業には該当せず、他の第一種又は第二種社会福祉事業にも該当しません。
また、当法人は、特別養護老人ホーム(第一種社会福祉事業)及び老人デイサービスセンター(第二種社会福祉事業)を経営する者ですが、本件委託事業は、当該特別養護老人ホーム等とは別の施設において実施されており、特別養護老人ホーム等を経営する事業とは何ら関係するものではなく、別の事業として行なわれるものです。
したがって、本件委託料等は、消費税法別表第一第7号ロにより消費税が非課税とされる社会福祉事業として行われる資産の譲渡等の対価には該当しません。
なお、当法人においては、本件施設について社会福祉法及び老人福祉法に規定する社会福祉事業開始の届出も行っていません。
- (2) 社会福祉事業に類する事業に該当するか
-
社会福祉事業に類するものに係る消費税の取扱い
消費税法別表第一第7号ハ及び消費税法施行令第14条の3第6号により老人福祉法に規定する老人居宅生活支援事業、障害者自立支援法に規定する障害福祉サービス事業その他これらに類する事業として行われる資産の譲渡等のうち、国又は地方公共団体の施策に基づきその要する費用が国又は地方公共団体により負担されるものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定するものは、社会福祉事業に類する事業として、非課税とされています。
当該指定は、告示第129号により行なわれており、次の3つの要件を満たす場合は、社会福祉事業に類する事業として行われる資産の譲渡等として消費税が非課税となるものと理解しています(告示129
)。
- イ 国等が費用の2分の1以上を負担するものであること
- ロ 次に掲げる者に対して行われる資産の譲渡等であること
- ・ 身体に障害のある18歳未満の者若しくはその者を現に介護する者
- ・ 知的障害の18歳未満の者若しくはその者を現に介護する者
- ・ 身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者若しくはその者を現に介護する者
- ・ 知的障害者若しくはその者を現に介護する者
- ・ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する精神障害者若しくはその者を現に養護する者
- ・ 身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障のある65歳以上の者(65歳未満であって特に必要があると認められる者を含む。以下同じ。)若しくはその者を現に養護する者
- ・ 母子及び寡婦福祉法第6条に規定する配偶者のない女子若しくはその者に現に扶養されている20歳未満の者
- ・ 65歳以上の者のみにより構成される世帯に属する者
- ・ 配偶者のない男子(配偶者の生死が明らかでない者を含む。)に現に扶養されている20歳未満の者若しくはその者を扶養している当該配偶者のない男子
- ・ 父及び母以外の者に現に扶養されている20歳未満の者若しくはその者を扶養している者
- ハ 次の事業として行われる資産の譲渡等であること
- ・ 居宅において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活を営むのに必要な便宜を供与する事業
- ・ 施設に通わせ、入浴、食事の提供、機能訓練、介護方法の指導その他の便宜を供与する事業
- ・ 居宅において介護を受けることが一時的に困難になった者を施設に短期間入所させ、養護する事業
本件へのあてはめ
本件委託事業は、介護保険の対象とならない高齢者等に対して行う市の独自事業であることから、地方公共団体の施策に基づくものであり、また、次のとおり、告示第129号第1号に掲げる要件のすべてを満たすことから、社会福祉事業に類する事業として行われる資産の譲渡等に該当すると考えます。
したがって、本件委託料等は社会福祉事業に類する事業として行われる資産の譲渡等の対価に該当し、消費税は非課税となると考えます。