個人甲及び乙(以下「甲ら」といいます。)は、A株式会社(以下「A法人」といいます。)の増資に当たり、甲らの所有する土地(以下「本件土地」といいます。)を現物出資し、A法人の株式を取得しました。
本件土地の現物出資に当たっては、下記から
までの費用(以下「本件各費用」といいます。)が生ずることとなりますが、本件各費用について、甲らとA法人との間の契約(以下「本件契約」といいます。)において、甲らが負担するものとされ、甲らが支払いました。
この場合、甲らの現物出資に係る譲渡所得の計算上、本件各費用は譲渡費用になると解してよろしいでしょうか。
現物出資者 | 現物出資財産 | 付与株式 |
---|---|---|
甲 | A土地 | A法人株式 ○○○○株 |
B土地(持分1/2) | ||
乙 | B土地(持分1/2) | A法人株式 ○○○○株 |
(1)契約
甲らとA法人との間で、本件各費用は、甲らが負担する。
(2)内訳
本件各費用 | |
---|---|
登録免許税 | 1,544,000円 |
税理士報酬 | 420,000円 |
不動産鑑定料 | 399,000円 |
計 | 2,363,000円 |
(1)所得税法
譲渡所得の金額の計算上、譲渡所得の総収入金額から譲渡所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除することができますが(所法33)、この「資産の譲渡に要した費用」とは、次のとおりとされています(所基通33−7)。
イ 資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記又は登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用
ロ 上記イに掲げる費用のほか、立退料、建物取壊費用、当該資産の譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用
(2)登録免許税法
登記等を受ける者は、登録免許税を納める義務があるとされています(登免税法3)。
この場合、通説では、「登記等を受ける者」とは、売買による不動産の所有権移転登記のように共同申請により行われる場合には、登記権利者と登記義務者の双方が登録免許税を納付する義務があると解するのが妥当とされ、当事者の契約によって登録免許税の負担を定めた場合には、その定めるところにより、取引上慣習があればそれに従うことも当然であるとされています。
(3)会社法
イ 株式会社は、発行株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式について、所定の事項を定めなければならないとされており、金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額を定めなければならないとされています(会社法199三)。
ロ 株式会社は、会社法第199条第1項第3号に掲げる事項を定めたときは、現物出資財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならないとされています(同法207)。
ただし、現物出資財産が不動産である場合、その価額が相当であることについて税理士の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を受けた場合、当該証明を受けた現物出資財産の価額について検査役の調査は不要となります(同法207四)。
(1)登録免許税
不動産を売買した場合、売買を原因とする所有権移転登記が行われることから、当該所有権移転登記の費用は、資産の譲渡及び取得に際し直接生ずる費用であると考えられます。
そして、上記1(2)のとおり、売買による不動産の所有権移転登記のように登記申請が登記権利者と登記義務者との共同申請により行われる場合には、登記権利者と登記義務者の双方が登録免許税の納税義務者と解され、その納付義務の割合は、契約があればその契約の定めるところにより、また、慣習があれば慣習によるとされています。
したがって、所有権移転登記が甲らとA法人の共同申請により行われている本件の場合、本件土地の所有権移転登記に係る登録免許税の納税義務者は、登記権利者であるA法人と登記義務者である甲らの双方となり、登録免許税は本件契約により甲らが負担することとされていますので、甲らが負担する登録免許税の全額が、客観的に見て資産の譲渡を実現するために必要な費用であり、譲渡費用に該当するものと考えます。
(2)税理士報酬及び不動産鑑定料
上記1(3)ロのとおり、不動産を株式会社に対し現物出資するためには、裁判所の選任した検査役の調査若しくは税理士の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価が必要となります。
そして、本件の場合、税理士報酬及び不動産鑑定料は、本件契約により甲らが負担するものとされていることから、客観的に見て資産の譲渡を実現するために必要な費用であり、譲渡費用に該当するものと考えます。