令和7年広島国税局清酒鑑評会につきまして、出品状況及び審査結果をご報告します。
出品区分は、清酒の製法品質表示基準に基づいた製造方法による「吟醸酒」部門、「純米酒」部門及び「燗酒」部門の3部門で行いました。
出品状況は、3部門のうち、「吟醸酒」部門には69点、「純米酒」部門には68点、「燗酒」部門には61点と、全体で73製造者から198点ありました。
出品酒の品質評価は、中国地方各県の清酒製造者、販売者、公設試験研究機関及び独立行政法人酒類総合研究所の職員など、清酒の製造技術に詳しく、かつ官能評価能力に優れた方々と、広島国税局鑑定官室員の併せて27名により、去る9月2日及び3日の予審、9月5日の決審の審査を通じて、慎重かつ厳正に行いました。
全ての出品部門に共通した評価の基準として、優れた製造技術や貯蔵管理が反映されているものを選定することを基本としました。
「吟醸酒」部門では、吟醸香に代表される香りを主体として香味の調和がとれていることに重点を置き、アルコール添加の有無によりグループ化した上で評価しました。
「純米酒」部門では、純米酒らしい味わいと香味の調和に重点を置き、精米歩合によりグループ化した上で評価しました。
「燗酒」部門では、温めて提供された清酒の香味の調和を重視し、エキス分を酸度で除した値によりグループ化して行いました。
審査の結果、「吟醸酒」部門28点、「純米酒」部門27点、「燗酒」部門22点、合わせて77点の出品酒を優等賞にふさわしいものと認めました。
「吟醸酒」部門では、昨年夏の高温の影響で原料米が硬く溶けにくいとの声を聞きましたが、皆様の工夫と対処により、香味とも優れた清酒に仕上がっていました。リンゴやバナナの香りを連想させるものが多くある中、ブドウなどの果物の香りを連想させるものも見られました。いずれも味わいはなめらかで、香味が調和したお酒が揃っていました。
「純米酒」部門では、多様な原料米が使用されており、長期貯蔵酒や生もと系酒母で醸造したお酒も出品されていました。濃醇で酸味や旨味が感じられるもの、華やかでなめらかな口当たりのもの、軽快で後味のキレが良いもの、熟成によるカラメル様の甘い香りとなめらかで重厚な味わいが感じられるものなど、個性豊かであり、いずれも味わいがありました。
「燗酒」部門では、純米酒部門と同様、長期貯蔵酒や生もと系で醸造したもの、特定名称酒以外も数点出品されていました。酸味や甘味が豊かに感じられるものから、軽快でキレの良いものまで幅広い酒質のものがありました。いずれも、温めることで一段と香りが口の中に広がるとともに、口当たりがなめらかとなり、旨味も増し、燗酒の奥の深さを感じることができました。
いずれの部門においても、管内の各製造者が持つ高度な製造技術や貯蔵管理、そして創意工夫により、香味の調和がとれ、優れた品質のものが多数認められました。
このような中で、見事に優等賞を受賞されました製造者の皆様のご努力に敬意を表し、心からお祝いを申し上げます。
また、この度惜しくも受賞を逃された製造者におかれましても、その差は僅かなものであり、今回の結果をもとに、さらなる技術研鑽に励み、今年以降の製造技術に生かしてください。
当鑑評会は、酒造技術の進歩・発展を促し、管内清酒の品質向上を図ることにより、酒類業の健全な発達に資することを目的として開催しています。
今後も、製造者の皆様からのご意見を参考にしながら、この鑑評会の目的が達成されるよう努めたいと考えておりますので、ご理解とご協力をお願いします。
10月となり、いよいよ本格的な清酒造りの季節を迎えます。製造者をはじめ関係者の方々が、製造技術の更なる研鑚に努められ、優れた品質で個性豊かな製品を消費者に提供し、伝統ある中国地方の清酒の名声がますます広がりますことを祈念いたします。
令和7年10月6日
広島国税局鑑定官室長 向井 伸彦