審査報告

令和5年広島国税局清酒鑑評会につきまして、出品状況及び審査結果をご報告します。

出品区分は、清酒の製法品質表示基準に基づいた製造方法による「吟醸酒」部門、「純米酒」部門及び通常よりも高い温度で評価を行う「燗酒」部門の3部門で行いました。

出品状況は、3部門のうち、「吟醸酒」部門には70点、「純米酒」部門には66点、「燗酒」部門には62点と、全体で73製造者から198点ありました。

出品酒の品質評価は、中国地方各県の公設試験研究機関、広島県公立大学法人県立広島大学、独立行政法人酒類総合研究所の職員、清酒製造者、酒販店など、清酒の製造技術に詳しく、かつ官能評価能力に優れた方々と、広島国税局鑑定官室員併せて26名により、去る9月27日、28日の予審、10月4日の決審と3日間をかけて慎重かつ厳正に行いました。

また、全ての出品部門に共通した考え方として、製造技術の高さが反映され、清酒としての品質の良好さを備えたものを選ぶことを基本として評価しました。

「吟醸酒」部門では、吟醸香に代表される香りを主体として香味の調和がとれていることに重点をおいて評価しました。品質評価に際しては、アルコール添加の有無により区分分けした後、代表的な吟醸香とされるカプロン酸エチルの濃度が近接するようグループ化して行いました。
 「純米酒」部門では、純米酒らしい味に重点を置きながら香味の調和を重視して評価しました。品質評価に際しては、精米歩合が近接するようグループ化して行いました。
 「燗酒」部門では、燗をつけたときの香味の調和を重視して評価しました。品質評価に際しては、エキス分を酸度で除した値が近接するようグループ化して行いました。

審査の結果、「吟醸酒」部門25点、「純米酒」部門26点、「燗酒」部門23点、合わせて74点の出品酒を優等賞にふさわしいものと認めました。

出品酒の品質は、管内各製造場が有している高度な製造技術により醸しだされた、香味の調和が良く、優れたものが多数ありました。

「吟醸酒」部門では、リンゴを連想させる華やかな香りから、やわらかく軽い香りのものまで様々ありました。上品な香りと適度な旨味が調和したものもあり、いずれもよく仕上がっていました。
 また、メロン、ライチ、ぶどう様の香りなど、特徴のある香りを呈する出品酒もあると指摘した評価員もいました。
 「純米酒」部門では、多様な原料米が使用されており、熟成酒や生もと系で醸造した酒も出品されていました。濃醇で旨味があるもの、華やかでなめらかな口当たりのもの、酸味があり軽やかで心地よいものなど、様々なタイプのものがありました。
 「燗酒」部門では、純米酒部門と同様、熟成酒や生もと系で醸造したもの、特定名称酒以外も数点出品されていました。酸味が立ちキレの良い味わいのもの、熟成したバランスの良い香りのもの、後味が力強く好ましい余韻が広がるものなどがありました。
 また、温まったことにより一段と旨味が増し、やわらかさやふくらみも変化する印象を受け、燗酒の奥深さを感じることができました。

このように高い品質の出品酒が数多くあった中において、見事に優等賞を受賞されました製造場の皆様方の努力に敬意を表し、心からお祝いを申し上げます。
 また、この度惜しくも受賞を逃された製造場におかれましてもその差は僅かなものであり、今回の結果をもとにさらなる技術研鑽に励み、今年以降の製造技術に生かしてください。

当鑑評会は、酒造技術の進歩・発展を促し、管内清酒の品質向上を図ることにより、酒類業の健全な発達に資することを目的として開催しています。
 今後も、製造者等の皆様方からのご意見等を参考にしながら、この鑑評会の目的が達成されるよう努めたいと考えていますので、ご理解とご協力をお願いします。

いよいよ本格的な清酒造りの季節となります。各製造場の皆様をはじめ関係各位が、製造技術の更なる研鑚に努められ、優良な品質で個性豊かな製品を消費者に提供し、伝統ある中国地方の清酒の名声がますます広がりますことを祈念いたします。

令和5年10月27日
広島国税局鑑定官室長 江村 隆幸