はじめに

国税庁では、毎年、全国の高等学校のご協力を得て「税に関する高校生の作文」の募集を行っています。
 これは、次代を担う高校生の皆さんが、学校教育の中で学習したことや自分自身の経験・体験などを通じて、税について考えたことを作文の形で発表していただき、これを機会に税に対する関心を一層深めていただきたいという趣旨で、昭和37年度から毎年実施しているものです。
 福山税務署管内では、3校から301編の作文が寄せられ、その中から優秀作品を選考しましたので紹介します。

福山税務署長賞

「支え支えられる意識」

広島県立神辺旭高等学校 2年 能宗 采花

今日も救急車のサイレンが聞こえる。
 私は中学生の時、夜中急に具合が悪くなり、救急車で搬送された。後になって両親から聞いた話だが、夜間診療所の時間外であったこともあり、救急車を呼んだ方がよいのか判断にとても悩んだようだ。一旦、救急安心センターへ連絡したそうだが、実施エリアでなかったため、やむなく119番へ連絡、相談させてもらい搬送に至った。
 私は今になりその時の費用について知りたいと思い調べてみた。
 まず、救急安心センター事業は救急車の適時、適切な利用を判断できるよう、電話で医師や看護師等の専門家が救急相談に応じてもらえる。この費用は整備に国庫補助、運営費に特別交付税と税金によって支えられている。また救急車の出動費用についても、自己負担は無く日本にいる人、全員が無料で利用できる。例えば旅行に来ている日本国籍ではない外国の方でも費用がかかることはない。その費用は税金で賄われている。救急車が一回あたり出動するのにかかる費用は、約45,000円といわれていて、年間の合計は単純計算で約2,670億円が税金から捻出されている。
 もし救急車の費用を有料化したらどうだろう。デメリットを考えたら、経済的に余裕のない人が呼ぶことをためらい、治療が手遅れになってしまう場合が考えられる。また、利用料を払うのだから、早く来てほしい、完璧な対応をしてほしいと思う人がいるかもしれない。メリットだってあるだろう。緊急性のない救急車の利用は減り、本当に必要とする人が利用でき、救急隊員の負担も減るはずだ。中には軽傷タクシー代わりとして利用する悪質なケースもあるようだ。
 私は利用させてもらった経験者として、現状のまま無料であってほしいと考える。なぜなら誰もがお金のことを気にせず、平等に利用できるからだ。また本人に意識がない場合、偶然周りにいた人が利用料を払える人なのか判断することはできない。だから、有料化の前に不要な救急車の利用を防ぐ方法を考えたいと思う。
 こうした公的サービスを維持していくことには多額の費用がかかっている。私たちの生活は税金により守られていて、私たちの暮らしと深く結びついている。だからこそ皆が互いに支えあい、よりよい社会をつくるため広く公平に税を負担する意識をもちたいと思う。また、税の使い道に関心を持つことも忘れてはならない。

「私の周りの税金が使われているもの」

学校法人盈進学園盈進高等学校 3年 廣P 瑠璃

初めは、税は私の生活にとって全く関係ないものだと考えていた。しかし、高校生になり、私の日常生活の中で身近に税が使われていたことを知った。中学生までは、新しい教科書が無料で配付されることに何も疑問もなく受け取っていた。そして、年度が変わるごとに、要らなくなった教科書を当たり前のように捨てていた。高校生になり、教科書を何万円もかけて買うということをしなければならなくなった。小学生の頃から、国から教科書が配付されていることは知っていたが、私たちが普段払っている税金が使われていることに驚いた。そこで当たり前のように感じていた教科書の無料配付もありがたいものだったんだと強く感じるようになった。また、私のように教科書を無料でもらうことができることは当たり前だと考えていることは多いと思う。
 私は、現在個人消費が減少しているという問題を抱えている日本の原因は税のせいだと否定的に考えていた。しかし、税は私たちに全く関係ないということではなく、私たちのよりよい生活のためにあるのだということを感じた。今までは、待機児童が多くて、深刻な問題にもなっていたことがニュースでよく取り上げられていたのに印象が残っている。しかし、今では税金が引き上げられたことにより待機児童がより、減っていることを知った。税が引き上げられることは、否定に捉えられていて、正直私も引き上げられることは嫌だと感じる。しかし、全面的に否定するのではなく、私たちの生活をよりよくしてくれるものだとプラスに考えるべきである。また身近で、私たちの生活に税金は必要不可欠であることが感じられたらいいなと思う。
 これから日本は、少子高齢化が進んでいくにつれて、私の世代や、私の両親の世代さえ年金をもらうことが難しくなってくる。私たちは、肯定的に税金について捉えることが必要であり、より社会を豊かにしていくためにはより多くの税金を納めていくべきだと考える。これからも、気持ちよく税金と共存していきたいと思う。

「税金の使われ方について思うこと」

広島県立福山商業高等学校 3年 佐藤 春菜

税とは、公的サービスの費用を広く公平に分かち合うこと、貧富の差を激しくしないようにすること、経済の安定化を図る役割がある。そして、税金は社会保障に一番使われており、その中でも最も多く年金に使われている。社会保障は全年齢にわたって支えるもののはずなのに高齢化社会によって年金にほとんど使われ、全年齢に公平に保証されていないように思える。私は、これから新しい社会を切り開いていく子供たちの教育に税金を使ってもいいと思う。
 社会保障の中に医療に使われているものがあった。一人一人が全額負担ではないので気軽に診察を受けることができる。日本人が比較的に健康な人が多いのは、こういった社会制度があるからだろう。
 このように様々なことに税は使われているが、日本以外のほかの国の税金はどのように使われているのか疑問に思った。そこで税率が高い北欧の国々の税金の使い方について調べてみた。北欧諸国では、出産や子供の学費を無料で提供、高齢者向け社会保障サービスをさせる一方で、元気な高齢者の社会参加を促す取り組みも行っており、二十歳までにかかる医療費、大学の学費などが無料。学力格差を極力なくすべく、教育制度や設備が充実している国もあるそうだ。
 こういった国民に分かりやすい形で社会サービスが提供されているため、税金の負担が大きくても不満があまり出ないそうだ。対して、日本は税金の使途や増税の理由が明確になっていないことから不満を持つ人が多いのではないかと思う。私も、この作文を書くにあたって調べてはじめて気づくことが多くあった。日本の税金の使途は、国民の見えないところから支えるようなものが多く実際知ると、ありがたく感じるが、理解できていない人のほうが多いと思うのでいくら国民のためといっても増税することに不満を持つ人たちが出てくるのではないかと考える。だから、もう少し国民に分かりやすい形で税金を使うと増税しても不満が減るのではないかと思った。