開催日及び場所 平成23年3月17日(木) 福岡合同庁舎8階共用第9会議室
委員 委員 屋宮 憲夫(福岡大学 法学部教授)
委員 林 桂一郎(西日本綜合法律事務所 弁護士)
委員 横山 研治(立命館アジア太平洋大学 国際経営学部長)
審議対象期間 平成22年10月1日(金)〜平成22年12月31日(金)
契約締結分の概要説明 審議対象期間に係る契約締結分の概要を説明
抽出事案 4件 (備考)
競争入札(公共工事) 1件
契約件名
:香椎住宅外4住宅水道メーター改造修理等工事
契約相手方
:愛知時計電機 株式会社
契約金額
:12,547,500円
契約締結日
:平成22年10月12日
担当部局
:福岡財務支局
随意契約(公共工事) -件  −
競争入札(物品役務等) 3件
契約件名
:糊化特性測定器購入
契約相手方
:安武科学器械 株式会社
契約金額
:7,644,000円
契約締結日
:平成22年12月3日
担当部局
:門司税関
契約件名
:監視艇「さいかい」主機関等定期検査に係る陸揚整備工事
契約相手方
:富永物産 株式会社
契約金額
:32,550,000円
契約締結日
:平成22年12月13日
担当部局
:長崎税関
契約件名
:丁合機能付両面印刷機の購入
契約相手方
:株式会社 福助屋
契約金額
:4,721,850円
契約締結日
:平成22年12月17日
担当部局
:福岡国税局
随意契約(物品役務等) -件
応札(応募)業者数1者関連 3件 ※ 競争入札(公共工事)の「香椎住宅外4住宅水道メーター改造修理等工事」並びに競争入札(物品役務等)の「湖化特性測定器購入」及び「監視艇『さいかい』主機関等定期検査に係る陸揚整備工事」
委員からの意見・質問、それに対する回答等 別紙のとおり
委員会による意見の具申又は勧告の内容 なし
意見・質問 回答
【事案1】
契約件名
:香椎住宅外4住宅水道メーター改造修理等工事
契約相手方
:愛知時計電機 株式会社
契約金額
:12,547,500円
契約締結日
:平成22年10月12日
担当部局
:福岡財務支局
 
 一者応札であり、複数応札があった同種の調達案件と比較して落札率が高いことから抽出した。
 一者応札となった理由は何か。
 本件は3社から入札申込みがあったが、うち2社が入札を辞退したため一者応札となった。
 辞退した2社から理由を聴取したところ、1社は他の受注工事の工期が延長して重なったため、もう1社は電気工事が専門の業者であり、本件工事の全部を施工する技術はなく一部を下請に出す必要があるが下請業者の確保が困難であったため辞退した旨の回答を得ている。
 2社が辞退した事実を、応札業者は知り得たのか。  応札業者は、他社が辞退した事実を知り得なかったと考える。
 本件の入札は電子入札と紙入札を併用した。
 したがって、入札会場には応札業者しか来ていなくとも、電子入札による他社の参加の有無を応札業者が事前に知ることはできなかったはずである。
 そうすると一者応札でも競争性は確保されたと思われる。
 ところで、本件の落札率はいわゆる低入札価格調査の対象となるが、予定価格はどのように積算したのか。落札率から見ると予定価格が高すぎたのではないか。
 一般的に、宿舎の工事費の予定価格は市場価格を調査して時価で積算しており、本件の予定価格も妥当であったと考えている。
 なお、落札率が低かった理由を分析したところ、本件落札者が水道メーターの製造メーカーで製品を原価で調達できることと、水道工事に関するノウハウが豊富で予定価格に比べて人件費が安くなっていることの2点であった。
 競争性を確保するため、本来の参加資格はA等級であるがB等級にまで拡大したとの説明であるが、該当する業者は何社あるか。  機械器具設置と電気通信工事のA等級が合計で320社、同じくB等級が合計230社、すべて合わせると550社である。
 参加可能な業者は550社であったとしても、3社しか入札を申し込んでいないところからすると、本件工事は水道工事業者でなければ施工できなかったのではないのか。
 550社の中に水道工事業者は何社あるか。
 水道工事業者の数は把握しておらず不知である。
 しかしながら、前年に同種の工事を入札した際は6社が応札して競争が成立しており、そのうちの3社は電気設備工事業者であった。
 同時期に入札を実施した長崎の小ヶ倉住宅の水道メーター改造修理工事では競争が成立して本件よりも落札率が低いが、何社が応札したのか。  本件より工事金額が小さいため入札参加資格はB等級及びC等級の者であったが、応札したのはB等級が1社とC等級が4社の計5社であった。
意見・質問 回答
【事案2】
契約件名
:糊化特性測定器購入
契約相手方
:安武科学器械 株式会社
契約金額
:7,644,000円
契約締結日
:平成22年12月3日
担当部局
:門司税関
 
 一者応札で落札率が高い点に着目して抽出した。
 一者応札となった理由は何か。
 本測定器は、でん粉及びでん粉含有製品の糊化(粘度)特性を測定する機器であるが、国際標準規格に準拠した仕様としたことから、仕様を満たす製品は外国製の1機種しかなく、かつ、受注生産品であった。
 入札への参加を希望する複数の業者が本測定器の輸入総代理店に商談を持ち込んだようであるが、受注生産品であったことから輸入総代理店がそのうちの1社と商談を進めたため、結果的に一者応札となったものである。
予定価格はどのように積算したか。  本測定器はユーザーが極めて限定されているため受注生産となっており、一般的な市場価格がないことから、過去に当関で分析・測定用の機器を購入した実績のある複数の業者に対して参考見積書の提出を求めた。
 予定価格の積算は、そのうち2社から提出を受けた参考見積書の金額をもとに、値引率等を勘案して積算したものである。
 参考見積書を2社から取ったとのことであるが、その中に、本件の落札者や、輸入総代理店は含まれているか。  本件落札者は含まれているが、輸入総代理店の方は遠方を理由に「今回、直接取引はしない。」旨回答したことから、参考見積書の提出までは敢えて求めず、本測定器の定価及び一般的な値引率を口頭で聴取した。
 輸入総代理店から聴取した定価とは、販売店への卸値のことか、それとも、エンドユーザーに対する販売価格のことか。  後者の、エンドユーザーに対する販売価格のことである。
意見・質問 回答
【事案3】
契約件名
:監視艇「さいかい」主機関等定期検査に係る陸揚整備工事
契約相手方
:富永物産 株式会社
契約金額
:32,550,000円
契約締結日
:平成22年12月13日
担当部局
:長崎税関
 
 一者応札で落札率がかなり高い点と、検査工事としては比較的高額である点に着目して抽出した。
 一者応札となった理由は何か。
 監視艇「さいかい」の主機関はドイツ製である。当該製造メーカーの認定サービスディーラーは国内に8社あり、いずれも入札参加資格を有しているが、九州にはそのうち2社しかない。
 2社のうち応札しなかった1社に理由を聴取したところ、入札公告を見逃したとの回答であった。
 本件工事は、メーカーの認定ディーラーでなければ対応できないのか。
 認定ディーラー以外は対応できないとすれば、その理由は何か。
 認定ディーラーでなければ対応は困難であると聞いている。
 理由は、1主機関を完全分解するため、機種ごとの整備マニュアルが必要、2同じく特殊な専門工具が必要、3メーカーの研修センターがシンガポールにあり、そこで専門トレーニングを受けて機種ごとの整備資格を取得した者でなければ完全分解・整備は困難、の3点である。
 本件工事は、「さいかい」の母港である長崎で行うのか。母港からの距離が、競争上の制約になるか。  工事自体は母港ではなく、落札業者の工場で行われる。
 具体的には、主機関を船体から取り外して工場まで運搬し、工場で完全分解・整備を行った後に海運局の検査を受けて、再度船体に取り付けるという手順である。
 ヒアリングしたところでは、距離よりもむしろ、機種ごとの得意、不得意や他の整備工事の受注状況の方が入札に影響すると聞いている。
 主機関を選定する際は、国内における認定ディーラーの数や分布状況など、調達した後の保守点検整備の利便性は考慮しないのか。  一般論として、監視の目的を達成するためには軽量でスピードの出る船を建造する必要があり、設計段階でそれに合うような主機関の馬力や排気量等の仕様を決定している。
 現状では、当該仕様に合致する主機関は概ね外国製であり、点検整備の利便性は選定の要素とはなっていない。
 前回の工事も本件落札者が受注したのか。
 そのとおりである。
 しかしながら、今回5社にヒアリングを行った結果、当関がドイツ製の主機関を保有している事実を初めて知った業者があり、受注に関心を示したことから、次回は複数の業者が応札して競争性が確保できるのではないかと期待している。
意見・質問 回答
【事案4】
契約件名
:丁合機能付両面印刷機の購入
契約相手方
:株式会社 福助屋
契約金額
:4,721,850円
契約締結日
:平成22年12月17日
担当部局
:福岡国税局
 
 複数応札だが落札率が高い点に着目して抽出した。
 予定価格の積算はどのようにして行ったか。
 当局では、経費節減の観点から、大量の印刷物はコピーやプリンタによらず印刷機を用いることとしており、丁合の手間を省くため丁合機能付の機種を選定した。
 一定の印刷スピードと丁合機能を兼ね備えた機種は最新型で数が少なく、仕様に合致したのは2機種であった。
 予定価格の積算に当たっては、他の国税局で同種の印刷機を調達した実績がないか情報収集を行い、他局での入札における値引率等を参考にした。
 入札状況はどうだったか。  入札説明を聞きに来たのは9社で、そのうち4社が応札して1回で落札された。
 9社が入札説明を聞きに来たのに、4社しか応札しなかった理由は何か。  辞退した5社すべてに聴取はしていないが、本件機器メーカーの担当者が仕様書を取りに来ているのに応札していなかった。
 そこでメーカーの担当者に応札しなかった理由を聞いたところ、福岡地区には多数の販売代理店が存在するためメーカーからエンドユーザーに直接販売はせず、今回も入札はしなかったが、販売代理店がない地域では直接販売を行う旨の回答を得ている。
 消耗品の調達や、機器の保守契約はどうするのか。  インクやモノクロ印刷機用マスター等の消耗品は、国税局及び管内税務署の他の印刷機用と併せて一般競争入札で調達している。
 なお、保守契約は、経費節減のため購入当初には結ばず、ある程度年数が経過してから契約する予定である。
 同日に調達したモノクロ印刷機の落札率が極端に低いが、予定価格の算定に問題があったのではないか。  モノクロ印刷機の予定価格の積算についても、他の国税局で先行して調達した実績がないか情報収集を行い、他局の入札時の値引率等を参考にしている点は本件と全く同じであり、問題はなかったと考える。
 ただし、モノクロ印刷機は他局での値引率がかなり大きかったのに加え、当局での値引率は更に大幅に上回り、破格とも言える入札価格だった点が、当局の予想と大きく異なったものである。
 なぜモノクロ印刷機を破格値で入札したのか、落札者から理由を聞いているか。  丁合機能付印刷機はインクジェット方式であるのに対して、モノクロ印刷機は従来型のドラム式である。
 当局が聴取したところでは、市場が成熟して過当競争にあるため、メーカーが安く提供せざるを得ない状況にある旨の回答を得ている。
 なお、落札者以外に次点の応札者も、他メーカー製のドラム式を、同様に破格値で応札している。
【委員会の審議結果】  
 審議の結果、4案件ともに適正な入札が適法に行われていることを確認した。
 なお、全体として一者応札の比率や落札率が低下しており、特に公共工事の落札率が下がっている点で、部局の努力により競争性が有効に働いているのではないかと評価している。
 ただし、1監視艇関連の物品役務等、一部に一者応札が依然多く落札率が高いこと、2逆に、物品役務でかなりの廉売が見られるが、物品販売には低入札価格調査制度がない点にやや問題があると感じている。
 それでは、委員会として審議・検討した結果を報告させていただく。
 
 第1事案の水道メーター改造修理等工事については、福岡で一者応札となって競争が成立していないのに対し、長崎では複数の応札があり競争が成立している。
 今後は、1どの業者が入札に参加するかといった内容が事前に情報交換されていないか、2不自然な応札状況になっていないか等に注意してもらいたい。
 また、入札辞退理由についても、より具体的に、注意深く聴取する方がよいと思われる。
 
 第2事案の糊化特性測定器購入については、仕様に合致する機器が外国製の1機種しかない中で、輸入総代理店と販売業者の商談の過程において応札者が1社に決まってしまったと思われる事案である。
 輸入総代理店が販売店間の競争に介入して取引業者を決めるような行為が行われれば不公正な取引となるおそれがあることから、今後、同種の案件で参考見積書を求める場合は、事前にどのような取引形態であるのか確認したうえで、販売店間の競争が公正に行われているか等にも注視する必要がある。
 また、仕様に合致する機器が外国製の1機種しかない場合は、いわゆる並行輸入で販売する業者や輸入商社等を通じて調達することができないか等を確認するとよいのではないかと考える。
 
 第3事案の監視艇の主機関の陸揚整備工事については、今回のヒアリングで応札可能と判明した5社が次回以降入札に参加できるような情報提供の方法を検討することと、監視艇の主機関のようにアフターマーケットに特殊性のある物品を調達する際は、メンテナンスの利便性を考慮した総合評価方式による入札を検討する方がよいと思われる。  
 第4事案の両面印刷機の購入については、仕様書を取りに来た9社のうち5社が入札を辞退している状況や、特定の業者が数多くの案件を落札している状況にあることから、今後は、入札参加申込みから応札までの経緯についても注視する必要があると思われる。
 また、同日に調達されたモノクロ印刷機の応札価格は大きく原価を下回っていると思われ、正常な取引価格から外れている可能性が高いことから、物品の廉売についても低入札価格調査を実施するよう、制度の改正について今後検討していく必要があると思われる。