開催日及び場所 平成22年9月30日(木)福岡合同庁舎8階共用第9会議室
委員 委員 屋宮 憲夫(福岡大学 法学部教授)
委員 林 桂一郎(西日本綜合法律事務所 弁護士)
委員 横山 研治(立命館アジア太平洋大学 国際経営学部長)
審議対象期間 平成22年4月1日(木)〜平成22年6月30日(水)
契約締結分の概要説明 審議対象期間に係る契約締結分及び契約実績状況調書の概要を説明
抽出事案 4件 (備考)
競争入札(公共工事) -件  
随意契約(公共工事) -件
競争入札(物品役務等) 4件
契約件名
:福岡合同庁舎清掃業務一式
契約相手方
:東京ビル整美 株式会社
契約金額
:24,885,000円
契約締結日
:平成22年4月1日
担当部局
:福岡財務支局
契約件名
:大分税関支署監視艇用燃料油(軽油)の購入
契約相手方
:株式会社 アーク
契約金額
:単価契約 1リットル当たり 64.365円
契約締結日
:平成22年4月1日
担当部局
:門司税関
契約件名
:通関事務総合データ通信システム(税関LAN)運用支援業務委託
契約相手方
:エヌ・ティ・ティ・データ・カスタマサービス株式会社
契約金額
:8,064,000円
契約締結日
:平成22年4月1日
担当部局
:長崎税関
契約件名
:シュレッダー車によるごみの裁断リサイクル業務 長崎ブロック
契約相手方
:株式会社 光葉産業運輸
契約金額
:単価契約 裁断処理後引取方式 1キログラム当たり36.75円
単価契約 単純引取方式 1キログラム当たり 5.25円
契約締結日
:平成22年4月1日
担当部局
:福岡国税局
随意契約(物品役務等) -件  −
応札(応募)業者数1者関連 3件 ※ 競争入札(物品役務等)の「大分税関支署監視艇用燃料油(軽油)の購入」、「通関事務総合データ通信システム(税関LAN)運用支援業務委託」及び「シュレッダー車によるごみの裁断リサイクル業務 長崎ブロック」
委員からの意見・質問、それに対する回答等 別紙のとおり
委員会による意見の具申又は勧告の内容 なし
意見・質問 回答
【事案1】
契約件名
:福岡合同庁舎清掃業務一式
契約相手方
:東京ビル整美 株式会社
契約金額
:24,885,000円
契約締結日
:平成22年4月1日
担当部局
:福岡財務支局
 
 落札率が高率である点に着目して抽出した。
 説明によれば福岡合同庁舎の清掃業務は前年度に引き続いて同じ業者が落札したとのことであるが、福岡財務支局は福岡合同庁舎以外の合同庁舎についても同様に清掃業務の入札を実施していることから、それらにおける落札業者の継続状況如何。
 特に長期間継続して同じ業者が落札している合同庁舎はあるか。
 契約一覧表に記載のとおり、当局では福岡合同庁舎以外に小倉、佐賀第2及び佐世保の3つの合同庁舎の清掃業務について一般競争入札を経て年間契約を締結している。そのうち、福岡及び佐世保合同庁舎は平成21年度と同じ業者が平成22年度も落札し、小倉及び佐賀第2合同庁舎は平成21年度とは異なり平成22年度は新規参入業者が落札した。
 なお、契約が長期間継続した例としては佐賀第2合同庁舎が該当し、平成21年度に清掃業務を落札した業者とは随意契約の時期を含めると十年以上にわたり契約していた。
 本件の応札状況を見ると、応札金額の最高額と最低額とで相当の開きがあるが、福岡財務支局はこのように大きな開差が生じた理由をどう分析しているか。
 また、過去の落札状況が公表されていることから、応札業者において落札金額をある程度予想することは可能と思われ、応札金額が高額な業者にあっては落札する意思がなかったということは考えられないか。
 委員のご指摘のとおり、応札金額の最高額と最低額との間に2倍に近い開きがあることは事実であるが、当局は個々の応札業者の価格設定理由までは把握しておらず、したがって開差が生じた原因については不知である。
 なお、応札金額が高額であった業者において落札する意思がなかったのではとのご質問であるが、本件は政府調達案件に該当し50日間の公告期間を設けていることから、応札業者においても金額を検討する時間は十分に確保できたはずである。したがって、応札金額が高額であったとしても、落札する意思がなかったとは当局は考えていない。
 応札金額に大きな開差が生じた原因として、予定価格の設定に問題があったのではないか。
 また、予定価格の積算内容等について、公表することはできないのか。
 予定価格の設定には問題はなかったと考えており、むしろ、落札率が高率とのご指摘どおり、予定価格は実勢価格に近い適正な金額で設定したと考えている。
 なお、予定価格の積算内容等については、他の合同庁舎等における清掃業務の予定価格を類推されるおそれがあることから、公表しないこととしていることをご理解願いたい。
 落札金額によって役務提供の内容やサービスの程度に違いがあるか。
 また、役務提供の内容等についての評価は実施しているか。
 落札金額によって役務提供の内容等に違いがあるかとのご質問であるが、特に違いは見受けられない。
 また、評価についても特に実施したことはないが、これまでのところ各入居官庁から清掃業務に関する苦情は受けていないことから、仕様書どおりに遂行されているものと考える。
 予定価格の算定に当たり前年度の落札率を加味しているが、前年以前も同様の手法で算定したのか。
 また、本案件の過去の落札率の推移如何。
 平成21年度から新たに各入居官庁の専用部分の清掃業務を一括請負契約に加えたことから、平成20年度以前とは契約内容が異なるため、平成21年度は平成20年度の落札率を加味していない。
 なお、過去の落札率の推移に関しては、平成20年度以前も平成22年度に近い落札率であった。
意見・質問 回答
【事案2】
契約件名
:大分税関支署監視艇用燃料油(軽油)の購入
契約相手方
:株式会社 アーク
契約金額
:単価契約1リットル当たり64.365円
契約締結日
:平成22年4月1日
担当部局
:門司税関
 
 一者応札で落札率が極めて高い点に着目して抽出した。
 予定価格の積算はどのようにして行ったか。
【他の契約の予定価格を類推させるおそれがあるため公表しない。】
 門司税関では、落札率が極めて高くなった理由をどう分析しているか。  理由としては、燃料油が価格を公表して市中で販売されており市場価格の把握が容易であること、したがって、予定価格の予想が他の物品購入案件と比べて容易であるためと考えている。
 入札状況を見ると3回行われており、2回目の応札金額は下げ幅が小さく、3回目で応札金額が大きく下がって落札に至っている。
 このような入札状況を門司税関はどう見ているか。
 前年以前は競争が成立していたが、本年は一者応札であったことから、2回目の応札金額が小幅な下げ幅に止まったことが考えられる。
 また、入札を執行する場合、いたずらに再度入札を繰り返すことはせず不調とし、日を改めて公告を行った上で入札することとしているため、3回目は落札業者が再度公告入札を避ける目的で大幅に下げた可能性はあると考える。
 再度入札の回数についての規定はあるか。  特に規定はない。
 当関においては、予定価格と応札金額の差及び参加者における応札意思の有無等を勘案して再度入札の執行の是非を判断している。
 入札参加者に、他の応札者の状況が知れるようなことはなかったか。  本件は電子入札と紙入札を併用しているため、一者応札ではあったものの、1回目の入札に限っては一者応札であることが応札業者に知れる状況にはなかったと考える。
 燃料油の場合、契約期間中に大幅な価格変動が発生する場合があると考えるが、本件契約には価格変動に対応して契約金額を変更できるような条項は設けているか。
 また、あるとすれば、変更後の契約金額をどのように算出し、どのような措置を執ることとしているか。
 契約書には価格変更に関する条項を設けており、市場価格に大幅な変動があった場合の措置として、双方で協議して価格変動率を基に単価の変更契約を行っている。
 一般的に値下げの申入れは当関から、値上げの申入れは落札業者から行うケースが多いが、双方で価格動静を注視の上、契約変更の要否は価格変動率で判断している。
意見・質問 回答
【事案3】
契約件名
:通関事務総合データ通信システム(税関LAN)運用支援業務委託
契約相手方
:エヌ・ティ・ティ・データ・カスタマサービス 株式会社
契約金額
:8,064,000円
契約締結日
:平成22年4月1日
担当部局
:長崎税関
 
 一者応札で、落札率が高い点に着目して抽出した。
 一者応札となった原因を長崎税関はどう分析しているか。
 地元の長崎市に運用支援業者が少ないこと、また、当関が地元の業者数社にヒヤリングしたところでは「常駐させられる技術者がいない。」「システム導入時に携わっていないため、途中からの運用支援はリスクが大きい。」等を応札しない理由に上げる業者があった。
 仕様書で技術者一名を長崎税関に常駐させることとしているが、一者応札を解消するため、例えば常駐要件を外すことはできないか。  当関は常駐が必要と判断している。
 理由は、各職員の端末が税関LANシステムとNACCS(輸出入貨物の審査・許可を行うシステム)の両方に接続されており、税関LANシステムに不具合が生じると輸出入貨物の審査・許可にも影響が生じ、最悪の場合審査・許可事務が滞ることが予想されるためである。
 障害が発生した場合、直ちに復旧できるよう常駐技術者によるモニタリングが必要と考えている。
 LANシステムの導入時点で事後に運用支援業務契約が必要となることは分かっていたのではないか。そうすると、システムの構築と運用支援の複数年契約をセットで入札するなど競争性を高める措置が取れたのではないか。  委員のご指摘どおり、導入時点で判明していたことではあるが、諸般の事情から複数年契約は困難であり、単年度契約を繰り返してきたというのが実情である。
 落札業者との契約は長いのか。  契約開始時は随意契約であったが、平成11年2月から落札業者との契約が続いている。
 本件契約は他の業者でも遂行が可能か。  業務内容自体に特殊性はなく、他者でも遂行は可能と考えるが、1システム構築を行ったメーカーの仕様書は必要であること、2常駐者は相当の知識・経験を有するシステムエンジニアに限られる等の制約はある。
 なお、門司税関においても同じメーカーが構築したシステムを利用しており、かつ、メーカー系以外の業者が運用支援を受注した実績があると聞いていることからも、他者での遂行は可能であることが分かる。
意見・質問 回答
【事案4】
契約件名
:シュレッダー車によるごみの裁断リサイクル業務 長崎ブロック
契約相手方
:株式会社 光葉産業運輸
契約金額
:単価契約 裁断処理後引取方式 1キログラム当たり 36.75円
単価契約 単純引取方式 1キログラム当たり 5.25円
契約締結日
:平成22年4月1日
担当部局
:福岡国税局
 
 一者応札で落札率が他の地域よりも高率であることから抽出した。
 福岡国税局では一者応札となった理由をどう考えるか。
 本件は、当局の管轄地域が福岡、佐賀及び長崎の3県であるため、県単位で分けて一般競争入札にかけているのであるが、入札自体は一度にまとめて実施した。
 その結果、福岡及び佐賀ブロックは例年複数の応札があり本年も競争が成立したものの、長崎ブロックは昨年競争が成立したが本年は一者応札となった。
 そのため、福岡及び佐賀ブロックの応札業者に長崎ブロックへ応札しなかった理由を聴取したところ、「本社が福岡県にあり、長崎県内各税務署だと移動コストも人件費コストも多くかかることから、前年度の落札金額で判断する限り採算が取れないと判断した。」旨の回答を得た。
 入札を3ブロックに分けているのに、一度で執行した理由は何か。  入札を3ブロックに分けている理由は、分けない場合に取引規模が大きくなりすぎて応札できる業者が少なくなることが懸念されたため。
 また、入札を3ブロックまとめて一度に執行した理由は、例年、佐賀及び長崎ブロックの応札者数が少ないことから、入札を分けて執行すると一者応札となった場合に入札参加者にそれが知れることを防ぐための工夫である。
 すべてのブロックの入札書を一度に提出させることで、他の入札参加者がどのブロックに応札したか分からないという効果を狙ったところである。
 シュレッダー車を使用しなければならない理由は何か。シュレッダー車の要件を外して一般の裁断処理機を保有する業者も入札に参加できるよう仕様書を変更すれば競争性は高まるのではないか。  当局はシュレッダー車の要件は必要と考えている。
 理由は、国税局及び税務署が扱う行政文書には納税者の個人情報が記載されており、保管中だけでなく、廃棄する際にも情報漏えいが発生しないよう厳重に作業を監視する必要があるからである。
 したがって、書類を移動する際に不測の事故で情報漏えいが発生する危険性を排除するためシュレッダー車を税務署に呼ぶ方式を採用しており、かつ、裁断処理中は必ず最初から最後まで税務署員を立ち会わせている。
 予定価格の積算は、3ブロックでそれぞれ異なるのか。  予定価格はブロックごとの地域性を考慮して積算しており異なるが、そう大きな違いとはなっていない。
 福岡国税局の説明では、長崎ブロックは移動コストや人件費コスト等が多くかかり採算が合わないとのことであったが、裁断処理はそれほど頻繁に行っているのか。
 裁断処理の頻度は職員数等税務署の規模の大小で異なるが、多い署で年4回、少ない署では1回のところもある。
 大型のシュレッダー車であるため駐車場スペースのかなりの部分を占めることから、裁断処理日は一般来庁者に不便を掛けることとなる。したがって、各税務署ではなるべく裁断回数を少なくするよう調整を図っている。
【委員会の審議結果】  
 全体的に一者応札の案件は限定されてきており、各部局が解消に向けて努力した成果が現れていると当委員会は評価している。
 ただし、一者応札が依然として特定の役務提供案件に多く残っていることから、競争性を高める努力を継続することが重要である。
 また、人件費がコストの大部分を占める役務提供案件の一部に過当競争が生じているのが見受けられ、談合の発生が危惧されることから応札状況を注視する必要がある。
 本日の審議案件については、4件とも法令を順守し、適正な手続で調達が行われたことを確認できた。
 それでは、委員会として審議・検討した結果を報告させていただく。
 
 第1事案の福岡合同庁舎清掃業務については、応札金額の上下に相当の開差が見られ、落札金額に近い価格帯では応札金額の差が小さく競争性が確保されている反面、応札価格自体にかなりのバラつきがある点で応札状況にやや不自然さを感じる。
 清掃業務は、官公庁以外にも民間企業が発注するビル清掃等の仕事があり、業者間で仕事を分け合っているようなことがないか、他の官公庁の入札状況等と比較検討するなど注意が必要である。
 
 第2事案の大分税関支署監視艇用燃料油(軽油)の購入については、関係法令の制限が厳しいなど軽油調達の特殊性から一者応札となった背景は理解できたが、前年度は競争が成立していたことから、例えば来年度は早期に入札公告を実施することが解消の一手法となるのではないか。
 また、一者応札が入札参加者に知れると最初に高めに応札して徐々に下げて予定価格ギリギリで落札することが考えられるため、再度入札においても一者応札であることが分からないような入札執行方法を検討してはどうか。
 
 第3事案の通関事務総合データ通信システム(税関LAN)運用支援業務については、長崎税関の説明からも一者応札となる必然性はあまりないのではないかと考える。
 また、門司税関が長崎税関と同じメーカーのシステムを利用し、かつ、長崎税関と同じ落札業者と運用支援契約を締結しているにも関わらず、門司税関の入札では競争が成立して落札率が低いことを考えると、一者応札ゆえに割高な契約となっていることが懸念される。
 長崎税関においては競争性を確保するため様々な方策を検討実施すべきであり、門司税関においては排他的な価格設定となっていないか注視する必要がある。
 
 第4事案のシュレッダー車によるごみの裁断リサイクル業務については、長崎ブロックと他ブロックとで落札金額の差が移動にかかるコスト等の差以上に大きく、一者応札ゆえに割高な契約となっていることが懸念される。
 平成21年度は競争が成立していたとのことであるから、他の類似する方法で処理ができないか、競争可能な仕様条件が作れないか等、情報収集に努めて工夫・検討を行っていただきたい。