別紙1-1

1  事前照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び事前照会者の求める見解の内容)

 適格退職年金制度から企業型確定拠出年金制度へ移行した月に60歳に達する従業員については、確定拠出年金法上の資格得喪者に該当するため、確定拠出年金の加入者となることができません。
 このような資格得喪者に対して支払われる適格退職年金の解除一時金は、その一時金の支払いがあったときから相当期間経過後に退職の事実が生じた場合であっても、所得税法上、退職所得として扱って差し支えないか伺います。

別紙1-2

2  事前照会に係る取引等の事実関係(取引等関係者の名称、取引等における権利・義務関係等)

 当社は、適格退職年金契約による退職給付を実施しておりますが、平成21年4月1日に適格退職年金を廃止して企業型確定拠出年金制度に移行することとし、適格退職年金契約における加入者は全員が確定拠出年金の加入者となる予定です。しかし、確定拠出年金法では、制度を導入した月に60歳に達する従業員は、確定拠出年金加入者となることができず、本来であれば企業型確定拠出年金の個人別管理資産として移換される額が、解除一時金として資格得喪者に支払われることとなります。
 この場合の解除一時金について、制度移行日と従業員の退職が同月に発生する場合は、退職所得として取り扱って差し支えないものと理解しておりますが、当社の就業規則における定年は、従業員が60歳に達した後、最初に到来する3月末日であり、平成21年4月に60歳を迎える従業員については、退職という事象が発生するまでに11ヶ月間の間が空くこととなります。

別紙1-3

3 2の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由(具体的な根拠となる事例、裁判例、学説及び既に公表されている弁護士、税理士、公認会計士等の見解を含む。)

 適格退職年金から確定拠出年金制度に制度移行する場合、適格退職年金契約の全部又は一部を解除したことにより返還される金額は、企業型確定拠出年金の個人別管理資産への資産移換が認められています(確定拠出年金法第54条、法人税法施行令附則第16条第1項第9号へ)。
一方、加入者資格を取得した月(企業型確定拠出年金の導入月)にその資格を喪失した者(60歳に達したとき)は、その資格を取得した日にさかのぼって企業型年金加入者でなかったものとみなされるため、確定拠出年金制度の加入者となることができず(確定拠出年金法第11条第6号、同第12条)、移換資産は適格退職年金契約の解除一時金として、支給されることになります。
 ところで、適格退職年金契約に基づき支給される一時金であって、退職により支払われるものは「みなし退職所得」とされます(所得税法第31条第3号及び所得税法施行令第72条第2項第4号)。しかし、適格退職年金契約の解除一時金のように、契約関係の終了のみで、何ら従業員の勤務形態又は身分関係に変更がない状況で支払われる一時金は「退職により支払われるもの」と解することはできません。
 しかしながら、適格退職年金契約の解除一時金が確定拠出年金制度の資格得喪者に支払われる場合には、次に掲げる理由から、「退職所得」として取り扱うことが相当と考えます。

  • ・ 解除一時金の受給者は、確定拠出年金法上の資格得喪者に該当し、従業員の意思によるものではないこと。
  • ・ 解除一時金の受給者は、確定拠出年金制度の制度移行日の属する月に60歳に達する者であり、かつ、就業規則に基づき退職する者であること。
  • ・ 資格得喪者に支払われる解除一時金は、引き続き勤務する者に対して支払われる打切支給の退職金ではなく、退職予定者の過去の勤務に基づく対価として考えられること。

※ 「退職給付制度の改廃等をめぐる税務」日高大開・著 財団法人大蔵財務協会・発行(平成17年6月)375ページに記載されている事例を参照