別紙1

1 事前照会に係る取引等の事実関係

  • (1) 弊社は、X県Y市の自社所有地に建設していた工場において農薬の製造を行っていましたが、20年以上前に同事業を廃止して以降、その工場跡地(以下「工場跡地」といいます。)の一部を賃貸することによって収入を得ておりました。
  • (2) 平成19年○月に、工場跡地に隣接する工事現場において、その土壌から基準値を超えるダイオキシン及び農薬類が検出され、その後の調査において工場跡地の土壌及び地下水も汚染されていることが確認されました。
  • (3) 弊社は、工場跡地の汚染土壌対策について、弊社の100%親会社の協力の下で、X県及びY市との協議を重ね、地元住民で構成する対策委員会(以下「対策委員会」といいます。)との間で「工場跡地の土壌・地下水汚染対策に関する覚書」を締結し、工場跡地に対して次の対策を実施することになりました。
  • (4) 本件の対策は、平成21年○月から平成33年○月までに、おおむね次のとおり実施することを予定しており、その所要金額は約○○億円を見込んでおります。
    • 1 工場跡地と隣地との境界に遮水壁を埋設して工場跡地を囲い込み、地下水の隣地への流出を防止します。
    • 2 遮水壁で囲い込んだ地中の第一不透水層(底面)のうち、層が薄く遮断性が劣る部分があった場合は、当該部分を遮水材料で補修します。
    • 3 工場跡地の汚染土壌(ダイオキシン類の濃度が○,○○○pg-TEQ/g超過、農薬類の濃度(溶出量)が○mg/L超過の土壌)を掘削除去します。
    • 4 汚染土壌を工場跡地に賃借により設置する簡易倉庫へ一時保管し、随時焼却処分を実施します(焼却処分終了後、簡易倉庫は撤去します。)。
    • 5 汚染土壌の掘削後、工場跡地の表層から50cmまでの土壌を掘削し、50cm以深を掘削した部分に焼却対象外の土壌を埋め戻した上で、良質土を用いて現地盤面まで覆土を実施します。
    • 6 汚染土壌の掘削及び覆土が終わった箇所を選択し、地下水の浄化設備を設置し、地下水の浄化を実施します(浄化設備は、遮水壁設置及び汚染土壌の掘削工事に併行して設置されます。また、浄化措置の終了が確認できた後は、浄化設備は撤去します。)。
    • 7 上記5までの工程が終了しても、周辺への汚染拡大の可能性が完全に消えるわけではないため、アスファルト舗装により工場跡地を覆い、汚染土壌の掘削工事が終了します。(6の地下水の浄化は、浄化措置の終了が確認されるまで継続されます。)
      (注) 汚染土壌対策の終了後において、1の遮水壁を掘り出すことなく、6のアスファルト舗装に劣化が生ずれば速やかに修繕する等、弊社は汚染土壌対策の終了時点の状態を保つよう工場跡地の管理を将来にわたって行っていく予定です。

2 事前照会の趣旨

弊社においては、法人税法上、汚染土壌対策に要する費用(約○○億円)のうち次に掲げるものについては、それぞれ次のとおり取り扱って差し支えないかお伺いいたします。

  • (1) 工事等に要する費用
     遮水壁の埋設、汚染土壌の掘削除去、地盤補修、良質土による埋戻し及びアスファルト舗装に要する費用(以下「工事等に要する費用」といいます。)については、修繕費に該当し、それぞれの工事の完了した日の属する弊社の事業年度において損金の額に算入します。
  • (2) 焼却に要する費用
     汚染土壌に係る焼却処分の委託に要する費用(以下「焼却に要する費用」といいます。)については、修繕費に該当し、弊社の事業年度の期間中において受けた焼却処分という役務の提供に応じた委託費を、当該事業年度において損金の額に算入します。
  • (3) 汚染土壌対策中の維持管理費等として要する費用
     汚染土壌対策中に生ずる簡易倉庫の賃借料並びに浄化設備の稼動、汚染土壌の一時保管に要する水道光熱費、人件費及び委託費その他の一般管理費(減価償却費を除きます。)として要する費用(以下「維持管理費等として要する費用」といいます。)については、法人税基本通達2−2−12(債務の確定の判定)に沿って、弊社の事業年度終了の日までに債務が確定しているものを当該事業年度において損金の額に算入します。
  • (4) 浄化設備の取得・設置に要する費用
     浄化設備の取得及び設置に要する費用(以下「浄化設備の取得費用」といいます。)については、減価償却資産の取得費用に該当し、減価償却の対象資産として資産計上します。

なお、上記(1)から(4)までに区分して掲げた汚染土壌対策に要する費用は、現時点において予定している必要な費用について記載したものですが、汚染土壌対策という性格上、今後の進行過程において追加対策が必要となることも考えられ、これに要する費用が生じた場合には上記(1)から(4)までに区分して掲げた汚染土壌対策に要する費用に準じて取り扱うことを予定しております。

3 事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由

  • (1) 工事等に要する費用について
     法人がその有する固定資産について支出する金額のうち次に掲げるものについては、資本的支出に該当し、減価償却資産とされることになります(法令132、551)。
    • 1 その支出のうち当該固定資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額
    • 2 その支出のうち当該固定資産の価額を増加させる部分に対応する金額
    本件の工事等に要する費用のうち、汚染土壌の掘削除去及び良質土による埋戻しに要する費用については、工場跡地を土壌が汚染する前の状態に回復するために要するものであり、上記1及び2のいずれの部分も存しないことから修繕費に該当し、それぞれの工事の完了した日の属する弊社の事業年度において損金の額に算入して差し支えないものと考えております。
     また、遮水壁の埋設及びアスファルト舗装に要する費用については、「防壁」及び「舗装道路」という新たな構築物を取得したようにもみえますが、被害拡大を予防する観点から設置したものであり、いずれも汚染対策終了後も埋設(敷設)した状態を維持するものであること、上記1及び2のいずれの部分も存しないことから修繕費に該当し、それぞれの工事の完了した日の属する弊社の事業年度において損金の額に算入して差し支えないものと考えております。
     また、法人税基本通達において、地盤沈下や被災した場合につき次のような取扱いが明らかにされており、工事等に要する費用については、これらの場合には該当しないものの汚染土壌対策であることからすれば、これらの取扱いに準じて修繕費として取り扱って差し支えないものと考えております。
    • 1 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額は、土地の取得後直ちに地盛りを行った場合等を除き、修繕費に該当する(法人税基本通達7−8−2(修繕費に含まれる費用)の(3))。
    • 2 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用について、法人が、修繕費とする経理をしているときは、これを認める(法人税基本通達7−8−6(災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例)の(2))。
  • (2) 焼却に要する費用について
     本件の焼却に要する費用については、汚染土壌の処分のために要するものであり、特に資産計上の必要性について疑義が生ずるものではありませんから、焼却処分という役務の提供に応じて損金の額に算入して差し支えないものと考えております。
  • (3) 維持管理費等として要する費用について
     本件の維持管理費等として要する費用については、汚染土壌対策中の簡易倉庫に係る賃借料のほか、浄化設備の稼動に要するものや汚染土壌の一時保管をするための倉庫の維持・管理等に要するものであり、焼却に要する費用と同様に、特に資産計上の必要性について疑義が生ずるものではありませんから、一般の費用の例により、弊社の事業年度終了の日までに債務が確定しているものを当該事業年度において損金の額に算入して差し支えないと考えております。
     なお、事業年度終了の時において債務が確定しているものかどうかは、法人税基本通達2−2−12(債務の確定の判定)の取扱いに沿って判定することといたします。
    (注) 上記の見解は、簡易倉庫の賃借契約が法人税法第64条の2第1項(リース取引に係る所得の金額の計算)の規定により、賃貸人から賃借人への引渡しの時に資産の売買があったものとされるリース取引に該当しないことを前提としています。
  • (4) 浄化設備の取得費用について
     本件の浄化設備の取得費用についても、汚染土壌対策として実施するものであることから、上記(1)から(3)までの費用と同様に役務提供の完了日等に損金の額に算入することも考えられますが、土地と一体化しており汚染土壌対策終了時のみならず将来にわたって処分することができない(1)の遮水壁及びアスファルト舗装とは異なり、汚染土壌対策終了時に処分(除却、転用又は売却)することができるものであることからすれば、浄化設備の取得費用については、減価償却資産の取得費用に該当し、減価償却の対象資産として資産計上することが相当と考えています。