新型コロナウイルス感染症の影響により、我が国の国民生活や経済活動は大変大きな影響を受けました。このような前例のない状況下においても、国税庁では「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」という使命を果たしていく必要があります。
 そのためにも、引き続き、納税者の利便性の向上に取り組むとともに、課税・徴収の高度化・効率化を図りつつ、適正・公平な課税・徴収の実現に努めていきたいと考えています。
 経済社会のデジタル化が急速に進展する中、そのような取組を進める上では、データやデジタル技術を活用することが重要です。こうした観点も踏まえ、令和3(2021)年6月に公表した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション−税務行政の将来像2.0−」では、「デジタルを活用した国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直し」に取り組んでいく方針を明確にするとともに、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」に向けた構想を示しました。また、同年12月には、「税務行政DX〜構想の実現に向けた工程表〜」を公表し、納税者の利便性の向上や課税・徴収の高度化・効率化に向けた取組を着実に進めているところです。
 具体的には、例えば、令和4(2022)年1月から所得税の確定申告において、スマートフォンのカメラを利用して給与の源泉徴収票を読み取ることができるようになりました。また、マイナポータル連携(マイナポータル経由でデータを取得して申告書へ自動入力する機能)を利用することのできるデータの拡大にも取り組んでいます。
 引き続き、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」の実現を目指し、利便性の向上に取り組んでいきたいと考えています。e-Taxやキャッシュレス納付は、ますます便利になっていきますので、申告や納付の際には、ぜひ、御利用いただきたいと思います。

 また、納税者の皆様に税制についてご理解いただくためには、必要な情報を適時に提供していくことが重要であると考えています。

 令和5(2023)年10月から実施されるインボイス制度につきましては、昨年10月から適格請求書発行事業者の登録申請の受付が開始されました。
 インボイス制度の円滑な実施に向けては、事業者の皆様に制度の理解を深めていただいた上で、それぞれの事業の実態に応じた対応や準備を進めていただく必要があります。このため、国税庁ホームページの「インボイス制度特設サイト」に、制度を解説した動画、各種パンフレットやQ&Aを掲載しているほか、オンライン説明会の開催や事業者向けの説明会への講師派遣などを行っています。

 適正・公平な課税・徴収の実現への取組の面では、納税者の権利・利益の保護を図りつつ、適正な申告・納税を行った納税者が不公平感を抱くことのないよう、悪質な納税者に対しては組織を挙げて厳正な対応を行っています。
 また、社会全体のデジタル化の推進に伴う、経済取引環境の絶え間ない変化に的確に対応するために、様々なデータを分析・活用し、課税・徴収の効率化・高度化に取り組んでいます。

 国税庁に課された使命を今後とも着実に果たしていくために、将来の経済社会の変化に適切に対応しながら、デジタル化の利点を生かした業務改革(BPR)に取り組み、絶えず進化し続けてまいりたいと考えています。
 この「国税庁レポート2022」が税務行政に対する皆様の御理解を深める一助になれば幸いです。

令和4(2022)年6月

国税庁長官 大鹿 行宏