日本のお酒を通じて日本の魅力を世界へ

1 酒類の輸出状況

 酒類の国内消費は、飲酒人口の減少、高齢化の影響などにより減少傾向にありますが、その一方で、海外での日本食ブームなどにより日本産酒類の輸出金額は近年増加傾向にあり、平成24年には過去最高の実績(約207億円)となっています。輸出金額の約半分(約89億円)は清酒であり、大手のみならず全国各地の中小の製造業者の方々も輸出をしています。

清酒の輸出金額の推移のグラフ

2 輸出環境整備に関する取組

 日本産酒類の輸出拡大は、酒類業界の発展はもちろん、農業、食品、酒器などの関連産業への波及や、日本の伝統文化の海外発信、酒蔵を中心とした観光の振興などを通じた地域経済の活性化ひいては、日本経済の成長に繋がることが期待されます。このような観点から、日本産酒類の輸出環境整備は、日本の魅力を海外に発信することにより日本のブランド価値を高めるという「クールジャパン戦略」の一環としても位置づけられています。このような認識の下、平成25年3月に関係府省による「日本産酒類の輸出促進連絡会議」が設置され、各府省が連携した取組を進めています。国税庁では、以下のような取組を行っています。

(1) 貿易障壁の撤廃・緩和に向けた取組

 国税庁では、輸出先国の規制・制度が輸出の障壁となっている場合には、経済連携協定(EPA)のための政府間交渉や世界貿易機関(WTO)の枠組などを活用しながら、貿易障壁の除去に向けた取組を行っています。
 また、東日本大震災における福島第一原子力発電所の事故に伴い、輸出先国によっては、特定の都県産の酒類に対する輸入禁止や証明書の添付義務といった輸入規制を実施しています。国税庁では、外務省等と連携して外国政府に規制の解除・緩和を働きかけており、その際に独立行政法人酒類総合研究所と連携して実施した放射能分析の結果や研究結果を科学的な資料として活用しています。その結果、例えばEUにおいては、平成24年10月に酒類に対する規制が全面解除されました。

(2) 日本産酒類の海外への発信に向けた取組

 日本産酒類の魅力を効果的に海外に発信できるように国税庁では国内外で様々な機会を捉え、次のような取組を行っています。
 海外での日本産酒類に対する認知度を高めるため、海外で実施される国際会議などのイベント(例えば、平成25年5月の在ロシア大使館における日本食・食文化の世界的普及プロジェクトなど)で、関係業界団体の協力を得ながら、日本産酒類の提供支援を行うほか、国税庁職員を派遣し日本産酒類のPRを行っています。
 更に、在外公館は海外における重要な日本の窓口であることから、外務省で実施される赴任予定大使等への研修の一環で行われる日本酒に関する研修に、国税庁職員を講師として派遣しています。

(3) 地域における取組

 中央官庁のみならず、各地域においても、酒類業者の方々が円滑に輸出できるよう、各国税局が各府省の地方支分部局、地方自治体、日本貿易振興機構(JETRO)などとの連携を深め、輸出に関する情報を共有し、関係業界団体のニーズを踏まえながら輸出に関するセミナーを実施するなど、輸出環境整備に向けた取組を行っています。