日時: 平成20年3月19日 13:01〜13:33

場所: 国税庁第一会議室

出席者:

国税審査分科会委員   水野分科会長   さき分科会長代理
井堀委員 さき委員
こう津委員 田中委員
浜委員  
池田臨時委員    
国税庁 牧野国税庁長官
佐々木国税庁次長
井阪審議官
西村審議官
荒井課税部長
秦徴収部長
杉江調査査察部長
藤田総務課長
国税不服審判所 井上国税不服審判所長
若狭国税不服審判所次長
分科会長
 それでは、定刻になりましたので、第6回国税審査分科会を始めさせていただきます。
 今日はこの後、国税審議会の本会もございますので、スムーズに進めさせていただきたいと思います。
 本日は、8名の委員及び臨時委員の方々に御出席いただいておりますので、国税審議会令第8条第1項及び第3項の規定に基づき、本分科会は有効に成立しているということでございます。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 なお、角田委員、それからたか橋委員につきましては、御都合によって御欠席ということでございます。
 まず、国税審査分科会の委員の任命に関する御報告ということですが、既に文書ではお知らせしているということですが、日本税理士会連合会の森会長が臨時委員として出ておられましたが、昨年11月1日付で交替されまして、後任として新たに日本税理士会連合会会長の池田様に国税審議会の臨時委員になっていただいたということでございます。担当は国税審査分科会ということで、お願いしております。よろしくお願いいたします。
池田委員
 池田でございます。よろしくお願いいたします。
分科会長
 それでは、議事の方に入らせていただきます。
 本日は、法定審議事項はございませんが、国税審査分科会議事規則によりまして、国税不服審判所の裁決の事例研究を行うということでございます。議事次第の中に議題として出ておりますけれども、国税不服審判所の概要、それから最近の裁決事例、これについて事務局から御報告をいただいて審議を行いたいと思います。
 それでは、事務局から御説明をお願いできますでしょうか。
審判所次長
 国税不服審判所次長の若狭でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、審判所の運営に対する日頃の皆様方の御協力に対しまして、この機会をお借りいたしまして厚く御礼を申し上げます。
 それでは、まず国税不服審判所の概要につきまして、簡単に御説明をいたします。
 昨年も御説明を申し上げておりますが、改めて簡単に御説明させていただきます。
 お手元の資料1、国税不服審判所の概要を御覧いただきたいと思います。
 この資料の一番最初にあるとおりでございますが、国税不服審判所は、国税庁の特別の機関として設置されているものでございまして、国税庁長官の持つ権限のうちから、国税に関する法律に基づく処分についての審査請求に関する裁決権を分離して、その裁決権を国税不服審判所長に与えて、国税局あるいは税務署といった執行権を行使する機関から独立した第三者的立場を有する機関ということでございます。
 目的といたしましては、審査請求人の正当な権利利益の救済を図る。それから、税務行政の適切な運営を確保するということでございます。
 特色といたしましては、審査請求人と原処分庁の双方の主張を十分に把握して、争いとなっている点を主な審理事項として裁決を行う、争点主義的運営を行うということでございます。
 また、2つ目、3名以上の審判官等で合議体を構成して、その議決に基づいて裁決をするということで公正性の確保を図っております。
 また、争点に関する事実につきましては、審判所自らが職権で調査する権限を有しております。
 また、ニのところでございますが、国税庁長官通達に示された法令解釈に拘束されることなく、裁決を行うことができることとされております。
 また、最後ホでございますが、裁決は関係行政庁を拘束する行政部内の最終判断、すなわち請求人の方は裁決に不服があれば裁判で争うことができますが、行政庁側は裁決の内容を不服として裁判で争うことはできないということになっております。
 以上のところが位置付け等でございます。
 次に現状でございます。
 体制といたしましては、本部、そして各国税局の所在地と大体一致しておりますが、12の支部、それからちょっと離れたところには7つの支所を置いて、全国で定員が477名ということでございます。
 国税不服審判所長の下に、国税審判官、国税副審判官、国税審査官等から構成されております。
 なお、私の隣におります国税不服審判所長の井上、あるいは東京、大阪の首席国税審判官、それぞれの支部のトップでございますが、この3名には裁判官あるいは検察官といった法曹出身者を任命しております。
 ロのところでございますが、平成19年7月より、任期付職員を4名採用しております。弁護士、税理士等の民間の専門家の方を対象に公募を実施いたしまして、昨年7月から結果として、4名とも税理士の方だったのですが、採用しております。
 今年も、昨年に引き続きまして公募を実施しておりまして、この7月の採用に向けて、今、作業を進めているところでございます。
 最近の審査請求の状況でございますが、一番右側の欄に、18会計年度の数字がございます。発生が2,504件、処理が2,945件、年度末の未済件数が1,794件ということでございます。
 できるだけ早期に処理するということに努めております。未済件数、左の方からの数字を見ていただくとお分かりになると思いますけれども、徐々に、今のところ残高を減らすことができているという状況でございます。
 当面の事務運営の目標でございますが、スローガンといたしまして、「公正な第三者的機関として、審判所事務運営を機動的、効率的に行い、適正・迅速な裁決の実現を図る。」ということを掲げております。
 そして、具体的目標として、123ということで、原則1年以内の処理、充実した調査・審理に基づく適正な裁決、簡潔、明瞭な裁決書の作成ということをやっております。
 特に1つ目の原則1年以内の処理ということに対しましては、国税庁の実績評価の業績指標としても掲げております。一番下にその数字がございますが、80%以上を1年以内に処理するということを掲げており、19年度、もうじき終わるところでございますが、4年連続の目標達成を目指して、今、一生懸命やっているところでございます。
 それから、資料にはございませんが、現在、行政不服審査制度につきまして、その検討が行われており、若干動きがございます。
 昨年7月、総務副大臣の主催による、行政不服審査制度検討会の最終報告が公表されました。この中には、行政不服審査法の改正に盛り込まれるべき内容の骨子、及びその趣旨について明らかにされております。現在、総務省を中心といたしまして、行政不服審査法の改正作業が進められておりまして、この通常国会に法案が提出される予定と聞いております。
 この行政不服審査法は、不服審査制度の一般法でございます。片や、私どもが取り扱っております国税に係る処分に対する不服申立てにつきましては、税の特殊性ということもございまして、個別法であります国税通則法にほぼ自己完結的な規定が置かれております。しかしながら、最終報告には「一般法の見直しの趣旨を踏まえ、改正行政不服審査法の規定を適用するか、あるいは個別法において改正行政不服審査法と同等、またはそれ以上の水準の内容とする旨の改正作業が必要となる」と明記されておりまして、例えば不服申立期間を2か月から3か月に延長するとか、請求人の証拠書類の閲覧請求の対象の範囲を拡大するといったことが最終報告に盛り込まれておりますので、こういった権利保護規定の拡充を中心に国税通則法も改正される可能性がございまして、この国税通則法を改正する法律につきましても、今通常国会に提出される予定と聞いております。
 大体2年後ぐらいの適用になるのではないかと予想されておりますけれども、審判所といたしましても、運用面について十分な検討と準備を行う必要がございます。私どもとしてもしっかり対応していきたいと思っております。
 それでは、概要は以上ということで、続きまして最近の裁決事例を幾つか御紹介させていただきたいと思います。
 お手元の資料2でございます。
 私ども国税不服審判所の裁決の中から、今後の先例となるような事例、あるいは類似の案件の参考となるような事例につきまして、裁決の公表をしてきているところでございます。その中から最近のもので、若干目新しいものといいますか、四つほどピックアップさせていただきました。できるだけ簡潔に御説明したいとは思いますが、もとが複雑なことでございますので、ちょっと分かりにくいところがあるかもしれません。ご不明の点がございましたら、その場でも結構でございますので、おっしゃっていただければ御説明いたします。
 それでは、まず1点目が所得税の所得控除の事例でございます。
 具体的には事実婚、実際に法律上の結婚をしていたわけではなくて、事実婚をして、その後離婚をした、その場合に、寡婦控除が適用されるかどうかということが争われた事例でございます。
 寡婦控除と申しますのは、住民税、所得税の所得控除の一種でございまして、納税者御自身が寡婦、夫の方の寡夫も含めまして、扶養の制限あるいは所得の制限とかございますけれども、その場合に所得税で27万円、住民税で26万円の控除が認められるというものでございます。
 請求人は、先ほど申し上げたとおり、戸籍法上婚姻はしていないが、事実婚をして離婚をした、また、母子及び寡婦福祉法あるいは生活保護法には事実婚を認める規定もあるということで、寡婦控除は認められるべきであるという請求をしてきたものでございます。
 原処分庁の主張は省略いたしまして、これに対し審判所といたしましては、1ページの下の方から4行目の終わりぐらいのあたりでございますが、「夫」の意義については、所得税法及び租税特別措置法において格別の定義規定が設けられていないことからすれば、身分法の基本法たる民法が定める婚姻関係にある男子を意味するものと解するのが相当であるという理由で棄却をしたものでございます。
 先ほど申しました母子法及び寡婦福祉法の方につきましては、実はこれははっきりと法律の方に、括弧書きでございますが、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあるものを含むと明記されているものでございまして、これは法律の内容に応じて定められたもので、これがあるから、こういった定めがある法律があるからといって所得税法も同様に扱わねばならないというものではないという判断をしております。
 1点目はそういった事例でございます。
 2点目、法人税の移転価格課税において、利益分割法により算定した更正処分、これを適法であるとした事例でございます。
 若干複雑ですので、イメージを持っていただくために、5ページにイメージ図でございますが、用意してございます。
 まず、移転価格課税につきまして御説明させていただきます。この矢印の表のところは、さっと見ていただければと思いますが、真ん中の四角の一番上のところに、左側に国外関連者、右側に審査請求人と書いてありますが、このラインのところで、国外関連者、多分、親子関係であろうかと思いますが、説明がしやすいものですから、左を子会社、右側を親会社と申しますが、子会社が原材料を仕入れてきて作って、それを親会社に売る。このときに国境を越えておりますので輸入する、それで、親会社が顧客に販売をしているという事例でございます。
 この場合に、子会社と親会社の間で売買が行われているわけですから、ここの価格は、お互いが一体である場合には、幾らに設定をしても構わないといいますか、実際には幾らでやっても本人同士については余り関係がないということです。
 この場合、高く設定をすれば、左側の子会社が儲かって、右側が損をする。低く設定をすると、右側がたくさん儲かるという事例でございます。こうやって、そういったことが全く自由に行われますと、例えば国外と国内で税率が違うといったようなことがあった場合、全体として負担する税金を操作することができることになります。これを防ぐために設けられておりますのが移転価格税制ということで、もしもこの両者に親子関係がなかったとすれば、幾らで取引すべきであったであろうか、その値段で利益を調整したものとして、それを課税標準とするというのが、移転価格課税でございます。
 そして、この場合に利用いたしました、利益分割法の方の御説明に入らせていただきますが、上の方に、ここの場合は、この図では比較対象取引なしと書いてございますが、例えばこの左側の子会社が、親会社だけではなく、他の人にも売っておればその値段が参考になるであろう。あるいは逆に、親会社が、子会社だけではなくて、他の者からも同じものを買っておればこれが参考になるだろう。あるいは他人同士で同じものが売買されていれば、そういったものが参考になり、そういう場合には、単純にその価格で取引されたものとして調整をすればいいのですが、このケースの場合、非常に特殊なものを扱っておりまして、残念ながら、この比較の対象の取引となるものがなかった、あるいは、原価にマージンを乗せてみるとか、そういったこともやりづらかったということで、結局、この両者を一体として見たときに得られた利益、これにどちらがどれだけ寄与したかというので判断しようではないかと。
 この場合に、このケースの場合ですと、費用で分割しておりますが、一番下の、箱の中の下のところの枠の中に、所得60(e)、そして費用の額120(f)というところがございます。要するに、この親子で一体として、結果として60の利益を上げております。そのときに、両方で使った費用の額は120でございます。その右肩、左肩にある四角がそれぞれ子会社、親会社の方で、この請求人の方がどういうふうに分配してきたかという数字でございますが、請求人の方は、国外の子会社が40の費用を出した。それで、60のうち40をとった。それから右側の国内の親会社の方は、80の費用を出した。そして、利益のうちの20をとったという、こういう申告をしていたわけでございます。
 原処分庁は、この所得60を稼ぐに至ったその寄与度というのを、この費用の面に注目いたしまして、親が80、子が40の割合でございましたので、この割合で利益を配分すべきであったということで、その割合でいきますと、今度は逆に左が20、右が40ということになります。結果として、右側の親会社から20分だけ子会社に利益を動かしているということで、この20について、親会社に対して課税をしたという事例でございます。
 全体のイメージとしてはそういうこと、そういった取引でございますが、ちょっともとに戻っていただきまして、実は請求人は、例えばそこのところをストレートに不満であると言ってきているわけではございませんで、実は複数の商品を扱っておりまして、複数の取引がある。その一つ一つの取引を見ると、損が出ているものもあると。それで、租税特別措置法関係通達に書いてある利益分割法の分割対象は営業利益と書いてあるのに、営業損失も分割しているのはおかしい、そういう主張をされたわけでございます。根っこからこの利益分割法の採用を崩すための主張と思われますが、営業損失を営業利益に含めているのはおかしいという主張でございました。
 これに対して、原処分庁の主張といたしましては、企業会計原則を見ますと、企業会計原則の第二、損益計算書原則の三の営業利益のFのところに、こちらには営業利益に営業損失が含まれると書いておりますが、その企業会計原則自体は、営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費を控除して表示すると書いてあるだけでございまして、プラスマイナスということは一切書いてありません。営業損失という項目もないわけでございます。そういうことから営業利益に営業損失も含まれているのだというのが主張でございます。
 結果として、審判所としてどういった判断をしたかということでございますが、この租税特別措置法関係通達で営業利益と書いてあるのは、分割対象は、売上総利益や当期純利益といったほかの利益を使うのではなくて、3ページ目の下の5行目ぐらいのところでございますが、事業活動の直接の結果を示す営業利益を用いることが合理的であることを明らかにしたものであって、営業損失を分割の対象から排除すべきか否かについて直接言及したものではないということです。営業利益という言葉を使ったのは、営業損失と比較、対比するために使ったのではなく、売上総利益、当期純利益と区別して使うために使ったものであるということで、実際には当該取引に係る損益の総和をもって分配するのが適当、相当であるということで棄却をしたという事例でございます。
 実際に、まさに利益だけではなくて、損失の付替えでも全体の税額の調整はできますので、そういった考えに基づくものでございます。
 続きまして、3点目でございます。今度は全く話が変わりまして、死因贈与による財産取得に当たるかどうか。これは具体的な個別のケースでございますが、この契約が死因贈与なのか、それとも通常の贈与なのかということでございます。
 相続税法におきましては、死因贈与の場合にはすべて相続税の課税対象として贈与税の課税対象としないということとなっております。死因贈与ということになれば相続税であり、死因贈与でない、ただの贈与だということになれば贈与税になる、こういった争いでございます。
 このケースでは、贈与証明書となっていますが、この契約書は8ページに実際のものがございます。
 一番最初に、「Bの」、Bはもらった人なのですけれども、「会社での誠実な勤務及び親族にかわる献身的な私への介護に対する感謝の気持ちとして、B母子の今後の安泰な生活を願い、金5,000万円を贈与します。但し、節税のため、以下の方法で贈与します。」ということで、1のところに「本日、」合わせて「3,000万円を、・・・贈与」します、それから、2のところに「来年1月1日をもって、Bに2,000万円贈与」します、問題は、この3のところでございますが、2で書いてありました、「来年の贈与分について、年明けまでに万が一私が死亡したときは、前記保管口座の元利金は・・・Bに贈与したものとする。」ここのところが、死因贈与になるかどうかというところでございました。実際に、このケースでは年明けまでに亡くなっていらっしゃいます。
 その場合ということでございますが、これが死因贈与なのか、それとも単なる贈与なのかということで、原処分庁は、これは死因贈与であるということで、相続税に取り込んだところで課税の処分をいたしました。
 しかしながら、審判所の判断は、6ページの審判所の判断のところの4行目のところでございますが、Aが死亡しなくてもBは贈与を受けることができるのであり、下から5行目のところでございますが、年明けまでにAが死亡した場合に、滞りなく贈与が実行されるよう翌年1月1日の履行時期を待たずしてその履行を早める旨を定めたもので、単に贈与の履行時期の特約に過ぎないものと認められ、まさに「死んだら贈与する、死ななければ贈与しない」という性質のものではないということで、請求人の主張を認めまして、これは死因贈与ではなく、ただの贈与であるということで、原処分庁の相続税としての課税処分を取り消したものでございます。
 3点目は以上でございます。
 最後に4点目でございます。これはインセンティブ報酬の課税につきまして、その課税の時期、あるいは所得の種類としては何の所得になるのかということを判断したものでございます。
 これはアワードといわれるものでございますが、一定期間を経た後に自社株、あるいは自社株相当額の現金を受け取る、例えば「2年たったら株を受け取るという権利を与える」というものであります。これにつきまして、請求人は収入を計上するのは権利を得たときでもなく、株をもらったときでもなく、自分が売ったときである、そして、この所得が一時所得であるという主張をされたものでございます。
 審判所の判断は、実際にはこのアワードの契約が、例えば2年たった時に条件が満たされる、そのときに、もう既に株の権利を与え、いつでもその後は売れるようになり、そして、その後の配当を受ける権利も請求人に移転するということでありますので、要件を満たして、その株を取得した時点、このときが収入すべき時期であるという判断をいたしました。
 それから、この所得の種類につきましては、審判所の判断の後段になりますが、実際にこの権利を、結果としては請求人がA社の従業員であったからもらえた、その地位に基づいて得られた経済的利益で、そのA社の従業員としての職務を遂行したことに対する対価としての性質を有するということで、これは給与所得であると認定をした事例でございます。
 ちょっと長くなってしまいましたが、以上が私からの説明です。
分科会長
 ありがとうございました。ただいま御説明いただきました不服審判所の概要、それから裁決事例4件の御説明ですが、何か御質問がありましたら、どうぞ。
 井堀委員、どうぞ。
井堀委員
 一般的な質問なのですけれども、今日の事例ですと3の相続税のところだけ請求が認められて、あとは棄却ということだと思うんですけど、全体で約3,000件のうち請求人の主張が棄却されたケースはどの位あるのかということと、そのうちどの位の割合で実際に裁判まで行って、実際の裁判、請求人の主張が認められて、審判の判定がひっくり返ったケースというのはどの位あるのかという、その当たりの、細かい数字はいいのですけれども、大体のカウントはどの位になるのか。
審判所次長
 大体の感じで申し上げますと、棄却ではなく取消しを行ったものとして全部取り消す事例と、一部だけ取り消すという事例がありますが、それを合わせたところで、年によって大分幅があるんですけれど、2割弱、1割から2割ぐらいの数字。これも年によって、案件が全く違いますのでかなり動きはありますが、大体そんなイメージでございます。
井堀委員
 訴訟になる割合は。
審判所次長
 一部取消し、棄却、却下したもののうち1割から2割位が訴訟になってございます。また、その棄却等したものを母体といたしますと数%が裁判で負けているという、大体の感じです。いずれにしましても、年によって非常にばらつきがございます。
さき委員
 同じく、概要についてなのですが、先ほど、1年以内の裁決率の御説明がありました。直近4年間、80%以上の裁決率というのは大変すばらしい数字だと思っています。国際課税事案を典型にしまして、最近の訴えの内容というのはとても複雑で、かつ多様なものになってきていますから、そうした中で、80%以上の1年以内裁決率というのを維持するというのは非常に大変なことだろうと思っております。
 何か工夫をしておられるようなことがあれば教えていただきたいということと、それから最近において多くなっている種類の事案があれば、御教示ください。
審判所次長
 工夫ということでございますが、まずは効率よくやるということでございます。その中で特に、いろいろな税務署、請求人、双方の話を聞いて、争いとなっている対象のところで齟齬がありますと無駄に時間を食いますので、その争点を整理した争点整理表というのを作りまして、双方に交付するといったことによって、やり取りの無駄がないような、そういったような工夫もしておりますし、また審判官ともども一生懸命勉強しておることも事実でございます。
 最近増えている事案、これは年によって異なってきますが税目別で見ますと、徴収関係の事例が増えております。ちょっと原因については分かりませんが、ただ、数字として、結果として、税目別で見るとそういった数字が出ております。
 類型別には、推計課税というのがございまして、実際に帳簿とかがしっかりしていない、あるいは見せてもらえないという場合に、原処分庁が別のところから推計で課税を行う、税法上そういった仕組みがあるのですが、そういった事件はだんだん減ってきており、その推計の仕方などに関する事件は減ってきているということでございます。
 あとは、租税回避スキームというのですが、非常に難しく仕組んだ、判断の難しいもので、これは全体の件数の中でのウェートは低いのですけれども、増えてきているということでございます。
分科会長
 いろいろ御質問などもおありだと思いますが、次の国税審議会開会の時刻になりましたので、いろいろ御質問等、この会議の後、あるいは後日にでも機会を作っていただけるということですので、そのようにさせていただきたいと思いますが、若狭次長、それでよろしいでしょうか。
 では、委員の方もよろしくお願いいたします。
 最後にいわゆる情報の公開関係でございますけれども、この会議につきまして議事要旨、それから議事録という二つを公にすることになっておりますが、議事要旨は名前のとおり簡潔な内容のもの、こちらにつきましてまず公表して、あと議事録については後日公表ということでございますが、議事録の方はそれぞれの方の発言がありますので、事前に、発言した方には御発言内容に誤りがないか確認していただきたいと思いますが、議事要旨の方は私、分科会長の方に一任させていただいてよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

分科会長
 では、ありがとうございました。
 それでは、急ぎましたが、第6回の国税審査分科会を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――