総務課長
 続きまして、第5回国税審査分科会、第25回税理士分科会及び第6回酒類分科会の3分科会の合同会議を開催させていただきたいと思います。  なお、議事進行につきましては、3分科会を代表いたしまして辻山税理士分科会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

辻山税理士分科会長
 承知しました。それでは、これより税理士分科会長として議事を進めさせていただきます。
 お手元の議事次第の3番目に進ませていただきますが、3分科会合同会議ということでございます。議題の1でございますけれども、最近の税務行政の動向で(1)から(5)まで並んでおりますけれども、事務局から一通り御説明をいただいた後で、御質問又は御意見を伺いたいと思います。
 それでは、この資料の順番に従い事務局から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
 まず、課税部長からお願いします。

課税部長
 課税部長の岡本でございます。座って御説明をさせていただきます。
 最初の(1)の「平成18年分の確定申告に向けた取組」でございます。来週から、いよいよ所得税の確定申告が始まることになりました。そういった関係で、国税庁で考えております今年の取組などを、ここで御紹介をさせていただきたいと思います。
 まず、資料に沿いまして御説明をさせていただきます。資料2−1の1ページ目は、これまでの所得税の確定申告の件数の推移を10年ほど遡ってグラフにしたものでございます。御覧いただけますように、上の方の青い折れ線グラフがトータルの確定申告の件数で、直近の17年分では2,318万件提出がございました。10年間で120%、約400万件の増加ということになっております。
 それから、下の方の赤い折れ線グラフは、その内訳ですけれども、還付申告の件数ということでございます。昨年は1,196万件ということで、これも10 年間で139%、40%増ということで、全体の確定申告件数を上回る上昇、増加となっております。昨年の場合ですけれども、大体2,000万件強のうち 1,000万件、51.6%、ちょうど半分ぐらいが還付申告ということになっているわけです。
 1ページめくっていただきますと、今年の確定申告の施策について整理をしたものでございます。具体的には、この青い囲みにございますように、所得税については2月16日、来週の金曜日から3月15日木曜日まで1カ月間、確定申告の相談、申告書の受付をいたします。
 消費税については、もう既に、年明けの1月4日から始まっておりまして、3月末まで、今年の場合は曜日の関係がありますので、4月2日までということになっております。
 贈与税については、2月1日の木曜日から既に始まっておりまして、申告期限は、所得税と同じ3月15日ということになっております。
 下の方の菱形の黒い表示でしておりますが、申告相談・受付は、全国524ございます税務署で行っているわけですけれども、そのうち158の税務署では、納税者の方々にとって、より便利な所に会場を設定して、そこで確定申告の相談や申告書の受付を行っております。
 それから、駅や町の中心部などでは、例えば東京駅の丸の内口の地下の広場でも、昨日から始まっておりますけれども、早い時期から還付申告の受付を行っております。ぜひ、お近くに行かれた方は御覧になっていただければ、ないしは御利用いただければと思っております。
 それから、昨年も同様ですが、一部の税務署では2月18日の日曜日、25日の日曜日につきましては、確定申告の相談や受付を行うこととしております。
 これらについては、後のほうで具体的な場所について整理してございますので、御覧いただければと思います。  1枚めくっていただいて3ページ目ですけれども、最近は、私共のいろいろな情報を、国税庁のホームページで情報提供させていただいておりますけれども、そこに、今年も「確定申告書等作成コーナー」というものを設けております。このコーナーを活用していただけると簡単に確定申告書が作成できます。今年の場合は、1で書いておりますように、公的個人認証を取っていただいておりますと、直接e-Taxを通じて、オンラインで送信できるようになっております。もちろん、従来と同じように、この「作成コーナー」で作っていただいた確定申告書をプリントアウトしていただいて、添付書類とともに郵送していただくということももちろんできます。我々としては、なるべくe-Tax、電子申告を御利用いただけるようにお願いをしているところでございます。
 4ページは、確定申告期間中、税務署外の会場で納税相談、申告相談なり受付を行っている税務署を一覧にしたものでございます。
 5ページ目は、還付申告センター、先ほど申し上げました、例えば4番目の東京というところを御覧いただきますと、広域還付申告センター、そこに「JR東京駅 動輪の広場」と書いてございますが、ここなどは、昨日2月5日から2月16日までですけれども、10時から18時まで還付申告の受付を中心に既に対応をさせていただいております。そういったセンターが、全国各地の交通の便利なところに設営されております。
 7ページ目ですけれども、2月18日と25日の2回の日曜日にも会場の設営をし、受付を行う税務署等を一覧にしてございます。
 次に、8ページでございますけれども、「国税電子申告・納税システムの状況及び取組」ということでございまして、電子申告納税システム、e-Taxにつきましては、5年後の22年度には、納税者の方の各申告件数を合わせた50%、半分までをこのe-Tax利用にしていただこうという目標を掲げまして、今、全力を挙げて取組をしているところでございます。
 当面、18年度は2%という目標を掲げておりまして、そのために、なるべく使い勝手が良いものにしていきたいというふうに考えております。e-Taxを利用できる手続というのは、1にありますように、所得税、法人税、消費税、酒税、印紙税に係る申告と全税目の納税、それから各種の申請・届出手続等ということになっております。今年は特にe-Taxの受付時間について、通常期は朝の9時から夜の9時まで、土・日・祝日は除いておりましたけれども、この確定申告期間中には土・日も含め24時間、e-Taxは対応させていただくということで受付をオープンにしております。
 それから、電話で操作方法の相談を随時受け付けますヘルプデスクですけれども、これももう既に確定申告期間前の1月末から、月曜日から金曜日については、夜の8時までヘルプデスクを開いておりますし、日曜日も署における閉庁日対応と同様に2月18日と25日にはヘルプデスクを開くことにしておりますので、こちらも御利用いただければと思っております。
 ちなみに、最近の利用状況でございますけれども、まず、このe-Taxについては、開始届出を出していただくわけですけれども、その件数が、左の方の開始届出書提出件数累計というところにございますように、1月11日現在、個人で40万件、法人で27万件弱、合計で67万件ほどになっておりまして、これは最近でもどんどん数字が伸びております。
 e-Taxを利用できる手続には、申告、申請・届出、法定調書の提出、納税などございますが、18年度の4月から12月末までで見てみますと、約60万件弱の利用がありました。これは、開始届出書のオンライン提出の件数も含んでおりますけれども、ただ、この60万件というのも2月に入りまして確認をいたしましたら、もう100万件を超えているというところにきているようですので、特に確定申告が近づいていることもあって、個人の方々の関心の高さを感じているところでございます。
 9ページのところにe-Taxの利用方法について簡単にまとめております。詳しくは省略させていただきますけれども、「e-Taxを利用するには」というところで、最初に、開始届出を税務署に提出していただくところから始まって、利用開始までこのような流れでセットアップをし、登録をして、実際に利用していただくと。その間に電子証明書をとっていただいたり、カードリーダライタというパソコンの器具を購入していただく、用意していただくというようなことがあって、なかなかご不自由もおかけしているところでありますけれども、今年については、こういう形で御利用いただいて、この「(注)」にございますように、2月23日までに開始届出書を出すように、ないしはオンラインで届出の希望を出していただくようにしていただきますと、何とか確定申告内にe-Taxの御利用が間に合うのではないかというふうに考えているところです。
 特にこの9ページの中ほど、「e-Taxによる申告がより一層便利になりました」というふうに書いてございますが、今年から給与所得の源泉徴収票などをオンラインで提出することができるようになりました。それから、税理士先生が依頼者に代わってe-Taxで申告をする場合には、その依頼者、納税者本人の電子署名等は省略してかまわないという措置をとっております。そういう意味で、電子証明書を取得する等の手間を省いた形での御利用も、本年からできる形になっております。
 さらに「e-Taxで還付をすると」というところは、実際にe-Taxを利用して還付申告していただければ、従来の半分程度の期間で還付金が振り込まれるということで、我々としてもそれをインセンティブ効果ということで考えていきたいと思っています。3週間程度で還付金の振込みが行われるということでございます。
 また、税務署におきましても、一番下に『税務署では、「e-Taxコーナー」を開設しております』というふうに書いてございますけれども、住基カード等を既にお持ちで、事前に登録が済んでいる方の中で、自分の家でパソコンを立ち上げ操作するのはなかなか難しいといった方について、税務署に行って教わりながらやって、そこで申告を済ませてしまうことができるように「e-Taxコーナー」というのを各税務署や署外の相談会場に設けました。我々の受け入れ体制の都合上、事前に予約をいただけるとありがたいんですけれども、「e-Taxコーナー」では、実際にご自宅のパソコンを使ってe-Taxをするのと同じように、その場で担当者の指導といいますか、アドバイスを受けながらe-Taxを実際に御利用いただけます。そういう形ででもe-Taxについてのノウハウを把握していただければ、来年からは御自宅でe-Taxを使っていただけるのではないかというふうに期待しているところです。  最後に10ページには、直接確定申告とは関係ありませんが税源移譲の関係で、サラリーマンの方でいうと、今年から所得税の源泉徴収額がもう既に1月から減っておりますが、一方で6月以降、今度は住民税の税額が増えるということになります。これは3兆円の税源移譲が実施されているためで、全体としての税負担が変わることは基本的にはないということを念のためにここにつけ加えさせていただきました。
 とりあえず私の方からは以上で終わらせていただきます。

辻山税理士分科会長
 ありがとうございました。それでは、引き続いて、「滞納圧縮への取組」につきまして、徴収部長からお願いします。

徴収部長
 徴収部長の秦でございます。座って説明させていただきます。資料は、お手元にあります資料2−2でございます。
 徴収部の重要な課題といたしまして、滞納圧縮への取組ということでございます。特に消費税の滞納圧縮への取組ということでございます。滞納圧縮への取組といった場合には、そのポイントが2点ばかりございます。やはり、新規に滞納になる部分を抑えるということ、滞納の未然防止というのが1つでございます。 2つ目が現在滞納になっているものの整理を促進するという、この2点でございます。
 まず、滞納の未然防止といった点については、納税者の皆様方に期限内に必ず納税してくださいという訴えかけでございます。特に個人の方については振替納税をお勧めさせていただいております。預金の中に納税額がありさえすれば、うっかり忘れ等もなく納税できるということもありますし、現金を持ち運び等することなく安心、安全な納税ということになりますので、振替納税等を現在勧めさせていただいているということでございます。
 2つ目の、現在ある滞納の整理を促進するという点についても、ポイントが3つございます。1つは、大口・悪質処理困難事案について重点的に取り組むということが1つございます。2つ目は、やはりウェートの大きい消費税について優先的な取り組みをするということでございます。3点目については、少額な事案等については、極力集中して効果的、効率的な処理を行うといったようなことで、処理の促進を進めているところでございます。
 以下、資料に基づいて御説明を申し上げます。まず、1ページ目でございますけれども、全税目の租税滞納状況が出てございます。一番右のところが17年度末の現在の状況でございます。整理中のものの額、これは上の方の数字でございますけれども、約1兆8,000億円程度が滞納の整理中のものでございます。現在整理を進めているという意味で整理中という言葉を使っておりますけれども、通常は残高ということでございます。残高としては1兆8,000億円ぐらいございます。ピーク時が10年でございますので、7年連続で残高は減少してきているという状況でございます。
 黒い棒グラフは、新規発生でございます。それに対して、白い方の棒グラフが整理済ということで、新規発生を上回る整理が進めば滞納の残高は減っていくということでございます。引き続き、新規を抑え、整理を進めていくことによって、圧縮を図っていくというのが、我々の課題でございます。
 次の2ページ目でございますけれども、特に滞納の新規発生の階層、約45%ぐらいが消費税でございます。やはり消費税について、特にその圧縮を図っていく必要があるというグラフでございます。残高で見ますと、17年度の一番上のところの数字ですけれども、4,875億円でございました。それまで11年をピークにして、6年連続で減少してきております。ただ、16年度の残高を見ますと4,885億円ですので、ほぼ横ばいという状況でございます。ここで見ますと、黒い新規発生分がぐっと増えているということでございます。昨年も説明したかと思いますけれども、消費税の税制改正によりまして、免税点が 3,000万円から1,000万円に引き下げられることによって、新規の納税者が大幅に増えるという状況でございます。新規に増えますと税収も増えるわけですけれども、滞納も増えるということで、滞納が増えたということが、この新規の、ぐっと伸びている部分でございます。
 その次のページでございますけれども、特に個人の消費税の方の昨年の確定申告の状況でございます。昨年、先ほど申し上げましたけれども、消費税の税制改正によって3,000万円から1,000万円に免税点が引き下げられたことによって、大幅に新規の消費税納税者が増えたという状況でございます。16年度、17年度の徴収決定のところを見ていただきますと、37万人から150万人ということで、約4倍増えているという状況でございます。
 こういった中で、国税庁全体の最重要課題ということで、期限内収納、あるいは滞納をいかに少なくするかということで、2年間取り組んできたものがこういう形で出てきてございます。1つは、期限内収納でございます。左の上の数字を見ていただきますと、16年に比べて17年は前年をやや上回る、ほぼ横ばいということでございまして、納税者数が4倍増えたにもかかわらず、期限内収納の方が、ほぼ前年並ぐらいの割合であったという状況でございます。
 一番右側のところは、督促状発付になってございます。これが通常滞納の新規発生のデータのもとになるものでございます。これで見ていただきますと、16 年に比べて昨年の確定申告の結果の滞納の発生状況ですけれども、前年より1%ぐらい下がっているという状況でございます。多くの方が、期限内あるいはその後すぐに納付していただいたという状況でございます。本年も、昨年に続いて2年目の新規消費税の事業者の確定申告に入ってございます。昨年同様期限内に収納される方をいかに多く、滞納になる方をいかに少なくするかということで、全署挙げて取り組んでいるという状況でございます。
 その次が、4ページ目でございます。そういった場合の、消費税の滞納の全体の位置付けがどうなっているかというのが、この消費税の新規発生滞納状況でございます。今見ていただきましたのは、個人の消費税の状況でございます。消費税といった場合には、やはり圧倒的に大きな割合は法人消費税でございます。滞納も法人消費税のほうが圧倒的に大きい状況でございます。
 その個人と法人の消費税の滞納の発生状況を合計で見たものがこれでございます。全体を徴収決定済額で見ております。17年度の徴収決定済10兆 7,000億円でございます。これをベースにして、17年度中の消費税の滞納の新規発生がどのぐらいあったかというのを見たものが下の方に出ているものでございます。当年度中の新規発生滞納額は約3.9%程度でございました。税額としては4,200億円ぐらいでございます。そのうち、その年度中に整理したものが2.5%、2,700億円でございました。したがって、翌年度以降に滞納整理を行うものが1,500億円。トータル全体で表しますと、先ほどの棒グラフで約4,800億円という、依然としてかなり残高としては大きなものがございます。引き続き消費税について優先的に滞納整理を進めていく必要があるということでございます。
 なお、徴収決定済額と滞納の新規発生でベースが若干違いますので、正確にはその比較はできないわけですけれども、大ざっぱに見るとこういう見方ができるということでお示しさせていただきました。
 続きまして、5ページ目が納税コールセンターの滞納整理状況でございます。やはり確申明け等になりますと、一時大量に新規の滞納者が発生してまいります。そういった場合には、集中電話催告センターというのがございまして、各局1カ所に集中して置いてございます。新規に滞納発生した場合にまずそこで電話をかけて納付慫慂する。それによって、そこで納税が終わればそれで完結するということになりますし、それでできない場合には税務署に行って、税務署から直接納税者の方に滞納整理に当たるという形をとらせていただいております。これが滞納整理の効果的、効率的方法をとっているということでございます。
 実績を見ますと、催告の対象55万件中、約4分の3、75%ぐらいはこのコールセンターで対応しております。残り25%程度、14万件程度を税務署に移行し税務署で直接滞納整理を行うといったようなことで、効果的な方法をとっているということでございます。
 以上が、徴収部の関係でございます。

辻山税理士分科会長
 ありがとうございました。それでは、引き続き、「国際課税への取組」につきまして、調査査察部長、よろしくお願いします。

調査査察部長
 調査査察部長の鈴木でございます。お手元の資料の2−3、「国際課税への取組」という資料を御覧いただきたいと思います。国際課税の中でも昨年来話題となっております移転価格税制につきまして、御説明をさせていただきたいと思います。
 1ページ目でございますが、そうした話題を背景に政府税制調査会でも御議論がなされまして、答申をいただいております。1ページ目の問題の認識としまして、近年の企業活動の国際化の進展を背景に課税件数、金額が増加している中で国際的な二重課税の問題が指摘されている。こういった問題背景のもとに、下線を引いてある部分につきましては、執行当局に対する課題、それから最後の2行は、税制当局に対する課題ということで、まず、執行当局については、企業の予測可能性を高めるために環境整備を図るべきである。その中で適用基準の明確化を引き続き進めるべきである。それから、手続の改善あるいは相互協議体制の強化をし、事前確認の迅速化を図るべきとの御指摘がなされました。
 それから、下の2行は相互協議中といいますか各国で調整している間には、本税なり加算税につきまして納税を猶予すべきで、これは負担の軽減という点で大切であるとの御指摘がなされました。この最後の点につきましては、税制当局の方からこの内容を含んだ法案が策定され、2月2日に閣議決定されて、国会に提出されたところであります。
 2ページを御覧いだきますと、御承知の方も多いかと思いますが、移転価格税制の仕組みでございます。これは端的に典型的なものとして下に書いてあるわけでございますが、国内の企業が国外の関連企業との取引を通じて海外への所得の流出を防止するという観点で、昭和61年に税制改正で導入されております。その後、主要先進国あるいは中国、韓国など、40カ国以上で導入されております。最初はアメリカで導入されたものでございます。
 どういうことかと申し上げますと、その下の図をご覧下さい。点線で枠の中に入った外国に内国法人の国外関連者がいて、これとの取引があります。典型的な例でございますが、最初日本で原料を仕入れて、内国法人で加工して、それを外国の関連事業者に売り、最終的に需要者である顧客に売ります。100で仕入れて最終的に300で売るわけですので、この企業グループとしては200の利益が出るわけでございますが、一方で、その資産の販売、内国法人と国外関連者の取引の金額によって、日本における利益と外国の国外関連者における利益が異なってきます。例えば、点線の下の方で、内国法人の非関連者に対する販売ですが、100で仕入れて非関連者に200で売って、それを顧客に300で売るといった場合には、国内では利益が100残り、非関連者に100の利益が生じます。
 結局、どういうことかいいますと、その内国法人と国外関連者、あるいは非関連者の間での資産の販売価格によって利益が日本と外国で異なってくるという問題が生ずるわけです。これを解決するために、国外関連者でなくて非関連者との価格で取引することが妥当であろうということで、この非関連者との価格を採用して課税をいたします。この非関連者との価格を独立企業間価格ということで課税するという制度でございます。
 この例では、日本の内国法人が資産を150で国外関連者に売っておりますが、これを非関連者との価格を独立企業間価格として200と認定して課税を行うわけでございます。
 3ページ目には、移転価格課税の現状が記載されております。その特徴を述べますと最近の国際化あるいは取引の国際化を反映しまして、ここ2、3年、大変急増しておりますし、課税所得金額も大幅な伸びを示しております。
 4ページを御覧いただきますと、先ほどの例で申し上げましたように、一番左の四角のところにありますが、日本の国内法人で例えば最初50で申告する。それと外国の国外関連者の当初所得が150。先ほどグループ間で合計が200だということを申し上げましたけれども、そうした中で日本の会社に対する利益が実はもう50あるではないかという課税をいたすわけでございます。そうしますと、日本での課税所得の50が100に増加します。外国の所得が、そのままですとグループ全体で250の課税所得になって、日本で増加した50が二重課税となる。それを調整するために、租税条約に基づいて相互協議を申し出ていただければ、両国の課税そのものを調整するということで、その金額を調整します。その後の協議で合意した金額に基づきまして課税関係が成立し、そして国内企業と国外関連者の所得の分配がなされると、こういう仕組みでございます。
 この課税の執行につきましては、基準が明確ではないのではないかといった指摘がなされていますが、5ページを御覧いただきますと、この執行基準につきましては、かなり前から法令解釈通達を公表いたしましたり、事務運営指針を公表いたしましたり、連年のように公表してきております。ひとつ誤解があるといけませんのは、この基準の公表と個別の事実認定の問題を混同される場合には、私共はそれは別ではないかという立場をとっております。ただ、執行基準の明確化につきましては、予測可能性の観点から大変重要でございますので、引き続き明確化を図っていくということを考えております。
 それから、6ページを御覧いただきますと、課税をされる前に事前確認という制度をとっております。つまり、申告期限の前に税務当局に事前確認を行いたいということであれば、この取引について事前に確認を求めることができる、そういった仕組みを、実は、昭和61年にこの移転価格税制が導入されましたその翌年(昭和62年)に我が国が世界に先駆けて導入しております。その後、我が国の後に、アメリカその他の国が順次こうした事前確認制度を導入しておりまして、我が国は、予測可能性の確保につきましても、いち早く取り組んでいるということでございます。
 事前確認がなされますと、その後、仮に課税所得が増加いたしましても、自主的に修正申告を出していただければ、これについては加算税の対象外という扱いとなっておりますので、事前確認を御利用いただきたいということを、当初から申し上げているわけでございます。
 7ページを御覧いただきますと、しかしながら、確認するまでに時間がかかるではないか、あるいは外国との相互協議に大変時間かかるではないかということで、この間に企業では事務負担など生じ得ると思いますが、できるだけ早く対応してほしいというのが、先ほどの政府税調から求められている課題でございます。私共といたしましても、事務の効率化その他もろもろのことも考慮の上対応したいと考えております。
 まず、事前確認手続では、最初に申出をしていただくわけですが、これについてどういう書類が必要であって、どのように申し出ればいいんだという、事前確認の申出前の事前相談も受け付けております。これにつきましても今後とも幅広く周知を図って、さらに予測可能性を高めていきたいと考えております。
 また、事案の処理に時間が長くかかるという点について、迅速化を求められるわけでございますが、内部的な処理としましても、複雑性・重要性に応じたメリハリのある審査を実施したいと考えております。
 さらに、外国との相互協議の時間がかかるということに対しましては、定期的な相互協議、例えば、年3回あるところは、もう少し弾力的に行うとか、それからまだこういった制度が導入されていないところ、あるいは熟知していない国に対しては、協議を通じまして幅広く理解を深めていきたいと考えております。
 それから、執行体制が不十分ではないかという御指摘もありました。現在30名強の担当官がおりますが、これも5年前に比べれば倍増しておるわけですが、先ほどの6ページを見ていただきますと、事前確認の申出件数が平成17事務年度で76件、処理件数が年間32件、繰越件数が200件超になっていて、非常に時間がかかるではないかとの指摘があります。私共としても非常に急いで処理しているつもりでございますけれども、さらにこれを強化して、迅速化に一層努めたいと思っております。
 なお、8ページを御覧いただきますと、移転価格税制の執行のポイントとしては、まず税制はもとよりOECDの租税委員会等々によるガイドラインに基づくものでございまして、グローバルな税制、ハーモナイゼーションに基づいた税制になってございますので、こうした点をさらに周知していく。
 次に、フェアな税制であろうかということで、国外関連者との関係ではなくて独立企業原則に基づく公平な課税ということを行っていく。
 また、透明性につきましては、さらに一層そういった明確化に努めていく。
 さらに、予測可能性につきましては、事前確認の申出等々を周知していくことによりまして、移転価格課税のリスクを回避していただきたいということを考えております。
 以上でございます。

辻山税理士分科会長
 ありがとうございました。それでは、引き続き、「酒類行政を巡る最近の動き」につきまして、荒井審議官、お願いします。

審議官
 審議官の荒井でございます。それでは、資料の2−4に基づきまして「酒類行政を巡る最近の動き」について御説明させていただきたいと思います。
 まず、1ページ目でございますが、1ページ目は平成18年度の酒税法改正の概要ということでございます。平成18年度の酒税法の改正におきまして、「あるべき税制」の構築に向けた改革の一環ということで、酒類の分類の簡素化と、それから酒類間の税負担格差の縮小等の改正が行われておりまして、これにつきましては、平成18年5月1日から施行されているという形になっております。
 まず、一番最初の酒類の分類の簡素化でございますが、これまで10種類11品目の分類がございましたが、その製法とか性状に着目しまして、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類の4種類の大括り・簡素化ということがされております。その内容につきましては下に書いてあるとおりでございます。
 それから、2番目の酒類間の税負担格差の縮小ということで、ここにも書いてありますように、税率の見直しに当たりましては、大括り・簡素化された4種類の分類ごとに基本税率を定めると。その上で、酒類の生産・消費に与える影響にも配意しつつ、酒類間の税負担格差を縮小する方向での見直しが行われたということでございます。
 それから、次のページの下の方でございますが、その他の改正として、酒類の定義規定の改正というものも行われております。この2ページ目の3の2パラのところに書いておりますように、例えばということで、清酒につきましては、醸造酒としての位置付けを明確にする観点から、アルコール分に係わりなく一律の税率に改められましたことに併せまして、アルコール分の上限を設けるとか、あるいは副原料の使用割合等について見直しが行われたという状況であります。清酒であれば、なるべく清酒らしいものにしていくというような観点からの改正でございます。
 次は3ページ目でございますが、一般酒類の小売業免許のこれまでの規制の概要あるいは規制緩和の状況でございますが、御承知のように、一般酒類小売業免許に係る需給調整規制につきましては、この1の12に掲げてありますように距離基準、人口基準というものがございました。これらにつきましては、規制緩和推進3カ年計画というものがございまして、それに基づきまして平成15年9月1日までに段階的に緩和、廃止するという方向になっておりまして、それに基づいて緩和、廃止等がされてきたところでございます。
 これに対しまして、下の2でございますが、規制緩和に伴う激変緩和を図る観点から、酒類小売業の経営改善等に関する緊急措置法、いわゆる緊急措置法と我々が言っているものでございますが、これが議員立法で作られまして、免許付与の制限というのがされております。これは、緊急調整地域というものに指定された地域においては、免許は付与しないというものでございます。この緊急措置法につきましては、平成15、16、17という形で3年間適用されまして、先ほど小林委員の方からもございましたように、一番下の○のところに書いてありますように、緊急調整地域の指定は平成18年8月31日限りで失効したという状況に今なっております。
 次の4ページ目でございますが、これに伴いまして免許の申請件数でございますが、今年の平成18免許年度においては、1万4,000件ほどの免許の申請が出てきているという状況になっておりまして、国税庁といたしましては、免許申請の厳正的確な審査に努めているところでございます。
 それで、次が5ページでございますが、横の紙でちょっと見にくくて恐縮なんですが、酒類に関する公正な取引のための指針というものを昨年の8月31日に出しております。これは平成10年に旧指針が発出されておりまして、先ほど御説明しましたように、緊急調整地域が失効し小売業免許基準が緩和されたことに伴いまして、酒類小売業への新規参入の増加というものが見込まれますので、公正な取引のための指針というものを時代に即した形で直した上でここで出したということでございます。  指針の基本的な考え方は、この目的、一番上のところの目的に書いてありますように、酒税の確保及び酒類の取引の安定化と、これは酒類業組合法の第1条に書かれていることですが、こういうようなことに基づきまして酒類に関する公正な取引のあり方とか、公正取引委員会との連携方法等を提示して、公正取引の確保に向けた実質的な取り組みを促進するというものでございます。国税庁といたしましては、この新指針の周知、啓発に努めておりまして、酒類業界におかれましても公正な取引の確保に向けていろいろと取り組んでいるということでございます。
 この指針の中の「はじめに」という2つ目のパラがございますが、今、酒類を取り巻く環境というのは今非常に大きく変化しておりまして、1つは経営環境の変化ということで人口減少社会の到来と、そういうことに伴いまして酒類全体で数量ベースでの国内市場の拡大が困難な状況になっているという状況があります。もう一つは酒類小売業の多様化。コンビニ、スーパー、ドラッグストアなどというものが出てきまして、事業者間の取り扱い数量や取引価格に格差が出てきているという状況がございます。こういう中で、酒類業の健全な発達に向けた課題として、先ほど小林委員の方からもお話がありましたように、我々としては量から質への転換、それから消費者の視点と、こういうものを中心に据えつつ販売管理、この販売管理というのは小売で未成年者にお酒を売らないとかそういうような管理とか、今御説明しております公正取引の確保と、こういうものに力点を置きつつ行政を行っているという状況でございます。
 次が、6ページ目でございますが、酒類総合研究所の最近の動向ということでございます。ここは、一番上にも書いてございますように、酒類に関する高度な分析及び鑑定等を行う酒類総合研究所は、平成13年4月に前身の国税庁醸造研究所から独立行政法人に移行して、平成18年3月に5年間の第1期中期目標期間を終了したところでございます。
 同年の4月から第2期中期目標期間に入っているわけでございますが、この1期から2期に移る際に、以下のようないろいろな見直しを行っております。組織及び業務全般にいろいろと見直しを行っていまして、特に3番目に書いてございます非公務員による事務及び事業の実施ということで、民間・大学等との人事交流等の連携を促進してより一層の成果を上げる観点から、非公務員型の独立行政法人という形にしております。
 この酒類総合研究所につきましては、第1期中期目標期間の業務の実績につきまして、独立行政法人評価委員会から業務運営の効率化や国民に対して提供するサービスの質の向上に関する事項など、中期目標で掲げた4つの項目につきまして、全て十分に達成したとの高い評価をいただいているところでございます。
 私の説明は以上でございます。

辻山税理士分科会長
 ありがとうございました。それでは、最後に(5)でございますが、「不服審判所の概要及び最近の裁決事例」につきまして、審判所次長からお願いいたします。

審判所次長
 審判所次長の上村でございます。お手元の資料2−5を御覧いただきたいと思います。
 最初に、国税不服審判所の概要などでございますが、審判所は、昭和45年の国税通則法の改正によりまして、国税庁の特別の機関という形で創設をされたものでございます。国税庁長官の持つ権限のうちから、国税に関する法律に基づく処分についての審査請求に関する裁決権を分離いたしまして、その裁決権を国税不服審判所長に与えることにいたしまして、執行権を行使する機関から独立した第三者的立場を有する機関として創設されたわけでございます。
 審判所の目的は、2点ございまして、審査請求人の正当な権利利益の救済を図るという点と、併せて税務行政の適正な運営を確保するということを目的といたしてございます。
 また、審判所には幾つかの特色と言える点があると言えるかと思います。第1に、審査請求人と原処分庁の双方の主張を十分に把握いたしまして、争いとなっております点、いわゆる争点でございますが、この争点を主な審理事項といたしまして裁決を行うことといたしてございます。争点主義的運営というふうに言われる点でございます。
 それから、2番目といたしまして、3名以上の審判官等で合議体を構成いたしまして、この合議体の議決に基づき裁決をする。それを通じまして公正性の確保を図っているという点がございます。
 それから、争点に関する事実につきまして、審判所は職権で調査する権限を有しているということもございます。
 また、国税庁長官通達に示された法令解釈に拘束されることなく裁決を行うことができるという点もございます。
 そして最後に、裁決は関係行政庁を拘束する行政部内の最終判断という位置付けが与えられているわけでございます。
 次に、審判所の現状と課題でございますが、現在審判所は本部と12の支部、7つの支所で構成をされておりまして、定員の方は477名でございます。国税不服審判所長のもとに、国税審判官、副審判官、審査官などから構成されておりまして、このうち国税不服審判所長、それから東京支部と大阪支部の首席国税審判官、こういったポストには法曹の御出身の方々を任命しているところでございます。
 次のページに移らせていただきますが、最近の審査請求の状況でございます。一番右端の17年度、直近の17年度のところを御覧いただきますと、審査請求の発生件数は2,961件となっております。これに対しまして処理をいたしました件数が3,165件、未済として残っております件数が2,235件ということになってございます。審査請求はできるだけ早期処理をするということに努めておりまして、この未済件数の推移を御覧いただくとお分かりのとおり、徐々にこの未済残高を減らすことができてきている状況でございます。
 次に(3)といたまして、当面の事務運営の目標というふうに書いてございますが、最近、私ども審判所の方では、スローガンと具体的目標というものを掲げまして事務運営に当たってございます。現在のスローガンといたしましては、「公正な第三者的機関として、審判所事務運営を機動的、効率的に行い、適正・迅速な裁決の実現を図ろう」というスローガンを掲げてございまして、そのさらに具体的な目標といたしまして3点掲げてございます。第1点目は、不服審査は原則1年以内に処理をするということでございます。2点目は、充実した調査・審理に基づく適正な裁決を行う。3点目といたしまして、簡潔、明瞭な裁決書を作成する。以上3つの具体的な目標に沿って事務運営を行っているところでございます。
 このうち1の「不服審査は原則1年以内に処理する」という点でございますが、これはその下の(4)の国税庁における実績の評価の目標という形で具体的な目標値を掲げてございます。2ページの一番下の箱を御覧いただきますと、「審査請求」の1年以内の処理件数割合という題で、18年度目標値80%というふうに書いてございますが、1年以内の処理件数割合80%以上ということを具体的な目標として掲げまして取り組んでいるところでございます。16年度からこの目標値を掲げてございまして、幸い、16年度、17年度と目標を達成することができているという状況でございまして、本年度につきましても達成すべく鋭意取り組んでいる状況でございます。
 それでは、引き続きまして、次のページに移らさせていただきまして、最近の裁決事例をひとつ御紹介をさせていただきたいと思います。これは平成18年4月5日の裁決でございますが、法人税の更正処分などを一部取り消しました裁決の事例でございます。
 まず、概要でございますが、適宜下の絵を御参照いただきながらお聞きいただければ幸いでございますが。本件は、原処分庁が、請求人の行った法人税の申告には収益、具体的には完成工事高でございましたが、収益の過少計上が認められるとして増額更正処分を行いましたのに対しまして、請求人が、更正処分の理由については争わないものの、当初申告には他の収益、具体的には土地の受贈益でございましたが、ほかの収益の過大計上があったとして更正処分の一部取り消し、減額を求めた事案でございます。
 下に絵がございますが、左側の申告に対しまして、更正処分の方はこの水平の点線より上の部分を増額させる更正処分を行ったわけでございます。それに対しまして、請求人の方は、この増額部分については、完成工事高の過少計上部分については争わないけれども、左側のもともとの申告の方にこの黒く塗ってありますところの受贈益の過大計上部分があったので、その分を減らしてほしいというふうに請求を行ったケースでございます。
 その次の争点というところでございますが、この事案の争点は、申告にかかわる収益の額に過大部分があったことを主張して、更正の請求によることなく、更正処分の取り消しを求めることができるかどうかという点でございました。更正の請求と申しますのは、下に注がございますが、国税通則法23条によりますと、申告に課税標準や税額の過誤がありました場合、納税者は、申告期限から1年以内に税務署長に「更正の請求」をすることによりまして、申告の是正(減額)を求めることができるという制度でございます。ただし、本件におきましては、この「更正の請求」がなされていなかったという事案でございます。
 この争点につきまして、原処分庁は次のような主張をいたしました。ちょっと読ませていただきますと、「申告に係る課税標準又は税額が過大である場合には、原則として、更正の請求の手続によってその是正を図るべきであり、更正の請求をすることなく、課税標準等の減額を求めることはできない」と、これが原処分庁の主張でございました。
 次のページでございますが、これに対しまして、請求人は次のように主張いたしました。「原処分庁は今回法人税の調査を実施したのであるから、更正の請求を行っていないことを理由に、減額を求めることを許さないという原処分庁の主張には、適正、公平な課税の観点から疑義がある」という主張を請求人はしたわけでございます。
 これらにつきまして、審判所の判断は次のように裁決で示されております。ちょっと長くなりますが読ませていただきますと、「原処分庁は、いわゆる更正の請求の排他性」、これは括弧にございますとおり、「納税者が更正の請求によることなく申告した税額等の過誤の是正を求めることは、納税者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合を除き許されないと解されていること」を指すわけでございますが、「原処分庁は、いわゆるこの更正の請求の排他性から、請求人の減額を求める主張自体が許されないと主張する。しかしながら、この更正の請求の排他性が申告した税額等を自己に有利に変更することを求める場合についてのものであることは、国税通則法第23条第1項の規定から明らかであり、そして、本件審査請求に係る審理の対象は、客観的に存在していた本件事業年度の法人税の税額等との比較における本件更正処分に係るそれらの多寡であるから、本件審査請求において、請求人が、原処分の一部取消しを求める事由として、受贈益の過大計上を主張すること自体は許される」というふうに判断したわけでございます。
 以上のように、本事例は更正の請求を経ていない場合でありましても、審査請求におきまして過大申告を理由として増額更正処分の取り消しを求めることができるという判断をしたものでございまして、先例性が高いというふうに考えまして、この裁決は公表をしている、そういう裁決でございます。
 以上でございます。

辻山税理士分科会長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただきました5つの御報告につきまして、何か御質問、御意見等がありましたら御自由にお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。井堀委員、いかがでしょうか。

井堀委員
 最初の確定申告のところのe-Taxなんですけど、これからどんどん広まるのは非常にいいことだと思うんですが、先ほどの御説明でもまだ2%程度ですね。今後50%は相当高い目標だと思うんですけど、そこを実現するのに何かもうひとつ、インセンティブな面で工夫というか、考えておられることはあるんでしょうか。今のままでは多少e-Taxすることのメリットが納税者側に余りないような気もするんですけど、手間暇かかって。

課税部長
 先ほどの説明では、とりあえず今年の確定申告に係るメリットというか対応策を御説明いたしましたけれども、実は今その他にも、今国会に提出されている今回の19年度の税制改正の中では、e-Taxを利用いただき、その際に電子証明書を添付いただいた個人の方に、所得税について5,000円の税額控除を認める案が1つ盛り込まれております。それがまた来年以降のe-Taxを通じた確定申告について呼び水になってもらえばありがたいなと思っております。
 それから、併せて御利用の方から結構大変だということで苦情も多かった添付書類の関係につきましても、例えば医療費控除について、今まで「確定申告書等作成コーナー」を使う場合には、医療費の領収書などは別途郵送して税務署に出していただかなければいけなかったんですけれども、今もe-Taxを使ってもそういう形になっているわけです。それじゃあ、せっかく送信しても結局郵送するのと同じじゃないかという御批判もありました。そのあたりについても、今回の制度改正法案の中に、実際に医療費の具体的な金額を書いていただいて、それから領収書は、もう御自宅で例えば3年間保存していだたくという形で、特に税務署に送っていただかなくても結構ですというようなことで、医療費以外にも主な添付書類については、そういった形での明細書化と言っていますけれども、具体的な数字だけ送信のときに記入していただければ書類自体は送っていただかなくて結構ですというような措置も盛り込んでおりますので、来年からはその辺で大分、今まで御不便をおかけした点については便利になるんではないかと思っております。
 それにしましても、一方では、例えばインターネットバンキングの普及度合いに応じてその伸びる部分があったり、いろいろ金融機関その他関係のところに働きかけていかなければいけない点もありますけれども、今申し上げましたような、もう少し使い勝手を良くするという点が、今年も若干ですけれども進んでおりますので、それが来年進めば、相当程度また伸びるのではないかと思っておりますけど、いずれにしろ、我々の方からなるべくPRをして、なじんでいただけるのが大事かと思っています。

辻山税理士分科会長
 他にございますでしょうか。どうでしょうか。

小林酒類分科会長
 今の件ですが、例えば、環境問題についても、ISO規格の取得の問題もございまして、よく「私どもの会社では基準を満たしている」ということでISOのマークをつけておりますが、e-Taxにつきましても、名刺とか何かに「我が社はe-Taxで協力をしています」と、あるいは、そのマークを玄関に張りつけるとか、そういうような、つまりe-Taxで行政に協力しているんだという、そういう誇りみたいなものを引き出すことも大事ではないでしょうか。

辻山税理士分科会長
 他には、いかがでしょうか。

小林酒類分科会長
 もう1つよろしいですか。お酒の方なんですが、御承知のとおり、特に、未成年者の飲酒によって起こる交通事故が多発していることに関してですが、警察庁の方も非常に厳しく規制しております。その観点で、お酒の業界では、特に、飲食店あるいは居酒屋などでは、需要が落ち込んでいるようで、不満みたいなものもございます。ちょっと方向違いの不満のようだとは思いますが、国税庁におきましては、この種の交通事故との関係で飲酒問題につき、何か展望みたいなのがございましたらお聞かせ願えますか。

審議官
 展望というわけではございませんけれども、今、小林委員の方からお話がありましたように、お酒は、極めて致酔性が高いものでございまして、普通の物資とは違って、今回のような飲酒問題みたいなものが非常に脚光を浴びてくると、お酒を売るということ自体がどうなんだみたいな話までいくという、非常に特殊な物資だと我々も認識しております。そういう意味では、我々だけでなく業界の皆さんもそういう認識がありまして、昨年の飲酒運転の問題の中で、自主的にポスターを作っていただいたりとか、そういう活動を、製造の分野でも卸売の分野でも小売の分野でも、いろいろとしていただいているという状況です。
 我々としては、警察とか、そういうところとのいろいろなコンタクトの場みたいなものもございますので、そういうところの話を業界の方に伝えたりとか、そういう形で取り組みを進めているところでございます。

小林酒類分科会長
 ありがとうございました。

辻山税理士分科会長
 他にいかがでしょうか。この機会ですので。先に田中委員で、次に~津委員、どうぞ。

田中委員
 この国際課税の移転価格税制の事前確認制度についてちょっとお聞きしたいのですが、当社も約10年前ぐらいから努力をしまして、ようやく3年ぐらいかかって事前確認制度が成功したんですけども、そのときともう時代も大分変わっておりますから、そのときの経験は今とは大分事情変わっておるかもしれませんけども、非常に時間かかった1つの理由は、両国の税務当局の間に立って、いろいろ向こうの主張を日本の税務当局に伝え、その日本の税務当局からいろいろなまた注文が出まして、それを相手国の税務当局に伝えるような、そういう努力でかなり時間を費やした覚えがございます。
 したがって、今これだけ繰越件数なんかも増えている実情を見た上では、何かひとつこのガイドラインといいますか、最低限こういうことを事前確認制度の中に盛り込むというような、もちろんこれは業種、企業でそれぞれ事情が違いますので、画一的なガイドラインは出ないと思いますけども、最低限こういうことをというガイドラインが出ませんと、なかなかスピードが上がらないです。そういうところについて、もし最近の動きなんかございましたら、お話をお聞きさせていただいたらありがたいと思います。

辻山税理士分科会長
 はい、どうぞ。

調査査察部長
 ご指摘の点につきまして、私共も問題意識を非常に共有しているところであります。事前確認については、日本は、概ね2年弱ぐらいの期間で処理していまして、アメリカは2年強ぐらいであります。アメリカに比べても一生懸命やっているつもりではおります。先ほど、申し上げたように、事前確認の前に納税者からの相談を受ける事前相談の中で、事前確認で今後どのような手続になるのか、どういう資料が必要なのかということを説明したいと考えておりますし、事前確認の利用環境の整備を図りたいと思います。また、適用基準については、今おっしゃったように課税事例ですとか、事前確認で問題となった点などを参考に、できるだけ基準の明確化のために、どういうものができるか今検討している最中でございます。御要望に沿ったものになるかどうか分かりませんが、検討したその後、できるだけ形にして公表できればと考えております。その時期に関しては、できるだけ早く作業を行いたいと努力しておりますので御理解いただきたいと思います。

辻山税理士分科会長
 ~津委員、お待たせいたしました。

~津委員
 すみません。2つほど。1つはe-Taxのことなんですけれども、税理士の先生方の利用状況というのが、具体的にはどうなっているのかなというのが1点で。それからもう一つはお酒のことなんですけれども、前、酒類分科会で地理的表示に関する基準の一部改正というのをやったことがあるんですけれども、あのあたりで、何か灘とかっていうブランドを作ろうみたいな話があったり、いろいろなのがあったり、その後何か動きがあったのかどうか。それから、その折にも出たことだと思うんですけれど、せっかく日本食がブームになっても、日本酒がすごく粗悪で変なものがあるので、それで日本酒のブランドを少しきっちりやりましょうみたいな話も出ていたような気がするんですけれど、今現在、海外での日本酒の状況というのはどんなふうになっているのかというあたりを、もしお聞かせ願えればありがたいと思いますが。

課税部長
 それでは、まず森委員もいらっしゃいますけれど、私の方から一応、申し上げて、もしできれば補足いただきたいと思いますが、確か6万人か7万人弱の税理士先生がいらっしゃる中で、今年度だけでも4分の1ぐらい、1万5,000人から2万人弱ぐらいの方、累計では3万人以上の方に開始届出をしていただいています。そのうち実際、どのくらい御利用いただいているかというのはちょっと分からないんですけれども、御自身の申告、それから、さらに関与先の納税者の方をe-Taxになるべく誘導していただけるようなことをやっていただいているというふうに伺っております。
 我々としても、税理士経由で申告していただく場合は、先ほど申しましたように、本人の署名なしで申告できるということにもさせていただいていますので、税理士の皆様方のe-Taxへの取組が、まさに1つのポイントだろうと思っております。

辻山税理士分科会長
 森委員、いかがですか、この点につきましては。

森臨時委員
 はい、非常に、強行態勢でもって取り組んでいるんですけれども、大体、数値目標を22年に50%ということにしておりまして、とりあえず50%というのは、いわゆる開始届じゃなくして、実際にやるのが50%ということで、今現在もう開始届をやっておるわけですけども、5年間を見て50%の数値目標ということで、100%というふうに思っているんですけど、なかなかこれは税理士会でも平均年齢60ぐらいになっていますから、かなり高齢者のほうになっているわけですから、なかなか100とはいきませんけれども50は確保したいということで、今は税理士がそうやっていきますと、対応先の法人、個人についても当然、電子署名によって申告できるわけですから、かなりの数が期待できるんじゃないかなと思って頑張っております。
 以上でございます。

審議官
 酒の関係は、地理的表示については、清酒で白山というブランドがあって、たしか焼酎の方では4種類がなっているということでございます。最近はいろんな地域で地理的表示という形でやっていこうという動きはあるのですけれども、具体的な形として今後こういうものが出てくるというところまで煮詰まっているところは、今のところないというふうに承知しております。ただ、いろいろなところで、自分のこのブランドを地理的表示の形にしようという議論はされていると聞いております。
 それから、あと日本酒につきましては、輸出は最近かなり伸びてきております。それで、昨年とか一昨年ぐらいからいろいろと輸出について業界の方も非常に目を向けるようになって、先ほどお話にありましたように、海外に輸出した後に、あまり清酒の質が悪くなってしまうというような事例が多々あったのですけれども、そういうことについても、きちっとした品質の管理をするような形で輸出をしていこうというような意識も、かなり高まってきているという状況だと理解しております。

辻山税理士分科会長
 ありがとうございました。その他ございますでしょうか。水野委員、どうですか。

水野国税審査分科会長
 この機会にちょっと伺っておきたいのですが、先ほど国際課税について事前確認制度を御説明いただきましたが、数年前に取り入れられた文書による事前照会制度ですね、あれは一体、最近どのような動きになっているか、もし把握されていればお願いいたします。

課税部長
 ちょっと今、手元にありませんので、調べて御報告いたします。

辻山税理士分科会長
 ちょっと、今お調べいただいている間に、他にもしございましたら。 じゃあ、その間にちょっと、そうですね、先ほどの資料の2−2の「滞納圧縮への取組」で、滞納が年々減ってきているということ分かったんですけれども、特に消費税の関係で、納税義務者がものすごい勢いで、1年、単年度で伸びましたんですが、この2ページの消費税の滞納状況の新規発生率と、その次のページの個人事業者の収納状況についての数字、これはちょっと、どういうふうに読めばいいのかなということについて、もし分かれば徴収部長の方から教えていただきたいと思います。3ページの方はほとんど新規発生がないように見えるんですけれども、2ページの方ですと、かなり新規発生が単年度で増えたのかというふうに見えるんですが。

徴収部長
 消費税の場合には、大きくは個人と法人がございます。どちらかといいますと法人の消費税の方が収納として大きな割合を占めております。今、この3ページ目というのは、個人の消費税の収納状況でございまして、かつ、この中には地方消費税の1%相当分が入ったものでございます。それで見ますと、17年分の確定申告における滞納というのは420億円ぐらいであり、国税だけですとこの額の4%相当ですから340億円ぐらいになります。それ以外にも中間申告等がありますから、それを年度で見ますと滞納が膨らむと思います。
 その次のページを見ていただきますと、当年度中の新規滞納発生額4,200億円が出ています。これが2ページ目の黒い棒グラフの4,200億円に相当します。この中には、先ほど言いました個人の消費税の滞納の4%相当である340億円、プラス年度ですからもっと大きくなる。それにプラス法人の方が、やはり滞納というのは非常に多うございますので、全体のボリューム、徴収決定するのは非常に多うございますので、発生率としては低いんですけど、やっぱりボリュームが非常に大きいということで、その差額分が基本的には法人の消費税の滞納と考えていただければと思います。
 ですから、データとしてきちんと整合性あるものではありませんけれども、1割相当分ぐらいが個人で、9割相当分ぐらいが法人と考えていただければ、この整合性は、大体とれるのかなという感じはいたしております。

辻山税理士分科会長
 ありがとうございました。その他何かございますでしょうか。先ほどの水野委員の御質問に対する回答、まだ、今、調査中ですか。
 それじゃその間に、もう一つ。先ほど、不服審判所の方の数値というか、処理件数、単年度処理件数の目標値が80%というのを教えていただいたんですが、今、問題になっております移転価格税制の事前確認ですね。この処理について、税調なんかでも問題になりましたけれども、およその目標といいますか、事例によって一概には言えないと思うんですけれども、例えば、国内だけでもどのぐらいの日数という、何ていうんですか、予測可能性、どのぐらい待てば最長でも国内のほうの結論が得られるのか。そういうような話というのはないんでしょうか。

審議官
 移転価格を国内で課税する場面と、それから相手の国と協議を開始する場面がありまして、私は協議するほうの場面を担当しております、谷口と申します。
 事前確認の場合は、今の国内的な部分と、海外と協議するという部分から構成されるわけですけれども、そういう意味では日本だけではなくて、相手国の方にも期間を短くしたいというインセンティブを一緒に持ってもらわないと、交渉ごとで全体としてはゼロサムの両国の課税べースの調整になりますので、日本だけ早く終わらせたいと思うと、どうしても日本の課税ベースを譲るような決着になりかねないという面もございますので、お互いに透明性を高めながら、早く、できるだけ早くやりましょうと、そういう意味ではOECDとかそういうマルチのいろいろなフォーラムの中で同じような問題意識を持っている者同士で、なるべく早く相互協議、あるいは事前確認のプロセスを透明化を高めましょう。それからプロセスを早めましょうという、そういう議論をやっております。その中で、お互いに、じゃあ何年、いや1年目でどのぐらいを終わっているんですかと、2年目でどのぐらいを終わっているんですかと、そういうのをお互いに公表しましょうとかいろいろな、お互いにインセンティブというかプレッシャーというか、当局同士のそのプロセスの透明性を高めるといったようなことを、これからやっていきましょうと、今、議論になっておりまして、近々、そういうお互いの公表の仕方についてまとめられると思います。
 ですから、恐らくこの1年ぐらいの間にはそういうプロセスの透明性、各国のプロセスの透明性についてのOECDの一種のガイドラインのようなものが出されると思っております。

辻山税理士分科会長
 そろそろ、先ほど水野委員からの御質問に対します回答の準備はできましたか。

課税部長
 先ほどの水野委員の御質問ですが、文書回答ということでいきますと、17年度で照会件数が113件ございまして、処理件数は126件。ただ、その間に口頭の回答とか取り下げで終わったものがありますから、実際に文書で正式に回答したというのは21件となっております。
 また、事前照会という主に口頭の対応になりますと、国税局の審理課に対して照会件数2,500件を超える件数があり、2,300件程度の処理をしている状況となっております。

水野国税審査分科会長
 ありがとうございました。

辻山税理士分科会長
 そろそろ予定の時刻が近づいているんですけれども、この機会に、ぜひ御発言になりたいという委員の方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、合同分科会につきましても、以上で閉会とさせていただきたいと思いますが、本日の議事要旨及び議事録の公開につきましては、各分科会の議事規則にのっとりまして、国税審議会と同様の扱いとさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
      (「異議なし」の声あり)

辻山税理士分科会長
 それでは、本日はこれをもちまして、3分科会合同会議を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――