1. (1)所得税(譲渡所得)事例
  2. (2)所得税(推計課税)事例
  3. (3)国際取引(法人税)事例
  4. (4)国際取引(贈与税)事例
  5. (5)その他参考事例

(1)所得税(譲渡所得)事例

〔概要〕

 当初の土地売買契約を解除して買主に支払った違約金を、その後に行った当該土地の譲渡に係る所得金額の計算上、譲渡費用として控除できるかが争われていた。

〔請求人の主張〕

 違約金は、当該土地を更に有利な条件で譲渡するため、当初契約を解除して支出したものであるから、譲渡費用に当たる。

〔原処分庁の主張〕

 「更地にて引き渡す」(特約)ことができなかったため、当初契約を解除したもので、違約金の支払い時点で、新買主に当該土地を購入する意思がなかったから、違約金は譲渡費用に当たらない。

〔審判所の判断〕

 審判所が調査審理した結果、次のことが判明したので、違約金は譲渡費用に当たる。

  1. 1 新買主は、当該土地がその所有地の隣接地であり、有効活用を図るため、当初契約の時点で、買受けの意思を有していた。
  2. 2 当初契約の解除は、新買主への売買価額が高額であったため、同人との売買を選択したことによる。

(参考)

所得税(譲渡所得)事例

(2)所得税(推計課税)事例

〔概要〕

 請求人(店舗の設計、監理、施工業)が税務調査に協力せず、事業所得の金額を帳簿等に基づいて計算できなかったとして、推計(同業者比率法)により行われた更正処分につき、原処分庁が採用した同業者の業種、規模、業態の類似性が争われていた。

〔請求人の主張〕

 請求人はデザインと工事を同時に請け負っており、原処分庁が採用した同業者の業態は請求人と類似していない。

〔原処分庁の主張〕

 請求人の業種、規模及び業態を可能な範囲で確認し、請求人と類似する同業者(青色申告者)を採用した。

〔審判所の判断〕

 審判所が調査審理した結果、原処分庁が選定した同業者の業態は請求人と異なると認められたため、審判所が、新たに所轄署及び近隣署管内の青色申告者で、業種、規模及び業態が請求人と類似する者を選定し、その所得率により事業所得の金額を算定する。

(3)国際取引(法人税)事例

〔概要〕

 請求人が、A国の子会社Bの増資に当たり、中古機械装置をB社宛に輸出したことにつき、当該輸出取引は輸出承認申請書等に記載された価額による売買であるか、B社に対する現物出資であるかが争われていた。

〔請求人の主張〕

 次のとおり、当該輸出取引は現物出資である。

  1. 1 請求人は、A国政府から、B社の資本金が過少であるとの指摘を受け、中古機械装置を現物出資して資本金を増額することとした。
  2. 2 中古機械装置の帳簿価額は1,800万円であったが、A国政府から指摘された資本不足を回避し、輸出許可を得るために、中古機械装置の評価額を輸出承認申請書に1億6千万円と記載し、輸出許可を得た。
  3. 3 B社は、その後、中古機械装置の時価は帳簿価額程度であるとして、A国政府に対して、資本金の払込価額の減額訂正申請を行った。

〔原処分庁の主張〕

 輸出承認申請書及び輸出報告書の記載内容、B社における増資の状況及び中古機械装置の受入価額等によれば、請求人は、B社に中古機械装置を1億6千万円で売却し、その代金を増資の払込みに当てたものと認められる。

〔審判所の判断〕

 審判所が調査審理した結果、次のことが判明したので、中古機械装置はB社の増資に係る現物出資に当てるために輸出されたものと認められる。

  1. 1 中古機械装置の取得価額は7,200万円、輸出時の帳簿価額が1,800万円であることからすれば、輸出承認申請書等に記載された価額1億6千万円は通常取引される価額とは認められず、中古機械装置が輸出承認申請書等に記載された金額で売買されたと判断することはできない。
  2. 2 輸入許可書等によれば、当該取引は現物出資を前提として手続きが進められていた(株式投資取引)ことが認められる。また、その後、資本金の不足額については、中古機械装置の時価が帳簿価額程度であるとして、貸付金との相殺及び現金により出資が行われている。

(参考)

国際取引(法人税)事例

(4)国際取引(贈与税)事例

〔概要〕

 請求人が、A国に出国した(平成9年12月9日)後に、父BからC国の法人の株式(本件株式)を受贈した場合につき、その取得時期は出国前か、出国後かが争われていた。
 Bは、この贈与に先立ち、証券会社が提示した企業買収計画に参加するため、銀行からの借入金(平成9年5月26日)をもって、C国法人を設立した(平成9年6月11日)。

〔請求人の主張〕

 本件株式の取得時期は本件贈与契約書が作成された平成9年12月18日であり、請求人は、同日において、相続税法の施行地に住所を有していないため、贈与税の納税義務を負わない。

〔原処分庁の主張〕

  1. 1 C国法人の設立から本件株式の贈与に至る一連の行為は、贈与を受けた時において国内に住所を有しない者に対する国外財産の贈与が贈与税の対象とならないことに着目したもので、贈与税の回避及び相続税対策以外には何ら経済的必要性及び合理性の認められないものである。
  2. 2 一連の行為は、B死亡前わずか一年の間に行われたもので、請求人の合意なしには成し得ないものであるから、C国法人に係る資本払込が実行された時点(平成9年6月11日)において、贈与の合意があったと認められる。

〔審判所の判断〕

 審判所が調査審理した結果、次のことが判明したので、請求人は贈与税の納税義務を負う。

  1. 1 贈与契約の成立時には書面が作成されておらず、その後に書面が作成されたときは、そのとき以降において、贈与を取り消すことはできない。
  2. 2 関係者間の書簡等からみて、贈与財産の形成に着手した、C国法人の設立資金の借入日(平成9年5月26日)までには、本件株式に係る口頭による贈与契約が成立していた。
  3. 3 この贈与契約は、贈与契約書(受贈者の住所が未記入の点を除き、本件贈与契約書と同一内容のもの)が作成されたことにより書面による贈与となり、取消し得ないものとなったから、本件株式の取得時期は、贈与契約書がA国に送付された平成9年12月9日と認められる。

(参考)

国際取引(贈与税)事例

相続税法(抄)

平成12年度改正前 現行
(贈与税の納税義務者)

第一条の二 左に掲げる者は、この法律により、贈与税を納める義務がある。

一 贈与(贈与者の死亡に因り効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)に因り財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの










二 贈与に因りこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの


(省略)

(贈与税の課税財産の範囲)

第二条の二 第一条の二第一号の規定に該当する者については、その者が贈与に因り取得した財産の全部に対し、贈与税を課する。

2 第一条の二第二号の規定に該当する者については、その者が贈与により取得した財産でこの法律の施行地にあるものに対し、贈与税を課 する。

(贈与税の納税義務者)

第一条の四 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、贈与税を納める義務がある。

一 贈与により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの


二 贈与により財産を取得した日本国籍を有する個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(当該個人又は当該贈与をした者が当該贈与前五年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがある場合に限る。)

三 贈与によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(前号に掲げる者を除く。)


(省略)

(贈与税の課税財産の範囲)

第二条の二 第一条の四第一号又は第二号〔贈与税の納税義務者〕の規定に該当する者については、その者が贈与により取得した財産の全部に対し、贈与税を課する。

2 第一条の四第三号の規定に該当する者については、その者が贈与により取得した財産でこの法律の施行地にあるものに対し、贈与税を課 する。

(5)その他参考事例

順号 税目 争点 審判所の判断
1 法人  「売上集計表」に記載された収入金額と申告した収入金額との差額を収入の除外金額と認定したことの適否。  「売上集計表」の数値について、審判所で調査審理したところ、取引先の数値と異なっており、信ぴょう性に乏しいものであって、「売上集計表」の収入金額が帳簿以上に信ぴょう性を有すると認められないため、その収入金額をもって真実の収入金額と認めることはできない。
2 所得  事業所得の必要経費として申告されていた1000以上の支出が必要経費に当たるか。  各支出について、審判所で調査審理したところ、当該支出の一部は、接待交際費等の必要経費に当たると認められるが、それ以外は、必要経費には当たらないか、その支払いの事実も認められない。
3 所得  医師の処方した「食餌箋」により購入した自然食品の購入費は医療費控除の対象となる医療費に該当するか。  当該食品は、薬事法第2条第1項に規定する医薬品に該当せず、その購入費は、治療又は療養に必要な医薬品と解することができないから、医療費控除の対象とならない。 
4 源泉  毎年すべての使用人に支給している誕生日祝金は給与所得として課税すべきか。  当該誕生日祝金は、すべての使用人に対して、雇用されている限り毎年誕生月に支給されるものであり、その支給形態等が、広く一般に社会的な慣習として行われているものとは認められないから給与所得として課税すべきである。

(参考)

所得税法(抄)
(医療費控除)

 第七十三条 居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合において、その年中に支払った当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額がニ百万円を超える場合には、二百万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

  1. 2 前項に規定する医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。
  2. 3 第一項の規定による控除は、医療費控除という。

所得税法施行令(抄)
(医療費の範囲)

第二百七条 法第七十三条第二項(医療費の範囲)に規定する政令で定める対価は、次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。

  1. 一 医師又は歯科医師による診療又は治療
  2. 二 治療又は療養に必要な医薬品の購入
  3. 三 病院、診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
  4. 四 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第三条の二(名簿)に規定する施術者(同法第十ニ条のニ第一項(医業類似行為を業とすることができる者)の規定に該当する者を含む。)又は柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第二条第一項(定義)に規定する柔道整復師による施術
  5. 五 険師、看護師又は准看護師による療養上の世話
  6. 六 助産師による分べんの介助

所得税法(抄)
(給与所得)

第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
(省略)

所得税基本通達(抄)
(雇用契約等に基づいて支給される結婚祝金品等)

28-5 使用者から役員又は使用人に対し雇用契約等に基づいて支給される結婚、出産等の祝金品は、給与等とする。ただし、その金額が支給を受ける者の地位等に照らし、社会通念上相当と認められるものについては、課税しなくて差し支えない