日時: 令和2年10月27日 14:00〜15:25
場所: 国税庁第二会議室
出席者: 国税審議会委員 田近会長 山田会長代理
秋葉委員 五十嵐委員
遠藤委員 大倉委員
小川委員 鹿取委員
川北委員 河村委員
神津委員 佐藤委員
手島委員 中空委員
廣重委員 三村委員
吉村委員
説明者 国税庁 可部国税庁長官
東国税不服審判所長
鑓水国税庁次長
小宮審議官
木村審議官
重藤課税部長
槇原徴収部長
平井調査査察部長
高橋人事課長
永田企画課長
郷酒税課長
細田総務課長
原田国税企画官
会長
定刻になりましたので、第21回国税審議会を開催いたします。
国税審議会会長の田近でございます。よろしくお願いします。
本日は、委員の皆様方には大変お忙しいところ、御出席いただき誠にありがとうございます。本日は委員の過半数の方々に御出席していただいていますので、国税審議会令第8条第1項の規定に基づき、本会は有効に成立しております。
まず、私の方から委員の異動について報告があります。
既に御案内していますが、6月25日付で中村豊明さんが国税審議会の委員を辞任され、後任として河村芳彦さんが委員になられました。河村委員は国税審査分科会に所属していただいています。
また、同じく6月25日付で篠原成行さんが国税審議会委員を辞任され、後任として大倉治彦さんが委員になりました。大倉委員は酒類分科会に所属していただいています。
大倉委員
よろしくお願いします。
会長
それでは、本日御出席いただいております委員の方々を御紹介させていただきます。
会長代理の山田洋委員。
税理士分科会会長の佐藤英明委員。
酒類分科会会長の三村優美子委員。
以下、五十音順に紹介させていただきます。
秋葉賢一委員。
五十嵐文委員。
遠藤みどり委員。
大倉治彦委員。
小川令持委員。
鹿取みゆき委員。
川北力委員。
河村芳彦委員。
神津信一委員。
手島麻記子委員。
中空麻奈委員。
廣重美希委員。
吉村典久委員。
なお、石田千委員、小関卓也委員、渡辺哲委員におかれましては、御都合により欠席です。
引き続いて、国税庁側の出席者を細田総務課長から紹介していただきます。
総務課長
総務課長の細田でございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
それでは御紹介させていただきます。
可部国税庁長官でございます。
東国税不服審判所長でございます。
鑓水国税庁次長でございます。
小宮審議官でございます。
木村審議官でございます。
重藤課税部長でございます。
槇原徴収部長でございます。
平井調査査察部長でございます。
高橋人事課長でございます。
永田企画課長でございます。
郷酒税課長でございます。
原田 国税企画官でございます。
以上、どうぞよろしくお願いします。
会長
それでは、本日の議題に入る前に可部長官より御挨拶をいただきたいと思います。
可部長官、よろしくお願いします。
国税庁長官
国税審議会の開催に当たりまして一言御挨拶を申し上げます。
本日は、田近会長をはじめ、皆様方には御多忙の中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。また、委員の皆様方には、税理士業務の適正な運営、酒類業の健全な発達に関わる事項等、日頃から税務行政全般にわたりまして深い御理解と多大な御協力を賜り、この場をお借りいたしまして厚く御礼を申し上げます。
国税庁の使命は、財務大臣の訓令において、納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現することとされております。この使命は時代を超えて変わらず、その礎は納税者の皆様と国税組織との信頼関係にあると考えております。
他方で、私どもの国税組織を取り巻く環境は、急速に変化をいたしております。
経済活動のICT化やグローバル化等はもちろんのこと、新型コロナウイルス感染症対応等の新たな課題に直面をしております。
このように社会経済環境が大きく変化する中で、引き続き、国税庁がその使命を適切に果たしてまいりますためには、大きく2つの柱に沿って対応していく必要があると考えております。
一つは納税者の利便性の向上でございます。
申告納税制度の下では、納税者の皆様の理解と信頼を得ていくことが何よりも大切でございます。本年は、昨年と比べますと新型コロナウイルス感染症の拡大という状況もございまして、自宅等からe-Taxを利用いただいた方が5割増でございました。また、スマホを使ってe-Taxを利用いただいた方は4倍ということで、大幅に増加しております。この結果、おかげさまで、e-Tax利用率は法人では9割、個人では6割まで高まってまいりました。今後、新しい生活様式の下で納税者の皆様がより便利に、また、スムーズに申告・納税手続を行っていただけるよう、納税環境の整備に一層取り組んでまいりたいと考えております。
もう一つの柱は、調査・徴収の効率化・高度化でございます。
適正な申告を行っていただいた納税者の皆様が不公平感を抱くことがないように、調査・徴収の効率化・高度化を図りながら、悪質な納税者に対しては、厳正な態度で臨むことにより、適正・公平な調査・徴収を実施していかなければなりません。
このためには、日々進化しておりますICT技術を取り入れたAIの活用等の取組をさらに進展させていくことが必要であると考えております。
昨今、企業におきましては、ビジネス環境の激しい変化に対応するために、デジタルトランスフォーメーションを推進する動きが広がりつつあります。新内閣におきましても、来年度のデジタル庁発足に向けて準備を進めているところであります。国税庁におきましても、平成29年6月に、概ね10年後をイメージいたしました税務行政の将来像を公表してスマート税務行政に進化していくことをお示ししております。
この税務行政の将来像を公表してから3年以上が経過いたしましたが、その間にもデジタル技術は急速に進展をしております。
今後は、こうした変化や納税者の皆様のニーズを十分に踏まえながら、税務行政自身のデジタルトランスフォーメーションについて、既存の価値観や枠組みに捉われずに、柔軟な発想の下で、さらに大きく前進をさせてまいりたいと考えております。
本日は、税務行政の現状と課題といたしまして、国税庁における、これまでの新型コロナウイルス感染症に関する取組、あるいは税務行政のデジタルトランスフォーメーションの取組状況等につきまして御説明させていただく予定となっております。
田近会長をはじめ、委員の皆様方におかれましては、幅広い見地から忌憚のない御意見、御指導を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。
会長
可部長官、ありがとうございました。
それでは、議事次第に従い進行させていただきます。
本日の会議の議事要旨や議事録の公開につきましては、国税審議会議事規則第5条第2項に則り、まずは、簡潔な内容のものを議事要旨として公表し、議事録は完成次第公表させていただきたいと思います。なお、議事録につきましては、公表前に皆様の御発言内容に誤りがないかを確認させていただきたいと思います。議事要旨の内容につきましては、会長一任ということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
会長
異議なしの方は挙手をお願いします。ウェブの方は手を挙げるボタンでお願いします。一応手を挙げていただけますかね。
(「異議なし」の挙手あり)
会長
ありがとうございました。
それでは、最初の議題に入らせていただきます。
まず、お手元の資料3です。国税審議会各分科会の最近の活動状況についてです。
例年は、各分科会長から御説明いただいていますが、資料3に記載のあるとおりですので、詳細な説明は省略させていただきます。
この資料3の2ページのとおり、基本的には新型コロナウイルス感染症への影響もあり、税理士分科会が、例年のとおり会議を開いて仕事を進められたということだと思います。
引き続いて、次の議題に入りますが、以降の議題については、事務局から説明いただいた後、質問や意見を伺いたいと思います。
それでは、事務局から御説明をお願いします。
総務課長
ありがとうございます。
私の方から資料4「税務行政の現状と課題」について、御説明をさせていただきます。お手元の資料4を御準備ください。
まず、2ページ目の目次でございます。
最近の国税庁の取組といたしまして、本日は新型コロナウイルス感染症に関する国税庁の取組、税務行政のデジタルトランスフォーメーション、その関連で最近注目されております押印等の見直し、そして令和3年度の予算要求につきまして御説明をさせていただきます。
3ページ目を御覧ください。まず、新型コロナウイルス感染症に関する国税庁の取組につきまして御説明をさせていただきます。
国税庁におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、申告や納付が困難な方には、その期限を柔軟に取り扱うことや納税が困難な方には、納税の猶予制度を御案内するなど、納税者の皆様の実情に十分耳を傾けて迅速かつ丁寧な対応に努めてきたところです。
また、国税庁の対応や取組につきましては、ホームページによる周知・広報のほか、報道発表、新聞、テレビ、インターネットによる広告等、様々な手段を活用して速やかな情報発信を行うとともに、関係民間団体や地方公共団体を通じて、幅広く周知・広報を行ってきているところです。
具体的な取組について、以下、御紹介させていただきます。
1つ目は所得税等の確定申告の取組でございます。
確定申告につきましては、本年の2月27日に申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限を4月16日まで延長することを公表したところです。
さらに、その後、新型コロナウイルス感染症の感染が各地で拡大したことに鑑み、4月6日には感染拡大により外出を控えるといったことで、期限内に申告することが困難な方については、期限を区切らずに4月17日以降であっても柔軟に確定申告書を受け付けることを公表しております。
2つ目は法人税、相続税、酒税等の申告・納付期限に関する取組でございます。
法人税や法人の消費税、源泉所得税等につきましても、新型コロナウイルス感染症の影響により、その期限までに申告・納付ができないやむを得ない事情がある場合には、所得税等と同様に個別に延長が認められることを公表しています。
3つ目は、納税が難しい方への対応です。
新型コロナウイルス感染症の影響により資金繰りが悪化するといった納税が難しい方につきましては、納税者の置かれた状況や心情に配慮して、納税の猶予等の猶予制度を迅速かつ柔軟に適用することとしました。
さらに、4月30日に新型コロナ税特法が成立・施行したことを受けまして、令和2年2月1日から令和3年2月1日の間に納期限が到来する国税を対象に、新型コロナウイルス感染症の影響により事業等に係る収入に相当の減少があった場合、1年間、国税の納付を猶予する、また、その延滞税も免除するとともに、担保の提供も不要とする措置、いわゆる納税の猶予の特例を行うことを積極的に広報しております。
1枚おめくりいただきまして4ページ、4の酒類事業者に関する取組でございます。
1つ目にありますように、料飲店等の資金繰りを支援するために、在庫酒類の持ち帰り用販売等を可能にする料飲店等に対する期限付の酒類小売業免許を新たに設けるとともに、迅速な手続でこれを付与することといたしました。
また、2つ目にありますように、手や指の消毒エタノールの需給が逼迫している状況を改善するため、酒類の製造者が製造する高濃度エタノール製品に関しまして、製造する場合の免許手続等の簡素化を行うとともに、容器に飲用できない旨の表示をすること等、一定の要件を満たしたものについて酒税を課さないこととし、併せてその製造・分析に係る技術相談を実施いたしました。
また、3つ目にありますように、酒類の国内消費の回復・拡大を支援するための取組としまして、令和2年度第一次補正予算により、地域での消費者向けイベント等のプロモーションを実施することとしております。
最後に、5にありますように、国税庁における感染防止策でございます。
左側にありますように、税務署の窓口におきましては、職員のマスク着用を徹底し、カウンターや面接ブースの消毒、定期的な換気を行っているところです。そして、職員は毎朝体温を測定し、発熱等の有無を確認することとしております。
また、右側にありますように、調査・徴収事務におきましては、出張前に検温する、また、出張先でのマスク着用の徹底、応接の際には一定程度の距離を保つなどの対応を行っているところです。
引き続き、コロナの影響により納付が困難な方等には、丁寧な対応に努めるとともに、様々な取組については速やかな情報発信や幅広い周知・広報を行っていきたいと考えております。
5ページにお移りください。ここからは、政府全体でも取組が加速しておりますデジタルトランスフォーメーションの対応について御説明をさせていただきます。
税務行政のデジタルトランスフォーメーション、ICT化に関しては、これまでも国税審議会でも御紹介させていただいておりますように、積極的に取り組んできたところでございます。
具体的には、この5ページにありますように、平成29年6月に税務行政の将来像というのを公表しております。
この将来像は、おおむね10年後の将来を念頭に、国税庁としてどのような税務行政を目指すのかというイメージを示したものでございますけれども、一言でいえば、ICTを活用したスマートな税務行政を目指すようというものでございました。このスマート税務行政というコンセプトを支える2本の柱が、左側にありますように「納税者の利便性の向上」と、右側にあります「課税・徴収の効率化・高度化」となっております。この将来像の下で具体的に取り組んできたことにつきまして、幾つか御紹介させていただきたいと思っております。
6ページにお進みいただきますと、この税務行政のデジタル化ということで、まず、国税では平成16年からe-Taxを提供しているところでございます。
現状でございますけれども、国税の申請の件数ベースで見ますと、箱の真ん中辺りに書いてございますが、99%の手続がe-Taxを通じて行えるというような状況になっております。また、下のグラフにございますけれども、主要な手続であります所得税や法人税の申告におけるe-Taxの利用率は、当初数年こそは伸び悩んでおりましたが、平成19年度以降は順調に伸びておりまして、直近の令和元年度では、所得税の6割、法人税の9割がe-Taxで申告をされているということでございます。こうした中で、国税庁の中でこれを支える国税庁のデジタル化の取組について御紹介をさせていただきます。
7ページにお移りください。この税務行政のデジタル化を進めて、e-Taxの利用率をさらに向上させるための取組の一つとして、スマートフォンやタブレットによる申告というのを御紹介させていただきます。
国税庁のホームページで申告データをつくることができる確定申告書等作成コーナーにつきましては、従来、パソコンで使うことを念頭に作られておりましたが、2年前の確定申告からスマートフォン専用の画面を提供しているところです。上の段の「これまでの取組」にございますように、現時点ではスマホで申告書を作成し、マイナンバーカードを読み取って申告書をオンラインで送信するといったことはできますが、これをもっと便利にしていこうというのが今後の取組、下の段のところでございます。
具体的には、令和3年以降はスマートフォンでマイナンバーカードを読み込むことで、ICカードリーダーがなくてもタブレットで申告データが送信できるようにする予定でございます。また、令和4年1月からは、スマホ専用画面の対象を特定口座関連の申告にも拡大する予定でございます。また、スマートフォンのカメラで源泉徴収票を撮影して文字を認識することによって、その内容を自動入力するといったこともできないかということも検討しております。
8ページにお移りください。マイナポータルを使った年末調整や確定申告の簡便化の取組にも取り組んでおります。
国税庁では、今月初めから従業員が雇用主に提出する年末調整関係書類を電子的に作成するソフトの提供を開始いたしました。このソフトでは、従業員の方がマイナポータルを通じて入手した生命保険料控除証明書のデータを読み込んで、申告書のデータに自動で反映する機能を有しております。マイナポータルを通じて入手した各種データの自動反映は、確定申告においてもできるようにする予定です。その対象となるデータにつきましては、一番下の米印のところにございますが、医療費等徐々に拡大することを予定しております。
こうした取組のためには、証明書データの発行等を行う民間企業や行政機関の協力が不可欠ですが、国税庁としましては引き続き関係機関への働きかけを行うなど、納税者にとって利便性の高い仕組みが早期に実現できるように努めてまいりたいと考えております。
資料9ページにお進みください。チャットボットによる税務相談の取組でございます。
AI、人工知能を活用して、税に関する質問に対し自動的に回答を表示するチャットボットを利用した税務相談につきましては、今年の1月から5月にかけまして、所得税の確定申告に関する質問を対象として、試験導入を行いました。税務職員の「ふたば」さんというキャラクターを使っております。これを受けて、明日から年末調整のよくある質問に対応したチャットボットのサービスを改めて開始する予定でございます。また、年明けからですが、所得税の確定申告に関する質問項目を拡充する予定としております。こうした形で、土日や夜間も含めて気軽に税務相談ができる体制を作っていきたいと考えております。
このためには、最後の米印にもございますけれども、相談事例を蓄積しつつ、AIによる学習を繰り返すことによって、順次相談内容を拡大していきたいと考えております。
10ページを御覧ください。ここまでは、納税者の利便性の向上にフォーカスして取組の説明をしてまいりましたが、ここではもう一つの柱であります税務行政の効率化・高度化にも資する取組であります基幹システムの刷新について御紹介をさせていただきます。
資料上の方にあります、次世代システム構築のコンセプトというところを御覧いただきますと、1つ目に書面中心の事務処理を、データをシステム上で処理、決裁できるようにすることで、事務を効率化するように転換していくこと、2つ目に税目別・事務系統別の縦割りのシステム構成だったものを、データ・ベースやアプリケーション等横串で統合していくこと、3つ目に独自のシステムである、いわゆるメインフレームを脱却して、変化に柔軟に対応できるオープンなシステムへと刷新していくこと、この3点がこの次世代システムの整備のコンセプトとなっております。こうしたシステムの刷新により、事務処理の効率化を図るとともに、データ等も活用した課税・徴収の効率化にもつなげていきたいと考えております。
国税庁ではこうした形で納税者の利便向上、税務行政の効率化・高度化のために色々な取組を順次進めているところでございますが、経済社会の構造変化、また、デジタルトランスフォーメーションをめぐる議論が活発になる中で、先ほど申し上げた税務行政の将来像についてもアップデートしていく必要があると考えております。今後、国税庁において検討作業を行っていく中で、国税審議会の先生方に御意見をお伺いすることもあるかと思います。いずれにしても、将来像のアップデートがまとまりましたら委員の先生方に事前に御報告をしたいと考えております。
11ページにお進みください。これから3枚ほどはデジタル化のために重要となります書面、押印、対面原則の見直しに関する動きにつきまして、政府税制調査会の資料を使いまして御紹介をさせていただきます。
新聞でも報道されていますし、非常に関心も高い分野かと思いますが、これにつきましては、上の段の規制改革推進会議の決定の真ん中辺りに線が引いてありますが、現在、書面や対面でしか行うことのできない手続は、全てオンラインでできるようにする、また、押印を求めているものについては、真に必要な場合を除き押印を廃止する、というのが政府の方針となっております。
12ページにお移りください。そういう中で、国税関係手続は現行制度の概要の一番上に書いてありますように、国税通則法等で税務書類には押印の義務が課されているところでございます。
これに対しまして、先に申し上げましたように、真に必要な場合を除き、押印を廃止するという政府方針の下で、一番下の論点の1つ目にありますように、押印は原則として廃止すべきではないかというのが、まず1つの大きな論点でございます。その際に、「真に必要な場合を除き」とはどういう場合が想定されるだろうかということを示したのが、このページの中段、現行制度の概要の2つ目の黒ポツのところでございます。
例えば、担保提供関係の書類ですとか、相続税の申告に添付する遺産分割協議書等、現在、実印とともに印鑑証明書の添付を求めている書類がございます。こうした書類につきましては、押印を行う方の真意を確認する必要が高いということが言えるのではないかと考えております。いずれにしましても、本件につきましては、現在、税制当局を中心に検討が行われているところでございますが、国税庁としても、その状況を注視していきたいと考えております。
続きまして13ページ、書面・対面原則の見直しでございます。
6ページにありましたe-Taxの利用率のところでも触れましたが、現在、国税に関する申告や申請というのは、件数ベースでは、ほとんどがオンラインで手続可能となっているところでございます。制度的にどうなっているかと言いますと、この現行制度の概要のところに書かれておりますが、オンラインで手続を行う場合には、申告書等に記入すべき事項を入力して送信しなければならない。したがいまして、入力フォームがないものについては、e-Taxで申告などができないというのが現行の制度となっております。
これに対して、入力フォームがない手続については、様式をスキャンしたものを送ればよいこととしてはどうかというのが下の論点のところで提案されている内容ですが、こちらにつきましても税制当局を中心に行われている議論を注視してまいりたいと考えております。
14ページにお移りください。これから令和3年度予算要求の関係でございます。最初に機構・定員要求の概要、続いて予算について御説明させていただきます。
機構・定員要求につきましては、軽減税率制度実施等への対応、租税回避等への対応、「新たな日常」の実現に向けた対応、日本産酒類の輸出促進への対応といった観点から機構・定員要求を行っております。先ほど、デジタルトランスフォーメーションの取組を御説明しましたが、そうした取組をしっかり進めていくために、例えば、機構面ですとICT化への対応として大阪国税局に情報システム管理官を、定員面では「新たな日常」の実現に向けた対応として、定員を要求しているところでございます。
この情報システム管理官は、統計モデルやAIを用いた高度なデータ分析、システム開発等に取り組んでいくために要求をしております。国税局には、既に情報システム管理官が設置されておりますが、東京国税局には東ブロックのセンター局としての役割を、大阪国税局には西ブロックのセンター局としての役割を担わせたいと考えているところでございます。
また、「新たな日常」の実現に向けた対応として、マイナポータルを活用した年末調整、確定申告手続の簡素化、またチャットボットの導入による税務相談の高度化、こういった、さらなる納税者利便の向上に取り組んでいくための体制を整備するための定員を要求しているところでございます。
このほかの主な要求事項としましては、国際化への対応として大阪国税局調査第1部に国際監理官を要求したり、令和3年度から税務署の内部事務を集約するための業務センター室の開室に向けて、国税局に業務センター室、統括国税管理官、主任国税管理官といったポストを要求しております。
定員につきましては、軽減税率への対応、租税回避、日本産酒類の輸出促進、こういった観点から84名の純増を要求しているところでございます。
15ページに移りまして、令和3年度の予算の概算要求でございます。令和3年度につきましては、経済取引の複雑化、国際化、ICT化の進展等、税務行政を取り巻く環境の変化に適切に対応し、適正公平な賦課・徴収を実現するために必要な経費を確保する観点から、資料にありますような要求を行っているところでございます。全体としましては総額で約7,343億円となっておりまして、令和2年度予算総額に対し、約149億円の増額としております。
人件費を除く一般経費のうち、主な項目について御説明をさせていただきます。
1にあります情報化経費は、KSKシステムの関係経費、ICT化の推進化経費等でございます。
2にあります納税者利便向上経費は、e-Taxの運用や電話相談事務の集中化等のための経費でございます。例えば、テレワーク、モバイル環境経費、マイナポータル連携の拡充経費、チャットボットに係る経費等でございます。
次に4の庁局署一般経費でございますが、これは、税務のための所要費、通信費等でございます。確定申告会場の運営において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を徹底するためには、来場者の削減等により、社会的距離を確保することが重要ですので、自宅からのe-Taxの利用をこれまで以上に周知・広報するための経費が含まれております。
最後に11にあります酒類業振興事業経費は、日本産酒類の競争力強化等に必要な経費でございます。この令和元年度補正や令和2年度予算を通じて大幅に増額してきたところですが、令和3年度予算におきましても、日本産酒類の輸出促進の取組のさらなる強化・拡充というものと、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、酒類の国内消費が大きく減少していることを踏まえて、国内需要を開拓するための支援事業、この2つの柱として、さらなる増額を要求しているところでございます。
私からの説明は以上でございます。
会長
細田総務課長、ありがとうございました。
1つ目が新型コロナウイルス感染症に関する国税庁の取組。
2つ目が税務行政の将来像ということで、私も覚えていますけれども、平成29年6月に税務行政の将来像を公表して、それ以来、色々な取組をしていることを今日御紹介いただいた。
それから今、大きな問題になっている税務上の書面、押印、対面原則の見直し。
それから国税庁の予算要求ということで、最近の話を、あるいは問題をご紹介いただきました。
これからは、しばらくフリートーキングですから、せっかくの機会ですので、どのような点からでも御質問、御意見があればテーマは幾つか広がっていましたけれども、御自由に御意見いただきたいと思います。
よろしくお願いします。
神津委員
8ページからいきたいと思いますけれども、いよいよ、マイナポータル連動ということが具体化されてまいりまして、8ページの一番下の方に、マイナポータル連携対象となる情報は順次拡大していくということで、令和2年からと令和3年、令和4年分以降ということで、大いに、このシステムが定着することを期待しているわけでございますけれども。
お伺いしたいのは、今現在、生命保険料控除とか損害保険料控除の証明書が順次送られてきているという状況の中にあって、今後、このシステムが定着したときに、そういう紙ベースでの申告と、このマイナポータルにいわゆる連動して電子化されるのと、重なって行われるのか、それともシンプル化して電子だけになるのか。まあ、電子だけを期待したいわけでございますけれども、紙ベースでも一応送らなければならないのかというようなことをあえて伺います。今のところ、どのようなイメージでやられているかということをお伺いしたいと思います。
それと、10ページの図で、KSKシステムが令和8年まで継続されて、次世代のシステムにスイッチするということが書かれておりますけれども、これも、イメージとして教えていただきたいのですが、資料の図で「調査先等」と記載されている箇所について、左の図では、「×(バツ)」にされていますが、令和8年度からは、その「×(バツ)」がなくなっているというようなこと、「外部データの取込み」も矢印がついていて取り込むように記載されています。この意味について説明していただけるとありがたいと思います。
それと、最後でございますけれども、11ページの書面、押印義務の廃止ですけれども、我々も押印の廃止については、原則的に全面的に賛成でございます。これは必要ないであろうというようなことでございますけれども、ちょっと危惧されるのは、相続税の申告の際に、相続税の申告のシステムは、全員が1つの申告書に記名して押印するというスタイルを取っていて、例えば、被相続人がいらして、相続人が3人いらっしゃるときに、1人だけ、その申告に反対しているというか、まあ、一緒に連動してやっていない方がいらっしゃるので、その申告書には判子を押さないということになっているけれども、押している方については、申告義務を果たしているということですけれども、押してない方は申告義務を果たしていないということになります。
その方が御自分でやられる、または、他の税理士に頼んでやられているかどうかは、分かっている場合もありますが、ほとんど分かっていないというような状況でございまして、それを押印されている、されていないということで外形標準的に見分けることができるのは、比較的、それはそれで便利なシステムだと思うのですが、何か、これを担保するようなシステムを新たに考えていかなければならないと考えているところですが、そうした点について何かお考えがあったら教えていただきたいということで、3点御質問させていただきました。
よろしくお願いします。
会長
やや具体的な質問ですけれども。
永田課長、お願いします。
企画課長
企画課長の永田でございます。それでは、今いただきました御質問についてお答え申し上げます。
まず1点目でございます。マイナポータル連携の保険料控除の証明書の関係で御質問をいただきました。現在、書面で送ってきているのですが、その後どうなるかということでございます。
このマイナポータルの仕組みが活用されていきますと、生命保険会社等にとりまして一番大きなメリットになるのは、やはり書面の印刷ですとか郵送費用がなくなっていくということでございます。
このため、生命保険会社等としましては、恐らく、そういう方向で色々な検討を進めていかれるのかなと思うのですが、全員の方がこのマイナポータルをお使いになるかどうかということがあります。やはり郵送の部分も残っていく可能性もあるのかなということでございまして、そこは、それぞれの生命保険会社なり、あるいは損害保険会社の中でいろいろ工夫をしていただきながら進めていくということになると思います。
私どもが、具体的に色々と交渉している過程では、例えば、もう今後書面は要らないよというような意思表示をお客様からしていただいて、それでもって郵送はやめさせていただくとか。そのようなことを具体的にお考えにはなっているようですけれども、まさに、この10月から年末調整で始めさせていただくような仕組みでございますので、今後の普及状況などに応じながら生命保険会社等の皆様の方で色々とお考えになっていくのかなと思っているというところでございます。
それから2つ目、資料の10ページでございます。KSKの次世代システムにつきまして御質問いただきました。この次世代システムの将来像をお示ししている右側の図の中で、調査先からKSKシステムにアクセスをするということができるようになる、それから外部データ、インターネットの取込みができるようになる、そんなようなことをお示ししているわけでございます。
現在のKSKシステムは、対外的なアクセスはできないようにしています。セキュリティーの関係等で、KSKシステムには、外部からアクセスできないような形にしているのですが、ここで考えておりますのは、外部からのセキュリティーに色々と配慮をしながら、部内の職員が、例えば、調査に行きまして、その調査先から自分が持ってきた端末で、そのホストコンピューターにアクセスをする、そういうようなことをイメージしてございます。そういうことが、調査先でも職員ができるようにしてはどうかというアイデアで進んでいるということでございます。
それから、一番右のデータの取込みですけれども、これは今、政府方針の中でも、政府機関の中で色々なデータ連携を進めていくということが推奨されております。この新しいポストKSKのシステムの中でも、そういう外部の情報をしっかり取り込んでいくということ。それから、インターネット上の様々な情報につきましても、セキュリティーを確保した上で、できるだけ取り込んで、それを分析して調査・徴収の効率化にも役立てていきたい、そのようなことを考えているところでございます。
それから、最後にいただきました資料の12ページの押印義務の関係でございます。
専門的な御指摘をいただきましてありがとうございます。まさに今、政府税調でこの押印の廃止につきまして御議論いただいている最中でございます。基本的な方向性といたしましては、神津委員からも御紹介ございましたように、政府の方針として、原則、押印廃止という方向で動いております。
一方で、神津委員からも御指摘ございましたように、専門的、技術的なところで確認が必要な部分をどうしていくのかというところは、やはり検討していかなければいかないテーマだと思ってございます。そうした点につきましては、私どもといたしましても、必要に応じて主税局ともよく議論をしながら進めてまいりたいと思ってございます。
以上でございます。
会長
続けて、どちらからでも御質問、御意見。
では、佐藤さん。
佐藤委員
ありがとうございます。慶應義塾の佐藤です。
今、神津委員から御指摘があって、最後にお答えになった点に関連して一言だけ申し上げます。
動きを注視していくとおっしゃっている税制調査会、それから法制の改正の動きというのは、あくまで法律上の押印の義務の廃止に、限られています。
他方、今、まさにおっしゃったように、法律上には定められていないが、実務としては判子を使っているという場面が相当程度あろうかと思います。これは、実務上の問題ですので、主税局というよりはむしろ国税庁の方で御確認いただいて、その要否を考えていただくことになろうと思います。
例えば、私が所属しております税理士分科会で、税理士の懲戒の書類を見ておりますと、税理士法上の調査の聴取録があって、最後に必ず御本人が判子を押していらっしゃる。この押印については法律上の根拠はないのではないかと思うのですが、そういう場面が多数あって、それは今、神津委員がおっしゃったように、その当該者の意思確認として働いていることと思いますが、そういう法律に必ずしも規定されていない実務における押印の在り方を、ぜひ、ゼロベースでご検討いただきたいと考えております。
コメントですから、何かあれば承りたいですが、これだけでも結構です。ありがとうございました。
会長
永田課長、良いですか。
企画課長
ありがとうございます。私どもといたしましても、今御指摘いただきました部内の書類の中での押印の位置付けにつきましても、よく議論をさせていただきたいと思います。まさに佐藤先生の御指摘のとおりと思っております。
会長
ありがとうございます。
引き続き御質問、御意見。
では、中空さん。
中空委員
ありがとうございます。BNPパリバ証券の中空と申します。
一転して、何か素人のような質問をさせていただいて恐縮ですが、先ほど、御説明あった新型コロナウイルス感染症に関する国税庁の取組というところで、例えば、納税の困難な方、申告・納付ができないやむを得ない事情がある場合、相当の事業等に係る収入に相当の減少があった場合というような表現があります。これというのは、明確に、多分線引きがあると思いますが、この線引きと、それから、期限を区切らずにとありますけれども、実際は、どこまで延長できるのかというような辺りや、それによって、対象とされる税金の金額は一体どれぐらいあるのか。そういう概算の見積りをしておられるのかというところを、まず1つ目として教えてください。
あと2つ目ですが、デジタル化のところです。デジタル化というのは至極当然というか、そうだよねというふうに受け止めることができるわけですが、例えば、私の親とか、高齢者にとってみればデジタル化というのは、嫌でしかないというものなわけです。
そういう嫌でしかないものを押し付けられるときに、どういうメリットがあるのかということが、ちょっと、説明不足かなというふうに思います。デジタル化というのは良いことだ、時代の流れだ、だけではちょっとよくないと思うので、例えば、ヒューマンエラーがこれぐらい減っていますよとか、人件費がこれぐらい減ったとか、あとは、捕捉する対象、捕捉できる率が上がるとか、あるいは徴税額が実際増えましたよねとか。何らかのメリットみたいなものが、説明力としてあるべきではないかなと思います。
納税をする側から見れば、そういうのがあると便利だよねというのは、そのとおりなのですが、何となくこう、何で高齢者の人がこういうことが嫌いかというと、どんどん、どんどんデータが吸い上げられて、国に色々な情報を取られて蓄積されて怖い、嫌らしいと思っているということだと思うので、そういう意味では、どうして、これをやらなければいけないのかということの説明をする必要があるのではないかなと思って聞いていました。
そういう意味では、将来像という中で、最初に神津委員がおっしゃいましたが、やはり、紙ではない方が良い。永田課長の説明では、しばらくは両方だよねとおっしゃいましたが、やはり、10年後ぐらいのタームでいけば100%、もう紙なしでいきますというような徹底したデジタライゼーションということが必要ではないか。その流れでいくと、最後の令和3年度の機構・定員などの要求なのですが、AIとかで推進する、デジタル化すると言っている割には増員要求ですよ、1,227人も、となってくると、国民的にはAIによって省力化されているのに、当面は仕様がないと思うのですが、増員ですと言われると、何となく、ちぐはぐ感、違和感というのは残ってしまうよね、と思います。
ですので、これは当面こういうシステムを作るまでは仕方がないです。だけれども、10年後とか、しかるべき将来、この将来像というのができてくると、人も要らないですよねということが分かれば良いと思います。これだけだとAIやって、デジタライゼーションやって、これまでは、税理士の人が打っていたようなものを、全部国民が打つようになって楽しているよねというふうに思われるのに、増員というのは、何となくしっくりこないと思うのではないかなと思ってお聞きしました。
そういう国民も、よく見れば多いのではないかと思うので、そういう質問とか、そういう不満に対して応えるようなものも考えておくべきではないかと考えます。
取りあえず以上です。ありがとうございます。
会長
コロナ対策とデジタル化に関する幅広い御質問、御意見ですけれども。
課税部長
課税部長の重藤です。
まず、最初の御質問の方ですが、例えば、申告期限の延長の話、それから、例えば、納付の延長の話があったと思います。
まず、申告期限に関しまして、申告期限を1か月延ばしたわけですが、さらにその後、4月17日以降も柔軟に対応するということでやっています。これはまさに、個々の納税者の皆様の状況に応じて、例えば納税者御本人がコロナに感染してしまったとか、あるいは感染していないまでも経理担当者がコロナで在宅勤務になっているとか、まさにそういう個々の事情に応じて、なるほど、その事情がごもっともだということであれば、延長はできるという、そういう取扱いをしているということでございます。その法令的な根拠は国税通則法及び政令等にあるのですが、実際には、そうした個々の状況に応じて申告ができる状態になったときに申告をしてくださいという扱いをしているものでございます。
したがいまして、どのくらい延長できるのかというのも、まさにケース・バイ・ケースですので、一ヶ月経ったところで申告ができる状態になったということであれば、そのときに申告をしていただきますし、まだ申告が難しいという状況がしばらく続いているということであれば、それがやむまでということで。そこはあまり、我々もギチギチと細かくやるという運用は、このコロナに関してはしていないので、比較的、なるほどと、普通に考えてなるほどと思われる事情があればこちらも認めるというスタイルでやってきています。したがって、答えとしましては、いつまでという期限があるわけではなくて、個別にケース・バイ・ケースでやっているということでございます。
それから、納付の期限等に関しましては、これはまた法律上の措置等もありまして、要件とかも決まっておりますので、そこは徴収部の方から。
徴収部長
徴収部長の槇原でございます。
先ほどの納税が難しい方への対応で、どういった方が対象になるのかという話があったかと思います。その要件としましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月以降の任意の期間、一月以上において収入がおおむね20%以上減少するといった方が対象になります。そうした方については、特例の猶予制度というのが認められるということです。
それで、恐らく私の聞き違いかもしれませんが、どれぐらいあるのかという話があったかと思います。この特例猶予の制度の適用件数でございますけれども、令和2年4月30日から9月30日までの5か月間で、おおむね20万件、金額にして約8,000億円の特例猶予が適用されているということでございます。
この数字が多いのか少ないのかということかについて、件数は、例年ベースの大体10倍以上、それから税額ベースが20倍以上に相当するということで、納税が困難な方に幅広く御利用いただけているものと考えております。
以上です。
企画課長
デジタル化の関係、ありがとうございます。非常に大事なご指摘だと思っております。
実はこの資料にはつけていないのですが、一番最初にこの税務行政の将来像を議論いたしましたときには、例えば、実調率が、個人では1%、法人では3%程度まで下がってきているというようなことがございます。したがいまして、我々としては、なかなか十分な調査体制が取れていないのではないかという問題意識がございました。また、実際の追徴税額で見ましても、以前のときよりも随分低いというような実態がございます。
それから、法人数が、この10年20年の間に増えたにもかかわらず、職員の数が増えていない。むしろ減っているというような状況でございまして、そういう中で国民の皆様に申告しやすい状況を作り、より便利に申告をしていただくと同時に、色々なものを電子化して、効率化して、それを課税、あるいは徴収の効率化・高度化につなげていく。そういうことが必要であるという問題意識の下で、こういう取組を始めさせていただいているということが、背景としてはございます。
そういうところから、今御指摘いただいたようなことも参考にしながら、どういうふうに御理解をいただくようにやっていけば良いのか、改めてまた考えさせていただければと思います。
どうもありがとうございました。
会長
可部長官。
国税庁長官
中空委員の方から大変重要な御指摘をいただき、ありがとうございます。
実は四半世紀前に私が税務署長をしていたときは、ただいま紹介があった法人の実調率は9%でしたが、それが今は3%となっております。
つまり、3分の1に落ちているというのが実情です。当時、平均して9%ということは、大企業はもっと頻繁にお邪魔していますが、中小企業でしたら30年に1回ぐらいの調査の頻度になるというようなことを言っていたわけですが、今3%ということになりますと、中小企業だったら100年に1回といった頻度になりかねません。やはり、ある程度接触をさせていただいて状況確認をさせていただくということは、必要ではないかという状況にあると思っております。
そういうことになっている原因としては、内部事務の要処理時間が非常に増えて、そのウエートが増し、外部調査にかける時間が減っているという実情があります。このため、先ほどの紹介にもございましたように、局ごとに内部事務を全部一括して処理する内部事務センター化というものを、いよいよ来事務年度から本格的に実施をしていくということをやっております。これは、内部事務の効率化を進めることによって調査の時間を確保し、実調率を上げていくための取組みでございます。これに加えて、デジタル化によって事務の効率化を図ることができるものですから、それで浮いた人員と時間をぜひ調査の方に振り向けていきたい。その振り向けに当たっても、今まで人力でやっていた部分のうちAIが代替できるところは代替し、調査先の選定等を高度化・効率化することで、より質の高い形で実施をしていきたいということを考えております。
そうしたことを、きちんと御理解いただけるような形で御説明していくことも非常に大事だというふうに思っておりますので、御指摘を踏まえて対応してまいりたいと思います。
会長
オンラインで参加の皆さんも御質問や御意見あれば、挙手ボタンを押していただけますか。
鹿取さん、お願いします。
鹿取委員
鹿取です。
新型コロナウイルス感染症に関する国税庁の取組についてお聞きしたいと思っております。期限付酒類小売業の免許を付与していただきまして、おそらく多くの料飲店さんや、その向こうにいる日本酒の酒蔵やワイナリーの方々が、助かったのではないかと推察しております。ただ、そうしたなかでも、廃業に追い込まれた料飲店さんや販売形態を変えた料飲店さんも見受けられました。
私がすこし伺っている感じですと、10月はGo To Eatの成果もあって急激に売上げが回復していることはしているようです。さらに先日、この期限付免許が3月31日までに延長されたわけなのですが、この2万7,000件の免許を付与された料飲店さんの中で、ほぼすべての飲食店の方々が免許の延長を申請されたのかどうか、教えていただければと思います。
それから、その料飲店さんの中には、これを機に期限付ではない小売免許を取得された方が近くに何件かいらっしゃいました。そういう動きは全国的に見られるのか、それとも、東京の一部の料飲店さんだけの動きなのか。その辺、もし御存じのことがあれば教えていただきたいと思いました。
会長
これは酒税課長お願いします。
酒税課長
御質問ありがとうございます。
まず、期限付免許2万7,000件のうち延長されたのはということでございますが、今回延長するに際しまして、11月末までに延長の申請をしてくださいということでお願いをしておりますので、現時点ではまだその数字は把握できておりません。
2つ目の御質問ですが、期限付免許を取得されて小売免許を取得された方が相当数いらっしゃることは我々も把握しておりますが、手元に具体的な数字がございません。ただ、まだ3桁まではいっていないという状況でございます。
以上でございます。
会長
時間押していますけれども、質問とか。
では、吉村さん。
吉村委員
慶應大学の吉村と申します。
ページでいうと10ページのデジタルトランスフォーメーションについての御質問2件です。
抽象的な質問ですけれども、まず1点は、この図で恐らく、私がまず最初に考えたのは、情報の国際化に関する取組はどうなっているかということです。つまり、CRSがスタートしているので、海外からの情報も入ってきますし、日本で集積した情報が海外に出ていくというときに、守秘義務等の関係で出せる情報と出せない情報を、今後、ますます情報が集約化すればするほど整理が必要になってくるのではないかということで、情報の国際化にどのような対応をされるのか、何か基準を作って、あるいはガイドラインというものをつくって、それに従ってやっていくのかどうかという点です。
東京大学の金子宏先生は、将来的には、恐らく国際納税者番号制度ができるだろうとおっしゃっておられました。つまり、日本も納税者番号制度があるし、EUにもあるということで、そういう各国の納税者番号を連携する、一致するのが一番良いのかもしれませんが、将来的なそういう連携というのを考えておられるのかどうかということが第1点です。
第2点は、デジタル化が、ますます進んでいけば進んでいくほど、特に書面が廃止になると、調査において、例えば、書面の領収書が複数枚、宛先が違うにもかかわらず同じ筆跡だったということで、怪しいものがピックアップできたというようなことができなくなるわけです。したがって、そういうデジタル化社会に対応するような調査官の養成というのを、どのような教育システムで養成しておられるのかというのが2点です。
会長
分かりました。
小宮さん、いかがでしょうか。
審議官
国際担当審議官の小宮でございます。御質問ありがとうございます。
情報の国際化、非常に急速に進展をしているところでございまして、CRS、あるいは移転価格の関係の国別報告書、CbCRという自動的な情報交換というのが近年加わってきているわけでございます。これまでも、法定調書の自動的情報交換はありましたけれども、特にCRSが入り飛躍的に件数も増えましたし、情報の質というのも高まっております。
CRSにつきましては、共通報告基準もございまして、その交換方式も国際的に固まっております。また、CTSというシステムを使っての交換ということになっておりますので、そこは世界で、ある意味共通してやってきている。これは、現在のKSKシステムにも接続をしておりますし、今後の次世代システムにも引き続き接続をしていくということになるかと思います。
国際納税者番号というところまでの検討はなされておりませんが、御案内のとおり、CRSにつきましては、それぞれの国においてTINを要求しているところでございます。これは、引き続きレビューをしながら、国際的にもアップグレードしていくものでございますので、そういうものをよく注視していきたいというふうに考えております。
課税部長
課税部長の重藤でございます。
御指摘ございましたように、確かにデジタルトランスフォーメーションが進むと紙ベースの書類、領収書などがどんどんなくなっていく、確かに昔は現場の調査官がそういう紙を見て、これは何か後から偽造したのではないかとか、不正を見つけていたところは確かにあったのだと思います。
ただ、国税自身がデジタルトランスフォーメーションというのをしなくても、民間の方で、どんどん電子化が進んできていて、領収書等々を含めて紙ベースのやり取りから電子でのやり取りをするようになってきている。したがって、当然、それに対応した調査技法、調査手法というものを我々も考えていかなくてはいけない。いつまでも紙ベースの、昔ながらのやり方ではいけないというのは御指摘のとおりだと思います。
では、どのように、そうしたことができる若手を育成するのかというところなのですが、一言で言えるようなやり方があるわけではない。ただ、いずれにしても、民間の世の中がどういう技術を使って、どういう手法でやり取りをしているのかということについて、税務署も含めた国税の人間がきちんとキャッチアップをして理解していく。そこを理解すれば、逆にそういうシステムの中でどういう不正の糸口があるのかということも分かっていくということだと思いますので、そういう民間の先進の手法とか、商慣行とかをいかに我々がきちんとキャッチアップしていけるか、そこに尽きるのではないかと思っております。
国税庁長官
補足をさせていただきます。例えば、調査手法で言いますと、紙の領収書をめくって筆跡を見るという調査から、膨大な電子データの中から関連する単語等を検索して、メールなり、契約書なり、帳票なりを結びつけていくとか、あるいは、ある人物の保有している口座に関する情報を法人と結びつけていくとか、そうした全く次元の異なる調査手法を求められることが多くなっております。
実際に、査察の現場等では非常に高度な分析機器を使って、そうした調査が行われております。もちろん、そのためには、装備や人材が必要になるわけですが、企業の取引自体が国際化し、ICT化をしていく中で、当然調べる対象も変わってまいりますので、調査手法も御指摘の通り、全く変わってくると考えております。
私どもも、一つはそうしたものに対する調査手法を開発できる人員を育てる、もう一つは、そうやって開発した調査手法をより多くの現場の職員に教育をするという研修をきちんと入れていくという、この2つの面でデジタル化に対応した調査を常に高いレベルで実施していける体制を構築していきたいと考えております。
会長
なかなか語り尽くせないのですが、そろそろ質疑のほうは終わらせていただきたいと思いますが、1つ言わせていただくと、税務行政の将来像は、今日の話を聞いていても、国税庁が巨大なビッグデータセンターであって、その情報をどのように活用していくかということだと思います。
感想とお願いというか期待というのを述べさせていただきたいのですが、5ページに、これ、迫田長官のときだったと思うのですが、平成29年6月に税務行政の将来像を公表した。私は、いかにも国税庁らしくて良いと思ったのは、納税者の利便性と同じように課税・徴収の効率化・高度化をやる、この2つの視点でやるというスタンスは最初から重要ですが、8ページですけれども、この図をずっと見ているわけです。少なくとも3年間ずっと見続けているわけです。
やはり、納税者としては、終わりがどうなのかと。最初、神津さんからこれについてお話がありましたが、下を見ると小出しで、生命保険料、住宅ローン等がマイナポータルに入りますよ、次は、医療費、ふるさと納税ですよ、地震保険料ですよ。その次、検討中で社会保険料。
今は非常に多様な働き方していて、完全な給与所得者は年末調整で終わるかもしれませんが、そんな人は、だんだん少なくなってきた。そうだとすると、給与所得と雑所得で暮らしている人たちにとって、最終形はどうなるのか、フリーランスの人にとっても最終形はどうなるのか。フリーランスの人が納税の時期にマイナポータル開けると、そこに入ってくる源泉徴収を転記すれば終わるのか。転記するときに、どのぐらいそれが簡便にできるのか。
申し上げたいのは、そろそろ、終わりの姿を示さなければいけないのではないかと思います。
だから、今回分かったように持続化給付金でも、ものすごく多様な働き方をしている人がいるわけです。そうした人たちに、幾つかのタイプに対して、こうなるんだよというのをそろそろ示さないと。いつまでも、これが入ってくる、入ってくるで、どこまで便利になるのか、ということが、もう少し進めないといけないのではないかというのが私の感想です。
すみません。少しお話しし過ぎたかもしれませんけれども、そういうわけで、今、こんなことを言いましたから、さらに御質問があるかもしれませんが、ここで一応、総務課長の御説明に対する討議は終わらせていただきます。
次の議題の国税審議会議事規則等の改正について、事務局から説明をお願いします。
国税企画官
国税審議会の議事規則改正につきまして、私の方から説明させていただきます。資料は5−1でございます。
今回の改正は2点ございまして、1点目が情報通信機器による会議及び議決の特例の導入でございます。今日もウェブ会議で行っておりますけれども、一応、国税審議会の法令上はウェブによる開催あるいは持ち回り審議に関する規定が明記されておりません。今後、コロナウイルスの感染拡大、あるいは我々が予測していない事態が生じたときに、円滑に会議が実施できるよう、法令上もウェブ会議等、持ち回り審議に関する規定を設けたいと思っております。
具体的には会議の招集ということで、第1条の第2項のところに「会長は、委員及び議事に関係のある臨時委員に対し、情報通信機器を利用した会議の出席を認めることができる」と。この「情報通信機器を利用した」という文言は、金融審議会の規則にも同様の規定がございます。また、議決につきましても情報通信機器を利用して行われたものを含むこととすると。
また、新たに、緊急に会議を招集できないときに、会長の御判断で情報通信機器その他の方法により議決を求めることができるという規定を設けさせていただければと考えております。
続きまして、懲戒審査委員の推薦及び懲戒審査委員の審査に関する規定の改正でございます。現在、税理士分科会の下に懲戒審査委員というのがございますけれども、ここのメンバーが国税または地方税の行政事務に従事する職員等となっております。
具体的には、今までは「国税庁長官官房総務課長及び総務省自治税務局企画課長の職にある者」とされておりましたけれども、現実に、その会議の時期によりましては、国会等がございまして、なかなか総務省の方、企画課長が参加できないとかいうことが多々ございます。そういう意味で今回、長官官房、総務課長及び自治税務局企画課長の職にあるものを基本といたしますけれども、これに準ずる者ということで参加できるように改正をしたいと思っております。
懲戒審査委員の審査につきましても、情報通信機器を利用した出席等を認めると、同様の規定を設けさせていただきたいと思っております。
以上でございます。
会長
今、御説明いただいた改正案について、御質問や御意見がございましたらお願いいたします。基本的にはこういう状態で、ウェブでの会議、連絡をしたいということでよろしいわけですよね。
今、御説明した改正案について御了解をいただきたいと思います。
異議なしの方はここで手を挙げていただけますか。
(「異議なし」の挙手あり)
会長
分かりました。
あと、ウェブの方は手を挙げるボタンというので、よろしくお願いします。
(「異議なし」の挙手あり)
会長
ありがとうございました。
ということで御賛成いただきました。御了解いただけたということで進めさせていただきます。
本日の議題は以上となります。
もし、何かさらにあれば御遠慮なく発言いただけますけれども。
よろしいですね。
では、これにて本日の審議を終了させていただきたいと思います。
これをもちまして第21回国税審議会を閉会とさせていただきます。
皆様ありがとうございました。

――了――