日時: | 平成27年3月9日 13:29〜14:39 | ||||
場所: | 国税庁第一会議室 | ||||
出席者: |
国税審議会委員 | 岩会長 | 田近会長代理 | |
池田委員 | 石井委員 | ||
河村委員 | 佐藤委員 | ||
篠原委員 | 手島委員 | ||
中村委員 | 橋本委員 | ||
林委員 | 広重委員 | ||
福田委員 | 三村委員 | ||
山田委員 | 吉村委員 | ||
渡辺委員 | |||
事務局 国税庁 | 林国税庁長官 | ||
佐川国税庁次長 | |||
貝塚審議官 | |||
上羅審議官 | |||
藤田課税部長 | |||
古賀徴収部長 | |||
中村調査査察部長 | |||
並木総務課長 | |||
柴人事課長 | |||
河村課税総括課長 | |||
稲本酒税課長 | |||
菅国税企画官 | |||
国税不服審判所 | 畠山国税不服審判所長 | ||
中山国税不服審判所次長 |
総務課長
それでは、定刻より若干早うございますが、ただいまから第16回国税審議会を開催いたします。
本日は、委員の皆様方には御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
私は、国税庁総務課長の並木でございます。
本年1月6日付で、当審議会委員の発令がございました関係上、後ほど会長をお決めいただく必要がございます。それまでの間、私が進行役を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
本日は委員の過半数の方々が御出席でございますので、国税審議会令第8条第1項の規定に基づき、本会は有効に成立いたしております。
まず、本日御出席いただいております委員の方々を、大変恐縮でございますけれども、私から国税審査分科会、税理士分科会、酒類分科会の順に御紹介させていただきたいと思います。
池田隼啓委員でございます。
岩政明委員でございます。
河村小百合委員でございます。
田近栄治委員でございます。
手島麻記子委員でございます。
中村豊明委員でございます。
林菜つみ委員でございます。
山田洋委員でございます。
吉村典久委員でございます。
石井幸夫委員でございます。
福田進委員でございます。
佐藤和夫委員でございます。
篠原成行委員でございます。
橋本佳与委員でございます。
広重美希委員でございます。
三村優美子委員でございます。
渡辺哲委員でございます。
なお、角田光代委員、須磨佳津江委員、辻山栄子委員におかれましては、本日、御都合により、御欠席でございます。
続きまして、行政側出席者につきまして紹介させていただきます。
林国税庁長官でございます。
畠山国税不服審判所長でございます。
佐川国税庁次長でございます。
中山国税不服審判所次長でございます。
貝塚審議官でございます。
上羅審議官でございます。
藤田課税部長は、国会業務のため外出中でございまして、戻り次第、出席する予定でございます。
古賀徴収部長でございます。
中村調査査察部長でございます。
柴人事課長でございます。
河村課税総括課長でございます。
稲本酒税課長でございます。
菅国税企画官でございます。
以上でございます。よろしくお願い申し上げます。
それでは委員の皆様方で国税審議会会長の選任をお願いしたいと思います。国税審議会令第5条第1項によりまして、会長は委員の皆様の互選により選任していただくことになっております。
どなたか御推薦がございましたらお願い申し上げます。
山田委員
会長代理をお務めになりました岩委員にお願いすればと思います。
総務課長
ただいま、岩委員を会長にという御推薦がございましたが、岩委員に会長をお願いするということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
総務課長
ありがとうございます。それでは岩会長には、会長席にお移りいただき、会長に御就任ということでお願い申し上げます。
では、早速でございますけれども、会長から一言御挨拶をいただきまして、その後は議事を取り進めていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
会長
御指名いただきました岩政明でございます。横浜国立大学の法科大学院で租税法を担当しております。国税審議会は私の専門分野に関して直結する審議会でございまして、この会長を務めさせていただくということは、大変光栄に思います。先生方の御支援を賜りまして、精一杯職責を務めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは座って議事を進めさせていただきます。
国税審議会令第5条第3項により、会長がその職務を代理する委員をあらかじめ指名することになっておりますので、会長代理の指名を行いたいと思います。
会長代理につきましては、租税・税制に関して非常に高い知見を持っておられます田近委員に是非お願いしたいと思いますが、田近委員いかがでしょうか。
田近委員
皆さんに御異存なければ、微力ですけれどもお引き受けさせていただきます。よろしくお願いします。
会長
ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題に入る前に、まず林長官より一言御挨拶をお願いいたします。
国税庁長官
林でございます。一言御挨拶申し上げます。
本日は皆様お忙しい中、御出席賜りましてありがとうございます。また、今回の委員就任に際し快くお引き受けいただきまして、ありがとうございます。
国税審議会におきましては、税理士業務の適正な運営、酒類業の健全な発達に関わる事項、国税当局が納税者や国民の権利に関して行った行政処分や不服審査に関わる事項など、重要な事項について御審議いただくことになっております。
今後、これらの事項について御審議いただく際には、是非忌憚のない御意見を賜りまして、御指導をいただければありがたいと思っております。
国税庁におきましては、私どもの使命でございます「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ということのために、常日頃努力しております。このため、納税者サービスを充実させるという観点から、窓口あるいはホームページでも広報や相談に適切に対応するなどの施策の実施に努めています。特に現在、確定申告の時期でございますので、申告相談会場等に来られた方、あるいは自宅等においてホームページで申告書等の作成をされる方が円滑に申告納税をしやすいような環境を作っていくというのが、私どもの仕事でございます。
他方で、きちんと納税していただいている方が不公平感を抱かないように、悪質な納税者には厳正な姿勢で臨むということが必要でございます。
去年の7月に私が長官に就任して御挨拶した際に、ある民間の方が「頑張ってください。いや、国税庁に頑張られると困るのかな。」とおっしゃったことがございましたけれども、頑張っていいのです。困る人は困るわけですけれども、きちんと納税していただいている方は何ら困ることはない。あくまで納税者の方がまずは自発的にコンプライアンスを果たしていただく。これを促すような環境を作っていく。同時に、国税当局はきちっと対応するということでございます。
先週、私はパリに出張しておりました。OECDとG20の国税庁の長官、四十数人が集まるFTAという会合がございまして、その中でも十数人のコアメンバーの長官が集まる会合がございました。
各国の国税庁長官の会合というのは、従来は各国で取り組んでいる施策のベストプラクティスを共有するような部分が多かったのですが、最近は、BEPS、国際的な租税回避への対応や金融口座についての情報交換など、実務的な話をどんどんこなしていくという会合に変わりつつあります。
どこの世界でもそうだと思いますけれども、経済がグローバル化し、ICT化することによって、我々の対象とする業務も難しくなっていくわけであります。それと同時に、国際的な情報交換が進んだり、あるいは国際的な租税回避に対抗しようという政治的、あるいは社会的な意識が高まったり、というのも我々にとって非常に心強いものであると同時に、プレッシャーというか期待も大きくなります。その期待にどうやって応えていくのかという、我々に与えられた責務も大きいわけでございます。
こういった中で、各国の国税庁長官同士、センス・オブ・アージェンシーを高めていかないといけないのではないかという議論がありました。
このように少しお話ししただけでも、私どもいろいろな課題があり、いろいろな対応を迫られております。この後、総務課長から説明させていただきますけれども、今回、あるいは今後の分科会でも、是非忌憚のない話をしていただいて、御指導いただければと思います。ありがとうございます。
会長
ありがとうございました。
それでは早速議題に入らせていただきますが、お手元の議事次第に従いまして、まず「国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況」、続きまして「税務行政の現状と課題の各議題」について、事務局から一通り御説明をいただきます。その後に、各委員の先生方から質問、御意見をお伺いしたいと思います。
それでは事務局からまず、「国税審議会の概要及び各分科会の最近の活動状況」について、御説明をお願いします。
菅国税企画官
審議会事務局の菅でございます。
私からは、国税審議会の概要と、国税審査分科会及び税理士分科会の活動状況につきまして、お手元にお配りしております資料3に基づき御説明いたします。再任された委員の方におかれましては、既に御承知の内容も含まれておりますが、その点御了承賜りたく存じます。
それでは1ページ目の国税審議会の概要を御覧ください。
ここにありますとおり、国税審議会は平成13年に、それまで3つありました審議会が統合されて、発足いたしました。その下の組織図に示しておりますけれども、本審議会の下に国税審査分科会、税理士分科会及び酒類分科会の3つの分科会が設置されております。本審議会の具体的な所掌事務につきましては、「2所掌事務」に記載しておりますけれども、この内容につきましては、それらを分担しております各分科会の所掌事務のところで御説明いたします。
最近の開催状況につきましては、3にありますとおり、平成26年4月に開催されております。
次に2ページ目をお開きください。国税審査分科会の概要でございます。
国税審査分科会は、国税不服審判所長が国税庁長官通達の解釈と異なる解釈による採決を行う場合、また、法令解釈の重要な先例となる採決を行う場合において、国税庁長官が国税不服審判所長の意見を相当と認めない場合等に審議を行うこととされております。
最近の活動状況につきましてですけれども、平成25年2月に開催されております。
続きまして、税理士分科会でございます。3ページを御覧ください。税理士分科会は、大きく分けまして、税理士試験の実施に関すること、税理士に対する懲戒処分等の審議を行うこととされております。
次ページを御覧ください。最近の活動状況といたしましては、昨年4月8日の国税審議会以降5回開催されております。
内訳としましては、税理士試験関係で2回、懲戒処分の関係で3回となっております。税理士試験の関係では、試験問題、税理士試験の実施結果、指定研修の実施などについて審議されております。
また、懲戒処分の関係では、個別の懲戒処分等の可否及び処分内容に加えまして、財務省の告示で定められております「税理士、税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」の改正案などについて審議されたところでございます。
私からは以上でございます。
酒税課長
引き続きまして、酒類分科会の活動につきまして、私、酒税課長の稲本より御説明させていただきます。
資料の5ページを御覧いただきたいと思います。酒類分科会におきましては、酒税の保全のために酒類業者に対して命令を行う場合、酒類の表示基準等について制定を行う場合、さらにはエネルギーや環境関連の法律に基づきまして、酒類業者に命令を行う場合などにつきまして、審議を行うこととされております。
最近の開催状況でございますけれども、前回の分科会は昨年4月に開催されておりまして、「地球温暖化対策に係るビール製造業の自主行動計画」などについて御審議いただいているところでございます。
簡単ではございますが以上でございます。
会長
ありがとうございました。
続きまして、次の議題ですが、「税務行政の現状と課題」に入らせていただきます。
これにつきましても、事務局から説明をお願いいたします。
総務課長
それでは、私から「税務行政の現状と課題」につきまして、御説明申し上げたいと思います。お手元に配付申し上げております資料4を御覧いただきたいと思います。
資料を1枚おめくりいただきますと目次がございますが、9つの項目、40ページ余りの内容となっております。時間も限られておりますので、ポイントを絞って御説明申し上げたいと思います。
まず4ページにお進みください。こちらは国税庁の機構の全体像でございます。
一番左上に全国組織のヘッドクォーターとして国税庁がございます。そしてその右に、地域ごとに設けられております税務署を束ねます国税局が、全国に12ございます。そして、一番右でございますけれども、第一線の現場として納税者に直接接する税務署が全国に524ございます。
税務署はその下にございますとおり、機能別、税目別の各部門から構成されております。国税局につきましては、課税部、徴収部、調査部、査察部というところで、大口、大規模あるいは悪質な事案について直接担当もしておりますけれども、主な業務といたしましては、税務署の指導監督を行っております。また、国税庁につきましては、全国の国税局の指導監督を行っておりまして、組織としては三層構造になっているということでございます。
これに加えまして、左下のところにございますけれども、国税庁の附属機関として、職員の研修を行う税務大学校、納税者からの審査請求についての裁決を行う国税不服審判所、それから本国税審議会が設置されるという構造になっております。
1枚おめくりいただきたいと思います。次は定員関係でございます。
黒い折れ線グラフが国家公務員全体、それから赤い棒グラフが国税庁の定員の推移を表しております。一番右、中ほどのところにございますけれども、27年度の国税庁の定員は5万5,725人ということで、おおむね5万6,000人の規模の組織となっております。これは一般職の国家公務員の組織としては最大勢力ということになっております。
これまでの定員の推移を見ますと、平成元年度に消費税、それから平成4年度に地価税、新税の導入に伴いまして、平成9年度にかけて、御覧のとおり増員が図られております。ここがピークとなっており5万7,202人という規模でございました。
平成10年度からは行政改革が進められるということになりまして、一転いたしまして、国税庁においても定員削減の動きとなっております。その後、19年度から数年の間は、税務調査の複雑困難化に応じて適切な対応を図るということで、若干の増員が行われたわけでございますけれども、大きな流れといたしましては、平成27年度、来年度の定員も含めまして、減少傾向が続いているという状況にございます。
次に、お進みください。こちらは年齢別、男女別の職員構成を示しております。棒グラフが年齢別の構成でございますけれども、御覧のとおり41歳以上、ちょうど真ん中のところから右でございますけれども、この中高年職員の割合が約60%を超える水準となっております。
これにつきましては、終戦後の大量採用の波がそのまま残っているということによるものでございますけれども、組織運営上には処遇の維持ですとか、ノウハウの伝承をいかに図るかといったような問題をもたらすという要因にもなっております。
一方、折れ線グラフは女性職員の割合を示しております。全体として女性職員の割合は18.3%という水準になっております。ただ、折れ線グラフを見ていただきますと、51歳以上のところでは、一桁にとどまる水準であったということでございますし、逆に一番若いところ、一番左端のところでは、30%を超えるレベルとなっております。
30%のレベルと今、申し上げましたが、これが政府全体の目標となっておりますので、女性職員の採用等につきまして、このレベルを維持すべく、しっかり取り組んでいくことが必要かと考えております。
7ページにお進みください。今、申し上げました実態にございます組織の下で行っていく税務行政を取り巻く環境の変化とその課題について、御説明申し上げます。
8ページにお進みください。まず、申告件数の推移を示しております。御覧のとおり、申告件数は長期的に増加傾向となっておりまして、平成元年の2,111万件と比較しますと、25年につきましては1.3倍、2,731万件という水準になっております。これは主に所得税の申告件数の増加によってもたらされておりますけれども、特に、医療費控除ですとか住宅ローン控除といった控除による還付申告が著しく増加するということが最大の要因でございます。
全体といたしましては、先ほど申し上げました定員の減少傾向が続く中で、申告件数が増えているということで、大変職員は忙しい状況に追い込まれているという実態にございます。
9ページにお進みください。こちらは、実調率の推移を表しております。実調率というのは、1年間に実地調査、それぞれ法人・個人の居宅等にお伺いして調査するものでございますけれども、これを実施した件数を法人数・税額のある申告を行った個人の納税者数で除して、その割合を表しているというものでございます。御覧のとおり、この実地調査を実施している割合につきましても、長期低下傾向にございます。
平成25年度は法人について3.0%、個人については1.0%となっておりまして、これは即ち法人については、33年に1度しか調査が来ない。個人については、100年に1度しか調査に来ないというような実態になるということでございます。
こちらにつきましては、先ほどの申告件数の増加によって調査以外の業務量が増えているということ、あるいは先ほど長官の話にもございましたけれども、国際化等によって、調査そのものが難しくなっているといったことによって生じているものでございます。申告が適正でない納税者に対して的確な調査を行うということは、適正公平な課税、徴収の実現という観点からも大変重要でございますので、事務の効率化を進めて、調査事務量を確保して、この実地調査率を上げる。あるいは、重点的に悪質な納税者への対応を図るということが肝要かと考えております。
10ページにお進みください。こちらは租税の滞納状況を表しているものでございます。御覧のとおり、滞納残高は、ピークでございます平成10年度の2兆8,149億円から15年連続で減少しております。
これは、国税庁としては、滞納の未然防止に向けた期限内納付に関します広報、納付しょうようといった取組、集中電話催告センター室を活用しました少額事案への効率的な処理を進めること、あるいは大口悪質事案へ厳正に対応してきたところであり、そうしたことでもたらされた成果でもあると考えております。
しかし、25年度、一番右の数字で見ていただきましても、まだ残高は依然として1兆円を超える高い水準にございます。こちらにつきましても適正に納付を行っていただいている大多数の納税者との間で公平性を確保する観点から、一層効率的、効果的な事務運営を行っていく必要があります。これによって滞納の整理を進めていく必要があると考えております。
11ページにお進みください。ここまで御説明申し上げましたように、定員の減少、申告件数の増加、実調率の低下、引き続き高い滞納残高といった基本的な件数で見ましても、我々の税務行政、大変厳しい状況に置かれているわけでございますけれども、足元では、更に大きな環境の変化にさらされているという状況でございます。
これをイメージとして表したものが、この図でございますけれども、非常に大ざっぱに申し上げますと、環境の変化の大きな要素は、国際化とICT化の二つでございます。
真ん中から左側に、クロスボーダー取引の増加など国際化に関わる項目、それから右側に、電子商取引の急速な拡大などICT化に関わる項目を整理しております。
この二つの変化による我が税務行政の抱える最大の問題は、取引の実態把握が困難になる。そして、その実態解明を行おうとすると大変大きな事務量が必要になるということに尽きておるわけでございます。
もちろん、国際化、ICT化は、我々にとってマイナスの面ばかりではございません。例えば、先ほど長官のお話にもございましたけれども、当局間で国際的な連携が進むという意味での国際化のプラスの面もございます。ICT化に関しましては、例えば、ICTを活用した事務の効率化が図られることになりますし、また納税者サービスの向上も可能となるといった状況にございます。
そうした意味ではこの国際化、ICT化の持つプラスマイナス両面をよく分析いたしまして、その特性に応じた施策を進めていくことが重要かと考えてございます。
12ページに進んでいきますと、今、申し上げました考え方に立って、我々がとるべき行政の方向性を示した図となっております。税務当局の使命は一番上の「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ことでございますけれども、今、申し上げた環境の変化の下でも、その実現のためには、従来から行ってきた適切な調査・徴収、納税者サービスの充実という二本の柱が基本であることには変わりはございません。
ただ今後は、その下の青い箱の中にございますとおり、その中身を変えていく必要があります。即ち調査・徴収に関しましては、重点化ということをキーワードにいたしまして、課税上問題が発生しやすいと思われる国際取引関係、富裕層といったところの調査、あるいは納付意思を全く示さないような悪質な滞納の整理、こういったものに重点的に取り組むといった対応を進めまして、大きな波及・牽制効果といったものをもたらしたいと考えているのが一つでございます。
他方で、納税者サービスの充実ということに関しましては、課税上の問題が少なく、きちんと納税申告が期待される方々へ、ICTを活用した情報提供を充実させる。また、電子申告、電子納税といった利便性の高いツールを提供するということで、自発的に適正な申告納税を行っていただけるようにしたいというのがもう一つということでございます。
こうした納税者のコンプライアンスリスクに応じて、多様な手法を選択することで、限られた予算、定員の下で、国民の期待に応え、しっかり達成していこうというのが、今後、我々が目指すべき方向と整理しておるところでございます。
14ページにお進みいただきたいと思います。表題は、「コーポレートガバナンスの充実を通じたコンプライアンスの向上」となっておりますが、これは、先ほど申し上げました青い箱の右側の方の、自発的な取組を促す方策の具体例でございます。
大企業、中でも資本金40億円以上といった特に大きなところを対象といたしまして、税務調査の機会に、その税務に関するコーポレートガバナンスの状況を確認いたしまして、これが極めて良好であると認められた法人については、企業の自主的な対応に一定程度お任せしようということで、当局による税務調査については、その調査の間隔を延長するというスキームでございます。
次のページにお進みいただきますと、そこにお示ししてありますとおり、平成24年7月から実施しておりますが、結果として十数社に対して調査間隔の延長措置をとっております。これによりまして、一番右の欄にございますとおり、企業側の負担が減るとともに、私どもの調査も、より必要度の高いところに振り向けることができるといった効果が生まれているところでございます。
16ページにお進みいただきますと、こちらは中小企業向けの、同様の目的を持った取組でございます。法人会等による取組を国税庁が後押しするというスタイルで進んでいるものでございますけれども、法人会が作成いたしました自主点検チェックシートがございます。これは内部統制面、会計経理面で企業が決算等に当たってチェックすべき内容をまとめたものでございますが、これを広く一般の中小企業の方にも作成していただいて、確認に使っていただくということで、例えば適正な帳簿の記載などに役立つのではないかということが期待されるものでございます。
こちらにつきましては、私どもが目指す自発的な適正申告につながるというものでございますので、左下のところにございますとおり、各種説明会に国税当局からも講師を派遣するなどして、この普及・促進に協力しておるところでございます。
18ページにお進みいただきたいと思います。次は富裕層、国際取引、海外資産に関する取組でございます。これは先ほどの青い箱でいうと、左側の方の調査の重点化のための施策でございます。これらの取引、富裕層等については、コンプライアンスリスクの高い分野として対応を進めてきておるというところでございます。
具体的にはそちらにございますとおり、年間の所得金額が2,000万円を超える個人の方から、毎年確定申告の際に財産及び債務の明細書を提出いただいております。また、100万円を超える国外への送金ですとか、国外からの入金があった場合には、金融機関からその内容を記した国外送金等調書を提出いただいております。さらには外国の税務当局との間でも、それぞれの国で把握した情報を互いに提供し合う、これは先ほど長官の話にもございましたように、情報交換というものがございますけれども、こういったものを行うということによりまして、富裕層の資産の実態、国際取引に係る金銭のやりとりを的確に把握しようといたしているものでございます。
ただ一番下の箱にございますとおり、近年、富裕層による国外財産の保有が増加傾向にありますし、その保有の手法も多様化するといった動きがございます中で、情報把握の一層の充実を図ろうということで、次のページに進んでいただきたいと思いますけれども、新たな対応も進めておるということでございます。
まず、国外財産調書制度でございます。これは年末時点において、5,000万円を超える国外財産を保有する個人に、その財産の内容を記載した調書を提出いただくものでございます。先ほどの財産・債務の明細書とは異なりまして、申告の有無にかかわらず必ず御提出いただく必要があり、罰則もあるというものでございまして、平成26年から実施しているものでございます。
20ページに進んでいただきますと、これ以外にもそちらにございますとおり、平成26年7月には当局側の体制整備といたしまして東京、大阪、名古屋といった都市の国税局に富裕層プロジェクトチームというものを設置いたしております。個々の富裕層に関します情報収集を行うとか、富裕層のタックスプランニングに関する分析を行うといったことに取り組んでおります。
その他に制度上の対応といたしましては、平成27年の税制改正において、一番上のところにございますが、国外転出する居住者が1億円以上の有価証券等を保有する場合には、国外転出する際に有価証券を譲渡したものとみなして課税するという新たな仕組みを創設いたしております。また、先ほど御説明申し上げました財産・債務の明細書について、記載内容を充実させる。あるいは情報交換制度につきましても、後ほど34ページを御参照いただければと思いますけれども、各国が持つ非居住者の銀行口座に関する情報について、それぞれリクエストして「情報をください」と言って当局からもらうのではなく、あらかじめ取決めをしておいて、自動的に当局同士で情報の交換を行うという仕組みを導入するといったような対応を進めているということでございます。
22ページに進んでいただければと思います。次はe-Taxの取組でございます。e-Taxにつきましては、申告・納税などの手続が自宅から可能となって、納税者の利便性が高まる。それから当局としてもペーパーレスになるといった効率化のメリットがございますことから、その普及・定着に積極的に取り組んでおります。
利用率は表にございますとおり、直近25年度では所得税申告など個人が主に利用する手続で48.6%、それから法人税申告など法人が主に利用する手続で77.8%となっておりまして、年々着実に上昇しております。
これは、23ページにお示ししておりますが、e-Taxで所得税申告を行ったときには医療費の領収書などの書類の添付を省略できるといった取組を行ってきたことの成果のあらわれであろうかと考えております。今後、一層の利便性の向上、あるいは利用率アップを図るため、個人の納税者については、番号制度の導入も踏まえまして、平成29年1月から携帯電話を活用する新たな認証方式を導入することにしております。これによって利便性の向上が図られ、利用率アップが進むのではないかと、我々としては期待しているところでございます。
24ページにお進みください。調査・徴収の重点化、あるいは納税サービスの充実、いずれにも活用が可能ではないかと考えております社会保障・税番号制度についてでございます。
25ページにお進みください。社会保障・税番号制度については、本年10月から、個人番号・法人場号の通知が始まり、平成28年1月、来年1月から順次利用が開始されることとなっております。
個人番号については、市区町村長が住民票を有する全ての方に、12桁の番号を指定・通知します。一方、法人番号については、国税庁長官が付番機関となっておりまして、国税庁長官が株式会社などの法人に13桁の番号を指定・通知するということになっております。
個人番号は、プライバシー保護の関係から厳格な管理が必要でございまして、税、社会保障など特定の分野でしか利用できませんが、法人番号についてはそうした制約はなく、広く一般に公表され、誰でも利用可能となっております。
26ページにお進みください。社会保障・税番号制度が導入されますと、税務当局に提出する申告書、源泉徴収票といった法定調書などに、提出者本人、あるいは従業員の方の番号を記載していただくことが必要となります。
このため事業者は本人確認等を行っていただいた上で、従業員の方の個人番号を提供してもらうわけでございますが、提供を受けた個人番号については、厳格な管理が必要という仕組みになっております。
27ページにお進みいただきますと、個人番号又は法人番号を税務の上で申告書等に実際にいつから御記載いただくことになるかということを簡単に整理しております。
所得税につきましては平成28年分の申告書からということで、平成29年の確定申告期から提出が本格化いたします。法人税につきましても、平成28年1月に開始する事業年度からということでございますので、主には平成29年から申告書が提出されることになります。法定調書につきましては、若干早く平成28年1月の金銭の支払いからということでございますので、法定調書によっては、平成28年から提出が開始されるということになっております。
具体的な社会保障・税番号制度の導入による効果ですが、納税者の利便性の向上ということにつきましては、住宅ローン控除等に係る申告の手続の際、住民票の添付が不要となるよう検討を進めております。こういったことが実現する一方、調査・徴収の適正化といったことにつきましては、番号をキーに法定調書の名寄せができるとか、あるいは申告書との突合が非常に効率的にできるといったことで、納税者ごとの情報の管理、活用が進むことになるということを期待しているところでございます。
28ページにお進みください。こちらは、先ほど申し上げました国税庁が付番機関となる法人番号について、制度の概要と効果をまとめたものでございます。
法人番号は、社会的なインフラということで、幅広い分野での活用が期待されるものでございますから、国税庁としても、地方も含めた他の行政機関、あるいは民間団体についても、利活用の働きかけに取り組んでいるところでございます。
なお、まだ私も見ていないのですけれども、本日から女優の上戸彩さんを起用した番号制度周知のCMが放送される予定となっておりますので、御参考までに情報提供させていただきます。
29ページにお進みください。新聞・雑誌などで数多く取り上げられております相続税の改正についてでございます。
30ページにお進みください。一番上にございますとおり、平成25年度の税制改正によりまして、本年1月以降の相続税については基礎控除額が引き下げられることから、相続税の納税義務者が増えるのではないかと見込まれているところでございます。今後、税務署の窓口にも多くの問合せ、相談といったものが寄せられますので、これにきちんと対応する必要がございます。また、制度の周知が不十分ということになりますと、無申告につながるおそれもあるということで、広報や相談体制の整備に取り組んでおるところでございます。
相続税はそもそもなじみの薄い税制でございますので、まず納税者の方に相続税の仕組みや手続について正しく理解していただくことが必要であろうということで、ホームページに相続税の特集ページを設けるとか、パンフレットを税務署の窓口で配布するといったような取組を既に開始いたしております。
また、昨年11月には、お手元にも配付しておりますが、相続税の仕組みについて解説した相続税のあらましという資料、法定相続人の数とか大まかな財産の価額を入力するだけで申告の要否を確認できる相続税の申告要否の簡易判定シートといったものも作成し、ホームページにも掲載いたしております。
なお、こうした周知の取組につきましては関係民間団体等の協力も不可欠と考えておりまして、日本税理士会連合会のほか、弁護士連合会、公証人連合会、法テラスといったところへも協力要請を実施しております。さらに、実際に申告が必要となりそうな方の具体的な相談につきましては、事前予約制という形をとってしっかり対応するということといたしております。
1枚おめくりください。次は、国際的な租税回避への対抗ということでございます。こちらにつきましては、先ほど御説明しました情報交換をはじめとしまして、国際的に税務当局間で連携をするという形で様々な措置を採っているわけでございますけれども、本日は先ほどお話に出ましたBEPSという取組について簡単に御紹介したいと思います。
36ページをお開きください。BEPSとは、一番上の表題のところ、あるいは中ほどにも書いてございますけれども、税源浸食と利益移転への行動計画ということでございます。これは、リーマンショック後各国の財政状況が悪化する中で、例えばグローバル企業が税制のすき間、抜け穴を利用して節税対策を行うことによって、税負担を軽減しているという問題が顕在化したことに対応するものでございます。
こうしたグローバル企業の活動は各国にまたがるため、1か国だけでは十分取組ができないということで、OECDの租税委員会が中心となって多国間で国際的な取組を進めていくということになったものでございます。
その行動計画が37ページにまとまってございますけれども、電子商取引に対する課税の在り方というのが1番のところの行動に入ってございますが、全部で15の行動として取りまとめられることとなっております。昨年9月に第1弾の報告書の公表が既に行われておりますけれども、本年の年末までに全ての行動計画に関する勧告が行われる予定となっております。
38ページから、その他としておりますけれども、委員の皆様に御審議いただく分野に関連した内容について、簡単に3点御説明させていただきます。
39ページにお進みください。1つ目は国税不服申立制度の改正でございます。昨年6月に公正性、使いやすさの向上といった観点から行政不服審査法の抜本的な見直しが行われて、これに伴って国税に関する不服申立制度の仕組みも改正が行われているということでございます。
その主な内容は、右側のところで青く書いているところがポイントでございますけれども、1点目は、不服申立前置の見直しでございます。従来はまず異議申立てを行って、その後審査請求という原則として2段階の仕組みとなっていたものでございますけれども、改正後は納税者の選択ということでそこに両矢印がついておりますけれども、直接、審査請求を行えるという形に変わっています。
2点目は、不服申立ての期間が、2か月から3か月に延長されたということでございます。
3点目は、証拠書類の閲覧・謄写の範囲や請求できる人を広げる、審査請求人の質問を可能とするといった手続面での規定が整備されたという内容でございます。
現在、制度改正後の体制、手続などについて国税不服審判所、国税庁において検討を進めているところでございます。
40ページにお進みください。税理士制度の見直しでございます。昨年の税理士制度の見直しにつきましては、一番上の二重線の枠の中にございますとおり、税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図るという観点からなされた大変大きな改正でございまして、下にございますとおり12の項目について見直しが行われております。
このうち国税審議会に直接関係あるものは主に2つでございまして、まず6にございます公認会計士に係る資格付与の見直しでございます。これまでは、公認会計士の資格を取得しますと、自動的に税理士の資格が付与されるという制度になっておりましたが、これを見直しまして、税理士制度の信頼性向上、監査の信頼性確保といった観点から、国税審議会の指定する研修を修了した公認会計士に税理士資格を付与するという形に改正がなされたものでございます。
もう一つは、7にございます税理士に係る懲戒処分の適正化でございます。これは、3の項目ですとか12の項目にも若干関連するものでございますけれども、国税審議会で御審議いただきます税理士の懲戒処分の量定等につきまして、事例の集積が行われたことや他の士業の例などに応じて見直しを行ったというものでございます。
41ページにお進みください。酒類行政についてでございます。国税庁は酒類行政を担っておるわけでございますけれども、これは他の税務行政にない特徴がございます。特徴としては2つございまして、一つは酒税の確実な徴収を図るという観点から、酒類の製造、販売について免許制度を採用していることでございます。もう一つは、酒類業という産業の健全な発達のためということで産業政策を行っているということでございます。具体的には、真ん中にございますとおり、酒造メーカーへの技術指導を行う、表示の適正化に関する指導を行う、あるいは一番下にございますとおり日本産酒類の輸出振興のための施策も行うといったようなことを実施しております。
次のページにお進みいただきますと、今申し上げました日本産酒類の輸出動向が示されております。平成26年分の日本産酒類の輸出動向は、一番上の欄にございますとおり総額で約294億円ということで、3年連続で過去最高を記録し続けているところでございます。右下の表にありますとおり、品目別に見ますと清酒が輸出金額の4割を占めて過去最高の115億円の規模になっておりますほか、ウイスキーがジャパニーズウイスキーということで国際的に高い評価を得て、対前年比で見ますと47%という高い伸びを見せているといった特徴がございます。今後もクールジャパン推進の一環として、日本産酒類の輸出振興にも努めてまいる所存でございます。
以上、大変駆け足で御説明申し上げましたけれども、「税務行政の現状と課題」についての御説明でございます。
会長
ありがとうございました。非常に幅広い分野についての御説明をいただいたわけですけれども、ただいま事務局から御説明いただきました事項につきまして、何か御質問、御意見ございましたらどなたからでも結構ですので、おっしゃっていただければありがたいと思います。
中村委員
中村でございます。BEPS行動計画の13では「移転価格文書化及び国別報告書に係る実施ガイダンス」が公表され、着々と規定ができつつあります。これにより租税条約を締結している国家間では国別報告書について自動的情報交換が行われることになります。私どもは大体の国で事業をやっているものですから、各国でどういう所得が出ているかというような情報が、文書化されてこれらの国々へ出ていくわけです。こうした情報を定式配分方式による課税のツールに使ってはいけないという禁止規定が明確になっていればいいのですけれども、ガイダンスでは「使うべきではない」ぐらいの非常に紳士的な表現になっているような気がします。新興国は、とにかく取れるところから取るというような姿勢が非常に多いように感じられますので、定式配分方式での課税強化をすべきではないということをきちんと遵守させることが大事だと思います。新興国の税務調査の場合に更正ではなく自主的な修正申告を要求されることがありますので、表へ出てこないケースがあるのではないかと思います。モニタリングを行うとともに、OECD各国やG20で賛同したところについて、違反するようなことをやってないよねという情報収集や御指導をしていただきたいと思っております。特に水面下で課税処分が進んでしまうようなことをどうやって発掘していくかとかいうようなことについても考えていただければと思います。まだ2年ぐらい先ですけれども、よろしくお願いしたいと思います。
貝塚審議官
ありがとうございます。中村委員から御指摘いただいたことは、我々も非常に大きな問題だと思って議論を今まで積み重ねてきたところでございます。釈迦に説法でございますけれども、そうした企業側の懸念というものを十分踏まえた上で、今回のガイダンスというのは作られております。
簡単に言えば、おっしゃられたのは要するに、得た情報を適正利用しなさいということですね。当然、適正利用があるからこそ自動的に情報が交換されるということになっているわけで、それが達成されないということであれば、この自動的情報交換を止めるということは、恐らく可能になってくるのだと思います。ただ、おっしゃられたように、その当該国が本当に適正利用をしているのかしていないのか、というところは見えにくいところも確かにあろうかと思いますし、また、実務においてやっていくのはなかなか難しいところはあると思います。ただ、そこは一つには皆様方企業側からの情報もいただきつつ、我々が相手国と調整することもありますでしょう。それから、このBEPSのコンテクストで言えば、この情報、「カントリーバイカントリーレポート(国別報告書)」と呼んでいますけれども、これについてきちんと適正な利用がされているかということをモニタリングするということが、今回公表されたガイダンスに盛り込まれています。ただ、どういう尺度で何をモニタリングしていくのか、それからおっしゃられたように、水面下に潜ってしまいそうなものをどうやって外に見えるようにしていくのかというのは、今後また議論を積み重ねていき、決めていくことだと思います。ただ、物事の考え方としては、中村委員が御指摘いただいた懸念をできる限り払拭するような格好で、このガイダンスというのは作られているということです。今はまだ途中経過の状況でありますので、おっしゃられた点は重々我々も念頭に置いて議論していきたいと思っています。
会長
ありがとうございました。他の方はいかがでしょうか。
河村委員
今御説明してくださった中で9ページのあたりのところでちょっとコメントというか申し上げたいと思います。これはこの会議へお邪魔するといつも出てくる実調率の数字かなという感じではあるのですけれども、先ほど御説明くださったように法人であれば33年に一度、個人だったら100年に一度というお話がありました。
国税庁でお作りになられる基本的な資料の一つで対外的な御説明でお使いになると思うのですけれども、例えばこれを見たときに国民がどう思うかというと、ああ、そうか、これしか調べてないのかな、逃れ放題なのかなというようなことをまさか思われてしまってもいけないと思います。ただ、この資料ではすごく昔から時系列をとっていますが、私がいろいろ見ていますと、申告して納税する国民の立場からしても、本当に紙ベースで何もかもやらなければいけなかった時代、例えば確定申告等の手引きは昔からあったのでしょうけれども、それを読んでやるしかなかった時代に比べると、今は先ほどのe-Taxのお話もありましたし、しばらく前は私も税務署に行ってタッチパネルでやったほうが絶対間違えないからいいわと思っていたこともありますし、今はでもそんなことまでしなくてもインターネットでできています。逆にああいう仕組みをどんどん入れてくださると余り間違えにくくなると思いますが、そういうことが実はこの資料には余り出てこないのではないかなと思います。
ですから、例えば昭和40年代50年代の環境とそれから平成に入ってから特に最近と、いろいろな意味で実際に納める側、それからそれをチェックする側、いろいろなシステムが変わったりとか、それで今度はマイナンバーが入ってくるということがあります。やはりこれはもちろん御庁の方ではきちんといろいろお考えだろうとは思うのですけれども、国民向けにお示しになるときにも、もちろんこういういろいろな実調みたいなことがあって、だからこそ適正な課税が担保されてきて国民の方に公平なというか、要するに正直者がばかをみてないのだということの納得感がないとやはり絶対いけないと思いますので、そういうことを担保してらしたのだろうとは思うのですけれども、やはり時代の環境が大分違っているので、どういう側面でそこの公正性、適正性を確保することをやってらっしゃるかとか、ということを是非、併せて御説明いただくとありがたいと思います。こういう数字だけでということではなくてもっと他のことも含めて、それからマイナンバーなんかのことが入るともっと大きく変わってくると思いますので、是非そういうところをお願いできればというのがコメントというか感想でございます。
総務課長
ありがとうございます。全く御指摘のとおりだと思っております。本日は時間の関係もあって詳しい説明を全般の項目にわたってというわけにはいかなかったのでございますけれども、我々の問題意識も全く同様でございまして、まさにこの実調率が下がっているところは先ほど申し上げました牽制効果という意味でも、適正、公平な課税を実現するという上で非常にゆゆしき問題という認識でございます。そのためにも、先ほど申し上げましたe-Taxあるいは社会保障・税番号制度を活用することで我々の事務を効率化する必要があります。それは確かに40年代50年代と比べると大きく変化してきているわけでございますけれども、そういうことを進めて、調査の事務量を確保して、特に悪質な納税者に対して重点的に対応するというやり方をしますというのが、本日お示ししたアウトラインの大きな考え方でございます。御指摘のとおり、まさにその内容をもう少しかみ砕いて、具体的にどういう取組をしてどういう事務量確保策を経て、実際にどこに調査に行くかということを適正、公平な課税を実現するというもうちょっとブレークダウンしたところをきちんと整理して、改めてお示しするようなことを考えていきたいと思っております。ありがとうございます。
会長
他にいかがでしょうか。
私の方から1点御質問させていただきます。先ほど御質問がありました9ページの実調率の表でありますけれども、平成23年から実調率が落ちているのは、恐らく通則法改正で税務調査手続がかなり負担が増えたということも影響しているのかなと想像しています。しかし、やはりせめてその前の状況ぐらいまではいっている必要があるのではないかと思われますので、是非その点は御検討いただければと思っております。
後ろの方に載っていましたタックスコンプライアンスをコーポレートガバナンスの一つとして位置づけるという最近の動向ということを考え合わせても、やはりある程度実調率、調査が来るということが前提になって、初めてそれならば自主的に自分たちの情報を開示して調査を受けることがないようにしようという動きになると思います。その点でも実調率というのは非常に重要な意味があると思っていますので、御検討いただければと思っております。
その次にもう1点、10ページに滞納の話が出てきていて、全体的に滞納状況が改善されているという点はとても良いことだと思うのですけれども、消費税に関する滞納が結構大きな比率で残っているというのは、他の税目より状況はまずいなというふうに思っております。これは消費者からの預り金でありますから、これがなかなかうまく減っていかないという状況というのはどう考えたらいいのだろうか。何か御説明いただけることがありましたらお願いいたします。
課税部長
課税部長でございます。1つ目の実調率のことですけれども、やはり実調率の低下は、会長が御指摘された通則法の影響も少なからずございます。ただ、それだけではなくて、申告件数の増加ですとか、あるいは一つ一つの事案が難しくなっているところがあるということもございます。
本日は時間の関係で御説明しておりませんけれども、調査以外の手法も使おうということをやっております。これはあくまで通則法をすり抜けるという意味ではなくて、調査以外に何もコンプライアンス確保の手段はないというのはおかしいわけでして、集団でコンプライアンス確保を意識されるような地域や業界などに対して呼びかけをいたしまして、自主的に修正していただくですとか、あるいははがき等を出しまして自分で見直していただくですとか、そういう調査以外の方法で税務署から接触をかけまして、それで自分で直していただくという取組もしております。
いずれにせよ最後の砦は実地調査でございますので、悪質なものとか大きなものについてはきちんと調査が入るということは当然の前提でございますけれども、そこも何とか確保しながら他の手段も併用するということを今やってございます。
徴収部長
消費税の滞納の件ですけれども、国税庁としては、基本的には消費税を含む滞納事案の確実な処理に取り組んでいるところですが、消費税は所得を対象に課税される法人税と違い、取引を課税対象とするものであることなども踏まえて取り組んでいます。なお、滞納となった分についても、うっかり忘れ等も含めて一時的に納付が遅れているものが多く、消費税についても翌年度末までに全体の約99.4%が徴収されているという形でございます。私どもは滞納になったらすぐ集中電話催告センター室を通じて納付催告をするのですけれども、それで滞納の大半は納付してもらっています。こうしたうっかりミスとかうっかり忘れがありますが、どうしても、個々の納税者の様々な事情によりこういう滞納という形になっているものもあると思っております。
会長
ありがとうございました。
他にどなたか御質問、御意見はございますでしょうか。
この後別の会議がまた予定されておりますので、もし他に御意見がないということであれば、国税審議会につきましてはこれで終了することにしたいと思いますが、よろしいですか。
(「異議なし」の声あり)
会長
ありがとうございます。
それでは、本日の審議は終了することといたします。
本日の議事要旨及び議事録の公開につきましては、国税審議会議事規則第5条第2項にのっとりまして、まずは簡潔な内容のものを議事要旨として公表いたしまして、議事録はその後完成次第公表させていただきたいと思っております。議事録につきましては、公表前に皆様の御発言内容に誤りがないかどうかを確認させていただきたいと思います。
それ以外の議事要旨の内容につきましては、会長一任ということで処理させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
会長
ありがとうございます。
では、これをもちまして、第16回国税審議会を閉会とさせていただきます。御協力ありがとうございました。
――了――