日時: 平成23年10月31日 14時29分〜15時12分

場所: 国税庁第一会議室

出席者:

国税審議会委員 井堀会長 水野会長代理
  青山委員 飯村委員
  さき委員 潮田委員
  尾原委員 河村委員
  久野委員 こう津委員
  田嶼委員 辰馬委員
  中村委員 林委員
  たか橋臨時委員  
説明者 国税庁 川北国税庁長官 国税不服審判所 知原国税不服審判所次長
  岡本国税庁次長    
  小口審議官
  百嶋審議官
  西村課税部長
  藤田調査査察部長
  刀禰総務課長
  藤田人事課長
  源新酒税課長

総務課長
 それでは、皆さんおそろいでございますので、第13回の国税審議会を開催させていただきます。
 私、本日の当面進行を務めます国税庁総務課長の刀禰でございます。よろしくお願いいたします。
 委員の皆様方におかれましては、大変お忙しいところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 まず初めに御報告でございますけれども、委員の皆様も御存じの方が多いかと存じますが、去る8月15日、小林逸太会長が御逝去されました。小林会長におかれましては、長年にわたり国税審議会の円滑な運営に御尽力をいただき、税務行政に多大なる貢献をちょうだいしたところでございます。心から感謝を申し上げるとともに、御冥福を心よりお祈り申し上げます。
 この後、新会長をお決めいただくまでの間、進行役を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 まず御報告でございますが、本日は委員及び臨時委員19名中15名の委員の方々に御出席をいただいております。委員の過半数の方々が御出席でございますので、国税審議会令第8条第1項の規定に基づき、本会は有効に成立いたしております。
 まず、お手元の本日の議事進行につきまして、簡単に御説明いたします。お手元の議事次第をご覧いただければと存じます。
 この国税審議会でございますけれども、議題が終了いたしましたら、酒類分科会委員以外の皆様は散会とさせていただきたいと存じます。酒類分科会委員の皆様におかれましては、15分程度の休憩の後に分科会を開催させていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、人事異動がございまして、新しい体制となりましたので、改めまして行政当局側の出席者につきまして紹介をさせていただきたいと存じます。
 まずは国税庁長官、川北でございます。
 次長、岡本でございます。
 国税不服審判所次長、知原でございます。
 審議官の小口でございます。
 同じく審議官の百嶋でございます。
 課税部長、西村でございます。
 調査査察部長、藤田でございます。
 人事課長、藤田でございます。
 酒税課長、源新でございます。
 最後に、私、国税審議会を担当します総務課長の刀禰でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、委員の皆様方で国税審議会会長の選任をお願いしたいと存じます。国税審議会令第5条第1項によりまして、会長は委員の皆様の互選により選任していただくこととなっております。
 どなたか御推薦等ございますでしょうか。
 お願いいたします。

さき委員
 委員の岩さきでございます。  新会長につきましては、長年にわたって国税審議会の委員をお務めで、また現在会長代理の職にあられます井堀先生が最も適任であると思いますので、推薦させていただきます。

総務課長
 ただいま、井堀委員を会長にという御意見がございました。
 それでは、井堀委員に会長をお願いすることで、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

総務課長
 特に御異議はないということでございますので、井堀委員に会長をお願いしたいと存じます。
 それでは、井堀新会長におかれましては、隣の席でございますけれども、会長席にお移りいただければと存じます。
 それでは、井堀会長から一言御挨拶を頂戴し、その後の議事進行につきましては、会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

会長
 井堀でございます。この度は、前会長の突然の御不幸という、非常事態であり、私が会長代理を今まで仰せつかっておりましたので、ピンチヒッターということで会長をお引き受けしたいと思います。
 国税の実務に関して、私は十分分かっているわけではございませんので、当審議会の委員の皆様及び事務局の方々の御協力をいただきまして、職責を果たしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 それでは、国税審議会令第5条第3項により、会長がその職務を代理する委員をあらかじめ指名することになっておりますので、会長代理の指名を行いたいと思います。
 水野委員にお願いしたいと思いますが、水野委員いかがでしょうか。

水野委員
 皆さん、御了解いただけるようでしたら、お引き受けさせていただきます。

会長
 ありがとうございました。よろしくお願いします。
 それでは、本日の議題に入る前に、川北長官より一言御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

国税庁長官
 長官の川北でございます。一言御挨拶申し上げます。
 委員の皆様方には、大変御多忙中にもかかわらず、本日御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 私は、昨年の夏から長官の重責を拝命しております。この夏、国税庁の幹部の一部に人事異動がございまして、先ほど御紹介さしあげましたようなメンバーになりましたが、どうぞ引き続き御指導賜りますようお願いしたいと思います。
 8月15日に小林逸太会長が御逝去になりました。前会長には平成15年1月からこの国税審議会委員に就任していただいておりまして、国税審議会会長あるいは酒類分科会会長ということで、御多忙中のところ、大変私ども行政のために献身的にこの会長職を務めていただいており、長年にわたりまして税務行政に多大なる貢献をしていただいたところでございます。生前の御尽力に対しまして、国税庁といたしましても深い感謝の心をささげ、御冥福を心よりお祈り申し上げます。
 ただいま皆様の御同意をもちまして、井堀会長、水野会長代理が御就任されました。引き続き、これからもいろいろ御指導賜りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日、この後、東日本大震災への対応につきまして御説明させていただきたいと思っております。前回の国税審議会が開催されました後、3月にこの大震災がございました。私どもにおきましても、この震災に関しましては、震災後、直ちに申告・納付の期限延長の措置を講じたほか、4月に震災特例法が施行されましたので、それに関する情報の周知あるいは相談等を行っているところでございます。軽減されたとは申せ、一方で課税上の問題というのはございますし、いろいろと新しい課題もございます。税務行政にとりましては、これからが正念場になるという面もございます。
 委員の皆様方におかれましては、私どもの取組み、あるいは現状を御理解賜りまして、いろいろ御教示賜れればと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。

会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、最近の税務行政の動向につきまして、事務局から説明をいただいた後、御質問あるいは御意見をお伺いしたいと思います。
 では、事務局から説明をお願いします。

総務課長
 総務課長の刀禰でございます。私のほうから最近の税務行政の動向といたしまして、今長官から申し上げましたとおり、東日本大震災への対応につきまして、御説明をさせていただきたいと存じます。
 お手元に資料の本編と、あと資料編という2種類の資料をお配りさせていただいておるところでございます。それぞれおめくりいただければと思います。まず資料編の1ページをお開きいただければと思います。本編のほうも1ページ目ということで、両方を見ながらお話をお聞きいただけると便宜かと存じます。
 まず、この資料につきまして、被災と復旧の話と、これまでの対応と当面の課題と大きく3本立ての資料となってございますけれども、まず国税組織の被災と復旧につきまして、1点目、御報告をさせていただきたいと存じます。
 3月11日の東日本大震災によりまして、本文のほうに書かせていただいていますが、税務大学校仙台研修所の職員1名、また石巻署と相馬署の非常勤の職員2名が亡くなりました。また、職員の家族や住居も大きな被害を受けたところでございます。
 また、津波によりまして大船渡税務署の1階が水没いたしました。そのほか多数の局署の庁舎において内外壁の亀裂、ライフラインの寸断など、かなりの被害がございました。
 これによりまして震災直後、ちょうどこの3月11日が、確定申告終了間際の金曜日だったわけでございますが、土日を挟みまして直後の月曜日につきましては、仙台局、関信局管内の10署が業務を休止し、34署が窓口業務しか行えない状況となったわけでございます。
 資料の地図を見ていただきますと、特に今回、青森から茨城にかけまして、当然千葉とか東京もございますけれども、主に青森から茨城でかなりの被害があったわけでございますけれども、まずその震災直後、赤く塗りました釜石から土浦にかけまして、かなり広範囲ですけれども、10の税務署が業務を休止し、一番ひどかったところは大船渡のような、2階の床まで浸水したという庁舎がございました。それから、あと四角で囲っています須賀川署、これは福島県のほうの内陸部の署ですけれども、庁舎が立入禁止になるような損傷を受けたということで、庁舎が使用できなくなったところが2署ございましたが、そのほか赤色で塗りましたところが、閉庁せざるを得ない状況になったわけでございます。
 そのほか、安全を見るということも含めての部分も若干ございましたが、黄色で塗りました34署が窓口事務のみということで、臨時の対応となったところでございます。
 10日ほどたった3月22日には、すべての署で、一応業務を再開させていただきました。そのうち37署は窓口事務のみ実施ということでしたが、一月ちょっとたちました4月18日には、大船渡署と須賀川署を除きましては、通常業務が完全に再開されました。約1か月間、やはりコンピュータシステム等がなかなか戻らないという点もございまして、復旧に時間がかかったということがございます。
 現在その大船渡署と須賀川署につきましては、それぞれ仮の庁舎で業務を継続している状況になっているところでございます。
 それから、資料編の一番下に書かせていただいていますけれども、原発の事故がございましたので、関信局、東京局、名古屋局の静岡のあたりの延べ150署で計画停電が、3月下旬まで実施されたということでございます。
 税務署の執務中にも計画停電になって急に電気が消えるということもございましたし、またよく言われております3月14日の月曜日については、そもそも首都圏の鉄道も大混乱いたしておりましたので、11日の帰宅の問題もございましたけれども、14日については出勤できない職員が多数発生するという事態もございました。大規模に発生したという意味では、国税組織でもかつてないような経験というふうに思っているところでございます。
 現時点においては、業務は復旧しているところでございます。
 それで、次にこれまでの対応ということで、さまざまな施策について御紹介をさせていただきたいと存じます。本文のほうの2の(1)を見ていただきたいと存じます。
 まず、申告・納付等の期限の延長ということで、まさに確定申告の終盤の時期だったわけでございます。翌日、週末でございましたが、青森から岩手、宮城、福島、茨城の5県につきまして、全税目の国税に関する申告・納付等の期限を延長するという制度が、国税通則法でございます。地域指定と呼んでおりますけれども、これを行い、公表いたしました。これらの地域につきまして、被災後の状況などを踏まえ、段階的に延長期限の期日を指定しているところでございます。
 そこにございますように、青森と茨城の2つの県は7月29日、それから岩手、宮城、福島のうち内陸部、約8割の市町村については9月30日、それから岩手県、宮城県の沿岸部の一部の市町村については12月15日を期日として指定をさせていただいたというところでございます。
 ただ、この期日を指定した場合でも、実際に個々の納税者の方で、帳簿が流れてまだその帳簿が復元できていないとか、いろいろな事情がございますけれども、そういった個別事情のある方について、個々に期限の延長が認められる個別指定という制度もございます。地域を指定すれば、三陸沿岸部、例えば気仙沼とか、そういうところも12月15日で指定しているわけでございますけれども、個別の納税者の方で、申告等ができない場合は税務署に御相談いただくという仕組みになっているところでございます。
 参考にございます、石巻署管内と福島県の原発周辺地域につきましては、現時点でもまだ申告・納付等の期限が延長された状態になってございます。
 原発周辺地域は、まだ落ちついていないと、皆さん分かりやすいと思います。石巻署の管内につきましては、石巻は三陸沿岸部の中で、仙台のような大きな都市を除きますと一番大きな都市でございまして、納税者数が多いということで、実際に税理士及び税理士会から、なかなか短期間での処理が当面まだ難しいというお申出もございまして、そちらの管内はまだ延長期限の期日を指定しておりませんが、今後も状況を注視し、延長期日の指定について引き続き検討を行うこととしているところでございます。
 (2)にございますのは、災害に関します税務上の取扱い等の周知ということで、震災発生後、速やかに災害に関する税務上の取扱いを、パンフレット、ホームページ等を通じて周知と広報を行ったところでございます。
 そこにイ、ロ、ハということで、チ、リ、ヌまで書かせていただいておりますけれども、被災された方についてのいろいろの手続関係があり、その中にはお酒の関係の手続等もたくさんございます。
 それから、問い合わせがかなりございましたのは、そこのイとロで書いてあります募金団体を通じた義援金等の手続はどうなるのかといったことや、義援金を支出した場合の一般的な課税関係はどうなるのかと、この辺りでございました。日付を入れてございますが、これまであった制度でございますけれども、速やかに周知・広報を行ったところでございます。
 (3)でございますけれども、避難中の納税者への対応ということで、3月22日以降につきまして、この震災で被災した納税者等が全国の避難所等に避難をしているということで、直近調べましても、北海道から沖縄までかなりの数の方がいろいろな形で避難をされております。避難所につきましては、若干を除いてはもう閉鎖されておりますけれども、仮設住宅に移られた方、またいろいろな民間の施設に移られた方、公務員宿舎に移られた方もありますし、あと知人、親戚等に避難された方も、全国まだかなりの数残っていると思います。
 そういう中で、国税の場合、例えば納税証明書一つ手に入れるにも、原則的には所轄の税務署に行ってくださいというのが基本でございますけれども、そういった対応だけでは今回の震災の状況を考えれば不適当だろうということで、税に関する相談、還付金の支払いに関する問い合わせ、納税証明書の交付等につきまして、最寄りの税務署で受け付けられるという体制の整備を図ったところでございます。
 (4)が震災特例法の施行の関係でございます。
 この大規模な震災にかんがみまして、被災者等の負担の軽減を図るため、いわゆる震災特例法が国会に提出されまして、4月27日に成立、即施行となったところでございます。これで平成22年分の所得税に係る雑損控除等の適用が可能となる措置などが創設されたところでございます。
 これに伴いまして、被災地域を所轄する署を中心に、いろいろな相談、申告書の提出が見込まれまして、そこに書いてございますような対応をとったということです。例えば、被災地域においては、署間、局署間、それから他局、東京等からの応援も実施をして必要な要員を確保する。また、震災関係の電話相談について、「0番」という番号を設けまして、電話相談についても効率的に対応させていただく仕組みをつくり、さらに仙台の電話があふれることを想定しまして、東京に仙台のサテライトを開設して、対応させていただくこととしております。また、パンフレットやホームページの活用は当然でございますし、またこちらからも出かけていって、説明会とか出張相談等も実施をしているところでございます。また、その際に地方団体・関係民間団体とも連携、協調しております。また、避難所等、最寄りの税務署での対応というのは、先ほど申し上げたとおりでございます。
 次のページ、3ページの(5)でございますけれども、今少し申し上げました被災地の税務署への応援体制ということで、仙台国税局は3,000人強の定員の国税局でございますけれども、かなりの被災者から相談があるということで、4月25日以降、署間、他の税務署からの応援が延べ9,000人強、局署間、局からの応援が延べ2,700人、東京、関信等からの応援派遣が延べ1,100人という形で進めてきているわけでございます。
 また、国税そのものの業務ではございませんけれども、地方公共団体が、かなり事務が大変だったということで、政府にいろいろな形での応援の要請がございました。
 そういうことを踏まえまして、仙台国税局においては、自局も被災した状況であったわけですけれども、2つの県庁及び29の市役所等に対しまして延べ6,000人程度、今現在は既に6,000人を超えていますけれども、職員を派遣しまして、り災証明書の発行業務等のお手伝いをするということを行っております。そこで手薄になった分は、また東京等から応援に行ったということになるわけですけれども、こういった対応も行っております。
 職員の話を聞きますと、やはりなかなかり災証明を出すというのは、本当に被災者の方と、税務の相談も大変なのですけれども、まさに実地を確認に行くという場合もあったようで、なかなかふだんの仕事とは違った意味で大変だったという話を聞いているところでございます。
 大きな項目3が、当面の課題ということで、まだ残っている課題について御説明させていただきます。
 (1)が震災特例法に基づく還付申告等への対応ということで、今回被害を受けた方々が多数おられますけれども、今回震災特例法に基づきまして、平成22年分の所得税につきまして、本来、平成23年に申告していただくわけですが、平成23年に震災がありましたけれども雑損控除の適用により所得税の還付等を受けることができるという特例が定まったということでございます。
 つまり、通常であれば平成23年の被害は、来年の確定申告で精算をしていただくことになるわけですけれども、阪神大震災のときもございましたが、こういった特例措置がとられたということで、これらの地域を管轄する仙台局では、この11月までを集中対応期間ということで、還付についてもこちらから積極的にお勧めをしてやっていただこうと、震災対応について、積極的な広報、個別相談を進めているところでございます。
 また、年が明けますと平成23年分の確定申告ということになりますが、特に三陸沿岸部の税務署につきましては、それほど大きな税務署ではございません。東京都内の税務署ですと、大体平均すると職員が150人ぐらいおりまして、百何十人から300人ぐらいという規模が多いわけですけれども、三陸沿岸部ですと、先ほど申し上げました一番大きな石巻で約50人の税務署でございます。小さな税務署になると十数名の税務署でございますので、そこに多ければ何百人、何千人という納税者がお見えになるというのは例年にないことでございますので、これから対応が大変になってくるということで、それに向けた準備を鋭意進めているところでございます。
 (2)では、同じ震災特例法のうち、相続税、贈与税の関係の土地等の評価の特例でございます。もともと相続税、贈与税の土地等の評価は時価によるのが基本でございますけれども、震災特例法によりまして、3月10日以前に相続・贈与により取得した指定地域内の土地等に係る相続税・贈与税で、3月11日以降に申告期限が到来するものについては、震災による地価の下落を反映させるために、時価によらずに震災発生直後の価額によることができるという特例が定められたところでございます。
 震災発生直後の価額といいましても、なかなか一般の方にとって幾らかとなるかは難しいだろうということで、地価下落の状況を反映した調整率を掛けた数字を使っていただいてもいいですよという形をとることといたしまして、これを平成23年分の路線価等に乗ずる方法により、震災発生直後の価額を評価できることとしておりまして、この調整率については、明日国税庁ホームページ等で公開する予定としているところでございます。
 4ページに入りまして、指定地域というのは、次の注に記載をしているところでございます。
 (3)が原子力事故に係る損害賠償金の課税上の取扱いに関する周知等ということでございますが、これにつきましても大変難しい問題ですが、8月5日に原子力損害賠償紛争審査会で、原子力損害の範囲の全体像が中間指針としてまとめられました。東京電力では、この中間指針を受けて、8月30日に避難等対象者への補償基準を、また9月21日に法人及び個人の事業に関する補償基準をそれぞれ発表し、本賠償の請求受付を開始しているところでございます。
 今後、東京電力から被害者への損害賠償金の支払が本格的に開始されることとなりますと、国税庁におきましては、その損害賠償金の所得税法における課税上の取扱いについて、きちんと広報・周知を行わなければいけないと考えており、これを進めてきているところでございます。
 (4)ですが、酒類業の関係でございますけれども、福島第一原子力発電所事故を受けまして、酒類の安全性確保の観点から、放射能分析を10月より実施しているところでございます。また、被災した酒類業者等の復興支援策についても、様々に検討して、具体化が今進んでいるという状況にございます。
 なお、甚大な被害を受けた中小酒類製造者の酒税の軽減措置についての法案は、今国会に提出される予定となっているところでございます。
 以上が全体でございまして、資料編につきましては、今申し上げました点につきまして、地域指定、個別指定の制度でありますとか、震災に関する税務上の取扱いについてどういう種類のパンフレットを作ったかでありますとか、また仙台国税局におきまして、申告相談がどの程度実施されているかについての記者発表資料をつけさせていただいたところでございます。
 以上、私からの震災関係の説明とさせていただきます。ありがとうございました。

会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただきました事項につきまして、何か御質問、御意見等ございましたら、どうぞ御自由に御発言お願いします。

たか橋委員
 須賀川の税務署がかなり被害を受けたということなのですけれども、ちょっと福島ということで離れていると思うのですが、どういう理由で被災が大きかったのでしょうか。

総務課長
 御説明いたしますと、地震の被害というのは、実は離れたところでも結構、液状化もございましたけれども、建物自体の被害もございまして、須賀川署の場合は、やはり耐震性も必ずしも余り強くない、改修が必要だという署だったわけでございますけれども、壁とか柱にかなりひびが入りまして、要は震災後に点検をした結果、引き続き利用していると、また地震がきたときには倒壊等のおそれがあるという診断を受けたものですから、使えなくなったという状況にございます。

会長
 ほかにいかがでしょうか。

こう津委員
 すみません、1つお伺いしたいのですけれども、データ系の損傷というか、そういうものは何もなかったのでしょうか。

総務課長
 国税の場合は、いろいろな課税のデータを、KSKシステムというシステムに入れているわけでございます。このシステムについては、すべてセンターに送られるという仕組みになっておりますので、それ自体は全く問題はございませんでした。
 実は我々が一番心配しましたのは、先ほど大船渡税務署がまさに1階の天井までというか、2階の床まで浸水をしたということで、その当日の書類などが大丈夫かということがあったわけでございます。基本的には職員の対応が適切であり、まさに津波がくるということで署を閉めて避難したわけですけれども、危ない書類については2階に上げておく、耐火書庫のドアを閉めておくということをいたしましたので、書類の流出はなかったところでございます。
 ただ、実際、例えば過去に出していただいた申告書等が水にぬれてしまって、またそれを乾かすのが非常に大変であるとか、そういった点はございましたけれども、一応基本的なデータ等は、今すべてコンピュータで基本的に管理されておりますので、納税者等の還付申告等の御相談等には応じられるという状況になっているところでございます。

会長
 ほかにいかがでしょうか。

水野委員
 ちょっと仮説のような御質問をさせていただきたいのですが、この納税の緩和ですけれども、もともと税金を納めることができなくて滞納していたと。さあ税務署で、しようがないので滞納処分へと思っていたところが、住居が水没してしまって価値がなくなってしまった。こういう例というのもやっぱり何件か出ているのでしょうか。災害で国税の納付が困難となるというのは分かるのですが、もともと困難であった人がなおさら困難になってしまった、とうとう財産をなくしてしまったといったような、お気の毒な例というのもやっぱりかなり発生しているのでしょうか。

総務課長
 もともと滞納されていた方で、被災された方も当然かなりの数に上っているところでございます。こういった方については、その納税の猶予という制度はもともとございますので、そういう滞納されている方でも、一定の期間、納税しなくていいですよということをお認めする制度がございます。むしろ今、国税当局で、滞納されている方のうち、被災された方について積極的にその対応を進めています。それをしておかないと、またその滞納分も延滞税がかかってきますので、今、速やかに進めているわけでございます。
 それで実際、本当に財産をなくされた方がおられれば、それを確認した上で、当然それは最終的には納税義務を消滅させてしまうというような制度もございます。個々の方の実情に応じながらですけれども、当面、要は被災の状況等を、まずは御本人に確認することが非常に大変でございまして、実際に現場の職員の声を聞きますと、被災地だとそもそもその方がどこへ行かれたのかというのもありますし、それから居場所が分かっても途中の道が大分変っていたりとか、いろいろな状況がございますので、徴収の関係の職員は、かなり苦労しながら、個々の滞納者について今一生懸命接触をしているところでございます。こういう状況で、最終的にその被災者の資力の状況等に応じて対応していくということになります。これは一般のルールと特に変わるものではございません。
 あと被災された方は、換価の猶予という制度もございますので、そういう意味ではかなりの期間、納税の猶予というのは最大3年間でございますし、換価の猶予はプラス最大2年間の猶予を受けることができます。このように、被災して滞納された方がすぐに払わなければならないため、困るということは、もともとない仕組みになっているところでございます。

会長
 ほかにいかがでしょう。

林委員
 申告等については、期限の延長が図られたということなのですが、ただ被災者が原資料、証票類、帳簿、領収書などを全部流されてしまったというような方も多いのではないかと思うのです。そういう方たちの対応は、どのような形で、推計とか何かになるのでしょうか。

総務課長
 いろいろな形があるかと思います。例えば、もちろん税理士に関与されていれば、当然税理士に資料が残っているという場合もございます。商工会などに残っているとか、農業団体に残っているとか、そういう団体等に頼んでいる方がいるわけですが、そういうことがなく、手元の資料が流されてしまったという方につきましては、税務署に御相談いただければ、今回の震災に限らず、例えば土砂崩れとかいろいろな災害により流された方がおられますので、そこは、過去から、まず御相談に応じていただいて業態等をお聞きし、それから、銀行などに売上データが残っているとか、そういうものもございますし、それを完全ではなくても、いろいろな形で、要は収集可能な範囲の情報を収集させていただいて、大体前年度とか前々年度の所得とかいろいろなものが残っていますので、それを見て、申告をしていただくということはできる仕組みになっております。

会長
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

青山委員
 すみません、少しだけ。
 4ページの原子力発電所の事故に対する東京電力の損害賠償が始まりつつあると思うのですけれども、非常に書き方が難しいとかというような御意見をマスコミ等で伺わせていただいているのですけれども、この場合、国税庁の所得税法上の課税上の取扱いというのは、やっぱり複雑になるのでしょうか。その点、非常に分かりやすい御説明といいますか、パンフレット等についても理解しやすいようなものを出していただければなというふうに思うのですけれども、その辺ちょっと御説明いただければと思います。

課税部長
 東京電力といいますよりも、一般的に損害賠償金の課税上の取扱いというのをまず御説明申し上げますと、所得税法上、いわゆる精神的損害とか身体的損害といった人的損害、これにつきましては非課税でございます。それから、一定の場合の物的損害につきましても、賠償金につきましては非課税となっております。
 ただ、例えば収益の補償として受ける賠償金のうち、もっと具体的に言いますと給与所得者が、雇用関係が継続できなくなったので、その減収分を他から補てんしてもらったという場合には、一時所得に該当するケースがありますので、一時所得でございますから、給与所得よりも、いわゆる課税は緩和されることになります。そういう場合とか、例えば風評被害に係る収益の補償ということになりますと、いったんは事業所得等の収入金額に計上された上で、別途必要経費などがあれば、それを差し引いていただきまして、所得があるかどうかを見ることになります。もちろん人的控除を引くことも可能です。そういったことが現行法令上決まっておりまして、そこも踏まえまして、いかに分かりやすいような形で御説明できるかと。何分、制度もなかなか複雑なところもございますけれども、そこは鋭意努めてまいりたいと考えております。

会長
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 では、私のほうから最後に1つ。
 3ページの平成22年の所得税の還付の話なのですけれども、これは対象者は結構いそうなのですが、実際どの程度の還付というのは今進行しているのでしょうか。11月が集中対応期間というふうに書いてございますが、どんな感じなのでしょう。

総務課長
 本日、資料編でお配りをしている中で、資料の8ページでございますけれども、見ていただきますと、これは仙台国税局の管内で、最近ですけれども、月一度こういう形の整理をしていくこととしております。これは9月末現在の状況でございますけれども、このちょうど真ん中の下あたりに表がございます。まず表を御説明させていただきます。
 参考のところに、建築物の被害件数とございまして、これが大体、岩手、宮城、福島の3県で60万件です。うち全半壊等が28万件ということでございますので、基本的に損害を受けた方々は雑損控除の対象になります。もちろんこの被害のほかに、車だけ流されたような方もおられるかと思います。それから、もちろん家財が損害を受けたという場合もあります。
 ただ、過去の震災を見ていますと、大体この建築物の被害件数と全半壊等の件数の間ぐらいの方が、雑損控除にお見えになることが多いというのが経験則でございますので、この間のどこかに大体分母があるというように思っていただければと思います。その左の欄が、申告相談済件数というのを、仙台国税局でも集計しているわけですけれども、これは注書きにございますように、既に雑損控除等の申告をされた方のほかにも、来年控除を受けるから計算をされた方とか、最終的に適用がないことが判定された方も含めて、申告相談が済んだという方の件数を集計しておりまして、これが8月末の時点ですと6万件強となっており、建築物の被害件数からいえば、2割強しかいってないと言っていたところですが、これが9月末には10万件ぐらいになり、大体今3分の1強まできたというところです。しかし、建築物被害件数は、今後、増えることもございますし、本当に軽い方の場合はなかなか申告に来られない場合もあります。
 それから、例えば、特に仙台というより関東地方だと、結構かわら屋根が被害を受けた場合だと、なかなか震災後の需要でかわら職人さんが追いついていないので、なかなか屋根を元に戻せない。このため、申告は、直してからにしますという方がおられたりとか、それから東京国税局においても、浦安とか、液状化したところでは、結局、液状化による損傷を、直したいのだけれども、まだ道路が完全に修復されない、道路の高さが決まらないと、家の修復も決まらないところがあって、少し遅れているということもありますので、すべての申告が、この春までに出てくるとは限らないわけです。申告は何年間かできますので、一応今何割かは申告に来られているというところでございます。
 その中で、やはり来年の春の確定申告のときに混乱するといけないので、申告できる方は、特に還付申告ですから早目に来ていただきたいということで、今仙台では11月末までを集中対応期間と位置づけ、一生懸命対応させていただいているところですが、ある程度は、来年の確定申告まで続いていくことになると思っております。

会長
 では、よろしいでしょうか。

国税庁長官
 いろいろ御質問をいただきましたので、補足させていただきます。
 今回、東日本大震災は、確定申告の最終期に発生しました。私どもにとって最悪の事態は、そのときに税務署に来られている納税者の方が、地震で大けがをされることだったわけですが、不幸の中でもそういうことだけはありませんでした。
 その中で、先ほどたか橋委員からお話の須賀川署については内陸部にあり、私も視察に行きましたが、壁や柱にかなり亀裂が入っておりまして使えなくなりました。これは税務署の庁舎が、やはり戦後ある時期に一斉に建っておりますので、相当古い庁舎が多くなっています。耐震の補強はしておりますが、財政事情が厳しく新しい庁舎への建替えが進まないこともございまして、かなり古い庁舎が建直し待ちの状況になってございまして、今回改めてこの点の手当なども重要と思ったところでございます。
 また、こう津委員がお話しされましたシステムについてですが、私どもの仕事はKSKのシステムを使って行っており、電気が通らないと仕事ができなくなっております。納税者の方から問い合わせをいただいた場合には、コンピュータでKSKシステムに問い合わせをして、納税者の方に対応することになりますので、今回のように停電になりますと、納税者の方への対応ができなくなります。今回の大震災を契機に、日本社会全体として社会の仕組みを考えさせられるという状況がございました。私どもにとりましても点検すべき課題があると思っておりまして、今後、組織を挙げまして、防災のマニュアルと申しますか、対処方法について整理をし、備えたいと思っているところでございます。
 それから、課税上の問題につきましては、先ほど土地の評価の調整率の話を申し上げましたが、これも例えば相続税において土地が5割引き、7割引きの価格で評価されることになりますが、それでもいくらかの課税が行われることもありますし、あるいは原発の損害賠償金につきましても、課税のらち外ではない部分もございます。被災者の心情等を思いますと、税務署の職員が丁寧に説明しないと、トラブルが起きかねません。これまで皆様の御指導をいただきまして、税務行政が納税者サイドに立って親切、丁寧に対応してきたという評価もいただいておりますので、こういった異例の時期にそうした評価が崩れることにならないように取り組んでまいりたいと思っております。
 被災者の方の申告相談は、被災者一人一人の被害の状況を伺いながら、震災特例法という新しい制度を当てはめることになりますので、被災者一人当たりの相談の時間が長くかかります。このため、平成23年の確定申告期におきましては、仙台局だけでは対応できない可能性もございますので、全局を挙げて対応するための準備もしているところでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。

会長
 どうもありがとうございました。確かに異例な事態ですので、国税も大変でしょうけれども、納税者の視点に立って頑張っていただきたいと思います。
 それでは、本日の議題は以上になりますが、ほかに何かございますでしょうか。
 では、特にないようですので、本日の審議を終了することにしたいと思います。
 本日の議事要旨及び議事録の公開につきましては、国税審議会議事規則第5条第2項に則りまして、まずは簡潔な内容のものを議事要旨として公表し、議事録は完成次第、公表したいと思います。また議事録につきましては、公表前に皆様の御発言内容に誤りがないかを確認させていただきたいと思います。
 議事要旨の内容につきましては、私、会長一任ということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

会長

 では、これをもちまして第13回国税審議会を閉会とさせていただきます。
 皆様、どうもありがとうございました。

―― 了 ――