会長
 どうもありがとうございました。余り時間がございませんが、御質問、あるいは御意見があれば。

立石委員
 確定申告にかかわって二、三質問したいと思います。いわゆるOB税理士ですけれども、OB税理士の税務調査というのは、どういう方針で行われているのですか。

課税部長
 国税当局では、高額・悪質を重点にして、申告内容や資料情報を分析・検討し、課税上問題があると認められるものについては、的確に税務調査を行っていくことにしております。税理士についてもOB・非OBにかかわらず、問題がある者に対しては的確に調査を行うということでございます。

立石委員
 そこで具体的にお尋ねしたいのですけれども、元札幌国税局長の実刑判決文を読みますと、所得額の85%を申告していなかったというふうな指摘になっておりますけれども、これは4年間麻布税務署が気が付かなかったということは、これはどういうことなのでしょうか。

次長
 個別の話にはお答えできませんが、税理士さんというのは6万7千人いらっしゃるのですね。それで、対象は所得税になるかと思いますが、所得税の場合は全体としての母数のうちで、極めて少ない調査件数しかできないという実情にあるのは御案内のとおりです。
 そういう中で処理してございますので、全数を処理するとか、そういうことは到底できないわけでありまして、特に特定の税務署のお話をされましたが、当該税務署においては税理士さんは非常にたくさんいらっしゃるわけでございます。
 税理士さんはたくさんいらっしゃいますから、その中で調査件数というのはかなり限られたものであるということは、十分御理解いただきたいということです。

立石委員
 私がこの問題を取り上げますのは、これは別に個別案件でも何でもなくて、裁判所に出て既に一般に公表されている事案なわけですね。別に秘匿されている事案ではないから取り上げているわけでありますけれども、85%の未申告があって、かつて、元札幌国税局長が副税務署長を務めた麻布税務署において、それが見逃されていたということは、国税の現場と特定のOB税理士の間に特別な関係があるのではないかという指摘が、実際に新聞にされているわけですね。そういうことに対して一体どういう対策を採っていらっしゃるのかと、こういうことであります。

次長
 現実に見逃されていたという御指摘でございますが、現実に税務調査を行いまして、14年1月10日に検察庁に告発をさせていただいておりますから、すぐに見つからなかったという御指摘はそうかもしれませんが、結果的には把握して、ちゃんと税務調査をさせていただいたということだと思います。

立石委員
 続いて、査察部OBの国税税理士との関係についてお尋ねいたしますけれども、最近摘発されましたK−1脱税事件、「週刊現代」と「週刊サンデー」に、東京国税局査察部の元課長と、熊本国税局の元課長のOB税理士が事件に関与したというふうに報道されておりますけれども、私自身調べてみますと、多くの査察OB税理士が査察案件について直接関与されているというケースが多数ありますけれども、この点については、行政はどういう指導をされていらっしゃるのですか。

次長
 今、非常に具体的な御質問をされておられますが、退職者というのは、御案内だと思いますが、単なる民間人、税理士として営業されておられるわけで、既に退職されている民間人の方が営業努力として、どこか顧問先に入るということにつきまして、我々がそれを指導する権限は全くございません。
 恐らくそれを想像するに、査察案件に入っているという御指摘、これは一般論でお答えしたいと思いますが、恐らく一般の税理士の方は、一般というのは非OBという意味で申し上げてもいいのですが、恐らく査察ということについてのノウハウは余りお持ちでないのだと思います。
 たまたまですが、たまたまうちの職員、査察の経験者が、査察事務というのは言ってみれば非常に特定の分野でありますから、そういうことについてのノウハウがあるのだと思います。査察の受け方といっても、なかなか査察を受けた人もたくさんいませんし。そういうことで需要があって、たまたま関与されているのだと思いますから、全く民間人の方が、自由の営業活動の結果として顧問先に入られることについて、当局は一切何も権限はございませんし、指導することもできないと思います。

立石委員
 そうすると告発された事案について、査察部のOB税理士が案件に関与するということについては、一切行政はタッチできないと、そういうことですね。

次長
 OBとおっしゃいますが、その方は単に民間人でありまして、税理士として適法に活動されている以上問題はありませんが、例えば脱税共犯等々になれば、税理士法の処分というのはあると思います。

立石委員
 しかし、今の村上さんの答弁は少しおかしいですね。

次長
 どうしてでしょうか。

立石委員
 札幌国税局長の脱税事案について国会で問題になって、国税庁側はその対策をしゃべっているはずですね。それは、元札幌国税局長であろうと一民間人であります。一民間人の脱税事件が摘発されて、逮捕され起訴され、実刑判決を受けたことに対して、国税庁サイドが人事課で対策を練るというのは、今の村上さんの話とはかなり違うのではありませんか。

次長
 職員が辞めるに当たって、人事管理の一環として、いろいろ企業からもニーズがございますので、そういった方々に顧問先として企業を紹介しているという話は別途あるかと思いますが、既にお辞めになった税理士さんにつきましては、その方たちが税務上問題があれば、それは税務調査をして是正するということでありまして、それは従来からもやっておりますし、今後ともその方針には変わりはございません。

立石委員
 私が聞いているのはですね、そういうことを聞いているわけではなくて、国税のOBが税理士事務所を開くとき、顧問先を選択することについて、国税局サイドが関与していると。関与していることについて問題があると言われているわけですね。そうすると、今の村上さんの論理を展開していきますと、一民間人であるOB税理士がどこの顧問先を選ぼうと何ら問題ないのではないか。それは一切国税庁と関与しないことであると。
 しかし、実際には人事課において、顧問先の紹介について対策を立てていらっしゃるわけでしょう。それと論理が合わなくなるのではありませんか。

次長
 私が今申し上げたのは、これは立石さんも経験がお長いですから、御案内のとおりですが、実際には指定官職ですよね。それから、定年が60ですが、60前に辞めさせているわけでありまして、退職勧奨をやっている。その退職勧奨の一環として人事課がやっている業務、それは辞めるときの話をしているわけでありますから、辞めてから3年も4年もたって、それは全く民間人ですから、その方々が何をしておられるかについて、当局は関与できないと申し上げているわけです。
 別に査察事案をやっているときに紹介している、そういうことではございませんので、そこは明確に区別をしていただきたいと思うのですが。

立石委員
 すみません。話をすりかえないでください。

次長
 すりかえていないです。

立石委員
 私は何も査察案件を紹介しているなんて一言も言っていませんよ。言いましたか。村上さん。言葉、気をつけてください。私、査察案件を国税が紹介していると言いましたか。

次長
 どうも失礼しました。

立石委員
 記録している方、どなたか、私は言いましたか。話をすりかえないようにしてください。
 私が心配しているのは、国税OBが脱税事案について、顧問税理士になることによって、一般国民が、国税庁国税当局と真ん中にOB税理士が入って、査察その他の税務調査について手心が行われているのではないかという疑問が出ているということなのです。それに対して何らタッチできないというのであれば、それと当然、国税OBが税理士法において、ほとんど無試験で税理士の資格を得ることについて疑問が出てくるのは当たり前のことであります。
 既に新聞の一部は社説で、国税OBのほとんど無試験によって税理士の資格をとることについては廃止しろという主張をしているわけですね。これは国税の現役の職員にとっては大いなる財産なわけですね。今のままでいくと当然この問題について、世論としては、もうやめろと、こういうことが出てくるのではないかと。そうすると、国税庁としても何らかの対策を立てる必要があるのではないかということを指摘して、私の質問を終わります。

会長
 今の御質問に直接お答えするわけではないですが、やはり最近ずっと時系列的に見れば、税理士に関する懲罰は非常に厳しくなりつつあって、その点はそのようなことを反映しているのではないかというふうには思いますがね。
 今の立石委員の御質問は、やはり個別案件の話、札幌国税局長のケースは、前にも確かこの国税審議会でも話題になりまして、その点については確かその時、ちょっと正確には覚えておりませんが、今後、その点については厳正に考えたいという話があったように思います。
 何か、その点で長官。

長官
 直接的なお答えになるかどうか、私は国際会議に出て、各国の長官と公式、非公式にいろいろな話をするのですけれども、各国の税務行政担当者が何を考え、何を悩んでいるかということについて、ちょっとお話をいたしますと、やはり組織の中の職員がプロとして育ってくる、育てることが非常に重要だという認識を各国の長官は持っているのです。
 例えば、税理士制度のない国とある国を比べてみますと、ない国において、職員の組織における勤務年数というのは非常に短いですね。それで非常に流動性が高い。中途採用して、すぐ出ていくというような、こういう傾向にあるようです。
 したがって、例えば端的にアメリカと日本の比較をすると、そういうことが言えるのですけれども、我が国において、優秀な人材を採用して、一生トレーニングをしながらプロを養成しているというのは、非常にうらやましがられているわけであります。そういう中途採用をやって、パフォーマンスで評価をして給料を決めるというような、一方でのアメリカ式のやり方に対しては、納税者から非常にそれに対して問題提起が行われていて、我が国のようなやり方のメリットもあるということではあるのです。
 なぜ日本において、職員が長期間、退職まで勤めるのかということについて、私が説明した一つは、勧奨退職をしても、すぐに生活の苦労といいますか、心配することなく、ある程度そういう人については紹介をして、税理士として成り立つようにしているということが、我が国において、職員がきちっと一生プロとしてやれるということなのですよという話をすると、それは大変うらやましいという評価もあるということであります。ただ、そういうことについての問題が、先ほどおっしゃいましたように、ないわけではないと思います。
 この前の事件を契機として、紹介というのは、人事当局者が一元的に行うということで、現場の副署長等が顧問先との接触をすれば、それは国税の組織が何らかの権限ないし職員との関係を疑われる可能性があるので、それはもうやめましょうと。人事当局が一元的に会社のニーズを聞いて、必要があると、税理士のあっせんをしてほしいというような場合に、そこに紹介をするというやり方で来たということであります。
 ただ、立石先生のおっしゃっている中で、我がOB税理士を差別しているかということになりますと、私どもはしていないというふうに明確にお答えをできると思います。現に元札幌国税局長の件も、我々組織においてきちっと摘発をしている。
 それから、査察の案件等もおっしゃいましたけれども、査察の事件というのは、我々組織だけでやっているものではございません。検察と一緒になってやっている話なので、そこでどうこうできるというようなものではないというふうに思っております。

会長
 時間が大分経過しましたので、あるいはほかに御質問あるかもしれませんが、今日の国税審議会は、ここで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

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