村座長
 ありがとうございました。

中氏
 山下先生から今回の調査についての適切なコメントをほとんどいただきましたので、私は補足的なことになるかもしれません。具体的に、個々の企業、実際に製造業者とか販売業者を回ったわけではありませんので、いわばマーケティングそのものの戦略云々というところまでは触れることはできないのですが、大体のヨーロッパの状況を申し上げます。急に出来たとイギリス人が言っていましたけれども、1992年にEUの共同市場化がなされました。そこで酒の状況を見ますと、やはりお互いが市場を食い合うというのでしょうか、イギリス人はビールを飲んでいたのが、それがワインを飲むようになってきた。それから、ドイツ人、フランス人は、逆に今度はウイスキーとかそういうものの味を知って、ブランデーのかわりに食後ウイスキーを飲むとか、そういうスタイルがだんだん入ってきまして、少しずつEUのマーケットが共同化して、お互いに他国への他領域へのマーケティングを強化しているというような状況です。それまではヨーロッパ全体に売る企業というと、ヨーロッパの企業ではネスレとユニリーバぐらいであって、あとは日本の企業でヨーロッパを食っているわけですが、それ以前のヨーロッパというのは、大体は江戸時代の日本みたいなもので、秋田県とか南部藩とかで、そこの中で地産地消をやっていて、他でもみんなそれぞれ違うし食べ物も違う。これがだんだん一つのスーパーマーケットでいろんな他国の物が買えるようになりまして、そういうところでライフスタイルが変わってきています。逆に言うと、イギリスの企業はフランスにもっと売りたいとか、あるいはフランスの企業はイギリスにもっと売りたいとか、営業の自由を求めるところがあります。一方、逆に国内の産業の方は、他国の商品を排除したいという本音がありまして、そこでイギリスの方からスピリッツとかウイスキーが入ってくるのをフランスのワインの業者は排除したい。イギリスでも、逆のことが行われている。このせめぎ合いが今ヨーロッパの中で行われていますけれども、次第に少しずつ、一つの国になりつつあります。今ちょうど、過渡期の状況にあるというふうなことが考えられると思うのです。
 その中で、基本的には営業の自由ということと、それから欧州委員会からの通達に拘束力がないということで、それぞれ各国の状況に応じて、自主規制で大体は対応していこうということのようです。ただ、欧州委員会においても、やはりこの自主規制の効果というものについては疑問視しているということは再三発言されております。実際に自主規制でどういう効果があったのかということをきちんとレポートしなさい、そうでなければ、もっといろんな形で強化を図るような策を出すぞ、というように、脅かしとはいかないけれども、そういうことを強めておりまして、自主規制の広告団体でも、やはりいかに効果を出しているかということを、きちんと示していかなければいけないという説明責任を負っているというのが、現在の状況のようであります。    
 個々には、先ほど申し上げましたように、資料の方を見ていただきますと、例えば7ページですけれども、イギリスにおける酒類の管理ということになります。イギリスの場合は、先ほど山下先生からも報告ありましたように、「英国広告規約」に基づく自主規制を実施するということなのですが、英国の場合には、この広告の自主規約を作成する委員会と、それを実際に実施する委員会と二つ分かれていまして、CAPといいますが、「コミュニティ・オブ・アドバタイジング・プラクティス(広告実施委員会)」が策定しまして、実際の運用にありましては、ASAといいますけれども、「アドバタイジング・スタンダード・オーソリティ」という、これは非政府の執行機関でして、ここが自主規制を実際に実施・運用している形になります。    
 11ページになりますが、英国ビール&パブ協会は、自主規制の中でさらに責任のあるマーケティングを目指すということで、組織が運営されている団体です。やはりマーケティングがもう、こうした形で組織をつくっていく責任があると、そういう姿勢をきちんと保持していかなければ、自分たちの商売が成り立たないという自覚はかなり高まっているということであります。    
 先ほどもお話ありました、「ビンヂ・ドリンキング」、「ビンヂ」にはどんちゃん騒ぎという意味もあると英語の辞書に書いていましたけれども、これが若い人に流行しているということで、この解決のためには、あまり営業時間を制限するのはかえってよくないのではないかということですが、一方では、やはり営業をもっと規制緩和して、営業時間を増やしたいという意図もやはり業者側の中ではあって、その中でこういう形になったのだろうと思います。もともとイギリスの場合は、ずっと古い時代はパブというものが独立的に営業していたわけですが、そのほとんどが大手のビール会社の傘下に入りました。名前はそれぞれ昔のままで営業していましたが、実はビール会社が所有していたわけです。このように末端をビール会社が支配して、価格から製品の提供までコントロールするというのは、独占禁止法違反ということで、それが禁止されました。そして今度はパブ同士が合併して、大手のパブの会社になって、そしてそこがチェーン的に営業するというふうな形に、変わってきております。したがって、パブの経営者というよりは従業員に近くなるという感じで、独立したというよりは、大手のパブの会社に雇われた社員が経営しているような形になっています。キリンとかサントリー系統のパブと似たような感じに向こうもなってきたというふうなことであります。
 それから、イギリスではさっき言ったように、ワインを非常に飲むようになり、パブで食事をするようになってきて、だんだん女性がパブで飲むというような状況になってきました。
 それから、フランスの方は、19ページを御覧になっていただきたいのですが、フランスの広告審査事務所も、先ほどのイギリスの話と同じように、合法的な真実の広告を促進しようということで、広告主、広告会社、メディアが主な会員で、広告主の80%、広告会社の90%が加入しており、フランスの酒類の広告に関してはここが大半コントロールしているということが言えそうです。    
 広告についても事前に相談しまして、審査結果は文書で交付し、違法性があるような広告は止めるような指導を行っているという話でしたけれども、かなり実はきわどい広告も実際には雑誌に載っていまして、見せられたものを後で資料に出すかどうかはわかりませんけれども、男性、女性のシンボルが裏に見えるような、そういうふうな広告まで実際大手雑誌のフィガロなんかに出てくるのです。確信犯というのか、やられる前に出してしまえということなのか、そういう企業も現実にはあるみたいです。一方では、きめ細かくコントロールしているようでして、20ページを御覧になっていただくと、例として二つ挙げましたが、このどちらが良くて、どちらが駄目だと思うかというクイズを出されまして、国税庁から同行していただいた阿部さんがきちんと正解を述べてくれました。この二つの中で、1番目の広告は駄目だということです。これはシャブリの広告ですが、このようにセクシーな格好をした女性がワインを飲んでいるような広告は、飲酒に対して誤解を与えるということのようです。女性がセクシーに酒を飲んでいるように見えるとか、酒を飲む姿が魅力的に見えるとか、酒を飲むことで男性が闘争的に強くなるように見えるというような、魅力的な女性だとか、格好いいスポーツ選手だとかを起用して、こういう広告をすること自体が酒類の広告に対して余計な誤解を生むということです。いわば広告表示の中にありますけれども、純粋な表示と情報提供のみだったらいいけれど、余計な誤解を与えるようなたぐいの広告は違反だということで、1番は駄目なのだそうです。    
  では、2番は何でいいのかということになりますと、これも魅力的な女性がワインを乾杯しているように見えますけれども、実はこれはボルドーのワイン組合に加入してらっしゃる会社の社長か何かで、テイスティングをしているところだから、乾杯ではないので、オーケーになったということです。こういうことになると、広告主としてもなかなかやりにくいところがあります。それから特産品でも地元の特産品は載せていいとか、鴨等なんかはいいとか、この動物は駄目だとか、パンダは駄目だとか、いろんな細かいところまで規制してやっているようですが、その割には、先ほど言ったようにかなりいかがわしい広告も素通りしてしまったりして、そこは自主規制の難しさがあると思います。アウトサイダー問題についてもちょっとお尋ねしたのですが、ほとんど問題ないということで、大多数の団体がこの規制の中に入っているし、仮に警告に対して違反を続けた場合、公表されるから商売ができなくなるというふうな形で、割と自主規制そのものは、担当者が言っているわけですから、どの程度かどうかは別問題として、特にアウトサイダーが何か違反を起こすという問題はないと言えるでしょう。よほど田舎の小さな企業が小さな広告で変なものを出すということはあるかもしれませんけれども、基本的にはこの自主規制の中に入っているというふうなことであります。    
 事前の予想と比較しまして、フランスが意外とマーケティングに対してまじめに取り組んでいるというのか、ワイン業者も自分たちのお酒については、やはり節度ある飲酒、それからできれば少なめの飲酒ということに対する態度を持ちつつあると感じました。でも、多分裏にはアングロサクソン系の酒が入ることはよくないというふうなニュアンスはあるのでしょう。そういう意味で、フランスはワインの消費量を減らしていまして、フレンチパラドックスというのは、あれはワイン業者の宣伝だよというようなことを実際にフランス人が言っていました。このような進歩をしているということについては、外国でも信じてもらえるのではないかなというような感じは持ちます。    
 それから、ドイツの自主規制です。これは26ページを御覧になっていただきたいのですが、ドイツは先ほど言ったように、免許もないし極めて自由なわけですが、逆に言うと、この自主規制というものについて真剣に取り組もうとしている姿勢があるだろうと思います。ただ、先ほど山下先生からも、どうしても末端の摘発したりするところにおいては、実際にはなかなか難しいという話がありました。自主規制の範囲内においては、それなりにやはり統一をとって行っているし、それをやらなければこの業界がもたないというふうな考え方を持っておりますが、それぞれ各国の需要に任せてほしいというふうな状況であります。
  全体的に言いますと、それぞれヨーロッパはまだ国の状況がありまして、一つには歴史、文化的な状況があります。例えば、中世にジャガイモがヨーロッパに入るまでは、朝食は「ビールスープ」というのをほとんど飲んでいたそうでして、それで栄養をとっていた時代があるそうですし、今でも風邪をひいた赤ちゃんや子供には温かいビールを飲ませて精をとらせるとか、そういうことも母親がやったりするということです。これはイギリスあたりでもやりますけれども、そういう玉子酒ではないですが、そこまで規制することはないだろうということです。ジャガイモが入ってからはだんだん朝はジャガイモのスープとかキャベツとかになりました。そのほかにもまだ産業革命当時ぐらいまでは、とにかくのんだくれて、酔っ払って町で吐いたりしてごろごろ寝ているというのがヨーロッパ人の酒の飲み方で当たり前だったそうですから、やっぱり産業革命以降、だんだん勤勉に働くという思想が出てきてというふうなところでしょう。特にドイツにおいてはそういう寛容なところがあります。全体的に見れば、フランス、イギリス、ドイツについては、やはり食事と関係するお酒については、家族で飲んだり友達と飲んだり、仲のいい者と食事したりしながら飲む分にはいいだろうという感じで、北欧はどちらかというと、市場的にも蒸留酒が強くて、そういう強い酒をコントロールしなければならないという歴史的な事情があるようです。    
 それともう一つは、やはり産業界と消費者団体のバランスの問題がありまして、やはり業界側が強い。特にワインとかビールとか、こういう地場産業的な、国内産業的な業界が政治力も強く持っていますから、そういうところは自主規制でいくという状況にあります。北欧は、そういう大きな国内の業者が少ない、多数の業者が少ないということで、政治力がないわけで、その辺の事情もあると思います。    
 それから3番目には、やはり消費者側の方の意識というのでしょうか。啓発によって消費者が飲酒、特に過度の飲酒とかドライバーとか、それから妊婦の飲酒とか、こういう社会的なコストというものについて、やはり意識し始めた。行政、それから消費者の発言、特にフランスなんかもそうですが、そういう消費者団体が訴訟をして、そしてそれを契機に業界の規制を強めていくというふうな方向もとられていまして、そういう意識の違いというのでしょうか、そういうところも国の状況に反映されるようであります。    
 最終的には、先ほど山下先生からもお話がありましたように、やはりヨーロッパというのはある意味で今変わりつつあるところで、ほったらかされていたそういう飲酒について法的な整備がされ、そして自主規制についても業界の方も以前よりは高い意識を持つようになってきています。ただ、実際の取り締まりというところになると、飲酒運転を取り締まった結果、警察に収容し切れないほどになって、今度は管理ができなくなってしまったとか、あるいは村の警察では、やはりお互い知っている者同士だから、子供が来ても「ノー」と言えないとか、警察もその辺は親に言っておくからということで、弾力的運用とでもいうのでしょうか、そういうローカルの事情も考慮しながら行っているというふうな状況の中で、でも規制は強化する。まさに営業は全体的に自由にしながらも、弊害の出る未成年者、ドライバー、それから過度の飲酒、妊婦、そういうものについては規制をより強化していこうということです。現場ではそれをどういうふうに徹底していくかが実際のところ問題であるというふうなことになるだろうと思います。    
 以上、簡単ですけれども、終わらせていただきます。

村座長
 ありがとうございました。大変豊富な内容で、質の高い御報告をいただきましてありがとうございました。
 なお、国税庁からは、企画専門官の竜崎さんと特命担当の阿部さんが東京から御参加なさいまして、伺いますと、国税庁の方は主体的にこういった外国のフィールド・サーベイをなさるのは初めてだということでございまして、その意味でも画期的なことをやっていただきましてありがとうございました。
 それでは、各委員の方々を交えて少し検討することにしたいと思います。寺沢先生はアメリカとのことも比較なさって、いかがでしょうか。

沢氏
 アメリカとの比較というわけではないのですが、ドイツが免許制を持たないということに関して、同じEUの市場の中で隣接するたくさんの国の人たちがドイツに免許制のないことについていろいろ評価をしているだろうというふうに私想像するのですが、その点は何か行って聞かれたことはありますでしょうか。

下氏
 特にそういうことは聞いていません。

沢氏
 免許制がないということで、あまり問題が起きなければ、ヨーロッパ全体が免許について緩和の方向へ向かうのではないかなというふうな気がするんですよ。弊害が出てくるところだけを規制していければ良いわけで、免許制そのものについてはもう一度考え直す必要性があるのかなというようなことを考えまして、ちょっと質問させてもらいました。

中氏
 やっぱり文化の一つというか、ドイツにはドイツの、フランスにはフランスの文化があるのだという感じで、あまりよその国のことについて大きな発言はなかったような気がします。

沢氏
そうですか。

下氏
 日本でいう酒屋さんと、レストラン、バーのたぐいとが、ヨーロッパでは免許制一つとっても大体位置付けが同じなんですよね。結局はローカルな事業だということになりますから、金融機関などがEUの加盟国の国境をまたいで、一つのマーケットで競争しようという話とはちょっと事情が違うのではないかなと思いますね。ある程度系列化されているということが、先ほどのお話しの中でイギリスのパブの状況なんかがありましたけれど、イギリスのパブをドイツに広めようというような、国境を越えてという話ではないのではないでしょうか。そういうことであまり問題視されていないのではないかなと思います。

村座長
どうぞ、本間先生。

間氏
 田中先生のお話を伺っていて急に思い出したことがあったんですが、私、1990年ぐらいからヨーロッパのワイナリーをたびたび尋ねているうちに、確か1992年か1993年ぐらいからいわゆる飲酒ということに対してのマルチ・カルチュラル化が始まって、初めは例えばフランスのアルザスのような、主な生産地から離れたような田舎の方から、生産者が未来に希望を失ってくるという状況が増えてきたんですね。今度の先生方の御出張は、そういう目的ではいらっしゃらないので、この質問は場違いかとは思いますが、確かに未成年者保護のための規制とか、健康のためのガイダンスに基づく飲酒とかに対しては大変結構な取組だとは思うのですが、市場経済の上から、お酒はどうしても税収を上げるとか生産を何とかしてということがありますので、消費量が20%もダウンするということに対しては、経済的なことに不安という話題は一切出なかったのでしょうか。その辺を伺わせていただきたいと思います。今、ボルドーもやっぱりアルザスみたいにだんだん勢力を失ってきて、生産者たちは、マルチ・カルチュラル化で悩んでいるんです。ですから、フランス全体の酒造業の上げる経済的効果というものがダウンしているのだと思うのですが、その辺はいかがなのでしょうか。

中氏
 今回の調査ではそこまでは詳しく聞けませんでしたが、ニュアンスとしては、やはり現地のワインの製造業者層が大変深刻な状況で、ストライキでもしたいような状況だそうで、特に、例えば「エヴァン法」ですね、あれはワインも例外なく適用されるということで、ワイン業者の人たちにすれば、ワインは農産物であるからたばこと一緒にしてはまずいというふうなことで、ワインについては例外的にしてほしいという訴えは起こしているらしいですけれども、まだ国民全体の理解を得るところまでいっていないようです。フランス人もかなりビールを飲むようになってきていますし、特にイギリスとか、あるいはドイツから入ってくるお酒に対して、国内のワインは農産物としてもっと保護しなければ、業者が実際倒産してきている状況のようであります。

下氏
 健康政策で、例えばアルコール摂取を減らしたいというふうに行政機関が言っても、当然ワイン業者の事業のことも頭に置いて考えざるを得ないというふうなことはもちろん言っておりました。製造業者は実際にはまた政治的にいろいろな力を使って、例えば課税を何かの関係で強化しようとしたら、すぐひっくり返したとか、それなりの力もあるそうであります。

中氏
 政治力があるという話をしていましたね。実際に2004年あたりから実行する段階になると、その辺が政治力でかなり変わってくる状況になるような発言をしていました。

間氏
 ありがとうございました。

村座長
矢島先生、どうぞ。

島氏
 幾つかあるので申しわけないのですが、まず一つ簡単なところから質問させていただきます。
 6ページでございますけれども、イギリスの未成年者飲酒防止の対策について、ここに18歳未満による飲酒消費のための代理購入の禁止というのがあるのですが、これについて、日本のことを聞きたいんですが、日本もやはり代理購入が禁止されているのでしょうか。 それからもう一つは、下に未成年者からお酒類を没収する権限が警察にあるとありますが、これも日本ではそういう権限があるのでしょうか。

田課長補佐
 では、私の方から御説明いたします。未成年者飲酒禁止法では、「酒類を販売する者は未成年者の飲用に供することを知りて酒類を販売することを得ず」と規定されています。これを解釈しますと、未成年者が親のお使いで来た場合、これは未成年者飲酒禁止法では禁止されておりません。ですけれども、成人の者が、未成年者に飲ませるために買いに来たことを知っていた場合、それは売ってはいけないということになります。つまり、20歳未満の者が消費するためのものは売ってはいけないというふうになっています。イギリスのように購入自体が禁止されているわけではなく、売ってはいけないという形になっています。
 それから、酒類の没収については未成年者飲酒禁止法の第2条で「酒類及び器具の没収・廃棄等の処分ができる」ようになっています。

島氏
 ということは、日本の場合は未成年者の代理購入の禁止というものはないということですか。

田課長補佐
 そうです。購入が禁止ということにはなっていません。未成年者が飲んではいけない。親は、未成年者である子供が飲んでいるときは制止しなければいけない。営業者は未成年者が飲むとわかっていて売ってはいけない。このように規定しています。

島氏
 それから2点目でございますけれども、5ページが主だと思うのですが、ここのところに明確にイギリスにおける販売規制の目的が出ておりまして、1964年法から2003年法において目的がかなり大幅に増えてきたわけでございます。ですが、この中には健康といったような概念が入ってきておりませんし、御報告の中にもアルコール中毒等の問題だとか、青少年の一気飲みということが全く触れられておりませんでしたが、この辺のところはいかがなんでございましょうか。

下氏
 これは、この「ライセンス・アクト」というもの自体では、そういう健康政策的な規制までは考えていないということでございまして、ただ、酔っ払った者にさらにお酒を提供してはいけないとか、そういう規制はあったかと思います。その程度で、この法律はどちらかというと社会の安全性を守るということで営業主体を規制していくと、そういう考え方でできているのではないかと思います。

島氏
 例としてこの法律を出したわけでございまして、この法律だけじゃなくて、例えばイギリスやフランスやドイツにおいてもアルコール中毒症等の一つの対策といったようなこと、その辺のところはやはりきちんとなされているのでしょうか。

下氏
 もちろんイギリスでもアルコール中毒対策なども含めて、一般的な健康政策というのは考えるべきであるということはあるんだというふうなことは言っておりました。

島氏
 ただ、青少年で、日本では一気飲みというが問題になっておりますけれども、欧米では炭酸系の方が非常に人気があると、日本と同じでございますね。それと同じように一気飲みとか、そういったような急性アルコール中毒といったような問題性はヨーロッパではないんでございましょうか。

下氏
 これはイギリスでいえば「ビンヂ・ドリンキング」ですね。

島氏
 どんちゃん騒ぎ。

下氏
 どんちゃん騒ぎみたいなものがそれであろうと思います。それは、大変今問題となっていて、ただ、まだそれ自体を何かどうこうするというあれはなかったようですね。

中氏
 それと、アルコール中毒症対策の問題は、広告の自主規制の団体がするのではなく、個々の企業が相当熱心にやっているというお答えをいただきました。広告の自主規制の団体はあくまで広告に関しての表現とかについて取り組んでいるのだそうです。アルコール中毒症対策はどういうふうにするのかということをお伺いしましたら、大手の酒造メーカーと販売している企業がやっていて、それは相当責任を持ってやっているのだという話はしておりました。

島氏
 それからすみません。最後でございますけれども、23ページ、ドイツも同じように18歳と16歳の2段階的に規制がなされているというようなことが先に書かれておりまして、それに引き続きまして、この23ページにおきましては、「未成年者保護法」に基づき「アルコポップス」販売に際し、「18歳未満の者への提供禁止」の表示を義務付けたというふうになっておりますが、この段階に至りまして、2段階から1段階化になっているように受け取ったのですが、そのように受け取ってよろしいでしょうか。

下氏
 これはなかなか複雑な問題がありまして、実は「アルコポップス」が18歳未満の者への提供禁止となるのは、蒸留酒に当たるからそうなるわけです。つまり「アルコポップス」を、甘味飲料と蒸留酒であるスピリッツ系のお酒を混ぜて商品化すると、それはこの18歳未満に売ってはいけないという規制がかかるし表示義務もありますが、ビールとかワインのような蒸留酒以外のものと甘い物を混ぜて売ると、この法律では規制がかからない。要するに、ワインとかビールというのは、ドイツでは税法上の特権的な地位がどうも歴史的にあるようでして、ちょっと蒸留酒系とは規制がいろんな面で違うようです。そういうところがこういうところに表れてきますが、結局「アルコポップス」というのを蒸留酒ではないもので造れば、また規制逃れが可能だと、そういうことのようでございます。

島氏
 あくまでこれは蒸留酒であって、アルコール度数の高い低いではないということですね。

下氏
 アルコール含有量が10パーセント未満という定義規定はあります。

島氏
 分かりました。

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