奥村座長
 大江さん、よろしいでしょうか。
 それではご紹介させていただきます。厚生労働省の健康局総務課で生活習慣病対策室長の大江雅弘様です。「アルコール関連問題等に対する取組の現状と課題」ということでお話を賜りますが、大体15分ぐらいでお話しいただいた後、15分ぐらい私どもからいろいろお教えいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

大江室長
 ただいまご紹介いただきました厚生労働省生活習慣病対策室の大江でございます。よろしくお願いします。
 私の方から、お手元に、「アルコール関連問題等に対する取組の現状と課題」、厚生労働省という資料に基づきまして、簡単でございますが説明をさせていただきます。
 まず1ページ目をおめくりいただきますと、表題が「健康日本21アルコール分野の目標」と書いてございます。この健康日本21というのは、平成12年3月に厚生労働省で策定をしたものでございます。
 従来、健康づくりといいますと、健診をしてひっかかった人をしっかりウオッチするという、診断早期治療、あるいは病気になった後のリハビリ、あるいはそれ以上の病気の進行を抑える三次予防、これが中心だったわけでございますけれども、健康づくりの基本は、まず病気になる前に生活習慣を変えることによって健康増進を図っていく。これが基本ではないかという一次予防を重視をしていこうということで、健康日本21という名前をつけて事業をやらせていただいております。中身としては、栄養、運動、休養、それからたばこ、アルコール等の9つの分野につきまして、かつ、さらに細目ということで70の具体的な数値目標を設定いたしまして、2000年から2010年の10年間のその行動計画ということで対策を立てております。その中の1つの分野がアルコールでございまして、3つの項目につきまして、目標値を設定して対応を進めてきております。
 目標の第1でございますけれども、「多量に飲酒をする人の減少」ということで、2010年にはそれを大体2割以上減少させようというような目標。それから第2に、「未成年者の飲酒をなくす」ということで、当然、未成年者は飲酒をしてはいけませんので、2010年には0%という目標。それから最後に、「節度ある適度な飲酒の知識の普及」ということで、2010年には全員に知っていただこうという目標でございます。ここで節度ある適度な飲酒ということで、1日平均純アルコールで約20グラム程度の飲酒。換算をいたしますと、清酒では大体1合程度ぐらいでございます。ただ、当然この数値そのものはいろんな内外の研究報告に基づきました数値でございますが、個人差もございますし、それから飲む頻度、毎日飲むかどうかと、いろいろございますので、もちろんそれによっては異なってまいりますが、大体1日の平均的な値ということでご理解をいただければということでございます。
 2ページは我が国の飲酒者状況を記載したものでございます。この飲酒習慣者の年次推移ということで、注にございますように飲酒習慣者とは週3回以上、1日に日本酒1合以上またはビール大ビン1本以上飲んでいる人ということでございまして、ここ5年ほどの国民栄養調査の経年の、かつ男女、それから年齢階級ごとの数字を出しております。グラフ化していないので読みにくいかもしれませんが、まず総数で見ますと右側に平均とございまして、上から5つ目が総数の平均で、直近の14年度で25.4%の方は飲酒習慣がある。これを男性で見てみますと49.0%、それから女性は一番下の段ですが8.5%でございます。これは年次を追っていくとどうなのかというと、データのとり方の問題もありまして、やや振れてもいますが、基本的にはそんなには変わっていないのかなというのが印象です。ただ、例えば男性の若い層を見ると意外というか、割と減っているのかもしれないなと。ただ、これがどの程度有意なデータかということはあろうかと思いますが、基本的には男女ともそれほど変わらずに、大体男性で、平均すれば半分、女性は大体1割弱ぐらいが飲酒習慣がある方と考えております。
 それから、多量飲酒者というところ、下の段でございます。ちょっとデータは古いですが、平均1日当たり日本酒に換算して3合以上消費するという方は、男性で4%ぐらい、女性で0.3%という数字が出てきております。
 それから、その次のページ、3ページでございます。これは平成8年と平成12年の研究によります「未成年者の喫煙および飲酒行動に関する全国調査」でございます。上の段が男子学生、それから下が女子ということでございます。このグラフの見方でございますが、やや黒っぽくなっているものが月飲酒者という定義で、これは月に1日以上、毎日飲酒者というのは白抜きの数字になっております。例えば男子の方で上を見ますと、平成12年、高3という一番右の段にありますが、48.7%が月飲酒者、それから1.2%が毎日飲酒者ですから、49.9%が月に1日以上あるいは毎日飲んでいる学生であるということで、さすがに毎日飲んでいる人は少ないですが、月に1日以上飲酒している方がかなり、半分ぐらいいる。それから、真ん中あたりに中3とございますが、中3、平成12年で見ると23.3%と0.6%ですから23.9%、4人に1人ぐらいが月に1日以上飲んでいると。女子の場合でも、一番右に見ますと、高3ですと月に1日以上飲んでいる方が4割弱ぐらいいるということで、我々としてもこれを0%の目標にしておりますが、なかなかまだまだ厳しい状況であるというふうな認識をしております。
 それから、次の4ページ目、「節度ある適度な飲酒の量」ということでございます。これは、平成13年の国民栄養調査で特別に項目を起こしたものでございます。図45の「節度ある飲酒量についての認識」というところでございますが、男女に分けております。節度ある飲酒をどのくらいと思いますかということで、黒く塗ってあるのが清酒の0.5合、それからやや灰色が清酒の1合、それから1.5合、それで白抜きが分からないでございます。男性の場合で見ますと、例えば20〜29歳のところは、この黒抜き、清酒0.5合というのが18.5%、それから清酒1合が47.3%ですから、これが大体各年齢同じぐらいの、大体6割ぐらいの方が清酒1合ぐらいが適量なのかな、あるいは0.5合が適量なのではないかというふうにお答えをいただいております。女性の場合もそういう数字を示しております。そういう意味で、大人の方はそんなにむちゃに飲んじゃいけないのかなということはお分かりいただいているのかなというふうなデータでございます。私どもとしてはあくまでこのアルコールが健康に与える影響や問題等について普及啓発することで、私どものホームページ等でも普及啓発をしておりますし、実際にはいろんな市町村の現場で指導をしているわけでございます。
 5ページでございますけれども、「保健指導マニュアル作成検討会報告(アルコール)」とございます。これは、平成13年度に久里浜病院の樋口先生を座長といたしまして御検討いただいたもので、実際に市町村等で保健指導をする際にどういう視点で指導していったらいいのかというものでございます。
 1ページおめくりいただきますと、6ページのところでございますが、一番上の方にアルコール問題の概説と保健指導の必要性とありますが、要は一言で言いますと、アルコール関連問題は予防可能であり、また、いわゆる依存症だけの問題でなくて、それに関連するいろんな、ここで書いております肝臓、高血圧、高脂血症など、いろいろ問題がある。したがって、保健指導という手段を通じてアルコール依存以外の関連するすべての問題に対応していく必要があるということがこの1ページに書かれております。
 それから次の、1ページおめくりいただきますと7ページからアルコール関連問題ということでございます。ここからは大量飲酒の問題、それから次の8ページでアルコール依存症、急性アルコール中毒等々ありまして、9ページのところに精神・身体障害ということで肝臓障害以下、いろいろその問題点を指摘していただいております。
 その上で、ではどういう指導をするのかといいますと、19ページ目からでございますが、保健指導の必要性というところで、その具体的な手法としては20ページ目では集団指導、いわゆるたくさんの方を集めて指導する。その要点というのが、その下のところから書かれておりますし、それから次のページ、21ページでございますが、1対1の指導。そのやり方としての具体的な、ここでは環境調整、あるいはその次のページでは指導方法とございますが、そういう具体的な指導方法も挙げていただきながら、実際の指導に当たられているというようなことで取りまとめていただいておりまして、私どもとしてはそういう普及啓発、それから実際のこういう指導ということで、対応を進めてきているというところでございます。
以上、簡単でございますが、厚生労働省としての取組の現状と課題というのをご説明させていただきました。
以上でございます。

奥村座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、ご質疑をお願い申し上げます。どうぞ。

神崎氏
 細かい質問ですが、教えてください。
 主な酒類の換算の目安というのは、これは節度ある適度な飲酒量ということで私は解釈するんですが、そうしますと焼酎が1合ということでありますが、純アルコール量がこれだけが突出して倍になっておりまして、これが1ページでもそうですし、4ページでもそうなんですが、これは何か特別な理由があるんでしょうか。いわゆる焼酎が体にいいということをこれで傍証するんですか。

奥村座長
 お願いします。

大江室長
 1ページ目の一番下のところでございますが、これは焼酎は一応35度という、アルコール度35%の例で書かせていただいておりますので、当然度数が変わってくれば、これは180ミリリットルに35%を掛けておりますので、純アルコールが50グラムという。

神崎氏 よろしいんですか、これだけ飲んでも。

大江室長
 ではなくて、適量が純アルコール20グラム程度ですから、逆に言うと50分の20にしなきゃいけないという意味でございます。

神崎氏
 そうですか。申しわけありませんでした。

奥村座長
 どうぞ。

御船氏
 よろしいですか。未成年者の飲酒問題ということで、下の番号で言いますと、14の、(次章および未成年のアルコール摂取の章)というのが括弧書きであるんですが、その内容をちょっと、骨だけでも教えていただけるとありがたいということと、それから第2点目は未成年者や保護者に保健指導の実際ということで書かれているんですが、右下のページで言いますと、20ページのところに保健指導の実際ということで未成年者・保護者というふうになっているんですが、今おっしゃられたような内容を未成年者の方にはどういうふうなルートで、知識だとかあるいは啓発するシステムがあるんでしょうか。教えていただければ。

大江室長
 まず、その後段のところからお話をさせていただきますと、これはたばこも同じでございますが、やはり子供たちに対するアプローチというのはまず学校でございまして、私どももこのアルコールの問題だけでなくたばこもそうですが、小学校、中学校、高校で使うテキスト、そこの中にしっかりしたものを作っていただいて、それを学校の教育としてやっていただく。そこがまず基本だろうというふうに思っております。したがって、そこはよく文部科学省と連携しております。
あとは、(次章および未成年のアルコール摂取の章)については、追加で後ほど改めてお出ししたいと思っております。

御船氏
 ありがとうございました。

奥村座長
 どうぞ。

井岸氏
 健康日本21という、その健康に関連して、例えばアルコール問題の場合ですと、保健指導が必要だということは十分分かるんですが、たまたま厚生労働省全体のスタンスとして、こういったような問題を惹起している。アルコールという飲料について別なスタンスからは何か、例えば販売業者に対しての姿勢だとか指導だとか、何かお考えがはっきり出ているんでしょうか。

大江室長
 私どもは厚生労働省ということで、国民の健康を預かる立場でございます。ただ、その全部をもちろん担当してできるものではございません。したがいまして、先ほど子供たちの問題で文部科学省との連携と申し上げましたが、やはり事業者につきましては国税当局とも、従来からもこのアルコール問題は関係省庁の連絡会議というような形で連携をしてきております。

須磨氏
 「健康」と言う場合に、フィジカルな面とメンタルな部分とあると思うんですが、最近問題になっているのはメンタルな方の病気が、非常に日本の中で増えているということだと思うんですね。この14ページに精神的な問題というのも出ていまして、今日本の中で大変問題になっている、うつ病の増加ですよね。それがアルコールとどう関連しているのかとか、今後、健康において、メンタルな部分を国として対策が立っているのかどうかなど、もしあれば教えていただければと思います。

大江室長
 心の問題ということかと思いますが、この健康日本21の中の1つの柱が、先ほど運動、栄養、休養と申し上げましたが、その休養と心のいわば健康づくりという問題の、実際に指標として、特に自殺者の減少というような1つの指標を立てております。また、いわゆる心の問題も大変重要な課題であると考えております。ですから、ここでも14ページの、例えば不眠症の解消法として寝酒はよく使われますというようなことで、1つは睡眠の問題も絡んでまいりますので、実は一昨年度に睡眠に関する指針を策定し、心と睡眠の問題だとか、そういう視点でも、私どもとしては取組を進めているところでございます。

須磨氏
 どういう取組を。

大江室長
 睡眠指針ということで、これは国立精神・神経センターの先生方のお力もいただいたんですが、例えばこのアルコールの問題でいきますと、寝る前にやはりアルコール分をとり過ぎるとかえって眠れなくなってしまうというような問題をきちんと国民に知っていただくとか、そういうところを盛り込んだ睡眠指針というようなものを既に策定して、普及啓発にも努めてきております。

奥村座長
 どうぞ。

本間氏
 甚だ恐縮でございますが、いろいろなお取組を確実に進めていらっしゃることはよく分かるんですが、この未成年者の問題を、学校で視聴覚教材などを事例に使いながら話を進めるということなんですが、実は学校における教育というものを子供が生まれてから成人するまでの18歳までの間で、目で見るもの、聞くもの、手で触れるもの全部を100%として教育と考えた場合、学校教育はたった9%しか占めていないという数字が挙がっていまして、これは日本でも確かだということを確認してあるんですが、そうしますとこの問題、未成年者の教育の問題はむしろ家庭、それから地域、メディアにおける教育の方が効果が上がるのではないでしょうか。学校というところが一番コンパクトに教えられるという場であることは確かなんですが、その他の方法というものもお考えいただきたいと思います。質問でなくて大変恐縮でございます。

奥村座長
何かコメントしていただけますか。

大江室長
 おっしゃるとおりでございまして、学校は少なくとも教室に座っている限りは必ず生徒は聞かなければいけないという意味では、非常に重要なツールだと思っております。もちろんそれ以外も、地域それから家庭というものもあると思います。ですから、私どもは地域保健を担っておりまして、先ほど申し上げましたけど、市町村では、例えば市町村保健センターでいろんな形で、いわゆる健康教育というような形で取組を進めておりまして、未成年の方でももちろん来ていただくことはできます。また、今後、子供たちにどこまでできるかということになるかもしれませんが、例えばいろんなITも活用した形での、新しいこういう健康づくりのための普及啓発をさらに我々も進めていかなきゃいけないと思っておりますので、いろんな多くのチャネル、地域、家庭、それからいろんなITとかを使いまして、普及啓発あるいは健康の教育というのを我々としても進めていきたいというふうに考えております。

奥村座長
 跡田先生、どうぞ。

跡田氏
 この懇談会は、どちらかというと、業について議論をしているところですね。それに対して、今日のお話は、どちらかというと健康のために何か抑制していくということが必要かということですけど、はっきり言って製造物責任のような形で考えるならば、たばこは既に発がん性がありますよと書いているわけですから、ここまではっきりしているのならば、やっぱり酒にもたくさん飲んだら死にますよぐらい書いてくれというのが、恐らく厚労省の陰に期待されているところではないかと思いますし、多分医師会の皆さんもそう考えていらっしゃると思うんですけども、やっぱりそういうのをそろそろはっきりとさせて、前に進む議論をしなきゃいけない時期だということで、こういう場が作られているんじゃないかと思いますね。ですから、ぜひそういうものを進めていただきたいなということが1点と、そこまで協力体制ができるならば、今、財務省も予算制度の中で政策群というようなものを作っていますので、この飲酒に関して各省庁、三省ですかね、文科省ですか、も一緒にして、そういう政策群でここに書いてある目標を本気でみんなでやるというぐらいに進められてもいいんではないかと思います。ただ、未成年者の飲酒をなくすというのは、これをゼロにするというのはちょっと不可能な数値のように、まあ、理想はそうなんでしょうけども、現実的には不可能なところもあるので、まずは毎日飲むような子たちをなくするように、その危険だよということを知らせるようなことを考えられたらどうかというふうに思いました。

奥村座長
 この目標は、アルコールに関しては3つ挙がっているわけですか。飲酒する方、未成年者、節度ある飲酒。

大江室長
 はい、そうでございます。

奥村座長
 先ほどお教えいただいたばかりなんですが、アルコール関係で苦しんでいらっしゃる患者さん227万名おられて、だけど現実には治療を受けていらっしゃる方はごくわずかでというようなことで、こういう227万人の方をもう少し減らすとかいったようなことも目標にはなり得るんですか。

大江室長
 冒頭申し上げたように、健康日本21というもののコンセプトが、生活習慣を変えることによって病気になることを予防する。ですから、必ずしも実際にアルコール依存になられた方、飲酒で困っている方をあえて外しているつもりはありませんが、ただほかの目標でいきますと、例えば運動というところですと、できるだけ1日1万歩に近づけて、今、日本人は男性が8,000歩、女性が7,000歩ぐらいですが、もう1,000歩ずつぐらい伸ばそうとか、食べ物で言いますと塩分は10グラム以下に抑えましょうと。そういうところからまず始めましょうという、実は目標を掲げておりますので、その依存症の問題もまた、きちんと医療の体制の問題として、きちんと私ども取り組んでおりますが、ここで挙げさせていただいたのはその一次予防という観点からの目標でございます。

奥村座長
分かりました。ありがとうございました。
ほかにございますでしょうか。

(なし)

奥村座長
 それでは、ちょうど予定していただきましたお時間でございますので、どうもありがとうございました。

大江室長
 どうもありがとうございました。

奥村座長
 事務局の方から何かありますか。では事務局の方からお話ししてください。

若尾酒税企画官
 時間をかりて、事務局の方から連絡事項を2つお願いします。
 第12回の議事録の案を机上にお配りしております。ご多用のところ誠に恐れ入りますけれども、ご発言された内容と議事録案の内容に相違等がないかご確認をいただきまして、相違等がございましたら、来週水曜日、28日までに事務局にご連絡をいただきたいというふうに思っております。よろしくお願いします。
 それから、第13回の議事要旨ですけれども、これも机上にお配りしております。既に国税庁のホームページには掲載しておりますけれども、お持ち帰りいただければというふうに思っております。
以上2つ、ご連絡申し上げます。

奥村座長
 そうしますと、次回は5月12日の午前10時からで、またお三方の先生方からお話をしていただくということで進めてまいりたいと思います。
 何かこの機会に委員の方々からお伺いしておくことはございますでしょうか。しばらくこういった形でヒアリングを続けることになりますが、よろしいでしょうか。では、よろしいですか。

(なし)

奥村座長
 それでは、きょうはこれで閉会させていただきます。
どうもありがとうございました。

―― 了 ――

←前にページへ