神崎氏
 今の問題で言いますと、私は全体的にはそれほどの直しは要らないと思います。これは1つの大きな流れですから。ただ、作文上、「事後的な」というのはあってもよろしいのですが、「ために」というのはおかしい、「事後的な是正」としてぐらいにすれば流れがよくなる、作文上の問題だと思います。

奥村座長
 よろしいですか。今の神崎先生のご提案は、「事後的な是正のため」のというのを「事後的な是正として」ということですか。事後的な是正策として臨時の需給調整措置、事後的な是正策としてでよろしいですか。

神崎氏
 是正としてでも、どちらでもいいです。

奥村座長
 これをお読みになる方は国民であり、別段お酒の専門家とか業界の方とか財務省の方とかだけが読むわけではありませんので、国民にとってわかりやすく表現することが望まれます。須磨先生はいかがですか。

須磨氏
 言葉の問題だと思うのですが、ここだけ口語にしても全体が口語になっていないので、おかしなものになるのではないかなあと思います。全体として、いわゆる一般の人に伝えるマスコミが使うような言葉使いにはなっていませんから。ということで、ここだけわかりやすい口語に変えることに賛成できません。私の意見は、今神崎先生がおっしゃった「事後的な是正として」か、または「事後的な」を「に」に変えて、「事後的、是正のための」とするのがいいのではないかと思います。そうすると、なんのひっかかりもなくすっと入ってくるのですが。

奥村座長
 私も「な」を「に」にするというのは一案として考えられると思っているのですが。
 それでは、「事後的に是正のための」ということで、よろしいでしょうか。ニュアンスはもう今酌み取っていただいたとおりで反対意見はないわけですから、では「な」を「に」にしてということでお許しいただけますでしょうか。
 あと1点は、15ページの7というところの一番下の行にかかわるところですが、「上記の要件等に」の後に、「酒類販売への責任意識の判断基準として」というのを入れたらどうでしょうかというご提案です。いかがでしょうか。余りにも少ない販売量の人がどんどん入ってきてしまってというのは、モニタリングすらできないぐらいたくさん来られると困るのでと。そこは賛成ということで、しかし、どれだけ以上売らなければだめだよということを言おうとしているのでというので、跡田先生は酒類販売の責任意識の判断基準として、何か最低基準を加えるというふうに明記しなさいというご意見なのですが。

須磨氏
 私は、これは責任意識だと逆に限定してしまうことになるので、要らないと思います。というのは、逆に責任意識だけではなく、余りにも数がふえると管理するのにコストがかかるという面もあるので、余り限定しないでこのままの方がいいのではないかと個人的には思います。

奥村座長
 ほかのご意見はいかがですか。特に強いご意見がなければ、原案のままでよろしいですか。
それでは、皆様方の総意として原案のままでいきましょうということで決めさせていただきます。
 それでは、全体的にこういうところを直しましたというのに対して、何かご意見がございましたらおっしゃっていただけますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、この懇談会の取りまとめとしては、今ごらんいただいているものでもって締めさせていただきたいと思います。それで対外的にはきょうの午後、国税庁の記者クラブの方でこれを発表させていただくということと、それからこの懇談会の模様については、いつものように議事録の公開ということで早急にホームページで公開させていただくということを了承していただきたいと思います。
 それでは、後のお時間25分間ばかりいただいておりますので、先生方からこの懇談会のこと、あるいは行政へのサジェスチョンなどいただけたらと思いますので、お1人ずつ少しずつお話しいただきたいと思いますので、井岸先生からスタートしていただけますでしょうか。

井岸氏
 私は、この懇談会の意見として公表していただくということについては、何ら異論を申し上げるものではありません。ただ、私は実際にふだんの商売といいますか、実務自体の相手方が、この業界に携って販売している方、あるいは製造している方々が非常に多いわけでございます。当然のことながら、これについていろいろ討議される機会がございます。その場合に、ここに盛られなかった意見というのもあるわけなので、そういったことについてどういうふうに取り扱ったらいいのか。言ってはいけないのか、あるいはそういったことをもうここで私がオーケーと言った以上は具申してはいけないのか、その辺もわかりませんので申し上げるのですが、やはりこれからの免許制度、あるいは酒類行政というのが、実務的に見れば非常にいろいろな難関があるわけですね。これですべてオーケーだというふうには受けとめられないと思います。それぞれ皆さんは不安を持つと思います、業界人であれば。それについていろいろな意見がこれからも出てくるのではないかと。その場合に、再び三たびこういったような懇談会で結構ですから、行政の立場でいろいろとそういった声を聞いていただけるような場を持っていただきたいなと、そういうふうに感じています。

奥村座長
 ありがとうございました。

岡本氏
 今日で10回で、多分私は8回出させていただいたと思うのですけれども、広島にずっとおりますので何回出られるかなと。半分出られればいいのかなと思って最初は考えていたのですけれども、一応8回、自分としては及第点かなと。出席回数だけですけれども感じております。
 専門がかなり、今おっしゃったような意見とは違う立場に普段暮らしているので、本当に初めていろいろな方々の意見ですね、業界の方々もそうですし、それからここに出てきている情報をくださった方の。この会議が始まる前にある程度予測していたのですが、非常に複雑な問題だなと思っていたのですが、それ以上に複雑だったと、そういう感想を持っています。ですから、どこからどう手をつけていいのか、こういった問題をですね。それが自分なりには複雑さというのはわかってきたつもりですけれども、それを実際に本当に今回よくまとめていただいたと思います。大変だったと思います。しかし、幾らでも、さっきおっしゃいましたように、書き足りないところといいましょうか、扱わなくてはいけない問題がこの16ページですか、そのぐらいの紙ではおさまらないような問題が含まれると思います。
 私も幾つか意見を述べましたし、それが幾つかの箇所で書かれております。特に感じるのは、個人的にはですけれども、やはり自動販売機の問題、これは後ろの方でゆくゆくはなくなればいいという方向が示されているようなところがありまして、その辺で自分なりに反映していただけているかなというものがありました。それと、あとコマーシャルといいますか、テレビ広告なんかの面で、ある程度議論はされたのですけれども、それから中にも書かれているのですけれども、やはりもう少し何か、今現在の自主規制という形で進んでいますけれども、自主規制でいいのでしょうけれども、例えばたばこの広告のようなああいうマナー広告とか、そういったものが今後出てくればいいなというふうに思っております。いろいろと挙げれば切りがないので、それぐらいにさせていただきます。

奥村座長
 ありがとうございます。神崎先生、お願いします。

神崎氏
 私は最初欠席しておりまして、2度目のときは、これは課税物資ということが強調されて、課税についての対策が講じられるかと思ったのですが、文化・伝統性というようなことが出てまいりまして、大変うれしく思いました。
 それで、これの最初の報告書にも飲酒教育というのがあるのです。そのあたりの内容は、これから検討しなければいけませんし、この懇談会の報告書の主題ではありませんし、もちろん国税庁としてもそのところまで、どこまで具体的にこれから展開なさるかは別としまして、私はやはりひとつこの問題にかかわらず、日本人全体が次の世代へ何をどう講じるかということが大きなテーマだと思いますから、ぜひ文化・伝統性、飲酒教育というところを別な機会にもそれぞれが持ち出して、強調していかなければいけないのではないかと強く思いました。

奥村座長
 ありがとうございました。須磨先生、お願いします。

須磨氏
 この懇談会に出させていただいて、いろいろなお話を伺いながらいつも思っていたことは、この懇談会とこの取りまとめ案がどういう意味を持つのかということでした。ただまとめて終わりでは全く意味がないし、多分そういうことではないだろうと大変期待しておりまして、この取りまとめ案というのはいろいろな部分でお酒を俯瞰して見ているところが私はすばらしいと思っています。国税庁の皆さんへのお願いは、こうした全体をみて考えるという発想を、他の行政の分野にも伝えていっていただきたいということです。この取りまとめ案がきっかけとなって、関係する様々な分野がネットワークを組んで力になればいいと思っておりますし、そうならなければ意味がないと思っています。
ここから何かが始まりますよう期待しています。

奥村座長
 ありがとうございました。では、寺沢先生。

寺沢氏
 2つほど感想がありまして、1つはここでいろいろ議論されている対象として、1つは酒類、お酒がありますよね。もう1つはお酒を販売している業者という側面があります。ここの文章の中にも出てきますけれども、お酒というものは一般商品化しているという議論は、さんざんこの中で出てくるのですけれども、片やお酒を扱っている販売業のやはり大多数は、一般小売業化していないという側面があるのですよね。スーパー、コンビニでかなり扱ってはいるのですけれども、昔から免許を持たれている酒販店というのは、一般小売業にまで追いついていないというふうに私は見ているのです。そういう意味では、昔から免許を持たれている一般酒販店が一般小売業化するような、そういうメニューをどこかでつくっていただきたいなという希望を1つ持っています。
それから、もう1つの点というのは、経済的規制から社会的規制へという時代の流れの中で、ずっと国税庁さんの方がイニシアチブをとっていろいろ施策をとられてきたと。それが社会的規制になると、例えば厚生労働省関連の問題、それから警察庁関連の問題が出てくると。となると、やはりそちらの方と一体になって何か社会的規制の施策を考えていく、そういう場をつくっていただければなというふうに思います。その2点です。

奥村座長
 ありがとうございました。本間先生、お願いします。

本間氏
 私は、いわば国民のこれを読んでそれがわからないという人たちの立場の代表のような気持ちで参加しているわけなのでございますけれども、やはり、いわば民主主義というのがこれまで何か統制がとれていて、例えば国税庁がそれを取り仕切っているうちは非常にやりやすく、浸透もあったわけですけれども、規制緩和によって現場民主主義になるというふうに私は解釈しております。これからの対応はこれまでとは違うということをよく意識していただいて、さらに細かい検討事項、それから内部調整、あるいは先ほどもおっしゃったような厚生労働省、それから警察など、教育方面の文部科学省とも連絡することが出てくるかもしれない。そういう意味において、広く考えていただきたいと思います。皆様方のおっしゃったように、これが出発点であって、文化・伝統性、それから課税物資であるということも、それから地域の力にもなり得るということを何とか浸透させていただくように、よりよき展開を図っていただきたいと思っております。

奥村座長
 ありがとうございました。水谷先生、お願いします。

水谷氏
 部局があるということは、責任を負わせられるということでもあります。一般の物資と違いまして、酒類については国税庁というのがその責任部署であるということになりますと、いろいろな責任をとらされます。その責任を本当にとっていいのだろうかという疑問が私にはございます。
 実は、そういうことをやると、あれもやってほしい、これもやってほしいということになりまして、あれもこれもやると。この文言の中でも、先ほど事後的なというような話がございました。事後でいいのかと、こういうことになります。事前的にしっかりやらなければだめじゃないかと、こういうことを言われて、どんどんと厳しくなっていくと。それが本当に必要に迫られるものを超えてまいりますと、国民を甘やかすことにもなり、小売業を甘やかすことにもなる。そして、それによって長期的に見ると堕落すると、こういうことになりかねないのですね。従って、いろいろな責任をこれからもとらされるでありましょうけれども、実はそういうことが本筋に合うのかどうかと。必ずしもそういうことまで細かくやることが役所として求められていることではないのだということを認識していただきたい。そして、それをはっきりおっしゃっていただきたいと。その意見がどこから来ているかと。こういう懇談会の席でそういう意見があったのだと。何でもかんでも業者のためにやる、あるいは国民のためにやるということであってはならないと、むしろ。そういうことでご認識いただく必要があるのではなかろうかと、こんな具合に思っております。
 以上です。

奥村座長
 ありがとうございました。御船先生、お願いします。

御船氏
 2点あります。第1点は、この中に国の役割の発揮が求められるというところがありますが、それに関してやはり非常に期待しております。例えば、研修だとか、あるいは小売の組合の活性化とかというふうにありまして、活性化するのは結果なのですけれども、役割を発揮されるということを中期目標なりで、ぜひ具体化していただきたいなということが1点でございます。
 それから、私がこれに参加させていただいて、お酒っておもしろいなという何か失礼な言い方なのですが、非常に多面的なアプローチが必要な分野で、特に先ほど水谷先生の方が責任部局があるということなのですが、かなり広い責任部局が必要になっていくし、その責任は何のためにあるかというと、多分消費者とか国民とかというレベルが文化的にも、あるいは消費者としても能力を上げていって、本当に楽しめる財として位置づける。そういうシステムを支援するということですと、やはり情報のネットワークを部局の方が構築していただきながら、結局は消費者にわかりやすい入り方というかいろいろな側面で、例えば未成年者の飲酒防止なんていうのは、考えてみれば厚生労働省が非常に研究の蓄積もあるでしょうし、そういう情報を小売の方々が非常に理解して、そしてまた売っていただける。あるいは、非常に販売体制も多分法的な枠組みが必要だと思うのですけれども、それをきちんと把握する消費者がいないと本当の理解がいかない。例えば、最近スーパーマーケットなどに入って、酒類の分離陳列がきちっとされているマーケット等とそうではないところがあって、やはりある意味では小売店の判断を、販売体制をきちんとしているな、あるいは酒なんていうふうに大きく書いて、それをきちんと消費者にわかるような、そういう動きをしているところもあるし、片やそうでもないところがあって、そういう意味では、何で分離しているのかというようなことが、実はスーパーマーケットで買い物かごを持ちながらやはり意識化しないとわからないわけですから、そういう意味では専門的な情報ネットワーク及びそれがきちんと消費者に行くようなシステムづくりというのを、消費者も頑張るわけですけれども、基本的には情報の整理というようなところまでいざなっていただければというふうに期待をしております。
以上です。

奥村座長
 ありがとうございました。山下先生、お願いします。

山下氏
 問題が経済活動に対する法規制のあり方、それから保健衛生、教育、それから税金という少なくとも4つぐらいの全然違ったレベルの問題が絡んでまいりまして、最初懇談会へ入ってくれと言われたときに、これはどうなるのだろうかと思っておりましたが、各分野の先生方のご意見を集約して、何とか方程式を解いたような取りまとめをいただきまして、大変ありがたく思っております。
 全般的には、日本の社会で法的なルールをつくって動かしていかざるを得ないということが、こういう問題についてもあらわれているかと思うのですけれども、そういう法令、その他のルールがきちんと動いていくには、やはりそういう法令そのものがわかりやすいものに仕組まれていく必要があるかと。一番最後のページに法令通達等について、今後手当てを進めることを望むものであるというふうに書いてありますけれど、ぜひそういうわかりやすいものをつくっていただくというふうなことをしていただければよいかと思います。

奥村座長
 ありがとうございました。私も一員として一言お話しさせていただきます。まず事務局の方にいろいろな資料作成、あるいはいろいろなご協力をいただいて私たちもいい議論ができて、事務局の方に大変感謝申し上げます。それから、メンバーの先生方は、責任ある立場で見識ある発言をいただいて大変ありがたくて、こういう制度とか治安のルールにかかわることですので、人々が価値観に基づき、いろいろな選択肢から選択していくわけですので、どのルールがいいというようなことを学者が決めたり、評論家が決めたりというたぐいのものではありませんので、いろいろなお立場からいろいろな価値観でご発言いただいて、大変勉強させていただくことができました。多分、学校で仕事をなさっている方は、いろいろな分野でいいケーススタディーの材料にも活用していただけるのではないかと思います。私からも、大変長い時間にわたりまして先生方からご協力いただいたことを感謝申し上げたいと思います。
 それでは、審議官から一言ごあいさつ、あるいは感想めいたこと、あるいはこれからどういうふうに活用していただけるかをお話しいただきたいと思います。

大西審議官
 単純にお礼を申し上げるだけでは足りないという気持ちでいっぱいでございます。それから、当初たしか七、八回というふうに申し上げておりまして、今日は10回目で大分延長戦に入ってしまいまして、これはおわびを申し上げたいと思います。
 最初に、1回目に堅苦しくなく自由なご議論をお願いをいたしましたが、今日も含めまして極めて活発なご議論をいただき、ありがとうございました。
 それから、これは小売の話ということが中心ではございますが、酒類とか、あるいは業の特性という、いわゆる総論部分や、文化・地域社会というような面も含めまして広く論じていただきまして、実はその成果というものは、私ども行政がともすれば足元の話、身近な話といいましょうか、そういうものに閉じこもりがちで、どうしても大きなビジョンというものを頭に描きづらいという傾向が、これではいけないのでございますけれども、そういう意味では大変役に立つご示唆をいただいたというふうに思っております。
 いただきました懇談会の取りまとめにつきましては、関係各方面と協議を進めて、必要な手当てを講ずべく努力してまいりたいと考えております。
 それから、前回申し上げたかもしれませんが、ここでも議論が出ておりますように、酒類業全体を見ますと、問題がいろいろ各方面に残って課題がございます。また、こちらの方からご意見を伺いたいと申し上げることがあろうかと思いますが、ぜひ今回に懲りずにまた引き続きご指導をいただければというふうに思っております。
 座長はじめ各先生方には、大変ご丁寧にご指導いただきまして、ありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

奥村座長
 ただいま審議官からお話しいただきましたが、また近い将来先生方からご教示いただく機会もお願いしたいかと思います。そのときはまたよろしくお願い申し上げます。
 本間先生のすばらしいエッセイを書いた書物をいただいて、本間先生がウエイトレスをしていたことが書かれていますので、これをお土産にさせていただいて、それではこれで散会させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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