日時: 平成27年6月25日(木) 13時50分から16時20分

場所: 中央合同庁舎第4号館共用第三特別会議室

出席者:

酒類分科会委員 三村部会長 佐藤委員(部会長代理)
  篠原委員 奥田臨時委員
  鹿取臨時委員 後藤臨時委員
  高橋臨時委員 松本臨時委員
説明者 国税庁 上羅審議官
  稲本酒税課長 笠酒税企画官
  宇都宮鑑定企画官 近藤酒類国際技術情報分析官
  松井酒税課課長補佐 田中酒税課課長補佐
  山根鑑定企画官補佐 石渡鑑定企画官付企画専門官

部会長
 第1回地理的表示部会を開催いたします。よろしくお願いいたします。
 本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。本日は委員の全員が御出席でございますので、国税審議会令第8条の規定に基づきまして本部会は有効に成立しております。
 まず本部会に所属する委員の方々につきまして右側からお名前だけ御紹介させていただきます。
 奥田臨時委員
 鹿取臨時委員
 後藤臨時委員
 佐藤委員
 篠原委員
 高橋臨時委員
 松本臨時委員
 どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、当部会の部会長代理につきましては佐藤委員にお願いしております。国税庁の出席者につきましてはお手元の配席図のとおりでございますので御確認ください。
 それではまず上羅審議官から御挨拶をいただきたいと思います。

上羅審議官
 御紹介いただきました国税庁で酒税を担当しております審議官の上羅でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 委員の皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず本部会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 日頃、酒税行政はもとより、税務行政全般につきまして、深い御理解また多大なる御協力を賜っておりますことを、厚く感謝申し上げます。
 本日は、酒類分科会に設置いただきました地理的表示部会の開催に当たりまして、酒類分科会の3名の委員の方々をはじめ、今月17日付で国税審議会臨時委員に御就任いただきました5名の委員の皆様方をお迎えすることとなりました。委員の皆様方におかれましては、貴重な御意見、御指導を賜りますようお願い申し上げます。
 本日の議題は、「『酒類の地理的表示に関する表示基準』に関するガイドライン(通達)の内容について」となっております。先般開催された酒類分科会において御了承をいただきました地理的表示に関する表示基準の全部改正に伴い、新たに策定することを予定しておりますガイドラインの各論点について、御審議をいただきたいと考えております。
 これまでの地理的表示に関する基準は、制度の細部についての規定がないことから、指定を受けるための要件の明確化等によりまして、制度を抜本的に見直し、制度の体系化を図りたいと考えております。
 地理的表示制度の見直しの関連におきまして、指定の具体的な要件の在り方につきましては、本日資料を御用意しておりますけれども、新たにガイドラインを策定し、酒類ごとの細目も含めて可能な限り具体化する予定としております。ガイドラインで定める内容は、技術的・専門的なものとなっておりますので、これらの事項に関して知見のある5名の臨時委員をはじめとした皆様方には、消費者、事業者にとって、より分かりやすい制度となりますよう、御審議のほどよろしくお願いいたします。

部会長
 ありがとうございました。それでは当部会の設置の趣旨等につきまして私から御説明させていただきます。先週17日水曜日に開催されました第16回酒類分科会におきまして、お手元にございます資料2、地理的表示部会設置要領について了承いたしました。資料2につきまして読み上げさせていただきます。
 酒類分科会議事規則第2条第1項の規定に基づき、下記のように定める。
 1、酒類分科会に「地理的表示部会」を置く。
 2、部会は、「酒類の地理的表示に関する表示基準」に関するガイドライン(通達)の内容について調査審議するものとする。
 3、部会の構成員は、別紙のとおりとする、でございます。
 先日の酒類分科会におきまして事務局から、「酒類の地理的表示に関する表示基準」の基本的事項については告示で定め、実務的な事項はガイドラインで規定する方針について説明があり、この点につきまして分科会で了承いたしました。ガイドラインの内容につきましては高度に専門的、実務的な知識が不可欠であることを鑑みまして、この度当部会におきまして知見のある臨時委員の皆様に御出席いただき審議を行っていただくことにしたものでございます。
 本日の議題に入る前に17日の分科会に出席されていない臨時委員の皆様もおられますので、17日の分科会で了承した「地理的表示に関する表示基準」の改正(案)の概要について事務局より御説明をいただきます。稲本酒税課長よろしくお願いいたします。

酒税課長
 酒税課長の稲本でございます。よろしくお願いします。
 それでは、お手元の資料3−1に沿いまして、先週17日に御了承いただきました「地理的表示に関する表示基準」の改正(案)の概要について御説明します。
 1ページをお開きください。現行の告示では細部にわたる規定を置いていなかったということもあって、今回抜本的に見直し、体系化を図るということで、手続規定その他指定の要件についての規定も定める予定でございます。
 まず1は題名ですが、最初に「酒類の」という文言を追加しています。
 2の地理的表示の定義ですが、ここでは地理的表示には2種類あり、1つは国税庁長官が指定するもの、もう1つは他国で地理的表示として保護されているものと定めています。現状では国際交渉を通じて外国の地理的表示を保護するかどうか確認をしていくということになっております。本日はこのうち前者について、国税庁長官が指定するに当たっての指定要件等について御議論いただきたいと考えています。
 3の地理的表示の対象ですが、これまでは地理的表示の保護の対象は「ぶどう酒」、「蒸留酒」又は「清酒」に限られておりましたが、今回の改正で「その他の酒類」を加えて、酒類については全て対象とする改正を行う予定です。
 4の地理的表示の指定要件ですが、告示におきましては、(1)にある指定要件として2点規定しています。1点目は「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であること」、2点目は「酒類の特性を維持するための管理が行われていること」です。更に詳細な事項については、本日御審議いただくガイドラインでその内容を定める予定です。
 (2)の「地理的表示として指定しない表示」ですが、地理的表示と同じ表示が既に商標登録されていることによって指定しても使用できないおそれがある場合や、日本国において「さつまいも」や「高野豆腐」等の一般的な名称になっているもの、それから外国の地理的表示については、そもそもその国で保護されていなければ地理的表示として指定できないとしております。その他、産地の範囲や地名の使用について争いがある場合など、保護することが適当でない場合には指定しないこととする予定です。
 5の地理的表示の指定内容ですが、次の事項を地理的表示として指定するということで、まず地理的表示の「白山」や「山梨」といった表示方法、次に、その産地の範囲ですが、原則として都道府県、市町村等の行政区画上の区分によることとしています。それから酒類区分ですが、これは「ぶどう酒」、「蒸留酒」、「清酒」、「その他の酒類」という4つの区分でございます。それから次の事項を定めた「生産基準」として、イ「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」、ロ「酒類の原料及び製法に関する事項」、ハ「酒類の特性を維持するための管理方法に関する事項」、ニ「酒類の品目に関する事項」を掲げています。これらの内容を指定し、公告をするという形になります。
 6は地理的表示の指定手続です。(1)指定する際には必ずパブリックコメントを行うこと、(2)指定をした場合はその旨を官報に公告すること、(3)地理的表示の取消しとして、次の場合には取消しを行うことができるとしています。イは使用されなくなった場合、ロは地理的表示が4(2)「地理的表示として指定しない表示」に該当することになった場合、ハは4(2)に該当していたことが指定後に明らかになった場合、これは3か月以内の期限を設けて取消しができることとしています。その他十分な管理がされなくなった場合など指定が適当でないと認められた場合には取消しができるとしています。
 次に3ページ、指定した地理的表示の変更ですが、指定内容について軽微な変更がある場合には変更ができるということを明確化した規定を置いています。
 それから7の地理的表示の使用の禁止ですが、これは具体的な保護の内容を規定するものです。(1)は、以下の行為が禁止されるということで、まず1として「地理的表示の産地の範囲以外を産地とする酒類に地理的表示を使用すること」、それから2として「産地の範囲内を産地とするが、生産基準を満たさない酒類に地理的表示を使用すること」を掲げています。 (2)は異なる酒類区分での使用は禁止されないということで、例えばぶどう酒の地理的表示として「山梨」を指定しても清酒には「山梨」と表示できるといったことを規定しております。
 それから8の商標等との調整ですが、既に登録された商標というのは地理的表示の指定後も引き続き使用可能とします。また、登録されていない商品名等についても、指定の際に公示したものに限って引き続き使用ができるという枠組みにしています。
 (2)は、地理的表示と同一又は類似の表示との調整ということで、自然人の氏名や所在地の住所等については、公衆が誤認するような場合を除いて、指定後も使用できるということを記載しています。
 4ページの9ですが、統一的な表示方法ということで、地理的表示を使用する場合は、「地理的表示」、「Geographical Indication」、「GI」のいずれかの文字を併せて表示していただくこととします。資料の※印にありますように、1つの酒類に複数箇所「地理的表示」を表示する場合は、いずれか一箇所以上にこういった表示をしていただくということを義務付ける形にしております。
 また、地理的表示の指定を受けていない場合には、こうした「地理的表示」等の文字を使用してはいけないということとしています。
 この規定につきましては、既に指定されている既存の6つの地理的表示についても表示義務が課せられますので、この点に関して2年間の経過措置期間を設けております。また、今後新規に指定する場合には、指定後2年の間にこうした統一的な表示方法のラベル表示にしていただくということで、2年間の猶予期間を設けております。
 続いて5ページが、今回の告示、ガイドライン等の体系のイメージです。今御説明しました「酒類の地理的表示に関する表示基準」(告示)が左側の真ん中にあるものです。指定の要件、手続、表示方法等をここで規定していますけれども、今回右側にあります地理的表示のガイドラインを通達で定めることを予定しておりまして、本日この内容について御審議いただくことになります。
 中身としては、総論のところで具体的な申立て手続や取消しの具体例などを示すとともに、指定の指針として、指定の要件について詳細に、できるだけ具体的に示したいと考えているところです。指定の要件に加え、どういった管理を求めるかという点についても、このガイドラインの中で示したいと考えています。

部会長
 それでは本日の議題に入ります。資料4を御覧ください。ガイドラインの論点ということですが、各項目について事務局より御説明いただき、審議したいと思います。
 1の酒類の特性について、論点が(1)(2)(3)(4)と多岐にわたっていますので、(1)から(3)までと、(4)を分けた上で、御審議いただきます。
 まず、「酒類の特性についての考え方」のうち、(1)酒類の特性と確立、(2)酒類の特性(品質・社会的評価)と産地との繋がり、(3)産地の範囲について、事務局より御説明いただき、その後、委員の皆様から御意見をいただきたいと思います。
 なお、事務局として問題意識を持っている点についても、説明していただければと思います。
 それでは、稲本酒税課長、よろしくお願いします。

酒税課長
 資料5が「ガイドラインにおいて定める地理的表示の指定の要件等について」ということで、今回定めるガイドラインの主な内容になっています。基本的にはこれに沿って御説明しますが、適宜資料6として配付している参考資料2を御覧いただきながら御説明させていただきます。 
 まず、資料5の1ページです。
 指定の要件ですが、先ほども御説明したとおり、今回の告示の案においては、第2項において、地理的表示として指定する要件を規定しています。
 具体的には資料6の1ページの下段に第2項の条文を記載しております。この中で地理的表示として指定する要件として2つ掲げており、1酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であること、かつ、2その酒類の特性を維持するための管理が行われていることです。
 その上で、この2つの要件を更に具体的に考えていきたいと考えております。まず、1.の「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であること」というのはどういうことなのかということですが、これについては、以下の3つの要件を全て満たしている必要があると考えています。具体的には、(1)酒類の特性があり、それが確立していること、(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられること、(3)酒類の原料・製法等が明確であることという3つでございます。
 まず、(1)の「酒類の特性があり、それが確立していること」ですが、今回の告示の第1項第3号においては、「酒類の特性」を、「酒類に関し、その確立した品質、社会的評価又はその他の特性」と定義しておりまして、酒類の特性については、品質あるいは社会的評価又はその他の特性のいずれかの特性があることが必要である、としております。
 参考資料の3ページを御覧いただきたいのですが、EUなどでは、地理的表示あるいは原産地呼称という制度におきまして、酒類の特性と産地の繋がり、あるいは特性についてどのように考えるかについて2段階ございます。まず、4ページを御覧いただいた方がよろしいかと思いますが、特にワインにおきましては、このようなピラミッド型になっており、地理的表示のないワインの上にPGI、地理的表示ワインというものがあり、更に厳しい要件を満たしたものを原産地呼称、PDOワインという3段階に分かれているところです。
 3ページに戻っていただき、一番大きく違う点がPDO、原産地呼称の場合は、品質及び社会的評価の両方に産地と繋がりのある特性があるということを求めている点であり、PDOの対象となるのは、品質等により他の商品と区別することができ、かつ名声や社会的評価があるものということになっています。
 これに対して、PGI、地理的表示といわれているものにつきましては、品質と社会的評価のいずれかがあれば良いということで、下にありますように、PGIの対象というのは品質等により他の商品と区別ができるものという場合と、品質等により区別は困難であるけれども名声や社会的評価があるという2つを指定できるという枠組みになっているところです。
 更に5ページを御覧いただきたいのですが、EUにおきましては、酒類ごとに地理的表示の枠組みが異なっており、ワインについては、PDO、PGI両方ある一方で、一番右の蒸留酒をみていただきますとPDOという制度はなく、PGIしかないという形になっております。ビールについては両方ありますが、必要とする要件についてはワインと多少差があるということになっております。
 こういう状況を踏まえて、今回の我々のガイドラインの案ですが、資料の5ページに戻っていただいて、今御説明しましたように、品質、社会的評価のいずれかの特性があるとしており、EUでいいますとPGIレベルの地理的表示の基準、すなわち、どちらかがあれば良いという考え方で整理しております。具体的に品質について特性があるとは、1ページの下にございますように原料の種類、品種、化学的成分等が独特であるとか、製法が独特であるといった形で、原料や製法で区別できる場合などを考えているところです。
 2ページですが、社会的評価について特性があるとは、広く社会的に評価及び認知されているということとしております。新聞や書籍等で客観的に確認できること、表彰ですとか市場における取引条件、具体的には高い価格で取引されるといった形で、広く社会的評価という形で知られていることが必要であると考えています。
 それから、2の「酒類の特性が確立している」とは、酒類の特性を有した状態で一定期間製造されている実績があることとしたいと考えています。
 どのくらいの期間、酒類の特性を保有していれば確立しているといえるのかということですが、長さについては(注)にありますようにケース・バイ・ケースの判断が適当ではないかと考えています。御参考までに農水省が今回制定しました地理的表示に関する法律におきましては、一応25年以上というのが目安として示されていますが、酒類に関しては、ケース・バイ・ケースで判断することで良いのではないかと考えています。また、「一定期間」というのは、酒類の製造が開始されてからの期間で判断するのではなく、品質が安定し、酒類の特性が形成された時点以降の、酒類の特性を有した期間で判断することになります。
 続きまして、(2)の「酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられること」について、御説明します。
 まず、基本的な考え方を示していますが、「産地に主として帰せられる」とは、酒類の特性とその産地の間に繋がり、因果関係が認められることであって、その産地の「自然的要因」や「人的要因」によって酒類の特性が形成されていることをいいます。「自然的要因」としては、ワインではテロワールという言葉がありますけれども、地勢、土壌、気候等のことでございます。
 「人的要因」とは、産地で人により育まれ伝承されている製法等のノウハウのことであり、技法、歴史等ということで、単に独自の原料・製法によって製造されているだけでは不十分であり、酒類の特性が産地と結びついていることが必要であると考えております。
 なお、(注)にありますように、「社会的評価が酒類の産地に主として帰せられる」と言えるためには、その地域に存在する個別の商品が評価及び認知されているだけでは不十分であって、地域が全体として地域と繋がりがあるものとして社会的に評価されていることが必要であるという考え方を示しております。
 四角で囲っている部分の「酒類の特性」について御説明いたしますが、申立書を産地で作成していただく場合に具体的にどのように書いていただくかということです。特性の中には2ページの下にございますように、官能的要素や、物理的要素といった要素について書いていただくことを考えております。
 3ページになりますが、全ての要素が網羅的に説明されている必要はないのですが、官能的要素につきましては、必ず説明されている必要があると考えております。
 続きまして、2で区分ごとに考え方を示しております。考え方といいましても、具体的に例示のような形で示させていただいております。ぶどう酒では自然的要因としては、地勢、土壌、気候、日照等がぶどうの品種、糖度、酸度、香味等にどのような影響を与えているかなど、人的要因としては、ぶどうの栽培方法の改良等がどのようにその産地のぶどう酒の特性を形成しているかなどにつきまして、合理的に説明できることが必要であろうということで、単にその産地内で収穫されるぶどうを原料としているというだけでは産地に主として帰せられる特性とはいえない、と考えています。
 清酒も同様に、自然的要因としては地質等によって、水が清酒の特性にどのような影響を与えているか、気象条件によってもろみの発酵温度にどのように影響を与えているかなど、人的要因としては、杜氏による伝承技術等を挙げており、単に他の地域から高品質な品種の米を購入して原料としているだけでは産地との繋がりを説明できていないと考えております。
 蒸留酒も同様ですが、蒸留酒の場合は、特に製法が気候などの自然的要因とどのように繋がっているか、あるいは人的要因として、蒸留技術とか貯蔵技術がどのように酒の特性に影響しているのかについて説明していただくことを考えています。単に独特の原料を使用しているというだけでは産地に主として帰せられる特性とはいえないという例示を示させていただいております。
 ここの部分は、まさにこれから地理的表示として、どういったものを指定していくのかという具体的な審査の指針となる部分でございます。どの程度産地と繋がりがある場合に特性と認めていくかについては非常に議論があるところだろうと思います。あまり緩やかに認めてしまうと、消費者から見ても、地理的表示というのは何なのかと、非常に分かりにくいものになってしまうという懸念がある一方で、余りに厳しい要件を求めてしまうと、なかなか指定できるものがないということになってしまう可能性もあります。
 地域ブランドの確立という観点からはどういった基準で認めれば良いのか、具体的な要件としてガイドラインの中でどの程度示せるのかということについて、更に掘り下げて御議論いただければと考えています。
 事務局案としましては、先ほど御説明しましたように、EUでいいますとPDOより若干緩いPGIレベルを基本として考えています。特性と産地の繋がりについては、産地の状況というものをある程度尊重しながら、ある程度の幅をもって指定する余地を認めた方が良いのではないかと考えています。
 ただ少なくとも特性と産地との繋がりがしっかりと説明がつく形でないといけないと思っていますので、その点について御議論いただければと思います。酒類共通というよりは、お酒の特性によっても、具体的な繋がりが違うということも考えられます。特にぶどう酒や蒸留酒では、EUでも具体的な例がありますので、指定の仕方は海外の例も参考になるかと思います。また、ワインについては地理的表示「山梨」で指定されておりますので、現在の「山梨」の考え方も踏まえて御議論いただければありがたいと思っております。
 その一方で、清酒については、海外に例がないということで、我々自身で考えていかなければいけないという面がございます。清酒については今回あらかじめ事務局の方で3名の有識者の方から御意見を伺っております。それが資料7でございます。こちらについて御参考までに御説明させていただきます。
 清酒の特性に関する意見ということで、1ページで松崎晴雄氏の御意見を御紹介いたします。地理的表示として清酒を指定する際にポイントとなるのは、「歴史的」要因であろうということで、製法や酒質という伝統的な要因ですとか、もう一つは一定の期間、市場で認知されその地域性をイメージさせる市場の評価という要因があるのではないかということで、1から4にかけて具体的にこういったものがあるのではないかということを挙げていただいております。1原料や製法由来からくる酒質を伴った産地イメージを感じさせるものということで、ここで示されているのは水に着目されたような形で説明されております。そのほか2のようにより製法に因んだところということで、精米歩合ですとか、ろ過技術に着目したもの、あるいは、3のように酵母など地元の原料を用い共通の指導の下で造られた酒質ということで、酵母ですとか、県産米を使った純米酒等の例が示されています。
 それから4のように審査に重点を置く、これはたぶん審査というか官能的な要素を地域でしっかりと見ていくということだろうと思いますが、そうした形が考えられるのではないかという御意見です。
 それから、次の2ページの大橋健一氏ですが、地域性を出す由来というのが酵母、水など、様々あるのでなかなか一元化できるものではないということ、むしろ今どういった特性があるのか現実をしっかりと評価することが大事ではないかということで、専門家、有識者等でチームを作って官能審査で共通認識を作っていくという現場からのアプローチも考えられるのではないかという御示唆をいただいています。
 ただ、ワインでも個々のAOPの設定要素には違いがあるということで、全てを一つの規範では語れないのであり、十人十色の特徴があるということも書かれています。酵母の特徴というのも重要な要素と考えられるけれども、時と場合であり、まずは現場からしっかり特性というのを導き出すということが重要ではないかという御意見です。
 それから3ページは山同敦子氏の御意見です。どちらかというと地域の差をいうのは段々少なくなってきたけれども、地域によって酒の違いは今も歴然とあるということで、静岡県の例を出されて酵母の特性が個性になっている例があることや、下のほうでは水系で分けるのがクリアーだという議論もある一方で、消費者には伝わりにくいかもしれないといったことも書かれています。4ページ以降、山同氏の著書の中で、各県別に具体的にこういった特徴があるのではないかということも書かれていますので、御参考までに今回資料としてお配りさせていただいております。かなり県別に様々な特性が詳細に書かれているところでございます。
 清酒につきましては、前回の分科会におきまして、篠原委員から御紹介がありましたが、国産米を使って国内で醸造したものを、「日本酒」ということで地理的表示として指定する方向で検討しているところです。そういう中で更に地域ブランドとしてどういった観点から指定を行っていけば良いのか、産地との繋がりをどうやって考えていったら良いのかというのを御示唆いただければ幸いです。ワイン、清酒、蒸留酒それぞれについて御議論いただければと思います。
 それから資料5に戻っていただき、4ページの産地の範囲まで御説明させていただきます。産地の範囲につきましては、これまで御説明しました特性等の関係で酒類の特性に鑑み必要十分な範囲である必要があり、過大や過小であってはならないというのが基本的な考え方だと思います。
 なお、(注)にございますように、産地の範囲につきましては、表示方法としては既に薩摩、球磨のような現行の行政区分ではない名前も指定しております。ある程度表示の方法については、十分に認知されているものであれば認める方向ですが、少なくとも指定する場合には、産地の範囲をしっかり特定しないといけませんので、基本的には行政区画でない場合に何市の何々町までとか、この地域までとか具体的に線引きをしなければいけないということです。
 また、同一の酒類区分における産地の範囲の重複については、より広い地理的表示の中に狭い範囲の地理的表示を指定する場合、あるいはその逆ということが考えられるわけですが、それについての考え方を示しています。イでは、ある地理的表示の範囲内に包含される狭い地域の地理的表示を指定する場合には、その生産基準は、広い範囲の地理的表示の生産基準を全て満たした上で、その産地に主として帰せられる更なる特性が必要としています。広い範囲の地理的表示の中に狭い範囲を指定する場合には、狭い範囲の方がより厳しいといいますか、特性が明確になっていないといけないという考え方です。
 ロは逆に、ある地理的表示の産地の範囲を包含する、より広い範囲の地理的表示を指定する場合には、狭い範囲の地理的表示の生産基準を踏まえた内容でなければならないこととしています。逆に言いますと狭い範囲の地理的表示を指定する場合には、やはりそれなりの特性が要るのだろうという考え方を示しています。
 なお、(注)では、どうしても包含関係にならない場合には、狭い範囲を広い範囲から除くという形で重複しないように指定する場合も考えられるだろうという考え方を示しています。

部会長
 それでは、今までの説明につきまして、皆様から、御意見、御質問をお願いしたいと思います。

鹿取臨時委員
 資料5(1)の(イ)の品質についてのところですが、原料の種類、品種、化学的成分等が独特である場合と書いてあります。現在、山梨の地理的表示では、ヴィティス・ヴィニフェラという形で登録されていると思いますが、これは「品種」ではなくて、「種」であっても独特であることを認めるということなのでしょうか。
 メルローとかシャルドネとかというのは品種であり、その上の概念として、ヴィティス・ヴィニフェラとかヴィティス・ラブラスカという種があると思います。品種として独特であるかどうかということが大切だと思いますが、現在、地理的表示「山梨」では「種」のヴィニフェラとして登録されているようです。その辺はどのようにお考えですか。この後の官能検査にも関わってくるかとは思いますが。

鑑定企画官
 今回、要件を明確に定めようという考え方ですので、委員もおっしゃるとおり、特性ということを考えますと、できるだけ具体的に定めることが望ましいのではないかと感じております

鹿取臨時委員
 品種というレベルで、果たして産地と結び付いているかということについて、検証するというようにしていただきたいと思います。

部会長
 これからどういう形で行うか検討していくとは思いますが、そういう考え方でよろしいですね。

酒税課長
 ちょっと抽象的になってしまうのですが、まさにここでワインの特性がどのようなものであり、産地とどう結びついているかを判断するときに、絶対に品種まで細かく特定していないと指定できないというところまで言い切ってしまっていいのかということは、悩ましいところだと思います。
 必ず、特性があってそれが産地と結び付いているということをきちんと説明できるというのは必要だと思いますが、どこまで細かく条件付けるのが良いのか。まさにそこを御議論いただきたいのですけれど、事務局案としては、EUでいうPDOでなくて、PGIレベルというところだとすると、もうちょっと緩やかでも良いのではないかという印象があると思いますが、その辺はいろいろ御意見があろうかと思います。

松本臨時委員
 私は、山梨県ワイン酒造組合の副会長をやっており、平成25年7月に地理的表示「山梨」をとらせていただいたわけですが、山梨県には80数社あり、山梨県ワイン酒造組合に現在入っていて活躍しているものが77社あります。地理的表示として指定されるためには、その全ての人に了解を得なければならないというのがあるわけです。1社でも反対すれば、地理的表示「山梨」というのは指定を受けられないということで、全てのワイナリーに了解を求めたのです。そのときには、いろいろな厳しい制約をさせますと、なかなかみんなOKというわけにはいかないのです。
 それをまとめて作っていかなければならないということですが、今、山梨県もいろいろなぶどうを栽培しておりまして、まだまだ新しいワイン専用品種のヴィニフェラを試験的に植えているという人もたくさんいらっしゃるのです。ワイン専用品種ですから、栽培がもしそこで成功したならば、「山梨」と認めることができるようにとヴィニフェラ種という一般の言葉でまとめあげたのです。
 日本の場合ワインを明治以来造っているわけですけども、ヴィニフェラ種については歴史が浅いということで、ヴィニフェラ種全体を登録しようということで、山梨の場合は登録させていただいたわけです。山梨の場合、いろいろなぶどうが植えられて、それが地理的表示「山梨」として出てきています。その品種の特徴が出ていれば、地理的表示「山梨」として言っていいのではないかという考え方で、ヴィニフェラ種としているのです。

鹿取臨時委員
 資料5の3ページで官能的要素については、必ず説明されていることが必要であると記されています。その場合、おいしいとか味が良いとか、良質だとかすばらしいとか美しいなどの抽象的な表現は使用しないと記されています。
 そうすると品種の個性ではなくて、品種がその土地にどう結びついているかが地理的表示においてはポイントになってくるので、この場合山梨ではヴィニフェラの特性をもし官能的要素で挙げるとするとどういうものが挙げられるのでしょうか。例えば、甲州でしたらまだ挙げやすいかもしれないのですが、その点について現状はどうなっているのか少し疑問に思いました。

松本臨時委員
 このヴィニフェラ種の中の個性というのでしょうか、これはやはり山梨県の気象条件が各々あるわけです。標高差が山梨県にはありますので、標高の低いところのワインというのはそれなりの品質、酸味とか糖分とかアルコールとかが存在していますし、また、標高の高いところでは酸味のある程度ある、そしてバランスのいいワインができあがります。ですから標高によってそのワインの品質というのは多少変わってきますので、山梨という大きな括りの中では、一つの品質という時に多少の幅を認めないと難しいと思います。

後藤臨時委員
 品種まで絞れる地域もあろうかと思いますが、実際はいろいろな品種が栽培されていて、そこが涼しい地域だとか温暖な地域だとかということが影響を及ぼしていることが多いと思いますので、少し広めでも可能と考えており、それは地域の特性によるのではないかと思います。
 ぶどう酒の場合はそうですけども、清酒の場合ですと、米の品種を限ることはかなり難しくなってくると思いますので、そこは、地域のどういったことを地理的表示の要件にするのかということにより、考え方が変わってくるのではないかと思います。

篠原委員
 清酒の関係、焼酎の関係で私は意見を言わなければならないと思うのですが、ワインの話が出ているので私のワインの感覚といいますか、それを少しお話させていただきたいと思います。ワインの場合はやはり高地とか低地とかという話が出ていましたが、清酒と比べますと、品種の特性というものがワイン自身に分かりやすい、消費者にある程度、比べて飲んでもらえば違いが分かるアルコール飲料なんじゃないかと思います。
 清酒の場合は、それがなかなか玄人の人はある程度見分けがつきますが、一般の消費者が官能で見分けるのはなかなか難しいというのがあります。ワインの場合、山梨はいろいろな品種でいいという、これはもう大括りな考え方で良いのではないかという感じがしています。あまり細かい、ヨーロッパでいうPDOの世界というのをあんまり突き詰めると、産地のイメージができないという感じがします。あんまり厳しく言わないで、EUでいうPGIの地理的表示というレベルでいいのかなという感じです。

奥田臨時委員
 山梨の場合は、だいたい植えられている品種も限られておりますし、分かりやすいということもありますが、北海道などではかなりその辺が難しくなってきますし、とりあえず全体の枠組みの考え方ですので、いきなり品種を全部特定してしまうというところまではしなくても良いのではないかと思っています。

高橋臨時委員
 ワインの特性と産地との関係ですが、この案ではPGIを基礎として考えるということで、そういう考え方で私は適当だと思います。私はワインについては素人ですが、いろいろ産地を回ってみて、メルローでも個人的ですが、やはり長野県の他の地域のメルローと桔梗ヶ原のメルローでは、素人でもその違いが何となく分かると、そういう感じがします。どのように表現するかというのは、専門家にも聞いてみたところ、いろいろと意見はあるのですが、やはりそれなりに感じられるということもありますので、まだフランスみたいにものすごく細かく規定して品種のその中の特性を規定するよりは、もう少し広い範囲で産地の特性というのを考えた方がいいのではないかと思っています。
 もう一つは、ガイドライン案の中にも表れておりますけれども、産地の特性と産地との関係はしっかり捉えるという思想がこの中に入っていると思います。それと同時にやはり産地だけの区分では特色があるとはいえないという書き方になっています。産地全体としての特性ということと、もう一つは産地の関係者の共通の財産であるという考え方も出ていると思います。やはり皆の中の形成されてきた特色であると、一企業の中の特性ではないという思想が表れていまして、私が解釈するにこれはヨーロッパ流のスイ・ジェネリスのシステムであると思います。ヨーロッパ型、つまり日本の農業の歴史を考えれば、やはりこういう形になるのだと思います。こういう思想が明確にここに出されてきているというのは地域の振興といいますか、日本ワインの振興にとって非常に良いことではないかと思います。
 もう一つお願いがあるのですが、この4ページに広い産地の中に狭い産地があるという考え方ですが、これはEUのIGPもAOPも、まず広い範囲のIGPがあって、その内訳としてもう少し狭い範囲というのがあって、一つの生産基準という傘の中に狭い範囲の地理的表示を複数入れていくと、そういう組み合わせ方というのも、結構フランスの中に見えるのです。例えば、アリエージュのIGPを見ますと、アリエージュというほとんど一つの県の地理的表示があって、その中にコート・ド・ラ・レージュというのとコート・ド・ラ・プラントーレルという2つの産地がありまして、一つの地理的表示の中に重層的に入れていくという方法もあります。そういう形も、もし可能であれば、今後、発展していくときに検討していただければありがたいと感じています。

部会長
 広い範囲と狭い範囲について事務局側から何かございますか。

酒税課長
 高橋委員がおっしゃるように、本来理想からいうと広い範囲で指定され、そこから更にその中で特性があった場合に、狭い範囲が出てきて、よりブランド価値の高い形でPRするような産地が生まれてくるというのが自然な形であると考えます。特にヨーロッパのような歴史があるところはそのような形が理想と思います。
 今回ここのロのように、狭い方からというのも理論上入れざるを得ないといいますか、考え方として示していまして、最初にどれだけの範囲をどう指定いくかというのは非常に悩ましい部分だろうと思っております。先日の分科会でも整合的に指定できるのかという御意見もございました。その辺についても皆様で御議論をいただければと思います。

鹿取臨時委員
 これに関して、質問があるのですが、例えば、長野県が地理的表示を取った場合、今の山梨の例を照らし合わせてみると、長野県のぶどうを長野県で醸造しないと長野県と名乗れません。長野県には高山村という村がありますが、長野県が地理的表示をとって、高山村がまだ地理的表示をとっていない場合、長野県の中に入っており、高山村のぶどうを長野県で醸造しなくても、高山村は自由に名乗れるのでしょうか。その辺はどのように規定をされていこうと思っていらっしゃいますか。

酒税課長
 現状は、今回、ワインの表示ルールも先日併せて御審議いただいたところですが、ワインの表示ルールの中で、産地を表示するルールとして、その土地のぶどうを85%以上使っている場合に表示できるというルールとしています。そのルールに従っている限り、長野が地理的表示に指定されていたとしても、高山村のぶどうを85%以上使っていれば、高山村と名乗れますし、山梨の中で勝沼というのもこのルールの下で名乗れることになります。
 おそらくヨーロッパ等では地理的表示しか表示できないという形になっておりますが、今回のルールはそれとは違うルールになっていまして、そこは場合によっては消費者に分かりづらい面もあるのかもしれませんが、日本の現状を考えると、そこまで地理的表示で縛っていくというのは、少し現実的ではないというのが事務局の考え方です。

鹿取臨時委員
 産地の範囲は、基本的に市町村の行政区画と書いてあるのですが、例えば、余市平野とか、長野盆地とか、そういう形での申立てということもあり得るのでしょうか。

酒税課長
 地理的表示に指定する場合、表示方法として、おっしゃるように、一般の行政区画上の名称でなくても指定するということは、十分にあり得ると思います。4ページに(注)で書いているのはその場合であり、仮に平野だとしても明確にどこまでが地理的表示の範囲であるかについては、少なくとも線引きはしなければなりません。そこを漠然としたままにすることはできません。ただ表示方法をどうするかはブランド価値等も考えながら、産地で考えていかれることであろうと、そのような整理にしています。

松本臨時委員
 今の話は、日本ワインの表示方法であって地理的表示の表示方法とはちょっと違うと思います。なぜかというと地理的表示は、そこの地域の人たちが、ぜひ自分たちの名前を保護してもらいたいと、それで申立てをするのです。ですから山梨の場合は地理的表示「山梨」というのがあり、その中に勝沼という地域があるということです。そこの人たちが、全ての人たちが、山梨ではなくて、勝沼をとりたいという申立てがあった場合に地理的表示「勝沼」ができるということです。申立者がそこにいてきちんとした組織を作って、申立てをするということです。
 それが果たして、地理的表示の基準に合っているかどうか、判断していただいて、地理的表示として認められる、そういう考え方になってくるのではないかと思います。勝沼というのは、それだけの組織、そして、それだけみんな作りたいという熱意、それが今のところ、出てきていないのではないでしょうか。
 したがって、地理的表示「山梨」だけが山梨では取れているということになるのではないでしょうか。そこの製造者が地理的表示を取りたいという、そういう思いがあれば、申立てしていいのではないでしょうか。それがどういう範囲なのかについては、そこにいる人たちが取るわけですから、組織的な形で、どういう形の地理的表示を取るのか、そこで決まってくるのではないかと思います。

上羅審議官
 清酒、蒸留酒という酒類ごとの特性について、どのようにそれぞれの自然的要因や、人的要因の結びつきを見るかという話でありまして、清酒の方は先ほど御紹介させていただいた中にありましたように、どちらかというと蔵の技術の方であって、地域との関わりの方が分かりづらいというのもあります。他方、基準を作っていく中で、ぶどう酒、清酒等の酒類によって地域との結びつきの考え方に多少の差があってもいいのでないかと考えております。
 その中でぶどう酒については、ぶどうの品種ということで書かせていただいておりますが、今後、申立てが上がってくるときに地域との結びつきをどこまでしっかり見ていくのかについては、緩やかに見ていくという考えもありますが、日本のことを考えると、しっかりとしたものを世界にきちっと売っていくためには、やはりぶどうの品種をきちっと書けるようなところは明確にしていただく努力も当然必要かと思っています。

部会長
 ぶどう酒につきましては、いろいろ御意見いただきまして、ぶどうの品種については厳しく限定せずにこれからの可能性というのもありますから、それについては緩やかさとか地域事情を基本的には前提にするべきであろうと考えております。
 それから今、松本委員から御指摘がありましたように、地域の人たちの主体的な意識や協力体制等、自分たちがこれでやっていきたいというのが前提にありますので、あまり最初から厳密に行政区画がどうなっているかという議論ではないというのを少し前提としまして、ワインについては可能性のあることですので、可能性の芽を摘まないように進めていく方向で見ていくということだと思うのですがいかがでしょうか。

鹿取臨時委員
 地理的表示というのは、非常に排他的な制度だと思っています。それが、一番私が危惧しているところです。基本的には高橋先生のおっしゃった意見に賛同いたしますし、地域の活動に委ねるということが大前提だと思うのです。しかし、地名は誰のものかというと、そこの地域社会のものであり、そこで暮らしてきた人、あるいはそこで生産活動を営んでいる人たちのものであると思います。それを排他的に使用するということなので、やはり地理的表示として指定された場合、単にそこのぶどうを使って醸造しているだけでなく、更にもう一つハードルを越えないと地名が名乗れなくなってしまうので、私は、例えばその地域内のワイナリーがあまり行政に依存する形ではなく、自分たちでしっかりと、ここのワインの特性が何なのか、品種は何が適しているのか、どういう気候なのか、どういう土壌なのかということを十分に検証した上で申立てしてほしいと考えています。
 制度自体を作ることは非常に喜ばしいことだと思うのですが、地域ブランド化のために、行政主導になって生産者が追い付いていかない形で地理的表示が申請されてしまうことを大変危惧しています。それをやはり念頭に置いていただきたいなと思っています。排他的な制度だということを、おそらく生産者自体が、あまり理解していないという問題もあると思っています。

酒税課長
 非常に重要な御指摘だと思います。我々もまた今回、今日の議題の最後の方でも手続的なところでお示ししますが、おっしゃるように地理的表示制度というのは地名について、排他的にある特定の者だけしか名乗れないという制度になりますので、少なくとも制度の趣旨を理解した上で、域内の酒類業者間で合意することは非常に重要であると考えています。
 それがしっかりしていないと、将来、そこの地域で同じようなお酒を造りたいという人を阻害するような面も出てきてしまうということも十分に考えた上で判断していく必要があろうと考えています。

佐藤委員
 いろいろなお酒の種類を含めた形での地理的表示ということなのですが、ワインが世界では一番古い歴史があり、こういうことが行われていますので、引き合いに出されてそれを材料にこういう形で作っていくというのは理解しております。
 ワインの今の仕組みというのは国によっても違うと思うのですが、フランスが一番厳しいと思います。例えば今のお話ですと、地域というのは行政単位に限らず、ある程度、広く狭く、もっと融通を利かせていくというお考えのようです。
 資料2ページ目の(2)の基本的な考え方で、「自然的要因とは産地の風土(テロワール)」という言葉があるのですが、テロワールというのは、ワインのしかもフランスのほとんどブルゴーニュだけでしか使われていません。世界各国では、この概念に対していろいろあるようです。元々はブルゴーニュで畑ごとのランクの違いを説明するのに使われている言葉でありますから、テロワールと聞くと非常にミクロな単位の差というか原産地呼称というような印象を受けてしまいます。おっしゃることは分かりますが、「産地の風土(テロワール)」という表現は広く酒の観点からいうと、誤解を招くことになりかねないのではないかという気がしまして、私のひっかかっているところです。
 また、元に戻りますが、ワインと清酒を比べて考えるとかなり状況が違っているかと思います。原料に関して清酒の場合は高度に精米をするということもありますので、ワインの収穫したぶどうをそのまま使って仕込むというのと、かなり状況が違ってきます。
 清酒の特性に関するいろいろな方の意見がございますけれども、例えば、この松崎さんの御意見につきましては、私は非常に賛同するところが多いのですが、日本酒が他のお酒と違う大きな特徴というのは、伝統とか歴史という要素、いわば社会的な要因です。清酒というのは産業として古いのですが、企業としても非常に古い。日本でも一番古い企業が清酒メーカーなのではないでしょうか。それが地域的にも認知されている要素ですね。
 また、清酒には人的な要素というのがあるかと思います。地酒という概念というのがあるかと思いますし、伏見のお酒、秋田のお酒、広島のお酒、それが資料にも書いてありますが、そういう一般的に認知されている要素というものに、清酒の場合は、非常に重きを置いていただくべきなのではないでしょうか。それは、成分などとは全く違うところでありますので、お酒の種類によっては、そういう要素をいろいろとそれなりに重きを変えていって評価をしていくべきではなかろうかと考えています。

鹿取臨時委員
 例えば、ドイツでは、テロワールはフランス人が決めた言葉だからということで、テロワールという言葉の代わりに、オリジンという言葉を言っている人もいます。ブルゴーニュだけが畑の特性を言っているわけではなく、世界中にこうした概念が浸透しています。70年代は品種にフォーカスするという造りが主流だったと思うのですが、最近は、生産者の視点というのが品種だけではなく、土地に移ってきていると思うのです。そういう意味でこの言葉は重要だと思っていますが、ただし、ひょっとすると風土だけで日本人には通じるのかなという印象も持っております。

佐藤委員
 私が申し上げたかったのは、ワインの地理的表示をそっくり清酒に当てはめるのは、まずいのではないかと思いましたので、誤解を招かないようにということです。

高橋臨時委員
 テロワールという言葉については、公式にINAOで定義しているかと思います。広く取って、自然的要素と人的要素が加わって、一つの範囲内において、一種特有のものができる状況が出来上がっているというような定義だと思います。かなり広くテロワールは定義していると思うのですが、テロワールについての考え方は、ブルゴーニュの人の考え方はありますが、もっと広くとる考え方もありますので、いろいろ考え方があるのではないかと私は理解しています。

部会長
 佐藤委員からワインと清酒との違いについての発言がありましたので、篠原委員からも御意見があればお願いします。

篠原委員
 ワインの方はだいぶ煮詰まったようなので、清酒、蒸留酒の議論に移らなければならないと思っています。清酒については、佐藤委員の方からかなり細かいお話がありましたが、私もそのとおりだと思っています。2千年の歴史があり、日本中の各地にそれぞれ特性のある地域集団ができています。灘が代表的ですが、九州の福岡にも城島という地方に酒蔵がいっぱい寄っているところがあります。最近有名になった佐賀県の鹿島というのもそうです。
 それぞれ地域、いろいろな行政区画の中にあるのでしょうが、それぞれの地域で特性があるお酒を造っています。それから「特性がある」というのが非常に難しくて、技術的に専門家でないと、なかなか見分けがつかないようなお酒の酒質というのは、先ほど佐藤委員から精白をするとの話がありましたが、お米の品種で酒の味が分かるというのは、技術者の中では分かる人がいますけれども、一般消費者では非常に分かりにくい部分もあります。それよりも水と造り方で品質が変わってくるということがあります。地理的表示を取るときに、地域によっては、EUでいうPDOの世界も出てくる可能性があります。
 しかしそうではなく、県の組合全体で、県単位でもっと緩やかというかその地域の気候風土だとか、人的なことだとか水だとか、そういうもので一括りにして、何県のお酒を地理的表示としてくれとか、こういう話もでてきます。地域によってはチェックしにくいというか、いろいろな条件で出てくると思うのです。そこのところを地理的表示として指定するときに、よく考えていただきたいと思います。
 そうでないと、あまりにも細かく条件付けしてしまうと、先ほどのワインの世界ではないですが、どうにもならないという世界があると思います。酒造組合の場合は県単位がほとんどの組合になっています。石川県は連合会で、酒造組合が税務署単位で残っていますので、白山は石川酒造組合から石川県の中の白山ということで登録されています。そういう世界と県全体の世界と、県全体の世界の中でも細かいお米の品種だとか、精白の度合いだとか、あるいは製造の管理の仕方だとか、そういうもので官能試験も通して、細かく厳しくやっている県もあるわけです。その県がどのような申立てを出してくるかは、各県両方あるので分かりません。
 厳しい基準の方は厳しく審査していただければ結構ですが、県単位で申立てがあるような場合には、緩やかという言葉はおかしいかも分かりませんが、気候風土だとか社会的な認知の問題もあると思います。例えば、高知のお酒は豪快な飲み方をするので、飽きのこないような造り方をします。これは特性の中に入るのか分かりませんが、発酵の度合いをものすごく発酵させて、発酵しきったお酒にするという他県とは違う造り方を高知ではするのですが、それが官能検査で分かるかというと、なかなか分かりません。長い間、飲んでいる間に、なかなか飽きがこないね、と分かってきます。そうしたことも含め、清酒の場合、飲み方からも、酒質に地域的特性が出ているという非常に複雑な要素がたくさん絡んでいます。
 清酒の地理的表示は県から出てくると思うのですが、評価の仕方を県単位でおおらかにやるのか、いや、厳しくやるのかというのを二通り考えてほしいというのが、私の酒造組合としての意見です。県は酒造組合単位でやっており、おそらく県単位で申立てが出てきますが、品種も製造方法もいろいろ特徴のあるような細かいところのものも出てくるし、ある程度おおらかな社会的に認知されているもので大括りに出てくる可能性もあります。例えば、広島の西条は軟水のお酒で認知されているのではないかといったことも含めて、両方を考えてほしいというのが清酒に対する私の意見です。
 焼酎に関しては、既に産地構成されている壱岐、球磨、琉球の泡盛、薩摩の芋焼酎など、ほとんど指定されていますので、それ以外のところは産地形成というのが焼酎の場合はほとんどありません。焼酎の歴史というのは、九州の南の方ではそういう世界があるのですが、酒蔵はほとんど焼酎の免許を昔から持っていて、焼酎を造っていました。北の方の酒蔵もそうです。今でも造っているところがあります。
 だから、そういうことになると清酒と重なってきます。産地形成が非常に難しいので、蒸留酒の中の本格焼酎だけをとると、今指定されている4箇所でこれ以上はなかなか出てこないのではないかという感じがしています。蒸留酒、本格焼酎の場合は、九州、沖縄以外は産地形成できておりませんので、今のままでいいのではないかと思っております。

酒税課長
 御意見ありがとうございます。お酒の特性・特徴を踏まえて指定していくということは、当然考えていかなければいけないのですが、今回、ガイドラインの中では、ある程度、酒類全体で同じようなレベル感も出しながら、こうした形で示させていただいております。具体的な指定の段階になると、なかなか文書では表現できない様々なことを総合的に勘案して決めていくのだろうと考えています。
 その時は、今、委員のおっしゃったような日本酒の特性についてもよく踏まえた上で、また具体的事例について、どういった形で指定していくかというのは、国税庁としてしっかり考えていきたいと思います。

部会長
 ありがとうございました。難しいながらもこれから可能性があるということで、ワインについて貴重な御意見をいろいろいただきました。また、清酒、焼酎についても、やはりその商品特性を考えてということで、御指摘いただきました。この議題については、ここまでとさせていただければと思います。
 それでは、2つ目の議題に移ります。4番目「酒類の原料・製法等が明確であること」について、事務局より御説明いただきまして、その後、委員の皆様から御意見等をいただきたいと思います。それでは、稲本酒税課長、よろしくお願いします。

酒税課長
 資料5の4ページを御覧ください。(3)の「酒類の原料・製法等が明確であること」について御説明いたします。
 ぶどう酒、清酒、蒸留酒それぞれに、どういった項目を産地でしっかり決めてもらう必要があるのか、また、それが地理的表示に指定されたときに、具体的にどのような原料を使ってどのような製法で造られたお酒かしっかり特定する必要があると考えています。
 このように「明確であること」と示しておりますけれども、資料6の6ページ目を御覧ください。今回事務局案というのは基本的に産地の実情を尊重して、産地において申立て時に決めていただく必要のある項目を列挙した形になっています。今回ワインを例として、資料6の6ページで、A、Bと2つの案を示させていただいています。もう一つの考え方で、B案という右側の案を御覧いただきたいのですが、例えばワインについて一定の最低基準、地理的表示と指定するためには最低こういった基準を満たしている必要があるというような基準を示すというのも一つの案として検討してきたところです。
 次の7ページを御覧いただきたいのですが、EUなどではワインについては皆様御承知のとおり、そもそも地理的表示の基準ではなくてワインの醸造基準ということで、ワインとして認められるための製法の基準というものがしっかりと決められているということがあります。
 そのほか、米国、豪州におきましても、ワインという場合に、製法等について一定の制限がかかっている例があるということがあります。それに倣って、例えばこれから国際的に地理的表示付きワインというものを海外に輸出していくとか、PRしていく中で少なくともEU等の醸造基準を満たしたものでないと地理的表示として指定できないこととするという枠組みも検討してきたところです。
 海外の、特にEUの基準を元に最低基準ということで示した場合の数値が6ページのB案になっております。まずB案ではヴィニフェラ種とその他の品種ということで分けております。ヨーロッパの醸造基準というのはかなり日本とは違う気候・風土を前提として作られたものです。ヴィニフェラ種であればある程度EUの基準を満たすように日本でもワインを造れる一方で、その他の品種、例えば山梨の甲州などを例にとると、ヨーロッパの基準で計ってしまうと品種の特性からしてなかなか良いワインにならないということにもなりかねません。少なくとも今回B案としては、ヴィニフェラ種に限ってはヨーロッパの基準をある程度参考にした最低基準を示すという案を御提示させていただいております。
 ただ製法の中で特に補糖の部分を御覧いただくと、ヴィニフェラ種であっても「加えた糖類の重量が果実に含まれる糖類の重量の50%以下」という形で示しておりますが、補糖については、EUなどの基準ですと35%以下くらいに制限されるのが一般的なワインの基準となります。日本の現状を見ると、それよりも緩い形でしか示せないのではないかという形になっております。資料6の8ページで、現在の地理的表示の山梨ですとか、あるいは、甲州市の原産地呼称制度、長野県の原産地呼称管理制度の製法に対する制限を御参考までに示させていただいておりますけれども、日本の気候、風土等を考えるとなかなかヨーロッパ並みの基準というのは、難しいというのが実態だろうということであります。 
 そうしたことを踏まえると、事務局としては、B案のようにヴィニフェラ種に限ってある程度ヨーロッパに近いがヨーロッパよりも緩い最低基準を示すことよりは、補糖、補酸を含めて地域で適切にしっかり設定していただくという形で自主的に決めてもらう方が良いのではないかと考え、A案を採用し、今回のガイドライン案として示させていただいています。
 したがって、資料5に戻っていただき4ページですが、今回(3)として、酒類の原料・製法等が明確であること、という形で示させていただいていますが、仮にB案を採用する場合には「一定の基準を満たしていること」というようなことが条件として加えられることになろうかと思います。
 事務局案のように産地の実情に委ねるA案が良いのか、あるいは地理的表示として指定する以上、一定の品質の担保といった観点からB案とすべきではないかというお考えもあろうかと思いますので、まずそこが論点の一つと考えております。御議論いただければと思っています。
 その上で、我々の案を御説明します。まずイのぶどう酒ですが、「原料」につきましては、産地内で収穫されたぶどうを85%以上使用していることということで、まさにEUのPGIを参考にした基準とした上で、品種については酒類の特性上、原料とするぶどうの品種を適切に特定し、品種ごとのぶどうの糖度の範囲を適切に設定することとしています。
 また、製法では、補糖や補酸について上限を適切に設定する形で示させていただいています。5ページの(注)に書いていますが、補糖、補酸、除酸、総亜硫酸の値の設定に当たっては、地域の気候・風土やぶどう品種を勘案し、過大なものであってはならないとしています。ただ決めれば良いということではなくて、酒類の特性を踏まえて整合的な形で決めていただくという意味で、「酒類の特性を踏まえて適切に設定する」という表現で整理させていただいています。
 それから清酒ですが、「原料」については、原料の米及び米こうじについては、日本国で収穫された米を使用していること、そして産地内で採水した水を使用していること、それから副原料については、使用することのできる副原料の重量の上限値を設定することという形で整理しております。
 なお、清酒についてはぶどう酒と比べると若干項目が少ない形になりますが、清酒は、酒税法において、原料、製法に一定の縛りがあるところですので、酒税法の範囲内で、その中で更にこれらの項目について産地として決めていただくという形をとっているところです。
 蒸留酒については、原料、製法のところが明確になっているということが非常に重要です。一番下の(注)にありますように、原料・製法がその酒類の特性を決定する特に重要な要素であり、明確に説明されていることが必要であるという形で、そこをしっかりと書いていただくことを予定しています。
 それから、6ページでその他の酒類については、ここはもうケース・バイ・ケースで個別に判断するということで、ガイドライン上はこういった表現にとどめているというところです。以上です。

部会長
 ありがとうございました。
 ただ今御説明いただいた事項につきまして、御意見等があればお願いします。

奥田臨時委員
 非常に難しい問題だと思いますが、この地理的表示をつけるということは、たぶん輸出していくことを今後考えていく上で非常に重要だと思っていまして、日本がこの製品の品質について、ある程度公認している形であるということを示していると感じています。そういう意味で、この基準を作るに当たって、最低基準として、例えば再発酵するとか、お酒として不備がでることがないような形は一つ基準として作ってはどうかと思います。
 アルコール濃度があまり低いものを出してしまうとか、pHとの関係というのも非常に大事だと思っていますが、外に出てから問題を起こすようなことのない、メイド・イン・ジャパンということのレッテルの大切さというものを考えて基準を作っていただきたいと思っています。

鑑定企画官
 産地で行われる理化学検査の設定や官能検査の設定でその辺りは担保されるものではないかと考えていますが、基準として、何か具体的なものがありましたら教えていただければと思います。

奥田臨時委員
 非常に難しいのですが、pHが最近ワインに関しては上がっていて、しかもアルコールの低いものが好まれるというか、お土産物ワインのようなものがどうしても入ってくると思います。その場合に、ある程度の長期保存に耐えるかどうかといことが非常に重要で、アルコール濃度に関しては、少なくても、8%か9%ぐらいないと多分耐えられないだろうと思っています。その辺の基準は何かあった方がいいのかなと思っています。

石渡企画専門官
 アルコールの御指摘ですが、今回事務局の考えとしましては、アルコール度数についても各地域で適切に設定していただくことを考えています。これについて、例えば奥田委員のおっしゃったアルコールの低いものについては、確かに再発酵の危険性があるということは承知しています。
 その一方で地域によりましては早摘みワインとか、そういった特性を持つものもあるだろうと思いますので、今回の私どもの案の段階で、そういったものまで排除してしまうのは必ずしも適切ではないと考えています。そういったところも含めて、各団体に考えていただければ良いのではということでこのような案としています。

部会長
 今の点は大変大事な点ですので、是非、各団体からの申立てを見るときに評価してもらえればと思います。

後藤臨時委員
 産地が補糖や補酸を自主的に決めるようになった場合、産地のぶどうの過去何年かのデータをもって、このぐらいが適当だろうことを示してもらう必要があると思います。あまりに緩くては、せっかく地理的表示をつけるのに意味がないということになりますので、その場合、申立ての前に、いろいろ相談してこれで出したいのですがとか、もう少しこうした方がいいのではないですかとか、そういった産地との相談に応じてもらえるといいのではないでしょうか。
 それから産地の方にも、うちの県はこんな感じの品質なのでこうしたい、というところを自らしっかり捉えてもらう必要があるのかなと思います。その辺はしっかり情報を産地の方にも提供していただければと思います。

鹿取臨時委員
 今の後藤先生の御意見に賛同したいと思います。特に補酸や除酸というものはワインの味わい自体を変えてしまうものなので、それが無制限に行われてしまうことは危惧します。基本的には、私はガイドラインのA案に賛成です。それでも地域が適切な範囲でというように、適切にという言葉はありますけれども、申立ての時に、先生がおっしゃったようなデータを揃えて検証した上で提出するような手続になれば良いと考えます。

松本臨時委員
 山梨の場合、山梨自体の基準で申立てをしたため、まだ緩やかとなっています。それをB案の方でやっていくことも必要かもしれませんが、今現在、地理的表示山梨が指定されてから2年経ち、まだ、77社のうち、30社しか地理的表示をしたものを出してくれていないのです。
 つまり、山梨を使わなくてもいい、そのような考え方になってしまうのです。なぜかというと、地理的表示「山梨」というのが消費者に認められているかどうか、それにかかってくるのです。地理的表示があれば、このワインはいいワインだと消費者が認めてくれるようになると、地理的表示「山梨」の価値も上がって、77社全部が地理的表示に入ってくると思います。今のところ、そのような状況になっていません。基準が緩やかな時でさえそうなのですから、もっと厳しくなると、これはやらなくてもいい、自分たちは地理的表示はいらない、ということになってしまいかねないのです。
 例えば、長野県にも原産地呼称がありますが、ほとんど機能していないに等しいです。つまり、あまりにも難しすぎるのです。どんどん長野県の原産地呼称の申請者が少なくなってきています。そのようなことがあるので、みんなが賛成できるような形を各々の産地に委ねるということが一番良いのではないかと思います。それで、皆さんが同意して、これならば地理的表示をやりましょう、ということになるのではないでしょうか。
 ヨーロッパのように歴史が長いところと、日本のように歴史が短いところだと、そこでは考え方が自ずと違ってくるのではないかと思います。例えば、補酸や除酸については、ヨーロッパでは、どこの国は補酸をしてはいけない、どこの国は除酸をしてはいけないと、気象条件によって決められているのです。ところが、日本の場合、まだそこまでいっていません。したがって、補酸や除酸について否定してしまうことは、非常に危険ではないかと思います。
 例えば、山梨の場合、標高の低いところでは酸が少なくなってしまいます。標高が高いところでは酸が残ってしまいます。ですから、一律に補酸や除酸というものを決めることは難しいと思います。そのような理由で、山梨の場合は最初から外してあるのです。
 したがって、地域ごとにいろいろな基準を任せた方が良いのではないかと思います。それが果たして地理的表示に合致しているかどうかについて、地域に判断してもらい決めていくのが一番良いと思います。

高橋臨時委員
 この件ですが、一つのポイントは、地理的表示のワインというのは消費者から見た場合にいいワインなのかどうか、そこが重要だと思います。
 この提示された案を見ると、例えば原料として水を使用していないこととか、ブランデーやアルコール等を加えていないことということがあること自体、きちんとしたワインであることの証明だと思います。
 ですから、こういう点が入っているということと、それから、今までになかった揮発酸についてのレベルを決めることも含まれていますので、これだけ入っていれば地理的表示ワインというものが、いいワインを造るということを狙ったものだということが分かると思います。具体的にどのように決めるのか、という点については後藤委員の意見や松本委員の意見に賛成です。

部会長
 だいたい御意見としては、A案、B案については、A案のガイドライン案で、おそらく良いのではないかという形で、皆様の御意見をいただいたと思っております。
 ただ、基本的には先ほどの松本委員の御意見のとおり、A案からB案へ高めていくという方向性の努力が必要ですし、それから先ほどの後藤委員、鹿取委員からも御指摘がありましたように、相談や指導などの支援する体制がどうしてもあるべきだと受け止めました。
 他に何か、佐藤委員、篠原委員、いかがでしょうか。

佐藤委員
 資料6の13ページに、現在の指定産地の一覧表がございますが、この使用基準は告示案に比べると厳しいようになっておりますが、この内容は制度改正後このまま継続されるのでしょうか。

酒税課長
 今回のガイドラインで示したように、産地に必ず決めていただかなければならない項目があると思っていますので、既に指定した6つについても今回のガイドラインに合わせて、決める必要がある部分については、決めていただくという形で運用していきたいと思っています。

佐藤委員
 再検討される可能性があるということですか。

酒税課長
 各産地で各項目につきまして今後話し合っていただき、2年くらいの間には適切な形で決めていただきたいと考えています。

部会長
 先ほど、高橋委員の方からワインの方は、だいたいこれで大丈夫という意見をいただいているのですが、篠原委員、日本酒の方は大丈夫でしょうか。

篠原委員
 先ほども言いましたように、各地からいろいろな条件を付けて申立てが出てくると思いますので、そこはよく判断していただいて、その地域の特性を地域の組合の意見をよく聞いて欲しいと思います。

部会長
 この議題については、概ね御意見をいただいたようですので、次の議題に移ります。
 次は「酒類の特性を維持するための管理」ということですが、まずは事務局より御説明をお願いいたします。

酒税課長
 資料5で申しますと6ページの2.のところでございますが、管理について御説明します。資料6の参考資料の11ページを御覧いただきたいと思います。ここに今回の管理に関する基本的な考え方を整理させていただいています。当然、地理的表示として指定したからには、それがしっかりその地域によって管理されていないと消費者からの信頼を失うということですので、地理的表示の指定に当たっては、しっかりそういった管理が行われる必要があるということで、管理機関を設置していただく必要があろうと考えています。
 その管理機関の構成につきましては、そこにございますように、地域内の酒類製造業者を主たる構成員とするものということですが、別に根拠法ですとか法人格の有無は問わず、任意の団体で構わないということです。括弧で書いていますが、特定の生産者が議決権の50%超を有しないということを入れていますのは、特定の生産者によって地理的表示が恣意的に運用されないようにということを念頭に置いています。付言しますと、仮にある地域に1つしかそういう業者がないという時も、こういった考え方で、議決権を50%以下にするようなもう少し客観的な団体を作っていただいて、そこが管理するということであれば、地域に1つしか事業者がない場合も認める余地を残す形で考え方を示しているところです。
 また、管理機関に具体的にどのような業務をしていただくかということについてですが、基本的には1生産基準で定めた地域の特性ですとか、あるいは先ほど御議論いただきました原料・製法にしっかり適合した形で造られているのかというのを確認していただくということ、2消費者からの問い合わせにきちっと対応していただくということ、3地理的表示の使用状況等について把握・管理していただくこと、このような内容を念頭に置いておりまして、その具体的な内容を規定した業務実施要領を作成していただくということを考えています。
 それから、酒類の特性の確認方法についてですが、ぶどう酒と清酒については市場に出荷する前に官能検査等による確認を義務付けたいと考えています。一方、蒸留酒については、原料・製法が重要であるため酒類の特性の確認は義務付けないことを予定しています。書類等により原料・製法を確認することは必要ですが、出荷前の検査までは義務付けないという形にしています。その他の酒類は、酒類の特性から個別判断という形で整理しています。
 次の12ページを御覧いただきたいと思います。EUの管理の方法について、その他新大陸も含めて整理させていただきましたが、やはり市場出荷前の製品検査義務というのは、ワインについては必要ではないかと考えています。ただ諸外国でも蒸留酒についてそこまでの義務付けはないということで、国によって実施方法が異なるという部分はありますが、蒸留酒についてはそこまで求めなくていいのではないかという形にしています。清酒についてはワインと同様の醸造酒ということで、出来不出来というのも相当あり得るという考え方の下、官能検査は必要という形で整理したところです。
 資料の5に戻っていただき、もう少し具体的に確認いただければと思います。まず6ページの2.のところですが、今申し上げたように、しっかりした管理が産地で行われている必要があるということでして、管理機関により継続的に酒類の特性、原料・製法に準拠しているということが確認されていることが必要であるとしています。
 そこに(注)で書かれているのは、これは地理的表示「日本酒」を念頭に置いていますが、法令等、あるいは国税庁の検査によりしっかり管理できる場合については、管理機関は不要という形で整理しています。
 管理機関の構成はそこに書かれているとおりです。業務も先ほど説明した通りのことが書かれています。
 7ページを御覧ください。確認業務の具体的な実施方法ですが、ここは特性に関する事項の確認と原料・製法に関する事項の確認とで分けて整理しています。
 特性に関する事項の確認については、理化学分析及び官能検査により行うものとします。ぶどう酒・清酒については、出荷前に管理機関がこの特性に関する事項について確認を行うこととし、またこの理化学分析及び官能検査については、管理機関が他の機関に委託して実施することとして差し支えありません。また蒸留酒の場合はそこまでの確認を実施しなくても管理が行われていると取り扱うということにしています。
 原料・製法に関する事項の確認については、書類等の確認及び理化学分析により行うということにしています。書類等の確認を行うため、製造業者に記帳を義務付ける場合には業務実施要領にその旨を規定するとしていますが、書類等の確認については最低でも年1回は実施する必要があります。
 理化学分析については、あらかじめ定めた成分の基準に合致しているかを確認するために行います。官能検査については、「官能検査では、酒類の特性としてあらかじめ定めた官能的要素に合致していないような明らかな欠点が無いことを確認する。」としており、イメージとしては最低限のネガティブ・チェックのような形で、本当にその地理的表示として出荷するのはよろしくないというような、何か欠点があるようなものについて、チェックをしていただくということにしています。官能検査の専門家というのが地域によってはなかなか少ないという現状も踏まえて、産地の生産者による自己チェックでもこの官能検査として認める形で考えています。
 こうした管理の全体像を整理したのが、資料6の10ページの図です。こういった枠組みで管理を適切にしていただくことが必要というのが、私どもの考え方になります。

部会長
 ありがとうございました。それでは今までの御説明につきまして、御質問・御意見をお願いいたします。

鹿取臨時委員
 一つ質問ですが、管理組合は申立ての時に何らかの組織を作った上で申立てをするということになりますか。

酒税課長
 そういう管理機関があるということを確認した上で指定する形になります。

鹿取臨時委員
 官能検査についてですが、EUでは、PGIでは不要で成分分析のみということになっていて、日本ではPGIと同じ程度の制度を考えているということなのですが、現状を見ますと、評価するパネルというか、評価する人の経験値に左右されてしまうのではないでしょうか。
 ワインは嗜好品で果たして日本で審査する人たちが、海外の今の動きについていっているかというと、そこには疑問を感じています。そのような状況で最低限のネガティブ・チェックということをどこまで徹底させてできるのかという不安がありまして、私としては、官能検査はできれば避けていただきたいと考えています。

後藤臨時委員
 ワインは非常にデリケートなお酒で、特に酸化や微生物汚染が起こりやすいお酒でもあるので、最低限のネガティブ・チェックということは、地理的表示の名前を汚さないためにも必要ではないかと思います。
 官能検査もたくさんいろいろな種類がありますので、いいものから悪いものまで並べるなどといいますとなかなか難しくなりますが、欠点がないことを確認するということは、ある程度訓練すればできると思います。これは、奥田委員、松本委員も御賛同いただけるのではないかと思います。私どもの酒類総研のセミナーでも実施していますし、必要があれば葡萄酒技術研究会や山梨大学などに協力を求めてやっていけるのではないかと考えています。

松本臨時委員
 私は官能検査というのは絶対に必要だと思っています。なぜかというと、海外の方は、結構、ワインをよく知っている人たちが造っているのです。ところが、日本の場合は、今からワインを造ろうという人は、経験が浅いのです。そのような人たちが、本当にいいワインを造っているかどうかというものを審査しないと、地理的表示というのは将来無くなっていってしまうのではないかと考えています。
 例えば、地理的表示「山梨」が指定されましたが、他の地域で地理的表示に指定されたところが変なワインを造ってしまうと、地理的表示とは何なのだ、ということになってしまいます。そうしますと地理的表示「山梨」を指定された我々にとってもデメリットになるのです。ですから、地理的表示を取ったところは、必ずそれなりの官能検査をやるべきだと思います。
 また、鹿取委員の官能検査ができる人はいないという御意見は違うと思います。私は葡萄酒技術研究会の副会長という肩書きで国税審議会の委員になっているのですが、日本には、国際エノログ連盟の支部として、日本エノログ連盟というのがあります。これは、ワインを造る醸造家の集まりですが、世界の組織の中に入っている日本のエノログが全国に散らばっています。したがって、必ず官能検査ができる人はいるはずです。今、山梨において地理的表示を表示する場合には、まず表示の審査をして、それに合格しないと官能審査ができないわけです。そして官能審査を通ったものだけに山梨と表示をしていただくことになっています。
 今まで、20点満点法で10点までは合格にしようということで、ちょっと甘めにしておりましたが、市場に出したところ、我々の仲間が、「あれ、これちょっとおかしいのではないか」という意見があり、現在は、点数を上げて20点満点法で12点以上とらないと表示ができないように厳しくしています。これは、やはり地理的表示「山梨」を守ろうという組織内での意見の統一があったからこそ厳しくしているのです。したがって、官能検査がない場合は、微生物汚染などがあったとしても出荷されてしまいます。そのような事態は、やはり避けるべきだと思います。
 私の経験上においても、ある地域に行ってワインの利き酒をさせていただくと、ちょっとおかしいなというものが何点かあったということがありました。どういうところから指導してもらっているのかと聞いたところ、いや指導してもらっていない、自分たちでワインを造っているのだ、という答えが返ってきて唖然としました。
 山梨県の場合は、山梨大学でワインの指導をやっていただいていますし、県の工業技術センターでは、ワインセンターというところでやっていただいていますので、長い年月をかけて悪いワインを造る人たちはどんどん少なくなり、今は結構それらしいワインを造るようなワイナリーばかりになってきています。それでもまだ官能検査で落ちるワインもでてきており、ワインにとっては必ず官能検査は必要だと考えています。

奥田臨時委員
 山梨大学ではワイン科学士というのをやっておりまして、ワインの欠点である酢酸や、いくつかのオフ・フレーバーと呼ばれるようなものについては、講義を受けている人たちにみんなチェックをしてもらっています。
 ワイン科学士の試験に関しては、実技で分かるかというのを見るという試験もやっています。たくさんの人を同時に育てるというのはなかなか難しいわけですが、それほど問題にはならないと思います。それよりは変なワインが出回ることの方が恐ろしいと思いますので、この官能検査は、可能な限りやった方がいいのではないかと思っています。

鹿取臨時委員
 山梨大学の取組は存じていますし、大変すばらしい授業だと思っています。酒類総研で2年に1回開設している授業についても十分存じていますし、そういったトレーニングはトレーニングとして必要だと思っています。
 ただ、山梨の地理的表示では必ずしもうまく作用していないという話を伝え聞いたことがありますし、また、世界的にワインに対する評価がかなり大きく揺らいでいる時期だと思っています。今まで、酸化しているものだといってはねられてきたものが、今は受け入れられている現状もありまして、先日、オーストリアに出張に行ったときに、ある品種のワインを100本試飲したときに、醸造学的にははねられてしまうカテゴリーが、オレンジワイン、オーガニックワイン、あるいはイノヴェイティブワインという形で用意されていたのです。そういう流れの中で、もちろん醸造学的に学んでいるということは大前提だと思うのですが、そういう流れも把握した上で、新しい動きも排除しないという形になってくれればなと思っています。
 もちろん、ここ数年たくさんのワイナリーができており、十分な訓練もないままにワインを造っている人がいるというのは私も承知しているところではありますが、多様性を狭めてしまう形になることを非常に危惧しています。そういう意味では、多様な意味での訓練する場、世界的な視野を持てるような訓練の場もこれからは必要と思っています。それがない前に、官能検査だけが先走ってしまい多様性を限定してしまうことになることを私は恐れています。

高橋臨時委員
 私も日本のワインの発展段階がそんなに進んでいないだけに、官能検査は必要だと思います。フランスのIGPの場合は官能検査はやらないこともありますが、規定をよく見ますと問題があった場合にはやるという規定になっていると思いますし、そういう意味からいっても必要だと考えています。
 やはり、もう一つは官能検査ではねられた場合のいろいろな難しさというものもあると思います。本当にはねられた場合に抗弁するというのか、フランスの規定では、はねられた場合に、2次検査、3次検査の規定が作られておりますので、かなりいろいろ意見の違いが出てくる、そういう検査ではあろうとは思います。しかし、私は、日本では官能検査は絶対に必要だと思います。

部会長
 ありがとうございました。ワインに関する御意見が非常にいろいろあるということが大変良く分かりました。ただ、官能検査は必要であるということ以外に、ワインを育てるためにそれをどのように使っていくかという運用の問題もありますし、人を育てるという問題もあると思います。また、高橋委員のおっしゃるように、いったんはねられたものを2次、3次という形でまた抗弁していくというやり方もあるということですが、官能検査は基本的には必要であるということでよろしいでしょうか。

篠原委員
 私も官能検査は必要であると思います。それは運用の仕方だと思っています。先ほど他の委員が言われたように、汚染されたものは排除すべきだと思います。特殊な香り、完全発酵して特徴のあるものはともかく、腐敗しているものや他の菌に侵され汚染されているものなどは除外すべきだと思います。
 清酒の場合は熟成しすぎると好ましくない香りが出てくるということがあり、どのように精査していくかというのは技術的な問題がありますが、清酒の場合もほとんど官能検査をやって出荷していますので、これはやるべきだと私は思います。

佐藤委員
 私も官能検査は必要だと思っています。ワインだけでなくて、日本酒では例えばカビ臭があります。カビの臭いは、ものすごく低濃度で通常のガスクロマトグラフだと検出が難しいものであっても人間の鼻は非常に敏感にそれを感じ取ることができます。私は品質のチェックという意味で官能審査はそれなりに意味があるのではないかと思っています。

部会長
 この議題につきましては、組織のことについて若干の御質問がありましたが、確認業務の官能検査のところにほぼ議論が集中し、だいたい皆様の御了解を得たと思っていますが、その他に意見はございますか。

松本臨時委員
 分析項目を決めることは必要だと思いますが、中小のメーカーには分析装置がないこともあります。例えば、亜硫酸については、日本の食品衛生法で350mg/L以下となっているのですが、自分のところで測れない人もいるのです。
 したがって、山梨の場合には、測れない人は県の工業技術センターのワインセンターに持ち込んで分析してもらっています。したがって、これから地理的表示の申立てを行う産地は、やはりそういう機関というのも見つけてやっていかなければならないと思います。

部会長
 この点につきましても、これから進めていく上で、必要になってくるところだと思います。
 酒類の特性等の確認の質疑についてはここまでとさせていただきたいと思います。
 それでは、最後のその他の事項について、事務局より御説明をお願いいたします。

酒税課長
 資料5の8ページを御覧いただきたいと思います。
 先ほども少し議論が出た部分でございますが、指定に係る手続について、整理して記載しております。
 1地理的表示の指定は、原則として、産地からの申立てに基づき行います。
 2申立ては、産地の事業者団体等が産地内の全ての事業者の意見を集約した上で、国税庁長官に対して申立書を提出します。
 3申立てに当たっては、「地理的表示の指定に係る指針」を踏まえて、申立書に必要な情報を記載するものとする、という形で整理させていただいています。
 ポイントとなるところですが、1で、原則として、申立てに基づき行うこととしています。注1を御覧いただきたいのですが、地理的表示の指定は、国税庁長官が職権で行うものであり、申立てに対する行政処分として行うものではありませんが、指定に当たっては、申立書の内容を含め、産地の事業者団体等の意見を十分に勘案して指定するという枠組みになっています。
 また、3のところに、「地理的表示の指定に係る指針」を踏まえて、申立書に必要な情報を記載していただくということにしていますので、例えば、酒類の特性や産地との繋がりということについて、ガイドラインに沿ったところで、しっかりと申立書に書いていただかないと、なかなか指定は難しいと考えております。
 それから、注2ですが、地理的表示の指定により、その産地の酒類のうち一定の要件を満たしたものだけが独占的に産地名を名乗ることができるようになり、要件を満たさない酒類を製造している酒類製造業者については産地名が名乗れなくなるなど事業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。したがって、地理的表示の指定は、原則として、産地の範囲に当該酒類の品目の製造場を有する全ての酒類製造業者が、適切な情報や説明を受けた上で、地理的表示の指定に反対していないことを確認できた場合に行うこととするということで、事務局としては、産地内でしっかりとした合意形成が図られているということを確認できない限り、指定というのは難しいのだろうと考えているところです。

部会長
 それでは、今の説明に対して、御質問、御意見をお願いします。

高橋臨時委員
 国税庁長官の指定は、海外からの申立ても排除していないということですか。そういうふうに読むということでしょうか。

酒税課長
 海外の産地でも申立てがあれば、国税庁長官の指定の対象にはなります。その他に国際交渉を通じて保護を決めるという別の方法もありますが、この指定の対象としても、海外のものは排除されていません。

高橋臨時委員
 それは、海外の民間から、直接国税庁に申立てをするというのも受け付けるということでしょうか。

酒税課長
 あまり想定していないのですが、一応、枠組みとしてはあり得るということです。

高橋臨時委員
 その点については非常に重要であり、EUは、WTOから、海外の民間からの直接申請も受けるようにと言われ、農産物に関するものは2006年にEU規則が改正になっているはずです。EU規則は、農産物とワインはほとんど同じ構成でできていますが、日本の酒類においても、そのような枠組みを整備するということは評価できます。

部会長
 そういう問題もあるということですね。御意見ありがとうございました。他に、御意見ありますか。
 他に御意見もないようですので、今後の手続について御説明します。本日御議論していただきました内容を踏まえ、事務局にガイドライン案を策定していただきます。策定されたガイドライン案につきましては、パブリックコメントの手続をとることになります。
 ガイドラインの細かい部分は事務局にお任せしたいと思いますが、ガイドラインの主な内容については、本部会において了承するということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

部会長
 どうもありがとうございます。では、そのように進めさせていただきます。
 事務局策定のガイドライン案につきましては、パブリックコメントの前には、委員の皆様に送らせていただく予定です。また、国税審議会令第7条等の規定により、本日の本部会の議決を持ちまして、酒類分科会の議決とさせていただきます。本日予定しておりました議題は以上となりますが、他に何か御発言はございますか。

酒税課長
 本日はどうもありがとうございました。部会長から御説明のありましたとおり、本日の御議論を踏まえて、ガイドライン案を策定したいと思います。ガイドライン案の策定や、更に今後具体的な指定に当たりまして、引き続き委員の皆様から御意見を伺うような場面もあろうかと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

上羅審議官
 お気付きのように、従前の告示で書いていた内容よりも、きめ細かく具体化しています。本日、篠原委員や松本委員からは、やはり現実に業界を持っておられる立場の御発言もありました。他方、我々は、地理的表示というものをきちんと制度としての枠組みを作り、運用していくという立場にございますので、既存の産地についても、今後2年くらいの間に、よくガイドラインを見て、変更すべきところは変更し、より明確にできる部分は是非ともしていただきたいと思っております。
 その過程におきまして、国税庁及び各国税局もいろいろ御相談に応じさせていただきたいと考えています。

部会長
 本日の議事録の公開につきましては、国税審議会議事規則第5条等に則りまして、まずは簡潔な内容のものを議事要旨として公表し、議事録は完成次第公表させていただきます。
 なお、議事録につきましては、公表前に皆様の御発言内容に誤りがないかを確認させていただきます。
 議事要旨の内容等につきましては、部会長一任ということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

部会長
 ありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。本日は、本当に貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。
 これを持ちまして、地理的表示部会を閉会させていただきます。

―― 了 ――