この「令和6年分 年末調整Q&A」は、年末調整について、税務署等に比較的多く寄せられる質問や誤りやすい事項について問答形式で解説しています

〔問1〕 当社の営業課長Aは、本年10月31日に定年退職する予定になっていますが、就職先が決まっていないことから、当分の間、雇用保険の失業等給付を受ける予定です。
 Aの再就職が決まっていないことから、当社としては、Aの在職中の給与について年末調整を行いたいと思いますが、差し支えありませんか。

〔答〕 年の中途で退職した人については、一定の場合を除き、年末調整の対象とはなりません。
 なお、年の中途で退職した人のうち年末調整の対象となるのは、①死亡により退職した人、②著しい心身障害のために退職した人で、その退職の時期から本年中に再就職が不可能と認められ、かつ、退職後本年中に給与の支払を受けないこととなっている人、③12月に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人、④いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103 万円以下である人(退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けると見込まれる人を除きます。)です。
 Aさんについては、上記①から④までのいずれにも該当しませんので、Aさんの在職中の給与について年末調整を行うことはできません。
(注)失業等給付は非課税とされています。

〔問2〕 当社の給与規程では、毎月1日から末日までの勤務実績を基に、翌月10日に給与を支給することになっています。したがって、12月中の勤務実績に基づく給与は翌年の1月10日に支給することになります。このような場合、年末調整の対象となる給与の総額には、翌年1月10日に支給する金額を含めるのでしょうか。

〔答〕 年末調整は、本年中に支払の確定した給与、すなわち給与の支払を受ける人からみれば収入の確定した給与の総額について行います。この場合の収入の確定する日(収入すべき時期)は、契約又は慣習により支給日が定められている給与についてはその支給日、支給日が定められていない給与についてはその支給を受けた日をいいます。
 ご質問の場合、給与規程により支給日が定められていますので、翌年1月10日に支給する給与は、同日が収入の確定する日となり、本年の年末調整の対象とはなりません。

〔問3〕 当社の従業員Aは、国内で離れて暮らす両親を控除対象扶養親族として「給与所得者の扶養控除等申告書」に記載しています。別居している親族を控除対象扶養親族としてもよいのでしょうか。

〔答〕 別居している親族であっても所得者本人の扶養控除の対象とすることは可能ですが、その場合、別居している親族に対して常に生活費、療養費等の送金が行われているなど、所得者本人と生計を一にしている必要があります。

(注) 扶養控除の計算を正しく行うため、銀行振込や現金書留により送金している事実を振込票や書留の写しなどの提示を受けて確認することをお勧めします。
 なお、国外に居住する親族について扶養控除等の適用を受けるためには、当該親族に関する「親族関係書類」(その親族が年齢30歳以上70歳未満の人で、留学により国内に住所及び居所を有しなくなった人である場合には、「親族関係書類」に加えて、「留学ビザ等書類」)及び「送金関係書類」(その親族が年齢30歳以上70歳未満の人で、所得者から本年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている場合には「38万円送金書類」)が必要となります。

〔問4〕 従業員Aから質問があったのですが、Aが扶養している母親の収入の内訳が、パート収入70万円、遺族年金80万円である場合、扶養親族の判定上、この遺族年金はどのように取り扱われるのでしょうか。

〔答〕 扶養親族や控除対象配偶者などに該当するかどうかを判定する場合の合計所得金額には、所得税法やその他の法令の規定によって非課税とされる所得は含まれないことになっています。
 したがって、非課税所得である遺族年金を含めないところで扶養親族の判定をすることになりますから、Aさんの母親の場合はパート収入の70万円だけを基に判定することとなり、給与所得控除額55万円を控除した後の合計所得金額は15万円となりますので、扶養親族に該当することになります。

〔問5〕 当社では、本年中に、アルバイトAに対して120万円の給与を支給しました。年末調整に当たって、Aから「私は大学生で、今年はこのアルバイト収入以外に収入がないため、『勤労学生控除』を受けることができるのではないか。」との問合せがありました。勤労学生控除とは、どのようなものなのでしょうか。

〔答〕 勤労による所得を有する一定の学生又は生徒等のうち、合計所得金額が75万円以下(給与所得だけの場合は、給与の収入金額が130万円以下)で、かつ、合計所得金額のうち給与所得等以外の所得金額が10万円以下の人(以下「勤労学生」といいます。)は、「勤労学生控除」(控除額27万円)を受けることができます。
 Aさんは、アルバイト収入しかなく、収入金額が120万円ということですから、勤労学生控除を受けることができます。この場合には、Aさんから、勤労学生に該当する旨等を記載(一定の専修学校等の生徒等の場合は証明書類を添付)した扶養控除等(異動)申告書の提出を受けることが必要ですので、注意してください。

〔問6〕 給与の支払者に「所得金額調整控除申告書」を提出する日において、本年の給与の収入金額が850万円を超えるかどうかが明らかではありません。給与の収入金額が850万円を超える場合は所得金額調整控除の適用を受けたいのですが、この場合、「所得金額調整控除申告書」の提出はどのようにすればよいのでしょうか。

〔答〕 「所得金額調整控除申告書」は、所得金額調整控除の適用を受けようとする旨等を記載するものであるため、給与の収入金額が850万円を超えるかどうかが明らかではない場合であっても、所得金額調整控除の適用を受けようとするときは、「所得金額調整控除申告書」に必要事項を記載し、給与の支払者に提出してください。
 なお、その年の年末調整の対象となる給与の収入金額が850万円を超えなかった場合は、「所得金額調整控除申告書」の提出をしたとしても、年末調整において所得金額調整控除が適用されることはありません。

〔問7〕 いわゆる共働きの世帯で、扶養親族に該当する20歳の子がいる場合、扶養控除の適用については夫婦のいずれかで受けることとなりますが、所得金額調整控除の適用についても夫婦のいずれかで受けることとなるのでしょうか。

〔答〕 同じ世帯に所得者が2人以上いる場合、これらの人の扶養親族に該当する人については、これらの人のうちいずれか1人の者の扶養親族にのみ該当するものとみなされるため、いわゆる共働きの世帯の場合、1人の扶養親族に係る扶養控除の適用については、夫婦のいずれかで受けることとなります。
 他方、所得金額調整控除の適用については、扶養控除と異なり、いずれか1人の扶養親族にのみ該当するものとみなされませんので、これらの人はいずれも扶養親族を有することとなります。そのため、いわゆる共働きの世帯で、扶養親族に該当する年齢23歳未満の子がいる場合、夫婦の双方で所得金額調整控除の適用を受けることができます。

〔問8〕 親族等が契約者となっている生命保険契約等の保険料又は掛金について、生命保険料控除の対象とすることができますか。

〔答〕 控除の対象となる生命保険料は、給与の支払を受けている人自身が締結した生命保険契約等の保険料又は掛金だけに限らず、給与の支払を受ける人以外の人が締結したものの保険料又は掛金であっても、給与の支払を受ける人がその生命保険料を支払ったことが明らかであれば、控除の対象とすることができます。
 例えば、妻や子が契約者となっている生命保険契約等であっても、その妻や子に所得がなく、給与の支払を受ける夫がその保険料又は掛金を支払っている場合には、その保険料又は掛金は夫の生命保険料控除の対象となります。ただし、この場合にも、その生命保険契約等の保険金の受取人の全てが給与の支払を受ける人又はその配偶者その他の親族(個人年金保険契約等である場合は、年金の受取人の全てが給与の支払を受ける人又はその配偶者)でなければなりません。

(注) 保険料を負担していない人が、満期や解約又は被保険者の死亡により、その生命保険金を受け取った場合、贈与税や相続税の対象となります。

〔問9〕 従業員が、生計を一にする親の後期高齢者医療制度の保険料を口座振替により支払った場合、年末調整で、その保険料を社会保険料控除の対象とすることができますか。

〔答〕 従業員が口座振替により支払った、生計を一にする親の負担すべき後期高齢者医療制度の保険料については、保険料を支払った従業員に社会保険料控除が適用されます。
 なお、年金から特別徴収された保険料については、その保険料を支払った者は年金の受給者自身であるため、年金の受給者に社会保険料控除が適用されます。

〔問10〕 当社では、12月分の給与を12月20日に支給し、その際に年末調整を終えました。その後、12月25日に従業員Aから、Aの父親が控除対象扶養親族に該当することになった旨の申し出がありました。この場合、Aは扶養控除を本年分の所得税について受けることができるのでしょうか。

〔答〕 控除対象扶養親族に該当するかどうかは、その年の12月31日の現況で判定することになりますので、ご質問の場合には、Aさんは本年分の所得税についてAさんの父親に係る扶養控除の適用を受けることができます。
 ご質問の場合、年末調整が終わっているとのことですが、Aさんから「給与所得者の扶養控除等異動申告書」を提出してもらえば、翌年1月の「給与所得の源泉徴収票」を交付する時まで年末調整の再計算を行うことができます。

(注) Aさんの合計所得金額が1,805万円以下で、Aさんの父親が居住者である場合は、Aさんの年調減税額の計算にも含めることになります。
 なお、年末調整の再計算によらず、Aさんが確定申告によって、その減少することとなる税額の還付を受けることもできます。

〔問11〕 年末調整を終えた後に、従業員Aから12月31日に子が生まれたとの申し出がありました。この生まれた子については、扶養控除の対象にはならないと聞きましたが、Aの給与の収入金額が850万円を超える場合、所得金額調整控除の要件の対象とし、年末調整をやり直してもよいのでしょうか。

〔答〕 年齢16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象とはなりませんが、所得金額調整控除においては、年齢23歳未満の扶養親族を有することが要件の一つとされているため、年末に子が生まれた場合、この要件を満たすこととなります。
 年末調整において所得金額調整控除の適用を受けようとする場合、年齢23歳未満の扶養親族を有するかどうかなどの判定は、「所得金額調整控除申告書」を提出する日の現況により判定することとなりますが、年末調整後、その年の12月31日までの間に従業員等に子が生まれ、所得金額調整控除の適用要件を満たし年末調整による年税額が減少することとなる場合、その年分の源泉徴収票を給与の支払者が作成するまでに、その異動があったことについてAさんからその異動に関する申出があったときは、翌年1月の「給与所得の源泉徴収票」を交付する時まで年末調整の再計算を行うことができます。この場合においても「所得金額調整控除申告書」の提出は必要ですので、ご注意ください。

(注) Aさんの合計所得金額が1,805万円以下で、Aさんの子が居住者である場合は、Aさんから「給与所得者の扶養控除等異動申告書」を提出してもらえば、Aさんの年調減税額の計算にも含めることになります。
 なお、年末調整の再計算によらず、Aさんが確定申告によって、その減少することとなる税額の還付を受けることもできます。

〔問12〕 年末調整時に従業員から提出された「給与所得者の基礎控除申告書」に記載された給与所得の収入金額よりも、本年中にその従業員に支払った給与等の金額の方が多かったため、その従業員に記載内容の再確認を依頼したところ、その給与所得の収入金額や「給与所得者の配偶者控除等申告書」の「配偶者控除の額(配偶者特別控除の額)」欄の金額に誤りがあることが判明しました。どのように処理すればよいでしょうか。

〔答〕 従業員から提出された「給与所得者の基礎控除申告書」に記載された給与所得の収入金額などに誤りがある場合、給与等の支払者は、その従業員の方に「給与所得者の基礎控除申告書」や「給与所得者の配偶者控除等申告書」の記載内容の訂正を依頼するなどして、適正な基礎控除額及び配偶者控除額又は配偶者特別控除額により、年末調整を行ってください。

〔問13〕 年末調整による超過額が多かったので1月に納付する税額はありません。この場合、所得税徴収高計算書(納付書)は税務署に提出しなくてよいでしょうか。

〔答〕 たとえ1月に納付する税額がなくても、所得税徴収高計算書(納付書)は、所要事項を記入して1月10日(納期の特例の承認を受けている場合は1月20日、また、それらの日が日曜日、祝日などの休日に当たる場合や土曜日に当たる場合にはそれらの休日明けの日)までに税務署に提出してください。
 なお、納付税額がない所得税徴収高計算書(納付書)は金融機関で取り扱いませんので、所轄の税務署にe‐Tax により送信又は郵便若しくは信書便により送付又は提出するようお願いします。

(注) 税務署では、令和7年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押なつを行わないこととしており、納付税額がない所得税徴収高計算書(納付書)の写しについても同様の取扱いとなります。
 詳細は、「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」をご覧ください。