36 特例適格年金契約において選択一時金等の額は年金の保証期間の設定の有無に応じて年金現価額の90%又は保証期間部分の年金現価額を限度としているか。

1. 趣旨
 年金制度は、退職者の老後の保障を目的とするものであるから、年金受給資格者には、できる限り年金を支給することが望ましい。
 このような見地から特例適格年金契約においては年金の支給を促進するため、年金(遺族年金を除く。)に代えて支給される選択一時金の額及び少額一時金の額について制限が設けられている。

2. 審査上の留意事項

  1. (1) 選択一時金
    • イ 年金支給開始時までに年金に代えて選択一時金を支給する場合、当該選択一時金額は次に掲げるとおりとする。
      • (イ) 年金の全部に代えて選択一時金を支給する場合、当該選択一時金額は次に掲げる場合のそれぞれ次に定める額を限度とすること。
        • a 年金に保証期間が設けられていない場合 年金現価額の90%
        • b 年金に保証期間が設けられている場合 保証期間部分の年金現価額
      • (ロ) 年金の一部に代えて選択一時金を支給する場合、当該選択一時金額は次に掲げる場合のそれぞれ次に定める額を限度とすること。なお、年金の一部を終身年金としない場合において、年金の部分毎に選択一時金を設けている場合(年金の部分毎に選択の割合を設けている場合を含む。)の年金の各部分についても同様とすること。
        • a 年金に保証期間が設けられていない場合 当該選択一時金が年金として支給されるとした場合の年金現価額の90%
        • b 年金に保証期間が設けられている場合 当該選択一時金が年金として支給されるとした場合の当該年金のうち保証期間部分の年金現価額
    • ロ 年金支給開始後、年金に代えて選択一時金を支給する場合、当該選択一時金額は次に掲げる場合のそれぞれ次に定める額を限度とすること。なお、年金の一部を終身年金としない場合において、年金の部分毎に選択一時金を設けている場合(年金の部分毎に選択の割合を設けている場合を含む。)の年金の各部分についても同様とすること。
      • (イ) 年金に保証期間が設けられていない場合 選択一時金支給時における次のaに定める額の現価額からbに定める額の現価額を控除した額
        • a 支給中の年金の年金支給開始時における現価額の90%
        • b 既に支給した年金の額
      • (ロ) 年金に保証期間が設けられている場合 選択一時金支給時における残存保証期間部分の年金の現価額
    • ハ 年金に保証期間が設けられている場合において選択一時金を支給したときは、当該選択した部分にかかる保証期間経過後の年金を支給することはできない。
  2. (2) 少額一時金
     少額一時金を定めている場合、当該少額一時金額は上記(1)イの限度内としなければならない。

3. 審査手続

  1. (1) 対象契約
     新規に締結した選択一時金・少額一時金がある特例適格年金契約、選択一時金・少額一時金を新たに設けた特例適格年金契約、選択一時金の選択方法を変更した特例適格年金契約
  2. (2) 審査書類
     申請書等、年金規程等
  3. (3) 審査手順
     申請書等及び年金規程等により選択一時金の額及び少額一時金の額が上記2の審査上の留意事項に定める基準に合致しているかどうかを確認する。

37 信託財産の運用に関して投資一任契約が締結されている信託契約において、法令に掲げる要件を満たしていることを証する書類を徴求し、確認しているか。

1. 趣旨
年金特定契約を締結しようとする信託会社は、当該契約の事業主と信託財産の運用に関して投資一任契約を締結しようとする金融商品取引業者より、当該投資一任契約の内容が、法令附則第16条第4項に掲げる以下の要件を満たしていることを証する書類(以下「投資一任契約に係る確認書」という。)を徴求し、その記載内容について確認する。

  • イ 金融商品取引法第2条第8項第12号ロに規定する投資判断の全部を一任するものであること。
  • ロ 信託財産である有価証券に係る議決権及び会社法の規定に基づく株主の権利その他これに類する権利の行使について事業主がその指図を行うものでないこと。

2. 審査上の留意事項

  1. (1) 事業主と金融商品取引業者との間で締結される投資一任契約が、法令に掲げる要件を満たしているかどうかの実質的な確認は、金融商品取引業者自らが行うものであるが、年金特定契約を締結しようとする信託会社は、その確認を行った当該金融商品取引業者から当該金融商品取引業者自身が作成した投資一任契約に係る確認書を徴求し、記載内容に不足や不備等がないかどうかを確認しなければならない。
  2. (2) 投資一任契約に係る確認書には、次の事項が記載されていなければならない。
    • イ 金融商品取引業者の名称
    • ロ 金融商品取引業者の住所又は本店等の所在地
    • ハ 金融商品取引業者の代表者の氏名
    • ニ 金融商品取引法第29条に規定する金融商品取引業者の登録番号
    • ホ 確認を行った者の氏名
    • ヘ 確認を行った日付
    • ト 投資一任契約の相手方である事業主の氏名又は名称
    • チ 投資一任契約の相手方である事業主の住所又は本店等の所在地
    • リ 投資一任契約の締結日又は変更日
    • ヌ 当該投資一任契約の内容が、法令附則第16条第4項に掲げる要件を満たしていることを証する文言

3. 審査手続

  1. (1) 対象契約
     信託財産の運用に関して投資一任契約に基づき新たに締結された年金特定契約、金融商品取引業者が変更された年金特定契約
  2. (2) 審査書類
     投資一任契約に係る確認書
  3. (3) 審査手順
     金融商品取引業者より投資一任契約に係る確認書が徴求されているかどうか、その記載内容が留意事項に定める内容を満たしているかどうかを確認する。
自主審査表
審査事項 確認欄
総括事項 1 申請書等の提出区分、提出期限、記載事項及び添付書類は正しいか。  
2 年金規程の施行日(変更日)、契約日及び再計算日は正しいか。  
3 契約の要件は満たされているか。また、契約形態に応じた契約書類が作成されているか。  
加入者関係事項 4 加入資格のない者を加入者に含めていることはないか。  
5 正当な理由がなく特定の使用人を加入者の範囲から除外していることはないか。  
6 加入資格が高年齢又は長期の勤続期間になっていることはないか。また、正当な理由がなく、加入資格の取得期間(待期期間)を延長していることはないか。  
7 加入時期が加入資格を取得した直後の加入日になっているか。  
給付関係事項 8 若年で退職する者に年金を支給することになっていることはないか。また、定年年齢又は通常退職年齢がきわめて高い場合において、高年齢で退職する者のうち一部分の者に限定して受給資格を付与していることはないか。  
9 年金及び一時金は退職を給付事由として支給されることになっているか。  
10 年金と一時金が同時に支給されるようになっていることはないか。  
11 年金の支給期間が5年以上になっているか。  
12 退職事由、職種、職階等の相違により、受給資格及び給付率(額)に不当な差別を設けていることはないか。  
13 給付制限をしているのは、懲戒解雇者又は社会通念上給付を制限することが相当であると認められる場合のみになっているか。  
14 選択一時金及び少額一時金の規定は正しく定められているか。  
15 相当の事由がなく加入者に不利となる受給資格の変更が行われていることはないか。また、相当の事由があると認められる場合以外において、給付の額の減額が行われていることはないか。  
掛金関係事項 16 通常掛金等の拠出期間が制度加入時から退職時又は通常退職年齢まで拠出するよう定められているか。  
17 掛金等の払込方法(拠出時期及び拠出額)は正しいか。  
18 加入者が負担した掛金等の額が、掛金等の額の50%を超えていることはないか。  
数理関係事項 19 掛金等の額及び給付の額の算定の基礎となる基準給与は、適正か。  
20 通常掛金等の積立方法(積立方式及び掛金等の形態)の変更は適正に行われているか。  
21 過去勤務債務等の積立方法(管理方式、掛金等の形態及び償却割合)は適正に定められているか。また、これらの変更は適正に行われているか。  
22 通常掛金等の積立方式は、予定利率、予定死亡率、予定脱退率及び予定昇給率(給与比例制の場合)を算定基礎とし、原則として平準的な掛金等によって事前積立を行うものとなっているか。  
23 予定死亡率、予定脱退率及び予定昇給率は、算定の時の現況において合理的に計算されているか。また、予定利率は設定の時及び再計算日において基準利率以上となっているか。  
24 特定年齢は合理的に定められているか。  
その他の事項 25 他社勤務期間の通算を行うこととしている場合は、年金規程等に通算に関する定めが明記されているか。また、共同委託(結合)契約の場合又は出向・転籍に伴い掛金等を他社に負担させる場合には、その掛金等の負担方法は合理的に定められているか。  
26 過去勤務期間に係る給付額の評価は100%以下の一定割合で行われているか。  
27 留保すべき金額を超える額(剰余金)は事業主に返還するようになっているか。また、剰余金及び要留保額の計算は正しいか。  
28 要留保額の移受管の手続きは正しく行われるようになっているか。  
29 臨時拠出金(ターミナルファンディング)の払込みは適正に行われているか。  
30 契約の全部又は一部が解除された場合における要留保額は受益者等に帰属するようになっているか。  
特例適格年金関係事項 31 特例適格年金契約において加入者数はその要件を満たしているか。  
32 特例適格年金契約において年金の給付水準は老齢厚生年金の報酬比例部分の10%相当額以上となっているか。  
33 特例適格年金契約において加入資格の取得期間(待期期間)は所定の期間内となっているか。  
34 特例適格年金契約において年金の受給資格の取得期間は加入(勤続)期間20年以下となっているか。  
35 特例適格年金契約において年金の支給期間は終身となっているか。  
36 特例適格年金契約において選択一時金等の額は年金の保証期間の設定の有無に応じて年金現価額の90%又は保証期間部分の年金現価額を限度としているか。  
投資一任契約関係事項 37 信託財産の運用に関して投資一任契約が締結されている信託契約において、法令に掲げる要件を満たしていることを証する書類を徴求し、確認しているか。  
  (特記事項)  

戻る目次へ