(問61)

通算親法人P社(3月決算)の通算グループの通算子法人S1社及び通算子法人S2社は、同一の通算グループの通算子法人S3社(発行済株式の総数は100、初年度離脱通算子法人には該当しません。)の発行済株式を保有(S1社:70株、S2社:30株)していますが、X1年4月1日にS1社はその有するS3社の株式の全てを通算グループ外のA社に譲渡しました。

  1. (1) この場合、どの法人がいわゆる投資簿価修正を行うこととなりますか。
  2. (2) また、その場合に投資簿価修正はどのように計算することとなりますか。
    なお、S1社及びS2社が有するS3社の株式の帳簿価額は、それぞれ650及び400、S1社がS3社の株式を譲渡した日の前日にS3社が有する資産の帳簿価額の合計額は1,500、負債の帳簿価額の合計額は500とします。
解読図

【回答】

  1. (1) S1社及びS2社が投資簿価修正を行うこととなります。
  2. (2) この投資簿価修正により、S1社及びS2社が有するS3社の株式の帳簿価額(S1社:650、S2社:400)について、それぞれ700及び300に修正を行うこととなります。また、利益積立金額について、S1社は50増加させ、S2社は100減少させる調整を行うこととなります。

【解説】

通算法人が有する株式を発行した通算子法人(初年度離脱通算子法人を除きます。以下同じです。)について通算制度の承認がその効力を失う場合(以下、この場合における投資簿価修正事由を「通算終了事由」といいます。)には、その通算子法人の株式の帳簿価額をその通算子法人の簿価純資産価額に相当する金額に修正を行うとともに、自己の利益積立金額につきその修正により増減した帳簿価額に相当する金額の増加又は減少の調整を行うこととされています(法2十八、令9六、119の35、119の41)。
 したがって、通算子法人に通算終了事由が生じた場合には、通算子法人の株式を譲渡した通算法人に限らず、その通算子法人の株式を保有する全ての通算法人が投資簿価修正を行うこととなります。
 本件では、S1社によるS3社の株式の譲渡の直前にS3社の株式を保有していたS1社及びS2社は、その譲渡の前に、それぞれ次のとおり、S3社の株式の帳簿価額について簿価純資産価額に相当する金額となるように修正を行うとともに、それぞれの利益積立金額についてその修正により増減した帳簿価額に相当する金額の増加又は減少の調整を行うこととなります。

  1. (1) S3社株式の帳簿価額(S1社650、S2社400)
  2. (2) S3社に係る簿価純資産価額
     S1社:(1,500−500)×(70÷100)=700
     S2社:(1,500−500)×(30÷100)=300
  3. (3) 簿価純資産不足額又は簿価純資産超過額
     S1社:700−650=50(簿価純資産不足額)
     S2社:400−300=100(簿価純資産超過額)
  4. (4) 投資簿価修正
     S1社:〔S3社株式 50/利益積立金額 50〕
     S2社:〔利益積立金額 100/S3社株式 100〕
解読図

(参考)
 初年度離脱通算子法人、投資簿価修正(原則法)の概要及び投資簿価修正における資産調整勘定対応金額等の加算措置については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問40 通算制度からの離脱等に伴う時価評価を要する法人
  2. 問60 投資簿価修正(原則法)の概要
  3. 問63 投資簿価修正における資産調整勘定対応金額等の加算措置