(問36)

通算親法人P社(3月決算)が、X1年12月3日にS社(3月決算)の発行済株式の全てを取得したため、S社はP社の通算グループに加入することとなりました。
 S社は、この加入に伴って生ずる事業年度について申告を行うこととなりますが、その申告に際して、会計期間の末日の翌日を加入日とする加入時期の特例があると聞きました。

  1. (1) この特例を適用した場合、S社はどのような申告を行うこととなりますか。
  2. (2) この特例の適用を受けるには、どのような手続が必要となりますか。

【回答】

  1. (1) S社は、自X1年4月1日至X2年3月31日事業年度について、通算制度の規定を適用しないで申告を行うこととなります(S社は、自X2年4月1日至X3年3月31日事業年度より、P社の通算グループ内の通算法人として、通算制度の規定を適用して申告を行うこととなります。)。
  2. (2) この特例の適用がないものとした場合に生ずることとなるS社の通算グループに加入する日(X1年12月3日)の前日の属する事業年度(自X1年4月1日至X1年12月2日事業年度)に係る確定申告書の提出期限となる日までに、P社がこの特例を受ける旨等を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

【解説】

  1. (1) 通算子法人となることができる法人が通算親法人との間にその通算親法人による完全支配関係(通算除外法人(注)及び外国法人が介在しない一定の関係に限ります。以下同じです。)を有することとなった場合には、原則として、その完全支配関係を有することとなった日(以下「加入日」といいます。)において通算制度の承認があったものとみなされ、その通算制度の承認は、その完全支配関係を有することとなった日から、その効力を生ずるものとされています(法64の911)。
     この場合には、通算子法人となる法人の事業年度は、加入日の前日に終了し、これに続く事業年度は、その加入日から開始するものとされています(法144一)。また、通算子法人で通算親法人の事業年度終了の時にその通算親法人との間に通算完全支配関係がある法人の事業年度は、その終了の日に終了するものとされています(法143)。
     上記に加え、通算子法人となる法人が通算親法人との間にその通算親法人による完全支配関係を有することとなった場合には、加入時期の特例の適用を受けることができます。その場合には、通算子法人となる法人の事業年度は、会計期間又は月次決算期間の末日に終了し、これに続く事業年度は、その会計期間又は月次決算期間の末日の翌日から開始するものとされています(法148一)。
     このときには、加入日の前日の属する会計期間又は月次決算期間の末日の翌日において通算制度の承認があったものとみなされ、その承認は同日からその効力を生ずるものとされています(法64の911括弧書)。
     本件では、S社がP社による完全支配関係を有することとなった日はX1年12月3日となりますが、S社の会計期間の末日(X2年3月31日)の翌日(X2年4月1日)を加入日とする加入時期の特例の適用を受けることによって、S社の自X1年4月1日至X2年3月31日事業年度については、通算制度の規定を適用しないで申告を行うこととなります。
     そして、S社はX2年4月1日から通算制度の承認の効力が生じ、同日に開始する事業年度以降は通算制度の規定を適用して申告を行うこととなります。
  2. (2) この加入時期の特例を受けるためには、この特例の適用がないものとした場合に生ずることとなる加入日の前日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限となる日までに、通算親法人又は通算親法人となる法人が加入時期の特例を受ける旨等を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります(法148、規8の3の3)。
     本件では、この特例の適用がないものとした場合に生ずることとなるS社の通算グループに加入する日(X1年12月3日)の前日の属する事業年度(自X1年4月1日至X1年12月2日事業年度)に係る確定申告書の提出期限となる日までに、P社が加入時期の特例を受ける旨等を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
解読図

(注) このQ&Aにおいて、通算除外法人とは、問2の(1)から(9)までに掲げる法人をいいます。

(参考)
 通算除外法人、通算制度加入の場合の事業年度及び通算制度の加入時期の特例を適用することとした法人が、会計期間の末日までに完全支配関係を有しなくなった場合については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問2 通算子法人となることができる法人
  2. 問32 通算制度に加入する場合の事業年度の特例
  3. 問37 通算制度の加入時期の特例を適用することとした法人が、会計期間の末日までに完全支配関係を有しなくなった場合の申告