(問52)

 P社(他の法人による支配関係を有していません。)とP社が発行済株式の全てを直接保有するS社は、×1年4月1日に自らを株式移転完全子法人とする適格株式移転により株式移転完全親法人H社を設立しました(いずれも3月決算です。)。
 また、H社、P社及びS社は、H社を連結親法人、P社及びS社を連結子法人として、×1年4月1日から×2年3月31日までの期間を最初の連結事業年度とする設立事業年度等の承認申請特例を適用し、連結納税の承認を受けました。
 この場合に、連結子法人となったP社及びS社の連結納税開始前の各事業年度において生じた青色欠損金額はどのように取り扱うこととなるのでしょうか。

解読図

【回答】

 最初の連結事業年度開始の日前9年(注)以内に開始したP社及びS社の各事業年度において生じた青色欠損金額は連結欠損金額とみなされ、P社に係るみなし連結欠損金額は特定連結欠損金額以外の連結欠損金額として、S社に係るみなし連結欠損金額は特定連結欠損金額として、それぞれ取り扱うこととなります。

【解説】

 連結納税を開始する場合の最初の連結事業年度開始の日前9年(注)以内に開始した特定連結子法人(連結納税の開始又は加入において時価評価を要しないこととされる連結子法人をいいます。)の各事業年度において生じた青色欠損金額等で一定の金額は、連結欠損金額とみなされます(法81の92一イ)。
 この場合の連結欠損金額とみなされる金額は、原則として特定連結欠損金額となりますが、特定連結子法人が連結親法人同等法人(その特定連結子法人が最初の連結事業年度開始の日の5年前の日からその開始の日までの間に行われた株式移転に係る株式移転完全子法人であり、その発行済株式の全てが連結親法人となる株式移転完全親法人によりその株式移転の日からその開始の日までの間継続して保有されているもので、その株式移転の直前に他の法人による支配関係を有していないものをいいます。)である場合には、特定連結欠損金額以外の連結欠損金額(その株式移転が適格株式移転に該当しない場合には、その株式移転の日の属する事業年度以後の事業年度において生じた青色欠損金額等で一定の金額に限ります。)となります(法81の93一、令155の1913)。
 本件では、P社及びS社は最初の連結事業年度開始の日(×1年4月1日)に行われた連結親法人となるH社を株式移転完全親法人とする株式移転に係る株式移転完全子法人であることから、特定連結子法人となります(法61の111一、81の92一)。
 この場合に、P社はその株式移転の直前に他の法人による支配関係を有していないことから連結親法人同等法人に該当し、また、その株式移転は適格株式移転に該当しますので、最初の連結事業年度開始の日前9年(注)以内に開始した各事業年度において生じた青色欠損金額は特定連結欠損金額以外の連結欠損金額となります。
 一方で、S社はその株式移転の直前にP社による支配関係を有していることから連結親法人同等法人となりませんので、最初の連結事業年度開始の日前9年(注)以内に開始した各事業年度において生じた青色欠損金額は特定連結欠損金額となります。

解読図

(注) 平成30年4月1日以後に開始する連結事業年度において生ずる連結欠損金額については10年となります(平27年改正法附則301)。

(参考)

連結欠損金額とみなされる青色欠損金額について、連結納税の開始において時価評価を要しない連結子法人について及び特定連結欠損金額がある場合の連結欠損金額の損金算入額の計算方法については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問33 連結納税の開始に伴う時価評価を要しない法人
  2. 問51 単体申告時の青色欠損金額を連結所得の金額の計算において損金の額に算入することの可否
  3. 問53 連結欠損金額の損金算入額の計算方法