(問37)

 連結納税の開始に当たり、いわゆる設立事業年度等の承認申請特例の適用を受ける場合には、時価評価等を行う必要がある連結子法人となる法人は、連結親法人の最初の連結事業年度の翌連結事業年度から連結納税を適用することとされていますが、この時価評価等が必要な法人であるか否かの判定はいつの時点で行うことになりますか。

【回答】

 時価評価等が必要な法人であるか否かの判定は、次の場合に応じ、それぞれ次の時点で行います。

  1. 1 連結親法人となる法人とともに設立事業年度等の承認申請特例の適用を受ける連結子法人となる法人 その連結親法人となる法人の最初の連結事業年度の開始の日の前日の属する事業年度終了の時
  2. 2 連結親法人が設立事業年度等の承認申請特例の適用を受ける最初の連結事業年度の中途にその連結親法人との間に完全支配関係を有することとなった連結子法人となる法人 その完全支配関係を有することとなった日の前日の属する事業年度終了の時

【解説】

 連結親法人となる法人が設立事業年度等の承認申請特例(法4の36)の適用を受ける場合における時価評価等が必要な法人の判定の時期等は以下のとおりです。

  1. 1 連結親法人となる法人とともに設立事業年度等の承認申請特例の適用を受ける連結子法人となる法人については、連結納税を開始しようとする事業年度(以下「連結申請特例年度」といいます。)の開始の日の前日の属する事業年度終了の時に時価評価資産等を保有するか否かで判定を行うこととなります(法4の39一)。
     この場合の時価評価資産等とは、次のものをいいます(令14の8)。
    1. (1) 連結納税の開始に当たり時価評価を要する一定の資産(法61の111
    2. (2) いわゆるグループ法人税制における譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額のうち益金の額又は損金の額に算入されていない金額(法61の134)が1,000万円以上のものなど一定のもの
    3. (3) 長期割賦販売等となる資産の販売等(法631)に係る契約でその利益の額又は損失の額のうち益金の額又は損金の額に算入されていない金額が1,000万円以上のものなど一定のもの
    4. (4) 収用等に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例により益金の額に算入されていない特別勘定の金額(措法64の24一)などが1,000万円以上のものなど一定のもの
     ただし、時価評価資産等を保有する法人であっても、連結申請特例年度の開始の日の5年前の日からその開始の日までの間に行った株式移転に係る株式移転完全子法人であった連結子法人となる法人で、その株式移転により設立された連結親法人となる法人による完全支配関係がその株式移転の日からその開始の日まで継続しているものなど、一定の法人は時価評価等が必要な法人から除かれます(法61の111)。
     また、時価評価等が必要な法人は、その連結申請特例年度の終了の時に有する時価評価資産等について、(1)時価評価資産の時価評価(法61の111)、(2)譲渡損益調整額の益金算入又は損金算入(法61の134)、(3)長期割賦販売等に係る収益の額及び費用の額の益金算入及び損金算入(法633)並びに(4)収用等に係る特別勘定の金額の益金算入(措法64の210)などを行うこととなります。
     例えば、×1年10月1日に株式移転により設立された連結親法人となるP社(3月決算)とその株式移転に係る株式移転完全子法人である連結子法人となるS1社(12月決算)及び×1年4月1日からS1社による完全支配関係を有する連結子法人となるS2社が、×1年10月1日から×2年3月31日までを連結申請特例年度とする設立事業年度等の承認申請特例の適用を受ける場合の、S1社及びS2社(いずれも時価評価資産等を有しています。)が時価評価等を要する法人であるか否かの判定の時期等は次のとおりです。

解読図

  1. 2 連結申請特例年度の中途に連結親法人との間に完全支配関係を有することとなった連結子法人となる法人については、その完全支配関係を有することとなった日の前日の属する事業年度終了の時に時価評価資産等を保有するか否かで判定を行うこととなります(法4の311一)。
     この場合の時価評価資産等の範囲は、上記1と同様です。
     ただし、時価評価資産等を保有する法人であっても、連結親法人が設立した完全支配関係を有する法人など、一定の法人は時価評価等が必要な法人から除かれます(法61の121)。
     また、時価評価等が必要な法人は、連結申請特例年度の終了の時に有する時価評価資産等について、時価評価資産の時価評価(法61の121)など、上記1と同様の処理を行うこととなります。

(注) 平成29年度の税制改正において、時価評価資産の範囲に関する見直しがされていますので、留意してください。

(参考)

連結納税の開始又は加入に当たり時価評価を要する一定の資産について、時価評価資産等を保有していても時価評価が必要な法人から除かれる法人については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問33 連結納税の開始に伴う時価評価を要しない法人
  2. 問34 連結納税の加入に伴う時価評価を要しない法人
  3. 問35 時価評価資産の範囲