(問36)

 S社は、×1年10月1日に連結親法人P社(3月決算)がS社株式を購入したことにより発行済株式の全てを取得され、P社の連結グループに加入しましたが、×1年11月30日にP社がその株式を連結グループ外の第三者に売却したため、S社は加入した連結親法人事業年度の中途に連結グループから離脱しました。この場合に、S社は1,000万円以上の含み益のある土地を有しているため、連結グループへの加入直前の事業年度においてその土地の時価評価をすることになるのでしょうか。

【回答】

 S社は、連結納税の加入時の時価評価を要しない法人とはなりませんが、S社が保有する資産は時価評価資産とはなりませんので、時価評価をする必要はありません。

解説図

【解説】

 連結納税の加入に当たっては、原則として、加入直前の単体事業年度で時価評価資産に係る評価損益を計上することとされており、連結納税の加入に伴う時価評価を要しない法人は、連結親法人が設立した完全支配関係を有する連結子法人となる法人など一定の法人に限られ、株式の購入により連結親法人による完全支配関係を有することとなった連結子法人となる法人はこれに該当しません(法61の121)。
 ただし、連結子法人となる法人が連結親法人による完全支配関係を有することとなった場合であっても、その完全支配関係を有することとなった日(連結子法人が法人税法第14条第2項(第1号に係る部分に限ります。)に規定するみなし事業年度の特例の適用を受ける場合には、その完全支配関係を有することとなった日の前日の属する同号に規定する月次決算期間の末日の翌日)以後2月以内に、その法人の株式が連結グループ外の法人に譲渡されたことなど一定の事由によりその完全支配関係を有しなくなるときは、その法人(その連結グループの連結法人を合併法人とする合併によりその完全支配関係を有しなくなる法人や、その完全支配関係を有することとなった日の属する連結親法人事業年度終了の日後にその完全支配関係を有しなくなる法人を除きます。)が保有する資産は時価評価資産から除くこととされています(令122の121八)。
 これは、連結グループ内の法人がその連結グループ外の法人と共同で出資する法人の株式を第三者に売却する場合に株式の集約のためにいったん全部保有するといった事例のように、一時的に連結グループに加入するに過ぎない場合にも時価評価課税が行われて納税負担及び事務負担が生ずるといった問題点に対処するためのものです。
 本件は、P社がS社株式を購入したことにより完全支配関係を有することとなり、また、その完全支配関係を有することとなった日(×1年10月1日)以後2月以内にP社がS社株式を連結グループ外の第三者に売却(×1年11月30日)したことによりその完全支配関係を有しなくなるものであることから、S社が保有する土地は時価評価をする必要はありません。

(注) 平成29年度の税制改正において、時価評価資産の範囲に関する見直しがされていますので、留意してください。

(参考)

連結納税の加入に伴う時価評価を要しない法人及びみなし事業年度の特例については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問28 月次決算期間の中途で連結納税に加入する連結子法人となる法人のみなし事業年度の特例
  2. 問29 月次決算期間の中途で連結納税に加入する連結子法人となる法人がその月次決算期間中に離脱する場合のみなし事業年度の特例
  3. 問34 連結納税の加入に伴う時価評価を要しない法人