(問28)

 連結親法人P社(3月決算)が、X1年12月3日にS社(3月決算)の発行済株式の全てを取得したため、S社はP社の連結グループに加入することとなりました。
 S社がこの加入に伴って生ずるみなし事業年度について申告を行う予定ですが、その申告に際して、みなし事業年度の特例があると聞きました。
 この特例を適用した場合、S社はどのような申告を行うこととなりますか。また、その特例の適用を受けるには、どのような手続が必要となりますか。

【回答】

 S社がP社の連結グループに加入することによって生ずるみなし事業年度については、その特例の適用を受けることによって、X1年4月1日からX1年12月31日までの期間とすることができ、S社はそのみなし事業年度について、単体申告を行うこととなります。
 また、この特例の適用を受けるためには、この特例の適用がないものとした場合に生ずることとなるP社の連結グループに加入する日(X1年12月3日)の前日の属するみなし事業年度(X1年4月1日からX1年12月2日までの期間)に係る確定申告書の提出期限となる日までに、みなし事業年度の特例を受ける旨等を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

【解説】

 連結子法人となる法人が連結親法人との間にその連結親法人による完全支配関係を有することとなった場合には、原則として、その完全支配関係を有することとなった日(以下「加入日」といいます。)において連結納税の承認があったものとみなされ、その承認は同日以後の期間について、その効力を生ずるものとされています(法4の310)。
 この場合には、加入日の前日の属する事業年度開始の日からその前日までの期間及びその加入日からその連結親法人事業年度終了の日までの期間のみなし事業年度が生ずることとされ(法141六)、この場合における最初連結事業年度は、その加入日からその連結親法人事業年度終了の日までの期間とされています(法15の21四)。
 しかしながら、連結子法人となる法人において、その加入日が会計期間をその開始の日以後1月ごとに区分した各期間(以下「月次決算期間」といいます。)の初日でない場合には、連結納税への加入によって生ずるみなし事業年度に係る決算を月次決算とは別に作成することとなるため、多大な事務負担を要することとなります。
 そこで、連結子法人となる法人が連結親法人事業年度の中途に、連結親法人との間にその連結親法人による完全支配関係を有することとなった場合において、その加入日からその加入日の前日の属する月次決算期間の末日まで継続して連結子法人となる法人と連結親法人との間にその連結親法人による完全支配関係があるときには、みなし事業年度の特例を選択することができます。その場合には、その加入日の前日の属する事業年度開始の日からその前日の属する月次決算期間の末日までの期間及びその末日の翌日からその翌日の属する連結親法人事業年度終了の日までの期間のみなし事業年度が生ずることとされています(法142一イ)。
 そして、この場合には、加入日の前日の属する月次決算期間の末日の翌日において連結納税の承認があったものとみなされ、その承認は同日以後の期間についてその効力を生ずるものとされており(法4の310括弧書)、この場合における最初連結事業年度は、加入月次決算日(連結親法人との間に完全支配関係を有することとなった日の前日の属する月次決算期間の末日をいいます。)の翌日からその翌日の属する連結親法人事業年度終了の日までの期間とされています(法15の22)。
 また、この特例を受けるためには、連結子法人となる法人が、この特例の適用がないものとした場合に生ずることとなる加入日の前日の属するみなし事業年度に係る確定申告書の提出期限となる日までに、みなし事業年度の特例を受ける旨等を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります(法142)。
 本件では、S社がP社による完全支配関係を有することとなった日は、X1年12月3日となりますが、S社がP社の連結グループに加入することによって生ずるみなし事業年度については、その特例の適用を受けることによって、X1年4月1日からX1年12月31日までの期間とすることができ、S社はそのみなし事業年度について、単体申告を行うこととなります。
 そして、この場合の連結納税の承認はX2年1月1日にあったものとみなされ、最初連結事業年度は、X2年1月1日からX2年3月31日までの期間となります。
 また、特例の適用に際しては、P社の連結グループに加入する日(X1年12月3日)の前日の属するみなし事業年度(X1年4月1日からX1年12月2日までの期間)に係る確定申告書の提出期限となる日までに、みなし事業年度の特例を受ける旨等を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

解読図

 なお、みなし事業年度の特例の適用を受けるために提出することとなる、みなし事業年度の特例を受ける旨等を記載した書類とは、具体的には、次の1ないし3の箇所にレ印を付し、加入日や月次決算期間の初日及び末日など(規8の3の12)を記載した「完全支配関係を有することとなった旨等を記載した書類」となります。

解読図1

解読図2