![]() 「担当官」 |
![]() 「鑑定官」 |
担当官:ビールといえば「泡」ですよね!他の炭酸飲料はすぐに泡が消えてしまうのに、ビールの泡はなぜ持続して残っているのでしょうか。
鑑定官:ビールには、麦芽由来の蛋白質・多糖類、ホップ由来の苦味成分(イソフムロン)等が含まれています。イソフムロンは泡の表面に付着した蛋白質の分子間を補強するように膜を形成し、界面活性剤として働きます。さらに、多糖類が泡同士をつなぎ合わせて泡の立体構造を安定化させます。つまり、麦芽由来の蛋白質・多糖類とホップ由来のイソフムロンが泡を壊れにくくしているため、結果的に泡持ち・泡立ちを良くしています。他酒類にはこうした成分が含まれていないため、泡持ちに違いが出てきます。
担当官:やはりビールの原料がビールの泡持ちをよくしているのですね!ビールには様々な色のビールがあることを教えていただきましたが、泡にも色の違いってでるのですか?
鑑定官:黒ビールを先に注げば黒い泡、黄金色のビールを先に注げば純白の泡になります。黒ビールと黄金色のビールをブレンドして飲んだことはありますか?ブレンド割合にもよりますが、ビールの色は、両者の中間である赤・赤銅色・褐色等の色になります。では、その時の泡の色はというと、先にグラスに注いだビールの色になります。つまり黒ビールを先に注げば黒い泡、黄金色のビールを先に注げば白い泡になります。では同時に混ぜるとどうなるのでしょうか。泡の色は中間の色になると言われています。
担当官:知りませんでした。今日の夜は黒ビールと黄金色のビールのブレンドを試してみます!!
【東京国税局 小野玄記鑑定官】
ビールをグラスに注ぐと、泡は途切れることなく現れ、緩やかに上昇し、美しい泡の蓋ができます。また、ビールの泡立ち・泡持ちの良さも、ビール特有の現象です。ビール以外でも発泡性の酒類はありますが、ビールの泡のように振る舞うお酒はありません。では、ビールと他酒類の泡において、何が違うのでしょうか。
1 泡の正体
お酒に見られる泡は、酵母のアルコール発酵に伴って発生するCO2です。それ以外にも、CO2を吹き込んでできる泡もあります。
2 ビールの泡の構造
ビールには、麦芽由来の蛋白質・多糖類、ホップ由来の苦味成分(イソフムロン)等が含まれています。これらの成分は、ビールにおいて界面活性剤として働いています。
イソフムロンは、泡の表面に付着した蛋白質の分子間を補強するように膜を形成し、界面活性剤として働きます。さらに、多糖類が泡同士をつなぎ合わせて泡の立体構造を安定化させます。つまり、麦芽特有の蛋白質・ペプチドとホップ由来のイソフムロンにより泡を壊れにくくしているため、結果的に泡持ち・泡立ちを良くしています。他酒類にはこうした成分が含まれていないため、泡持ちに違いが出てきます。
3 ビールの泡の振る舞い
ビールの泡は、イソフムロンや麦芽の蛋白質等により安定した構造になっています。このことにより、ビールの泡は液体から受ける抵抗も大きくなります。シャンパン等他の発泡酒と比べて、泡の上昇速度も緩やかになります。また、泡の大きさも変わらない点が異なります。
また、ビールは、蓋のように泡が集まりますが、これはビール特有の現象です。
4 ビールの泡の味わいへの影響。
ビールの泡は、ビールの飲み心地・味わいに影響するのでしょうか。
(1) ビールの味
ビールの泡だけを舐めたとき、どんな味がしますか。ビールの泡には、苦味成分(イソフムロン)が吸着しています。そのため、泡を多く含んで飲みますと、苦味を強く感じます。
ところで、ビールにできる泡の蓋は、ビール中のCO2(炭酸ガス)が空気中に逃げることを防ぎます。そのため、CO2による爽快感を長時間感じることができます。
さらに、泡の層が空気とビールの接触を防ぐことで、品質劣化を防ぐ効果もあります。
(2) ビールの香り
ビールの泡の蓋は、香りの感じ方にも影響を与えます。
泡の有無、泡の厚み・泡の直径等によって、ビールの香りの感じ方は変わります。この現象は、ビールの香気成分が持つ揮発性・極性の強さ等の特性に関連しています。
(令和5年5月1日現在施行の法令・通達等に基づいて作成しています。)