![]() 「担当官」 |
![]() 「鑑定官」 |
担当官:最近いろいろな種類のビールを飲んでいるのですが、どれも色が違うのはなぜでしょうか。
鑑定官:ビールの黄金色や褐色系の色は、主に麦芽に含まれるアミノ酸と還元糖によるものです。
担当官:麦芽があの黄金色のビールを作り出しているんですね!
鑑定官:ビールの色は、麦芽の種類・麦芽の使用比率・麦汁製造工程の温度経過・仕込水の成分・副原料の使用の有無等の要因により影響を受けます。さらには、副原料として果実を使うと、果実由来の色が付き紫色・赤紫色等鮮やかな色となります。
担当官:果実が原料に含まれているビールもおいしいですよね!
【東京国税局 小野玄記鑑定官】
ビールの色は、黄金色(淡色系)や黒色(濃色系)ですが、最近は赤銅色や赤褐色等多様な色のあるビールを見かけるようになりました。
では、ビールの色はどのようにしてできるのでしょうか。
1 色の由来
お酒の色・味・香については、主に原料・発酵・貯蔵工程のいずれかに由来します。
ビールの色については、麦芽の種類・麦芽の使用比率・麦汁製造工程の温度経過・仕込水の成分・副原料等の要因が影響しています。
2 色の生成反応
ビールの黄金色や褐色系の色は、麦汁の製造工程で溶け出した麦芽に含まれるアミノ酸と還元糖によるメイラード反応によって生成します。メイラード反応は、日常よく見られる現象で、玉ねぎ・肉等を炒めたときに、褐色になる反応と同じ反応です。清酒を貯蔵すると着色しますが、この反応もメイラード反応です。よく混同されやすい化学反応に、カラメル反応があります。カラメル反応は、糖だけで起こり、熱を加え高温にする必要があります。メイラード反応は、還元糖とアミノ酸の両者が必要で熱を加えなくても常温で化学反応が起こる点が異なります。
(1) 麦汁中の成分濃度
メイラード反応は、麦汁中のアミノ酸・還元糖成分が多く含まれていると、反応が起こり易いので、早く着色します。
(2) 反応温度
メイラード反応は、高温にすると化学反応が起こり易いので、早く着色します。
3 ビールの着色要因
ビールの色は、前述したように麦芽の種類・麦芽の使用比率・麦汁製造工程の温度経過・仕込水の成分・副原料の使用の有無等の要因により影響を受けます。
(1) 麦芽の種類
麦を発芽させた麦芽は、品質の安定性・保存性を高めるため焙燥します。麦芽の造り方(麦芽の状態・焙燥条件等)の違いにより、色は異なります。
(2) 麦芽の使用比率
ビール造りにおいて、淡色麦芽が基本となりますが、濃色麦芽等の使用により、色は変わります。
(3) 麦汁製造工程の温度経過
麦汁を造る際昇温させますが、温度・時間経過により、着色度合いは変わります。
(4) 仕込水
水の成分によってビールの色は変わります。硬度の高い硬水でビールを造ると、色の濃いビールができる傾向があります。
(5) 副原料の使用の有無
米等の副原料は麦芽と違い、焙燥工程をしておらず、また、米等の副原料は麦芽と比べてアミノ酸が少ないため、メイラード反応も起こり難くなります。そのため副原料を使用すると、ビールの色は薄くなります。
ビールの副原料として果実を使用すると、果実由来の色が付き紫色・赤紫色等鮮やかな色となります。
4 ビール劣化と着色
最近は、家庭でも缶ビールの消費が増え、瓶ビールはあまり見かけなくなりました。ところで、瓶ビールの色は何色をしていますか。清酒の一升瓶と同様にビール瓶も茶瓶が多いと思います。茶色は、地味に感じますが、実は品質劣化の防止の観点から最も優れた色なのです。
食品や酒類において、品質劣化を引き起こす要因は、光・温度・酸素が挙げられます。お酒の中でも清酒やビール等成分が多い醸造酒は品質面で変わりやすく、光を当てると、異臭・苦味・着色などが起こります。
そして、全ての光が、品質劣化に影響するのではありません。悪影響を与える光は、紫外線です。紫外線の透過度は、瓶の色によって異なります。茶瓶が最も紫外線を透過させないことが、実験から判明しました。このことが、ビール・清酒の瓶に、茶瓶が多い理由です。おいしく飲むためには、できるだけ光に当てないようしっかりと正しく保管することが大切です。
(令和5年5月1日現在施行の法令・通達等に基づいて作成しています。)