(1)
公益財団法人であり、法人税法上の公益法人等に該当する当協会は、今般、公正証書遺言に基づき、死亡した個人(以下「本件遺言者」といいます。)から遺贈(以下「本件遺贈」といいます。)を受けることとなりました。当協会は、本件遺贈により、本件遺言者が相続開始時に有していた一切の財産(以下「本件財産」といいます。)を包括的に取得することとなり、本件財産には現金・預金、賃貸中の建物(以下「本件賃貸建物」といいます。)及び本件賃貸建物に係る借地権が含まれています。
本件遺贈により本件賃貸建物を取得することで、当協会は、新たに法人税法上の収益事業として不動産貸付業を行うこととなります(法令5�@五)。
(2) 本件遺言者には遺留分権利者(法定相続人)がいるところ、本件遺贈により本件財産を包括的に取得した当協会が、その遺留分権利者から民法第1046条第1項《遺留分侵害額の請求》の規定に基づき遺留分侵害額に相当する金銭の支払の請求を受けることにより支払うこととなる金銭の額(以下「本件支払額」といいます。)は、当協会が行う収益事業(不動産貸付業)から生ずる所得の金額の計算上、損金の額に算入することとはならないと解して差し支えないか照会申し上げます。
(1)
公益法人等は、収益事業から生ずる所得についてのみ法人税が課され(法法6)、収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行わなければならないこととされています(法令6)。
この場合の費用又は損失の区分経理については、収益事業について直接要した費用の額又は収益事業について直接生じた損失の額は、収益事業に係る費用又は損失の額として経理しなければならず(法基通15-2-5(1))、収益事業から生ずる所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなります。一方で、収益事業以外の事業に係る費用又は損失の額については、収益事業から生ずる所得の金額の計算上、損金の額に算入することはできません。
(2)
遺留分権利者は、自身の遺留分が侵害された場合、受遺者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができることとされ(民法1046�@)、この侵害された遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に一定の調整を加えた額とされています(民法1043�@)。
上記1(1)のとおり、本件支払額に係る遺留分を算定するための基礎となる財産には、当協会の収益事業(不動産貸付業)に属する本件賃貸建物も含まれているため、本件支払額に本件財産の価額のうちに本件賃貸建物の価額が占める割合を乗じて計算した金額に相当する額は、収益事業(不動産貸付業)から生ずる所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなるのではないかとの疑問が生じます。
(3)
この点、上記(1)のとおり、公益法人等が行う収益事業について直接要した費用の額又は収益事業について直接生じた損失の額については、収益事業から生ずる所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなるところ、特定の費用又は損失の額が、収益事業に直接要し、又は直接生じたものかどうかは、個々の費用又は損失の性質、その発生原因などに応じて合理的に判断すべきものと考えられます。
本件支払額は、本件遺贈に伴い遺留分権利者の遺留分が侵害され、遺留分権利者が遺留分侵害額請求権を行使することによって生じた損失の額であって、本件賃貸建物の貸付けに要した費用の額又は貸付けから生じた損失の額ではありません。
したがって、本件支払額は、当協会が行う収益事業(不動産貸付業)から生ずる所得の金額の計算上、損金の額に算入することとはならないと考えます。