1 事前照会の趣旨

当町における公共下水道事業の特別会計については、これまで、地方自治法施行令第142条等の規定により、現金の出入(現金収支)のみで経理をする、いわゆる官庁会計方式を適用してきましたが、資産の保有状況や経費区分を明確にする等の観点から、条例を改正することにより、令和5年4月1日から地方公営企業法の規定の全部を適用する新たな特別会計(以下「新特別会計」といいます。)に移行する予定です。
 また、移行前の特別会計(以下「旧特別会計」といいます。)については、消費税法第60条第2項及び消費税法施行令第73条の規定を適用し、対価の収納又は支払が行われた会計年度において資産の譲渡等又は課税仕入れ等が行われたものとして消費税の申告を行っていることから、旧特別会計において行われた資産の譲渡等又は課税仕入れ等のうち、未収金又は未払金に係る部分(以下「本件未収金等」といいます。)については、旧特別会計に係る消費税の申告に含めていません。
 この場合、旧特別会計において行われた資産の譲渡等又は課税仕入れ等のうち、本件未収金等については、地方公営企業法の適用日である令和5年4月1日の属する課税期間(以下「令和5年度課税期間」といいます。)における資産の譲渡等又は課税仕入れ等の額に含めて消費税の申告を行っても差し支えないか照会します。
 なお、本件照会における新特別会計は、地方公営企業法の適用日の属する課税期間について、消費税の申告義務がある(課税事業者である)ことを前提とします。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 地方公営企業法の適用等

地方公共団体の経営する企業のうち、水道事業(簡易水道事業を除きます。)、工業用水道事業、軌道事業、自動車運送事業、鉄道事業、電気事業、ガス事業については、地方公営企業法の規定の全てが当然に適用され、病院事業については、地方公営企業法の規定のうち財務規定等が当然に適用されることとなりますが、公共下水道事業については任意適用事業とされ、条例で定めるところにより、地方公営企業法の規定の全部又は一部(財務規定等)を適用することができることとされています(地方公営企業法第2条)。
 また、地方公営企業法の適用を受ける特別会計は、特定の事業及び条例で定める事業について、その組織、財務及びこれに従事する職員の身分取扱いその他経営の根本基準を法定されている事業であり(地方公営企業法第1条)、地方公共団体の単なる会計区分とは異なるものとなります。

(2) 地方公営企業法の規定を適用する特別会計への移行

地方公共団体が経営する企業のうち、任意適用事業について、地方公営企業法の規定を適用することとなった場合には、地方公営企業法の適用日の前日の属する会計年度は同日をもって終了し、当該会計年度に属する出納は同日をもって閉鎖されるため、出納整理期間は存在せず、全ての出納は地方公営企業法の適用日の前日をもって打ち切られる(打切決算)こととなります(地方公営企業法施行令第4条第1項)。
 また、新特別会計への移行に当たり、地方公営企業法の適用日の属する会計年度以前の会計年度に発生した債権又は債務に係る未収金又は未払金は、新特別会計において法の適用日の属する事業年度に属する債権又は債務として整理するものとされている(地方公営企業法施行令第4条第4項)ことから、本件未収金等は、新特別会計の債権又は債務として計上されることになり、条例の定めにより旧特別会計の債権債務は新特別会計に包括的に承継されるものと考えられます。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 消費税法等の規定

地方公共団体が特別会計を設けて行う事業については、その特別会計ごとに一の法人が行う事業とみなして消費税法の規定を適用することとされています(消費税法第60条第1項)。
 また、地方公共団体が行った資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、資産の譲渡等は、地方自治法施行令第142条(当該規定の特例を定める規定を含みます。)の規定によりその対価を収納すべき会計年度の末日において、課税仕入れ等は、地方自治法施行令第143条(当該規定の特例を定める規定を含みます。)の規定によりその費用の支払をすべき会計年度の末日においてそれぞれ行われたものとすることができることとされています(消費税法第60条第2項、消費税法施行令第73条)。

(2) 事前照会者の求める見解となることの理由

上記2(1)のとおり、地方公営企業法の適用を受ける特別会計は、特定の事業及び条例で定める事業について、その組織、財務及びこれに従事する職員の身分取扱いその他経営の根本基準を法定されている事業であり、地方公共団体の単なる会計区分とは異なることから、地方公営企業法の規定を適用する新特別会計への移行に当たっては、消費税法の規定の適用上、旧特別会計は廃止され、別人格である新たな特別会計が設置されたものとして取り扱われます。
 そのため、廃止される旧特別会計で生じた本件未収金等については、原則的には、旧特別会計において清算する、すなわち、旧特別会計に係る課税期間における資産の譲渡等又は課税仕入れ等として消費税の申告をすることが考えられます。
 しかしながら、上記3(1)のとおり、地方自治法施行令第142条等の規定により、旧特別会計に係る課税期間において行われた資産の譲渡等又は課税仕入れ等のうち、本件未収金等を消費税の申告に含めない処理は消費税法上認められているものであり、また、上記2(2)のとおり、地方公営企業法施行令第4条の規定により、新特別会計への移行に当たり、出納整理期間は存在せず、全ての出納は地方公営企業法の適用日の前日をもって打ち切られ、本件未収金等は新特別会計の債権債務として包括的に承継されるものと考えられます。
 これらのことを勘案すると、地方自治法施行令第142条等の規定により、旧特別会計において行われた資産の譲渡等又は課税仕入れ等のうち、本件未収金等を旧特別会計に係る消費税の申告に含めない処理を行い、かつ、本件未収金等を令和5年度課税期間における資産の譲渡等又は課税仕入れ等の額に含めて消費税の申告を行う場合には、これを認めて差し支えないものと考えます。