法人税法等の一部を改正する法律(平成14年法律第79号)により、平成15年3月31日以後に終了する事業年度については、退職給与引当金制度が廃止される(旧法第54条)とともに、退職給与引当金の崩壊し等に関する経過措置が設けられます。
 この改正に伴い、平成15年3月31日以後に終了する事業年度において使用される別表十一(三)の明細書については、今後、改正が行われる予定となっていますので、御注意ください。

1 この明細書の用途

 この明細書は、法人が法第54条《退職給与引当金》の規定の適用を受ける場合に使用します。
 なお、平成10年改正令附則第12条第2項若しくは第4項《退職給与引当金に関する経過措置》の規定の適用を受ける場合には、この明細書のほか、別表十一(三)付表「昭和55年改正令経過措置適用法人に係る退職給与引当金の累積限度額の計算に関する明細書」を併せて記載する必要があります。
 また、いわゆる退職給付会計を採用している法人が、退職一時金規程に係る退職給付引当金と適格退職年金等に係る退職給付引当金とを区分して、前者を税務上の退職給与引当金としてこの明細書を提出する場合には、その区分に関する区分計算書(明細書)を添付してください。 

2 記載の手順

 この明細書は、まず中段の「期中退職給与発生基準額の計算」及び「退職年金制度へ移行した場合の累積限度額の計算」の各欄を記載し、次に上段の「当期繰入額1」から「期末退職給与引当金26」までの各欄を記載し、最後に下段の「翌期へ繰り越す繰入不足額の計算(事業年度が1年未満の場合)」の各欄を記載します。

(注) 法第54条第4項の規定の適用を受ける事業年度である場合には、次の点に留意して記載してください。

1 分社型分割、現物出資又は事後設立(以下「分社型分割等」といいます。)を行った法人が、法第54条第4項に規定する期中退職給与引当金勘定の繰入限度額を計算する場合は、当該事業年度開始の時から当該分社型分割等の直前の時までの期間を1事業年度とみなして、下記の記載要領により記載します。

2 分社型分割等を行った法人が、法第54条第1項に規定する退職給与引当金勘定の繰入限度額を計算する場合は、当該分社型分割等の時から当該事業年度終了の時までの期間を1事業年度とみなして、下記の記載要領により記載します。 

3 各欄の記載要領

  欄   記載要領 注意事項
「期末使用人の給与総額3」  期末に在職する使用人(日々雇い入れられる者、臨時に期間を定めて雇い入れられる者その他の者で退職給与の支給の対象とならないものを除きます。)に対する給料、賃金、賞与及びこれらの性質を有する給与で当期の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものの総額を記載します。
(1)  使用人兼務役員については、退職給与引当金の繰入れは認められませんので、この給与総額には使用人兼務役員に支給した報酬、賞与等は含めないでください。
(2)  次に掲げる法人は、給与総額基準の適用はないので、この欄の記載を要しません。
 労働協約により退職給与規程を定めている法人
 労働協約によらないで退職給与規程を定めている法人のうち令第106条第2項《給与総額基準》に定める書面を退職給与規程に添付して税務署長に提出しているもの
「(2)の金額又は(2)と(4)のうち少ない金額5」  給与総額基準の適用がない法人(「3」に係る注意事項参照)にあっては「2」の金額を、その他の法人にあっては「2」の金額と「4」の金額とのうちいずれか少ない金額を記載します。  
「累積限度額10」、「移行年度が平成10年4月1日から平成16年3月31日までの間に開始した事業年度である場合36」及び「調整前累積限度額42」  各欄の「累積限度割合(/100)」の分子の空欄には、次の区分に応じそれぞれ次の数を記載します。
事業年度開始の日
分子の数
平成10年4月1日から
平成11年3月31日まで
37
平成11年4月1日から
平成12年3月31日まで
33
平成12年4月1日から
平成13年3月31日まで
30
平成13年4月1日から
平成14年3月31日まで
27
平成14年4月1日から
平成15年3月31日まで
23
平成15年4月1日以後 20
 
「期首現在額14」  当期首現在の法人計算による退職給与引当金勘定の金額を記載します。  
「退職による取崩額15」 当期において退職者があったため、その退職により取り崩した退職給与引当金勘定の金額を記載します。  
「同上以外の場合による引当金取崩額16」  当期において前期以前に生じた退職給与引当金繰入限度超過額を取り崩したような場合に、その取り崩した金額を記載します。  
「同上のうち前期末までに益金の額に算入された金額 20」  「差引期末現在額19」の金額のうち、前期以前において繰入限度超過等によって益金の額に算入された金額の合計額を記載します。  
「当期中において退職により益金の額に算入すべき金額21」  原則として「29の3」の金額から「15」の金額を控除した金額を記載しますが、当期中において退職給与規程の改正等により退職給与の全部又は一部が退職金共済契約等若しくは適格退職年金契約等に基づく給付金又は厚生年金基金からの給付金として支給されることとなった場合(以下「年金移行」といいます。)には、退職者について前期末現在において定められている退職給与規程により計算した退職給与の要支給額の合計額から「15」の金額を控除した金額を記載します。  
「当期末の要支給額27」又は「前期末の要支給額28」  当期末又は前期末に在職する使用人の全員がそれぞれの時において自己の都合により退職するものと仮定した場合に各使用人につきそれぞれの時において定められている退職給与規程により計算される退職給与の額の合計額を記載します。
 なお、当期中において年金移行した場合には、「28」の金額は当期末において定められている退職給与規程が前期末において適用されるものとした場合のその退職給与規程により計算した金額を記載します。
 
「退職年金制度へ移行した場合の累積限度額の計算」の各欄  当期以前の各事業年度において年金移行したことに伴い、当期において令第108条第1項第3号又は平成10年改正前の令第108条第1項第3号《適格退職年金契約等を締結した場合の累積限度超過額の益金算入》の規定の適用を受ける場合に記載します。  
「移行年度の翌事業年度開始の日32」  年金移行の日の属する事業年度(以下「移行年度」といいます。)の翌事業年度開始の日を記載します。この場合、当期が移行年度であるときは、「移行年度」と記載し、「同上の日から当期末までの月数33」の記載は必要ありません。  
「移行年度の調整前累積限度額35〜37」  移行年度の開始時期に応じていずれかの欄に移行年度の調整前累積限度額を記載します。  
「移行年度の調整前累積限度超過額38」  この金額がマイナス(△)となる場合には、0と記載し、
(38)又は(38)×84-(33)/84 39以下の各欄の記載は必要ありません。
 
(38)又は(38)×84-(33)/84 39  当期が移行年度である場合は「移行年度の調整前累積限度超過額38」の金額を記載します。  

「移行年度の翌事業年度から当期末までに支出した過去勤務掛金額等の合計額40」及び(40)-(38)×(33)/84 41
(マイナスの場合は0)」

 平成10年4月1日以後に年金移行が行われた場合のその年金移行の日を含む事業年度の翌事業年度以後の各事業年度の令第107条第2項第2号《退職給与引当金勘定の金額の取崩し》に規定する累積限度額を計算する場合に記載します。  

4 根拠条文 法54、令105〜110、昭和55年改正令附則4、平成10年改正令附則12、平成10年改正前の法55、平成10年改正前の令105〜110

法人税申告書の記載の手引