【照会要旨】

 土地等(土地又は土地の上に存する権利をいいます。以下同じです。)又は建物等(建物及びその附属設備又は構築物をいいます。以下同じです。)の売買契約の締結後、当該土地等又は建物等の引渡し及び代金決済が未了の段階(以下「売買契約中」といいます。)でその売買契約に係る売主又は買主が死亡した場合、その売買契約中の土地等又は建物等に係る相続税の課税はどのようになるのでしょうか。

【回答要旨】

 土地等又は建物等の売買契約の締結後、当該土地等又は建物等の売主から買主への引渡しの日(注1)前に当該売主又は買主に相続が開始した場合には、当該相続に係る相続税の課税上、当該売主又は買主たる被相続人の相続人その他の者が、当該売買契約に関し当該被相続人から相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力が生ずる贈与を含みます。以下同じです。)により取得した財産及び当該被相続人から承継した債務は、それぞれ次のとおりとなります。

1 売買契約中に売主に相続が開始した場合

相続又は遺贈により取得した財産は、当該売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権(未収入金)(注2)となります。

2 売買契約中に買主に相続が開始した場合

相続又は遺贈により取得した財産は、当該売買契約に係る土地等又は建物等の引渡請求権等(注3)となり、当該被相続人から承継した債務は、相続開始時における残代金支払債務となります。

(注)1 当該土地等が、売買について農地法第3条第1項若しくは第5条第1項本文の規定による許可又は同項第7号の規定による届出を要する農地若しくは採草放牧地又はこれらの土地の上に存する権利である場合には、当該許可の日又は当該届出の効力が生じた日後に当該土地等の所有権その他の権利が売主から買主へ移転したと認められる場合を除き、当該許可の日又は届出の効力が生じた日が「引渡しの日」となります。

2 当該残代金請求権(未収入金)の評価は、財産評価基本通達204に定める貸付金債権の評価により評価することとなります。

3 当該引渡請求権等の価額は、原則として当該売買契約に基づく土地等又は建物等の取得価額の金額によりますが、当該売買契約の日から相続開始の日までの期間が通常の売買の例に比較して長期間であるなど当該取得価額の金額が当該相続開始の日における当該土地等又は建物等の引渡請求権等の価額として適当でない場合には、当該相続開始の日における状況に基づき別途個別に評価した価額によります。
 なお、買主に相続が開始した場合において、当該土地等又は建物等を相続財産とする申告をしても差し支えありません。この場合における当該土地等又は建物等の価額は、財産評価基本通達により評価した価額によることとなります。

 なお、売買契約中の土地等又は建物等に係る売主の譲渡所得についての租税特別措置法第39条に規定する取得費加算の特例の適用については、質疑応答事例「相続開始時点で売買契約中であった不動産に係る譲渡所得についての相続税額の取得費加算の特例の適用」を参照してください。

【関係法令通達】

 相続税法第2条、第13条
 財産評価基本通達204
 最高裁昭和61年12月5日判決、同平成2年7月13日判決

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。