【照会要旨】

 土地等(土地又は土地の上に存する権利をいいます。以下同じです。)又は建物等(建物及びその附属設備又は構築物をいいます。以下同じです。)の売買契約の締結後、当該土地等又は建物等の引渡し及び代金決済が未了の段階(以下「売買契約中」といいます。)でその売主又は買主が死亡した場合、その売買契約中の土地等又は建物等に係る譲渡所得の課税について、租税特別措置法第39条に規定する取得費加算の特例(以下「相続税額の取得費加算の特例」といいます。)の適用を受けることはできるのでしょうか。
 また、この相続税額の取得費加算の特例の適用を受けられるとした場合、取得費に加算する相続税額の一般的な計算方法は次の算式のとおりですが、売買契約中であった土地等又は建物等に係る取得費に加算される相続税額の計算はどのようになりますか。

(算式 〜 一般的な計算方法 〜 )

【回答要旨】

 売買契約中であった土地等又は建物等について、1売主に相続が開始した場合で、その相続人が譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期を当該土地等又は建物等の引渡しがあった日として譲渡所得の申告をするとき、又は2買主に相続が開始した場合で、その相続人が当該土地等又は建物等を転売したときは、その譲渡所得の申告において相続税額の取得費加算の特例を適用して差し支えありません。
 この場合の譲渡所得の計算における取得費に加算する相続税額の具体的な計算方法は、それぞれ次のとおりとなります。

1 売買契約中の売主に相続が開始し、その相続人が当該契約に係る譲渡所得の申告をする場合

相続人が譲渡した売買契約中の土地等又は建物等については、相続税の課税上、その売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権に加え(質疑応答事例「相続開始時点で売買契約中であった不動産に係る相続税の課税」参照)、相続開始時までに受領した手付金に相当する額がその課税価格の計算の基礎に算入されていると考えられることから、売買契約中の土地等又は建物等を相続人が譲渡したものとして申告する場合は、A欄は当該土地等又は建物等の譲渡収入金額(残代金請求権+手付金に相当する額)となります。
 なお、その相続人の売買契約中の土地等又は建物等に係る譲渡収入金額から残代金請求権の価額を控除した金額(前受金債務に相当する額)は、その相続人の債務控除額(C欄)に加算します。
 これを算式で表すと以下のとおりです。

(算式 〜 売買契約中の売主に相続が開始した場合 〜 )

(注)A欄の「譲渡資産の価額」は、売買契約中の土地等又は建物等を相続人が譲渡したものとして申告する場合には、当該相続人に係る当該土地等又は建物等の譲渡収入金額となります。

2 売買契約中の買主に相続が開始し、その相続人が当該契約に係る土地等又は建物等を転売した場合

相続人が転売した売買契約中の土地等又は建物等に係る相続税の課税は、その土地等又は建物等の引渡請求権に対して行われ、その価額は原則として当該契約に係る取得価額とされますが、当該契約に係る土地等又は建物等を相続財産とする申告を行うことも認められ、その価額は当該土地等又は建物等を財産評価基本通達により評価した価額とされます(質疑応答事例「相続開始時点で売買契約中であった不動産に係る相続税の課税」参照)。
 したがって、売買契約中の買主に相続が開始した場合で、その相続人が当該土地等又は建物等を転売したときは、A欄は相続税の申告内容に応じて、引渡請求権の価額(取得価額)又は土地等若しくは建物等の価額(財産評価基本通達により評価した価額)となります。
 これを算式で表すと以下のとおりです。

(算式 〜 売買契約中の買主に相続が開始した場合 〜 )

(注)A欄の「譲渡資産の価額」は、買主に相続が開始した場合には、売買契約中の土地等又は建物等の引渡請求権が相続財産となり、その価額は原則として当該契約に係る取得価額となります。
 また、売買契約中の買主に係る相続税の申告において当該契約に係る土地等又は建物等を相続財産として申告した場合には、その価額は当該土地等又は建物等を財産評価基本通達により評価した価額となります。

【関係法令通達】

 租税特別措置法第39条
 最高裁昭和61年12月5日判決

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。