問65 中小企業基本法に定める小規模企業者は、「おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人)以下の事業者をいう。」とされていますが、「常時使用する従業員」とは、どのような従業員でしょうか。

【回答】

 労働基準法第20条の規定に基づく「あらかじめ解雇の予告を必要とする者」と解されています。

【解説】

 中小企業基本法上の「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条の規定に基づく「あらかじめ解雇の予告を必要とする者」と解され、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、非正規社員、出向者などについては、当該条文を基に個別に判断されることとされています。
 詳しくは、中小企業庁ホームページをご参照ください。
 なお、小規模企業者の特例を適用している保存義務者について、この「おおむね常時使用する従業員」の数が20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人)を超えることとなる場合、小規模企業者の特例を適用できなくなることから、変更の届出書の提出が必要となります。

(参考)労働基準法(昭和22年法律第49号)(抄)

(解雇の予告)

第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

  1. 2 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
  2. 3 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

第21条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第1号に該当する者が1箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第2号若しくは第3号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

  1. 一 日日雇い入れられる者
  2. 二 2箇月以内の期間を定めて使用される者
  3. 三 季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
  4. 四 試の使用期間中の者

問66 小規模企業者のおおむね常時使用する従業員の数について、「商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人以下の事業者をいう。」とされていますが、「商業又はサービス業」に該当するかはどのように判定するのでしょうか。

【回答】

 日本標準産業分類を基に、判定することとなります。

【解説】

 日本標準産業分類を基に、事業がどの分類に該当するか確認の上、当該分類が中小企業基本法上の「商業又はサービス業」に該当するかを判定することとなります。
 なお、中小企業基本法第2条第5項に規定する「商業」とは、卸売業・小売業を指すとされており、また、別業種に属する複数の事業を持つ場合は「主たる事業」に該当する業種で判断することとされております。
 詳しくは、中小企業庁ホームページをご参照ください。

問67 例えば、支店又は事業所ごとの書類の単位でスキャナ保存の承認を受ける場合、小規模企業者の特例における「おおむね常時使用する従業員の数」について、当該支店又は事業所の従業員の数により判定するのでしょうか。

【回答】

 承認申請を行う保存義務者について従業員の数を判断することとなります。

【解説】

 小規模企業者の要件について、法令上は、「当該保存義務者が中小企業基本法…に規定する小規模企業者である場合」と規定されています(規則35四)。したがって、法人が支店又は事業所ごとの書類の単位でスキャナ保存の承認申請を行う場合、支店又は事業所の単位で従業員の数を判断するのではなく、保存義務者として承認申請をする法人について従業員の数を判断することとなります。

問68 当社は、おおむね常時使用する従業員が5人であるため、小規模企業者に該当しますが、小規模企業者の特例を適用しないことは可能でしょうか。

【回答】

 可能です。ただし、相互けんせいなどの要件を満たす必要があります。

【解説】

 保存義務者が、小規模企業者である場合で、定期的な検査(規則35四ロ)を税務代理人が行うこととしているときは、相互けんせいの要件が課されないこととされています(規則35四)。
 なお、小規模企業者であっても、相互けんせいの要件を満たすように規定を定めるとともに、これに基づき、事務を処理し、小規模企業者の特例を適用しないことは可能です。

問69 税務代理人が定期的な検査を行う小規模企業者の特例について検討していますが、申請書を提出する際に税務代理権限証書を合わせて提出する必要がありますか。

【回答】

 申請書を提出する際に税務代理権限証書を合わせて提出する必要はありません。

【解説】

 スキャナ保存に係る要件については、スキャナ保存に代える日までに要件を満たしていれば、申請書の提出期限までに全ての要件を満たしていなくても申請書を提出することができるとしていますが(【問73】参照)、小規模企業者の特例に係る税務代理人の要件については、定期的な検査を行うまでにその要件が満たされていれば、税務代理人が定期的な検査を行うという要件は満たし得ます。
 したがって、税務代理権限証書については、承認申請時点において提出されている必要はなく、定期的な検査を行うまでに提出されていれば足ります。
 また、申告の税務代理を行う者が定期的な検査を行う場合、申告書と合わせて税務代理権限証書を提出しても差し支えありません。
 これは、税務代理人による定期的な検査については、申告の税務代理を行う税務代理人が行うケースが一般的だと想定されますが、申告の税務代理を行う場合、通常は、申告書と併せて税務代理権限証書が提出され、税務代理人が決算時に定期的な検査を行う場合、定期的な検査を行うタイミングと申告書を提出するタイミングには大きなズレがないにもかかわらず、申告の税務代理に係る税務代理権限証書を申告に先立って定期的な検査前に提出を求めることは納税者に不要な負担を課すこととなるためです。

問70 私は、スキャナ保存の承認を受けている法人の税務代理人ですが、決算時には、決算の基となる書類についてチェックを行っています。小規模企業者の特例を適用する場合、これとは別に定期的な検査が必要でしょうか。

【回答】

 例えば、そのチェックを書類の電磁的記録を用いて行っており、入力された電磁的記録が法令の要件を満たしていることについても確認しているような場合には、これとは別に定期的な検査を行う必要はありません。

【解説】

 決算に当たり、各書類について税務代理人が全件チェックしているような場合もあります。そのような場合にまで、これとは別に定期的な検査の必要はありません。
 なお、小規模企業者の特例における税務代理人による定期的検査については、必ずしも全ての書類について悉皆的に検査を行う必要はなく、その一部を抽出して行う検査(いわゆる抜き取り検査)も認められます。