所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます。)及び法人税の保存義務者が取引情報(注文書、領収書等に通常記載される事項) を電磁的方式により授受する取引(電子取引)を行った場合には、その取引情報を電磁的記録又はCOM若しくは書面により保存しなければならないという制度です(法10)。
なお、電子取引を開始する場合には、税務署に対して申請書を提出する必要はありません。
所得税法及び法人税法では、取引に関して相手方から受け取った注文書、領収書等や相手方に交付したこれらの書類の写しの保存義務が定められていますが、同様の取引情報を電子取引により授受した場合には、書面又はCOMに出力する場合を除き、その取引情報に係る電磁的記録を一定の方法により保存しなければならないこととされています。
なお、帳簿書類の電磁的作成、備付け、保存に関しては、別冊「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」において、スキャナ保存に関しては、別冊「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」において解説します。
「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます(法2六)。
なお、この取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。
具体的には、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます。
(1)〜(7)のいずれも「電子取引」(法2六)に該当すると考えられますので、所定の方法により取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に係るデータが保存されていれば、出力した書面等を保存する必要はなく、また、別途書面の請求書等を授受する必要もありません。
ただし、以下の点に留意が必要です。
この取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、領収書等に通常記載される事項をいう(法2六)ことから、電子メールにおいて授受される情報の全てが取引情報に該当するものではありません。したがって、そのような取引情報の含まれていない電子メールを保存する必要はありません。
具体的には、電子メール本文に取引情報が記載されている場合は当該電子メールを保存する必要がありますが、電子メールの添付ファイルにより授受された取引情報(領収書等)については当該添付ファイルのみを保存しておけばよいことになります。
クラウドサービスを利用して取引先から請求書等を受領した場合にも、電子取引に該当します。
請求書等の授受についてクラウドサービスを利用する場合は、取引の相手方と直接取引情報を授受するものでなくても、請求書等のデータをクラウドサービスにアップロードし、そのデータを取引当事者双方で共有するものが一般的ですので、取引当事者双方でデータを共有するものも取引情報の授受にあたり、電子取引に該当します。
アプリ提供事業者から電磁的方式により利用明細等を受領する行為は、電子取引に該当します。そのため、当該利用明細等に係る取引データについて保存する必要があります。
いわゆるスマホアプリを利用した際に、アプリ提供事業者から受領する利用明細に係る内容には、通常、支払日時、支払先、支払金額等が記載されていることから、法第2条第6号に規定する取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)に該当し、その取引情報の授受を電磁的方式より行う場合には、電子取引に該当します。
※ 消費税の仕入税額控除に関しては、問3の回答を参照してください。
従業員が支払先から電子データにより領収書を受領する行為についても、その行為が会社の行為として行われる場合には、会社としての電子取引に該当します。
法人税法上、会社業務として従業員が立替払いした場合には、原則、当該支払が会社の費用として計上されるべきものであることから、従業員が立替払いで領収書を電子データで領収した行為は、会社の行為として、会社と支払先との電子取引に該当すると考えることができます。
電子取引を開始する場合には、税務署に対して申請書を提出する必要はありません。
なお、当該請求書を書面に出力し、郵送等(委託の場合を含む。)により取引先に対して発行する場合に、請求書(控)を紙で保存する必要がありますが、紙ではなく電磁的記録等により保存を行うときは、書類の保存に代える日の3か月前までに法第4条第2項に係る「国税関係書類の電磁的記録等による保存の承認申請」等の提出が必要となります。