同一の通算グループ内の通算法人であるA社、B社及びC社の当初申告(自令和4年4月1日至令和5年3月31日事業年度)における所得の金額、調整前法人税額、試験研究費の額及び比較試験研究費の額はそれぞれ次のとおりとなっています。
その後、税務調査によりA社の試験研究費の額が100となりました。通算制度における一般試験研究費の額に係る税額控除では、修更正事由があった通算法人以外の他の通算法人には影響させない遮断措置があるそうですが、この場合、A社、B社及びC社の再計算はそれぞれ具体的にどのように行うこととなりますか。
なお、A社、B社及びC社の事業年度は、税務調査の前後いずれにおいても一般試験研究費の額に係る税額控除の控除上限額の上乗せ措置の適用がある事業年度には該当せず、また、A社、B社及びC社はいずれも中小企業者等には該当しません。
A社 | B社 | C社 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|
所得の金額 | 260 | 600 | 0 | 860 | |
調整前法人税額 | 60 | 140 | 0 | 200 | |
試験研究費 の額 |
(当初申告) | 400 | 0 | 200 | 600 |
(調査後) | 100 | 0 | 200 | 300 | |
比較試験研究費の額 | 300 | 0 | 200 | 500 |
通算グループ内の他の通算法人に修更正事由があった場合には、当該他の通算法人の試験研究費の額と調整前法人税額等を当初申告額に固定することにより、その通算法人への影響が遮断されます。
このため、本件においては、再計算の結果、通算グループ全体で44の税額控除超過額が生ずることとなり、A社は税額控除額が15減少し、また、これとは別に29の追加課税額が生ずることにより法人税額44を納付することとなりますが、B社及びC社の法人税額は変わりません。
税額控除割合 (14%を上限) |
= | 上記イ(イ)から(ハ)までの割合 | + | {上記イ(イ)から(ハ)までの割合× (合算試験研究費割合−10%)×0.5} |
事業年度 | 上乗せ金額 | |
---|---|---|
イ | 次の要件を満たす事業年度(通算子法人にあっては、通算親法人の次の要件を満たす事業年度終了の日に終了する事業年度)(措法42の4![]() (イ) 通算グループ内の全ての通算法人について、その適用を受ける事業年度が設立の日とされる一定の日以後10年を経過する日までの期間内の日を含む事業年度に該当すること (ロ) その適用を受ける事業年度終了の時において、法人税法第66条第5項第2号又は第3号に掲げる法人及び株式移転完全親法人(法2十二の六の六)のいずれにも該当しないこと (ハ) 通算グループ内のいずれかの通算法人がその適用を受ける事業年度終了の時において、翌事業年度に繰り越される欠損金額(特定欠損金額を除きます。)を有すること |
調整前法人税額の合計額×15% |
ロ | 合算試験研究費割合が10%を超える事業年度(措法42の4![]() |
調整前法人税額の合計額×{(合算試験研究費割合−10%)×2(10%を上限)} |
ハ | 基準年度比合算売上金額減少割合(注5)が2%以上であり、かつ、各通算法人の試験研究費の額の合計額が各通算法人の基準年度試験研究費の額(注6)の合計額を超える事業年度(措法42の4![]() |
調整前法人税額の合計額×5% |
A社 | B社 | C社 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
所得の金額 | 260 | 600 | 0 | 860 |
調整前法人税額 | 60 | 140 | 0 | 200 |
試験研究費の額 | 400 | 0 | 200 | 600 |
比較試験研究費の額 | 300 | 0 | 200 | 500 |
合算増減試験研究費割合 | 20% | |||
(上記1(1)イ(イ)(注2)) | (600−500)/500=20% | |||
税額控除割合 | 13.8% | |||
(上記1(1)イ(イ)) | 10.145%+{(20%−9.4%)×0.35}=13.855% | |||
税額控除限度額 | 82 | |||
(上記1(1)) | 600×13.8%=82 | |||
控除上限額 | 50 | |||
(上記1(2)) | 200×25%=50 | |||
税額控除可能額 | 50 | |||
(上記1(注1)) | (82>50) | |||
税額控除可能分配額 | 15 | 35 | 0 | 50 |
(上記1) | 50×60/200 =15 |
50×140/200 =35 |
50×0/200 =0 |
A社 | B社 | C社 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
所得の金額 | 260 | 600 | 0 | 860 |
調整前法人税額 | 60 | 140 | 0 | 200 |
試験研究費の額 | 100 | 0 | 200 | 300 |
比較試験研究費の額 | 300 | 0 | 200 | 500 |
合算増減試験研究費割合 | ▲40% | |||
(上記1(1)イ(注2)(ロ)) | (300−500)/500=▲40% | |||
税額控除割合 | 2% | |||
(上記1(1)ロ) | 10.145%−{(9.4%−▲40%)×0.175}=1.5%<2% | |||
税額控除限度額 | 6 | |||
(上記1(1)) | 300×2%=6 | |||
控除上限額 | 50 | |||
(上記1(2)) | 200×25%=50 | |||
税額控除可能額 | 6 | |||
(上記1(注1)) | (6<50) | |||
税額控除超過額 | 44 | |||
(上記2(2)ロ(イ)) | 50(上記(1)の税額控除可能額)−6=44 | |||
税額控除可能分配額 | 0 | 35 | 0 | 35 |
(上記2(2)ロ(イ)) | 15(上記(1)) −15=0 |
上記(1) | 上記(1) | |
法人税額に加算 | 29 | ― | ― | 29 |
(上記2(2)ロ(ロ)) | 44−15=29 |
(参考)
特定欠損金額及び通算法人における一般試験研究費の額に係る税額控除の計算については、次のQ&Aを参照してください。