(問70)

P社、S1社及びS2社は同一の通算グループ内の通算法人で、P社の事業年度(自X1年4月1日至X2年3月31日)終了の時における各通算法人の資本金の額がそれぞれ以下のとおりである場合、P社、S1社及びS2社の一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算において、法定繰入率を用いることができるのでしょうか。
 なお、いずれの法人も適用除外事業者には該当しません。

  P社 S1社 S2社
X2年3月31日に
おける資本金の額
1億円 8,000万円 5,000万円

【回答】

P社、S1社及びS2社いずれの法人も、法定繰入率を用いることができます。

【解説】

  1. (1) 法定繰入率を用いて貸倒引当金の繰入限度額を計算することのできる法人
     内国法人の一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算は、原則として、その内国法人が事業年度終了の時に有する一括評価金銭債権(その内国法人との間に完全支配関係がある他の法人に対してその内国法人が有する金銭債権などを除きます。以下同じです。)の帳簿価額の合計額に貸倒実績率を乗じて計算することとなりますが(法5229二、令966)、その事業年度終了の時において次の法人に該当する内国法人については、貸倒実績率に代えて法定繰入率を乗じて計算することができます(措法57の91、措令33の71)。
    • イ その事業年度終了の時において、普通法人(投資法人及び特定目的会社を除きます。)のうち、資本金の額等が1億円以下であるもの(資本金の額が5億円以上である法人による完全支配関係があるものや大通算法人(注1)などを除きます。)又は資本等を有しないもの(大通算法人を除きます。)に該当する内国法人(法521一イ)(適用除外事業者(措法42の419八)に該当するもの(注2)を除きます。)
    • ロ 公益法人等又は協同組合等(法521一ロ)
    • ハ 人格のない社団等(法521一ハ)
  2. この場合の法定繰入率とは、その法人が営む主たる事業の次の区分に応じ、それぞれ次の割合となります(措令33の74

事業区分 割合
卸売及び小売業(飲食店業等を含み、割賦販売小売業を除きます。) 10/1,000
製造業(電気業等を含みます。) 8/1,000
金融及び保険業 3/1,000
割賦販売小売業等 7/1,000
上記事業以外の事業 6/1,000

なお、法定繰入率を用いて一括貸倒引当金繰入限度額の計算をする場合には、その計算の基礎となる一括評価金銭債権の帳簿価額から、その一括評価金銭債権に係る債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権と見られない部分の金額など一定の金額を除くこととなります(措法57の91、措令33の72)。

  1. (注1) 大通算法人とは、通算法人である普通法人又はその普通法人の各事業年度終了の日においてその普通法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうち、いずれかの法人がその各事業年度終了の時における資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人など一定の法人に該当する場合におけるその普通法人をいいます(法666括弧書)。
  2. (注2) 通算法人の各事業年度終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者に該当する場合には、その通算法人を含みます。
  1. (2) 本件について法定繰入率を用いることの可否
     P社、S1社及びS2社のいずれの法人もX2年3月31日における資本金の額が1億円以下(P社:1億円 S1社:8,000万円 S2社:5,000万円)であるため、貸倒引当金の繰入限度額の計算において、法定繰入率を用いることができます。

(参考)
 通算法人が貸倒引当金の損金算入の規定を適用できる場合の要件、一括評価金銭債権及び適用除外事業者の意義については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問69 貸倒引当金の繰入限度額を計算する場合における通算法人の間の金銭債権の取扱い
  2. 問83 通算制度における適用除外事業者の取扱いについて