(問48)

通算親法人P社(3月決算)は、通算子法人S1社(3月決算)及び通算子法人S2社(3月決算)の発行済株式の全てを直接保有しています。
 S1社は、X1年6月15日に譲渡損益調整資産に該当する固定資産をS2社に譲渡し、その固定資産に係る譲渡損益を繰り延べていましたが、P社がX2年10月19日にS1社の発行済株式の一部を通算グループ外の第三者へ譲渡したことによってP社の通算グループから離脱する(P社との間に完全支配関係を有しない)こととなりました。
 この場合に、S1社は繰り延べていた譲渡損益を戻し入れる必要がありますか。
 また、その必要がある場合には、いつ戻し入れることとなりますか。

【回答】

S1社は、P社の通算グループから離脱した日(X2年10月19日)の前日の属する事業年度(X2年4月1日からX2年10月18日までの期間)において、譲渡損益を戻し入れる必要があります。

【解説】

内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります。)がその有する譲渡損益調整資産をその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります。)に譲渡し、その譲渡損益を繰り延べる規定(法61の111)の適用を受けた場合において、その内国法人(譲渡法人)がその譲渡損益調整資産に係る当該他の内国法人(譲受法人)との間に完全支配関係を有しないこととなったとき(その内国法人の適格合併による解散など一定の事由に基因して完全支配関係を有しないこととなった場合を除きます。)は、その内国法人のその有しないこととなった日の前日の属する事業年度において、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額(その有しないこととなった日の前日の属する事業年度前の各事業年度において益金の額又は損金の額に算入された金額を除きます。以下同じです。)を益金の額又は損金の額に算入(戻入れ)することとされています(法61の113)。
 本件は、その内国法人S1社及び他の内国法人S2社がともに同一通算グループの通算法人である場合(すなわち、譲渡法人S1社と譲受法人S2社との間に通算完全支配関係がある場合)ですが、通算完全支配関係も完全支配関係に該当しますので、この場合でも同様となります。
 すなわち、S1社の譲渡損益調整資産(固定資産)について繰り延べた譲渡損益は、その後にP社がS1社の発行済株式の一部を通算グループ外に譲渡したことによって譲渡法人S1社は譲受法人S2社との間に完全支配関係を有しないこととなりますので、S1社がP社の通算グループから離脱した日(すなわち、S2社との間に完全支配関係を有しないこととなった日であるX2年10月19日)の前日の属する事業年度(X2年4月1日からX2年10月18日までの期間)において、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額を益金の額又は損金の額に算入(戻入れ)することとなります。

解読図

(参考)
 完全支配関係と通算完全支配関係の意義及び通算グループ内の法人の間の取引の損益調整については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問3 完全支配関係と通算完全支配関係の意義
  2. 問46 通算グループ内の法人の間の取引の損益調整