通算法人S1社は、その有する譲渡損益調整資産を通算グループ内の他の通算法人S2社に譲渡することとなりました。
通算グループ内で譲受法人(S2社)が他の通算法人S3社に譲渡損益調整資産を譲渡した場合(上記イ)におけるその譲渡損益調整資産に係るS1社・S2社の取扱いを示すと次のとおりです。
ただし、通算制度においては、上記(1)の譲渡損益調整資産の譲渡が他の通算法人(損益通算の規定(法64の5)等の適用を受けない一定の法人及び通算親法人を除きます。)の株式又は出資の当該他の通算法人以外の通算法人に対する譲渡であるときは、上記(2)の戻入れの規定は適用されず、その株式又は出資の譲渡に係る譲渡損益は計上されません(法61の11)。この場合、その譲渡益又は譲渡損に相当する金額は、利益積立金額に加算又は減算することとなります(令9一チ)。
したがって、通算法人S1社の通算法人S2社に対する譲渡損益調整資産の譲渡がS2社以外の通算法人(損益通算の規定(法64の5)等の適用を受けない一定の法人及び通算親法人を除きます。)の株式又は出資の譲渡であるときは、戻入れは行わないこととなります。
例えば、同一の通算グループ内で譲渡法人(S1社)が譲渡損益調整資産(帳簿価額100)を譲受法人(S2社)に120で譲渡し、その譲渡損益調整資産を譲受法人(S2社)が再譲受法人(S3社)に再譲渡した場合の処理は次のとおりです。
《S1社の別表四の記載例(抜粋)》
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
留保 | 社外流出 | |||
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||
当期利益又は当期欠損の額 | 20 | 20 | ||
減 算 |
土地売却益 | 20 | 20 | |
所得金額又は欠損金額 | 0 | 0 |
《S1社の別表五(一)の記載例(抜粋)》
区分 | 期首 | 減 | 増 | 期末 |
---|---|---|---|---|
譲渡損益調整勘定 | ▲20 | ▲20 | ||
繰越損益金 | 20 | 20 | ||
差引合計額 | 0 | 0 |
《S1社の別表四の記載例(抜粋)》
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
留保 | 社外流出 | |||
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||
当期利益又は当期欠損の額 | 0 | 0 | ||
加 算 |
土地売却益 | 20 | 20 | |
所得金額又は欠損金額 | 20 | 20 |
《S1社の別表五(一)の記載例(抜粋)》
区分 | 期首 | 減 | 増 | 期末 |
---|---|---|---|---|
譲渡損益調整勘定 | ▲20 | ▲20 | 0 | |
繰越損益金 | 20 | 20 | ||
差引合計額 | 0 | ▲20 | 20 |
《S1社の別表四付表の記載例(抜粋)》
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
留保 | 社外流出 | |||
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減 算 |
他の通算法人に対する通算法人株式の譲渡利益額 | 20 | − | 20 |
《S1社の別表四の記載例(抜粋)》
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
留保 | 社外流出 | |||
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||
当期利益又は当期欠損の額 | 20 | 20 | 0 | |
減 算 |
通算法人に係る減算額 | 20 | 20 | |
所得金額又は欠損金額 | 0 | 20 | ▲20 |
《S1社の別表五(一)の記載例(抜粋)》
区分 | 期首 | 減 | 増 | 期末 |
---|---|---|---|---|
譲渡損益調整勘定 | ▲20 | ▲20 | 0 | |
繰越損益金 | 20 | 20 | ||
差引合計額 | ▲20 | 0 | 20 |
(参考)
完全支配関係と通算完全支配関係の意義については、次のQ&Aを参照してください。