1. 総論

【令和5年11月一部改訂】

問1 平成23年12月税制改正における税務調査手続規程の改正(国税通則法の改正)はどのような趣旨で行われたのでしょうか。

平成23年12月税制改正は、税務調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高め、調査に当たって納税者の方の協力を促すことで、より円滑かつ効果的な調査の実施と、申告納税制度の一層の充実・発展に資する等の観点から、調査手続に関する従来の運用上の取扱いを法令上明確化したものです。

国税庁では、法改正の趣旨を踏まえた上で、調査の実施に当たっては法令に定められた税務調査手続を遵守するとともに、調査はその公益的必要性と納税者の方の私的利益とのバランスを踏まえ、社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の方の理解と協力を得て行うものであることを十分認識し、その適正な遂行に努めることとしています。

なお、国税通則法改正後の税務調査手続の流れや改正内容については、パンフレット「税務手続について(近年の国税通則法等の改正も踏まえて)」(PDF/660KB)をご覧ください。

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【参考】平成23年12月国税通則法改正の概要

  1. (1) 税務調査手続の明確化
     税務調査手続について、以下のとおり、現行の運用上の取扱いが法令上明確化されました。
    1. まる1 税務調査に先立ち、課税庁が原則として事前通知を行うこととされました。ただし、課税の公平確保の観点から、一定の場合には事前通知を行わないこととされました。
    2. まる2 課税庁の説明責任を強化する観点から、調査終了時の手続が整備されました。
    3. まる3 納税者から提出された物件の預かりの手続のほか、課税庁が帳簿書類その他の物件の「提示」「提出」を求めることができることが法令上明確化されました。
  2. (2) 更正の請求期間の延長等

    納税者が申告税額の減額を求めることができる「更正の請求」の期間(改正前:原則1年)が5年に延長されました。

    併せて、課税庁による増額更正の期間(改正前:原則3年)が5年に延長されました。

  3. (3) 処分の理由附記等

    全ての処分(申請に対する拒否処分及び不利益処分)について理由附記を実施することとされました。

    ただし、現在記帳・帳簿等保存義務が課されていない個人の白色申告者に対する理由附記については、記帳・帳簿等保存義務の拡大と併せて実施することとされました。

問2 税務署の担当者から電話で申告書の内容に問題がないか確認して、必要ならば修正申告書を提出するよう連絡を受けましたが、これは調査なのでしょうか。

調査は、特定の納税者の方の課税標準等又は税額等を認定する目的で、質問検査等を行い申告内容を確認するものですが、税務当局では、税務調査のほかに、行政指導の一環として、例えば、提出された申告書に計算誤り、転記誤り、記載漏れ及び法令の適用誤り等の誤りがあるのではないかと思われる場合に、納税者の方に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請する場合があります。このような行政指導に基づき、納税者の方が自主的に修正申告書を提出された場合には、延滞税は納付していただく場合がありますが、過少申告加算税は賦課されません(当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課されます。)。

なお、税務署の担当者は、納税者の方に調査又は行政指導を行う際には、具体的な手続に入る前に、いずれに当たるのかを納税者の方に明示することとしています。

2. 質問検査権・留置き(預かり)に関する事項

問3 正当な理由がないのに帳簿書類等の提示・提出の求めに応じなければ罰則が科されるということですが、そうなると事実上は強制的に提示・提出が求められることにならないでしょうか。

帳簿書類等の提示・提出をお願いしたことに対し、正当な理由がないのに提示・提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出した場合には、罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が科されることがありますが、税務当局としては、罰則があることをもって強権的に権限を行使することは考えておらず、帳簿書類等の提示・提出をお願いする際には、提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て行うこととしています。

問4 提出される物件が、調査の過程で調査担当者に提出するために新たに作成された写しである場合には、留置きには当たらないとのことですが、自己の事業の用に供するために調査前から所有している物件が写しである場合(取引書類の写しなど)であっても、留置きには当たらないのでしょうか。

調査の過程で調査担当者に提出するために新たに作成した帳簿書類等の写し(コピー)の提出を受けても留置きには当たらないこととしているのは、通常、そのような写し(コピー)は返還を予定しないものであるためです。他方、納税者の方が事業の用に供するために保有している帳簿書類等の写し(コピー)をお預かりする場合は、返還を予定しないものとは言えませんから、留置きの手続によりお預かりすることとなります。

【令和5年11月一部改訂】

問5 提示・提出を求められた帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、どのような方法で提示・提出すればよいのでしょうか。

 帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、提示については、その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にしてお示しいただくこととなります。

一方、提出については、電磁的記録を調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものをお渡しいただく場合、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)をお願いする場合又はe-Taxやオンラインストレージサービスを利用してご提出いただく場合がありますので、ご協力をお願いします。

(注) 提出いただいた電磁的記録については、調査終了後、確実に廃棄(消去)することとしています。

問6 帳簿書類等の提示・提出の求めに対して、正当な理由なく応じない場合には罰則が科されるとのことですが、どのような場合に正当な理由があるとされるのですか。

どのような場合が正当な理由に該当するかについては、個々の事案に即して具体的に判断する必要がありますし、最終的には裁判所が判断することとなりますから、確定的なことはお答えできませんが、例えば、提示・提出を求めた帳簿書類等が、災害等により滅失・毀損するなどして、直ちに提示・提出することが物理的に困難であるような場合などがこれに該当するものと考えられます。

問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が私物である場合には求めを断ることができますか。

法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。

この場合に、例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。

調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、ご理解を得られるよう努めることとしていますので、調査へのご協力をお願いします。

問8 調査対象となる納税者の方について、医師、弁護士のように職業上の守秘義務が課されている場合や宗教法人のように個人の信教に関する情報を保有している場合、業務上の秘密に関する帳簿書類等の提示・提出を拒むことはできますか。

調査担当者は、調査について必要があると判断した場合には、業務上の秘密に関する帳簿書類等であっても、納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て、そのような帳簿書類等を提示・提出いただく場合があります。

いずれの場合においても、調査のために必要な範囲でお願いしているものであり、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものです。調査担当者には調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない義務が課されていますので、調査へのご協力をお願いします。

問9 X年度の税務調査を行うという事前通知を受けましたが、調査の過程でX年度よりずっと以前の帳簿書類等を提示するよう求められました。これはX年度以外の税務調査を行っていることになりませんか。

例えば、X年度の減価償却費の計上額が正しいかどうかを確認するため、その資産の取得価額を確認するために取得年度の帳簿書類等を検査する必要があるといった場合のように、調査担当者がX年度の申告内容を確認するために必要があると判断したときには、X年度以外の帳簿書類等の提示等をお願いすることがあります。

これはあくまでもX年度の調査であって、X年度以外の調査を行っているわけではありません。

問10 調査担当者から、提出した帳簿書類等の留置き(預かり)を求められました。その必要性について納得ができなくても、強制的に留め置かれることはあるのですか。

税務調査において、例えば、納税者の方の事務所等に十分なスペースがない場合や検査の必要がある帳簿書類等が多量なため検査に時間を要する場合のように、調査担当者が帳簿書類等を預かって税務署内で調査を継続した方が、調査を円滑に実施する観点や納税者の方の負担軽減の観点から望ましいと考えられる場合には、帳簿書類等の留置き(預かり)をお願いすることがあります。

帳簿書類等の留置き(預かり)は、帳簿書類等を留め置く必要性を説明した上、留め置く必要性がなくなるまでの間、帳簿書類等を預かることについて納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て行うものですから、承諾なく強制的に留め置くことはありません。

【平成28年4月一部改訂】

問11 留置き(預かり)に応じた場合でも、申し出れば直ちに返還してもらえますか。また、返還を求めたにもかかわらず返還されない場合、不服を申し立てられますか。

法令上、留め置いた帳簿書類等については、留め置く必要がなくなったときは遅滞なく返還すべきこととされています。

また、帳簿書類等の提出をされた方から、お預かりしている帳簿書類等を業務で使用する必要がある等の理由で返還を求められた場合には、特段の支障がない限り速やかに返還しますが、例えば、留め置いた書類が大量にあり、そのコピーに時間がかかる場合のように、直ちに返還すると調査の適正な遂行に支障がある場合には、しばらく返還をお待ちいただくこともあります。

なお、返還をお待ちいただく場合には、引き続き留置きをさせていただく旨とその理由をご説明しますが、これに納得できないときは、留置き(預かり)を行っている職員が税務署に所属する職員である場合には、税務署長に再調査の請求又は国税不服審判所長に審査請求をすることができます。

3. 事前通知に関する事項

問12 希望すれば、事前通知を書面で行ってもらうことはできますか。

実地の調査の事前通知の方法は法令上は規定されておらず、原則として電話により口頭で行うこととしています。また、通知の際には、通知事項が正確に納税者の方に伝わるように丁寧に行うこととしています。

なお、電話による事前通知が困難と認められる場合は、税務当局の判断で書面によって事前通知を行う場合もありますが、納税者の方からの要望に応じて事前通知内容を記載した書面を交付することはありません。

問13 事前通知は、調査の何日くらい前に行われるのですか。

実地の調査を行う場合の事前通知の時期については、法令に特段の規定はなく、また、個々のケースによって事情も異なりますので、何日程度前に通知するかを一律にお示しすることは困難ですが、調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行うこととしています。

【平成28年12月一部改訂】

問14 税務代理をお願いしている税理士がいるので、事前通知については、その税理士に行うようお願いしたいのですが、何か手続が必要でしょうか。

平成26年7月1日以後に行う事前通知については、納税者の方の事前の同意がある場合には、税務代理権限証書を提出している税理士等(以下「税務代理人」といいます。)に行えば足りることとされました。

この場合には、税務代理人が税務署に提出する税務代理権限証書に、納税者の方の同意を記載しておく必要があります。詳細については、ご自身の税務代理人にお尋ねください。

なお、この同意が記載されていない場合には、納税者の方と税務代理人の双方に事前通知を行うこととなります。

(注) 平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税については、国税通則法第65条第5項(令和6年1月1日以後:同条第6項)に規定する調査通知以後、かつ、その調査があることにより更正又は決定があるべきことを予知する前にされた修正申告又は期限後申告に対して、新たに過少申告加算税等が課されることとされましたが、法令上、この調査通知には、「事前通知に関する同意」のある税務代理人(代表する税務代理人を含みます。)に対してする通知を含むものとされています。
 税務代理人に「事前通知に関する同意」をした場合には、事前通知と同様に、調査通知は、当該税務代理人に対して行われます。

【平成27年4月追加】

問15 税務代理をお願いしている税理士が数人いますが、事前通知については、一人の税理士に行うようにお願いしたいのですが、何か手続が必要でしょうか。

平成27年7月1日以後に行う事前通知については、納税者の方に税務代理人が数人ある場合において、これらの税務代理人のうちから代表する税務代理人を定めたときは、これらの税務代理人への事前通知は、代表する税務代理人に対してすれば足りることとされました。

このためには、事前通知が行われることを希望する税務代理人が税務署に提出する税務代理権限証書に、その税務代理人が代表する税務代理人である旨の定めをしておく必要があります。詳細については、ご自身の税務代理人にお尋ねください。

なお、代表する税務代理人の定めがない場合には、事前通知が行われる税目について委任を受けている全ての税務代理人に事前通知が行うこととなります。

問16 事前通知を受けた調査開始日時については、どのような場合に変更してもらえるのですか。

税務調査の事前通知に際しては、あらかじめ納税者の方や税務代理人の方のご都合をお尋ねすることとしていますので、その時点でご都合が悪い日時が分かっている場合には、お申し出ください。お申し出のあったご都合や申告業務、決算業務等の納税者の方や税務代理人の方の事務の繁閑にも配慮して、調査開始日時を調整することとしています。

また、事前通知後においても、通知した日時について、例えば、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合等には、申し出ていただければ変更を協議します。

なお、例示した場合以外でも、理由が合理的と考えられれば変更を協議しますので、調査担当者までお申し出ください。

【平成27年4月追加】

問17 調査の開始の日時又は場所の変更を希望する場合は、どのように申し出ればよいのですか(提出すべき書類等はありますか)。

事前通知事項の変更の申出の方法については、特に法令で定められていないことから、口頭による申出で差し支えありません。

問18 事前通知の際には、なぜ実地の調査が必要なのかについても説明してもらえるのですか。

法令上、調査の目的(例えば、提出された申告書の記載内容を確認するため)については事前通知すべきこととされていますが、実地の調査を行う理由については、法令上事前通知すべき事項とはされていませんので、これを説明することはありません。

問19 事前通知の際には、調査に要する時間や日数、臨場する調査担当者の人数は教えてもらえるのですか。

調査に要する時間や日数は調査開始後の状況により異なってきますので、事前通知の時点であらかじめお知らせすることは困難であることをご理解願います。

なお、調査の臨場が複数回に及ぶこととなる場合には、調査開始後に納税者の方のご都合をお尋ねしたところで、次回以降の臨場日などを調整いたします。

また、調査開始日時に複数の調査担当者が臨場する場合は、事前通知に際し、調査担当者を代表する者の氏名・所属官署に加え、臨場予定人数も併せて連絡することとしています。

問20 実地の調査が行われる場合には必ず事前通知がなされるのですか。

実地の調査を行う場合には、原則として、調査の対象となる納税者の方に対して、調査開始前に相当の時間的余裕を置いて、電話等により、実地の調査を行う旨、調査を開始する日時・場所や調査の対象となる税目・課税期間、調査の目的などを通知します。

ただし、法令の規定に従い、申告内容、過去の調査結果、事業内容などから、事前通知をすると、まる1違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ、又は、まる2その他、調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断した場合には、事前通知をしないこともあります。

なお、事前通知が行われない場合でも、運用上、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的などについては、臨場後速やかに説明することとしています。

問21 事前通知無しに実地の調査が行われた場合、事前通知が行われなかった理由の説明はありますか。また、事前通知をしないことに納得できない場合には不服を申し立てられますか。

法令上、事前通知を行わないこととした理由を説明することとはされていません。ただし、事前通知が行われない場合でも、運用上、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的などについては、臨場後速やかに説明することとしています。

また、事前通知をしないこと自体は不服申立てを行うことのできる処分には当たりませんから、事前通知が行われなかったことについて納得いただけない場合でも、不服申立てを行うことはできません。

問22 実地の調査以外の調査が行われる場合には、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的等についての説明は受けられないのですか。

税務当局では、実地の調査以外にも、税務署にお越しいただいて申告内容を確認するなどの方法で調査を行う場合があります。このような実地の調査以外の調査を行う場合は、法令上は事前通知は求められていませんが、運用上の対応として、来署等を依頼するための連絡の際などに、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的等を説明することとしています。

問23 取引先等に対する調査を実地の調査として行う場合には、事前通知は行われないのですか。

 税務当局では、取引先など納税者の方以外の方に対する調査を実施しなければ、納税者の方の申告内容に関する正確な事実の把握が困難と認められる場合には、その取引先等に対し、いわゆる反面調査を実施することがあります。

反面調査の場合には、事前通知に関する法令上の規定はありませんが、運用上、原則として、あらかじめその対象者の方へ連絡を行うこととしています。

(注) 一部の間接諸税については、納税者の方以外の方に対する調査の場合でも、原則として事前通知を行うことが法令上規定されています。

4. 調査終了の際の手続

問24 更正決定等をすべきと認める場合は調査結果の内容が説明されることとなっていますが、その内容を記載した書面をもらうことはできますか。

調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、納税者の方に対し、更正決定等をすべきと認める額やその理由など非違の内容を説明します。

法令上は説明の方法は明示されておらず、説明は原則として口頭で行いますが、必要に応じて、非違の項目や金額を整理した資料など参考となるものを示すなどして、納税者の方に正しく理解いただけるよう十分な説明を行うとともに、納税者の方から質問等があった場合には分かりやすい説明に努めます。

なお、調査が電話等によるもので、非違の内容が書面での説明でも十分にご理解いただけるような簡易なものである場合には、納税者の方にその内容を記載した書面を送付することにより調査結果の内容説明を行うこともありますが、納税者の方からの要望に応じて調査結果の内容を記載した書面を交付することはありません。

問25 調査結果の内容説明を受けた後、調査担当者から修正申告を行うよう勧奨されましたが、勧奨には応じなければいけませんか。また、勧奨に応じないために不利な取扱いを受けることはないのでしょうか。

調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、その内容を説明する際に、原則として、修正申告(又は期限後申告)を勧奨することとしています。これは、申告に問題がある場合には、納税者の方が自ら是正することが今後の適正申告に資することとなり、申告納税制度の趣旨に適うものと考えられるためです。

この修正申告の勧奨に応じるかどうかは、あくまでも納税者の方の任意の判断であり、修正申告の勧奨に応じていただけない場合には、調査結果に基づき更正等の処分を行うこととなりますが、修正申告の勧奨に応じなかったからといって、修正申告に応じた場合と比較して不利な取扱いを受けることは基本的にはありません。

なお、修正申告を行った場合には、更正の請求をすることはできますが、不服申立てをすることはできませんので、こうした点をご理解いただいた上で修正申告を行ってください。

問26 調査が終了し、修正申告の勧奨を受けた際に、修正申告をすると不服の申立てはできないが、更正の請求をすることはできる旨の説明を受けました。これはどういう意味ですか。

不服申立ては、税務当局が行った更正等の処分の課税標準等又は税額等が過大であると納税者の方が考える場合に、税務当局に対し処分の取消しなどを求めるための手段です。一方、更正の請求は、納税者の方が行った申告の課税標準等又は税額等が過大であったと納税者の方が考える場合に、当局に対し、申告した課税標準等又は税額等を減額する更正を行うことを求めるための手段です。

例えば、一旦は調査結果の内容説明に納得して修正申告を行ったものの、その後にその修正申告に誤りがあると考えられる場合、その修正申告は税務当局の処分によるものではありませんから、不服申立てという手段はとれませんが、一定期間内であれば、更正の請求という手段をとることはできます。

なお、更正の請求に際しては、例えば、正しいと考える税額や更正の請求をする理由など法令で定められた事項を「更正の請求書」に記載するとともに、請求の理由の基礎となる「事実を証明する書類」を併せて提出していただく必要がありますので、ご留意ください。

【令和5年11月一部改訂】

問27 税務代理をお願いしている税理士がいるので、調査結果の内容の説明等はその税理士に対して行ってほしいのですが、何か手続は必要でしょうか。

調査結果の内容の説明等は、納税者の方に税務代理人がいる場合でも、原則として、納税者の方に対して行いますが、納税者の方の同意があれば、税務代理人に対してのみ説明等を行うこともあります。

したがって、税務代理人のみへの説明等を希望する場合には、調査担当者に対し、電話又は対面によりその旨をお伝えいただくか、税務代理人を通じて税務代理人への説明を同意する書面を提出していただくことが必要になります。

なお、納税者の方に調査結果の内容の説明を行う場合でも、税務代理人の同席の下に調査結果の内容の説明を行うことや、別途、税務代理人にも調査結果の内容の説明を行うことも可能です。

(注) 令和6年4月1日以後は、税務代理権限証書の様式に「調査の終了の際の手続に関する同意」欄が設けられることとなりました。したがって、提出済みの税務代理権限証書にこの同意が記載されていれば、税務代理人に対して説明を行うこととなります。また、提出済みの税務代理権限証書にこの同意の記載がない場合でも、納税者の方に直接同意の事実を確認する方法又は税務代理人を通じて同意を記載した税務代理権限証書の提出を求める方法により納税者の方の同意を確認できれば、税務代理人に対して説明を行うこととしています。

5. 再調査

【平成28年4月一部改訂】

問28 実地の調査が終了し、「更正決定等をすべきと認められない」旨を通知する書面を受け取りましたが、今後は調査を受けることはないのでしょうか。

ある税目・課税期間について実地の調査を行った場合には、調査の結果、更正決定等をすべきと認められなかったか否かにかかわらず、原則として、その税目・課税期間について再調査を実施することはありません。

ただし、例えば、実地の調査終了後に行われた取引先の税務調査で、当初の調査の際には把握されていなかった非違があることが明らかになった場合のように、法令上定められている「新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき」との要件に該当する場合は、既に調査の対象となった税目・課税期間であっても再調査を実施することがあります。

※ 上記の「再調査」は、新たに得られた情報に照らして非違があると認めるときに行われる「質問検査等」であり、納税者が簡易な手続により処分の見直しを求める事後救済手続である「再調査の請求」とは異なるものです。

問29 過去に調査対象となった税目・課税期間について再調査が行われる場合、なぜ再調査が行われるのかについて説明してもらえるのでしょうか。

過去に調査を行った税目・課税期間であっても、例えば、取引先の税務調査により非違につながる情報を把握した場合には、再度、同じ税目・課税期間について調査を行うことがあります。このような場合には、再調査することにつき原則として事前通知を行いますが、当初の調査の場合と同様、再調査を行う理由については説明することはありません。

6. 理由附記

【令和5年11月一部改訂】

問30 どのような場合に理由附記がされるのでしょうか。

理由附記の対象は、国税に関する法律に基づく申請に対する拒否処分又は不利益処分全体です 。

したがって、所得税及び法人税の青色申告者に対する更正処分などのほか、例えば、白色申告者等に対する増額更正処分を行う場合(推計による更正処分の場合を含みます。)や、加算税の賦課決定処分を行う場合にも理由が附記されることとなります。

(参考) 平成23年12月税制改正前の処分の理由附記は、所得税及び法人税の青色申告者に対する更正処分など一定の処分が対象とされていましたが、国税通則法の改正により、理由附記の対象が、国税に関する法律に基づく申請に対する拒否処分又は不利益処分全体に拡大されました。

問31 「記帳・帳簿等の保存が十分でない白色申告者に対しては、その記帳・帳簿等の保存状況に応じて理由を記載する」(平成23年度税制改正大綱)とありますが、どのように記載されるのですか。

理由の記載に当たっては、記帳や帳簿等の保存が十分な事業所得者等の場合には、帳簿等と対比して、具体的な取引内容を明らかにして、根拠を示すことになる一方で、記帳・帳簿等の保存が十分でない白色申告者に対しては、例えば、勘定科目ごとに申告漏れ総額を根拠とともに示すなど、平成23年度税制改正大綱の趣旨等を踏まえ、記帳や帳簿等の保存の程度に応じて、納税者の方がその記載内容から了知し得る程度に理由附記することとしています。

7. その他

問32 調査の過程で、事前通知を受けた税目・課税期間以外にも調査が及ぶこととなった場合には、調査の対象を拡大する旨や理由は説明してもらえるのですか。また、調査の対象が拡大することに対して納得できない場合には、不服を申し立てられますか。

実地の調査を行う過程で、把握された非違と同様の誤りが事前通知をした調査対象期間より以前にも発生していることが疑われる場合のように、事前通知した事項以外の事項について非違が疑われた場合には、事前通知した事項以外の事項について調査を行うことがあります。

この場合には、納税者の方に対し、調査対象に追加する税目、課税期間等について説明し理解と協力を得た上で行いますが、当初の調査の場合と同様、追加する理由については説明することはありません。

また、調査を行うこと自体は不服申立てを行うことのできる処分には当たりませんから、仮に事前通知事項以外の事項を調査することの必要性についてご納得いただけない場合でも、不服申立てを行うことはできません。

問33 税務代理をお願いしている税理士はいませんが、日頃、記帳事務を手伝ってもらっている方(記帳補助者)がいます。その方に調査の現場に立ち会ってもらうことはできますか。

調査に立ち会って、税務当局に対して納税者の方の代わりに調査につき主張・陳述を行うことは税務代理行為に当たりますから、原則として、税務代理人しか行うことはできません。

また、単に調査に立ち会うだけであっても、第三者が同席している状態で調査を行うことで調査担当者に課せられている守秘義務に抵触する可能性がある場合には、税務代理人以外の第三者の立会いはお断りしています。

ただし、その方が、日頃、納税者の方の記帳事務等を担当しているような場合には、調査を円滑に進めるために、調査担当者が必要と認めた範囲で調査に同席いただくことはあります。