1 相続税法(以下「法」という。)第21条の3第1項第3号に規定する「公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるもの」とは、財産取得の時において相続税法施行令(以下「令」という。)第4条の5において準用する令第2条に規定する公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業で、かつ、当該事業の運営等について同条各号に掲げる事実のないもの(以下「令第2条の規定に該当する事業」という。)を行っている者をいうのであるが、次に掲げる者もこれに該当するものとして取り扱うものとする。(昭和55直資2-182改正)
(1) 財産取得の時においては、令第2条の規定に該当する事業以外の公益を目的とする事業を行っていた者で、財産取得の日の属する年の末日までに、当該財産をその事業の用に供することにより令第2条の規定に該当する事業を行うこととなったもの
(2) 財産取得の日の属する年の末日までに、当該財産をもって令第2条の規定に該当する事業を開始した者
2 公益を目的とする事業のうち、事業の種類、規模及び運営がそれぞれ次の(1)から(3)までに該当すると認められる事業は、「公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業」に該当するものとして取り扱う。(昭55直資2-182、平8課資2-116、平12課資2-258改正)
(1) 事業の種類
イ 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条第2項各号及び第3項各号に掲げる事業
ロ 更生保護事業法(平成7年法律第86号)第2条第1項に掲げる更生保護事業
ハ 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校教育又は学校教育に類する教育を行う事業
ニ 育英事業
ホ 科学技術に関する知識の普及又は学術の研究に関する事業
ヘ 図書館若しくは博物館又はこれらに類する施設を設置運営する事業
ト 宗教の普及その他教化育成に寄与することとなる事業
チ 保健衛生に関する知識の普及その他公衆衛生に寄与することとなる事業
リ 政治資金規正法(昭和23年法律第194号)第3条に規定する目的のために政党、協会その他の団体の行う事業
ヌ 公園その他公衆の利用に供される施設を設置運営する事業
ル イからヌまでに掲げる事業を直接助成する事業
(2) 事業の規模
事業の内容に応じ、その事業を営む地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有しており、かつ、その事業を行うために必要な施設その他の財産を有していること。
(3) 事業の運営
イ 事業の遂行により与えられる公益が、それを必要とする者の現在又は将来における勤務先、職業等により制限されることなく、公益を必要とするすべての者(やむを得ない場合においてはこれらの者から公平に選出された者)に与えられるなど公益の分配が適正に行われること。
ロ 公益の対価は、原則として無料(事業の維持運営についてやむを得ない事情があって対価を徴収する場合においても、その対価は事業の与える公益に比し社会一般の通念に照らし著しく低廉)であること。
3 令第4条の5において準用する令第2条に規定する「もっぱら……公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業を行う者」とは、その者が個人である場合には公益の増進に寄与するところが著しいと認められる事業(以下「高度の公益事業」という。)のみを専念して行う者をいい、その者が令第2条に規定する社団等(以下「社団等」という。)である場合には高度の公益事業のみをその目的事業として行う社団等をいうものとして取り扱う。(昭55年直資2-182改正)
4 令第4条の5において準用する令第2条第1号に規定する「特別の利益を与えること」とは、高度の公益事業を行う者に対し財産を贈与した者又は当該事業を行う者若しくは贈与者の親族その他令第2条に規定する特別関係がある者(以下、当該「親族その他令第2条に規定する特別関係がある者」を「特別関係がある者」という。)について次に掲げる事実があると認められる場合がこれに該当するものとして取り扱う。(昭55直資2-182改正)
(1) これらの者が役務を提供し、又はこれらの者の財産を利用に供している等の有無に関係なく、高度の公益事業に係る金銭その他の財産の支給を受けていること。
(2) これらの者が高度の公益事業に係る余裕金を生活資金に利用し、又はその施設を居住の用に供している等これらの財産を無償又は有償で利用していること。
5 令第4条の5において準用する令第2条第2号に規定する「事業の運営の基礎となる重要事項」とは、役員その他の機関の構成、その選任方法のほか、次に掲げる事項がこれに該当するものとして取り扱う。(昭55直資2-182改正)
(1) 当該事業の遂行により与えられる公益を受ける者の選任、与えられる公益の種類及びその程度の決定
(2) 事業の運営に関する諸規則の制定
(3) 事業計画及び予算の決定並びに決算の承認
(4) 事業の廃止又は縮少
(5) (4)により不用となった財産の処分
6 令第4条の5において準用する令第2条第2号に規定する「特別関係がある者の意思に従ってなされていると認められる事実があること」とは、社団等の運営の基本となる規則、規約その他の規定(以下「規約等」という。)に次の(1)から(4)までの事項が定められていないこと、又は社団等の事績に(5)から(7)までの事実が認められることをいうものとして取り扱う。(昭55直資2-182改正)
(1) 特定の者及びその者と特別関係がある者が社団等の構成員又は役員その他の機関の地位にある者の総数の3分の1以下であること。
(2) 社団等の機関の地位にある者の選任は、例えば社団等の代表者の指名又は委嘱によるなどし意的に選任されることなく、その行う事業の種類に応じ、機関の地位にあることが適当と認められる者がその地位に選任されるようになっていること、又は社団等の総会若しくは公正に選任されている評議員会の選挙により選出されること。
(3) 事業の種類に応じ相当数の評議員又は運営委員をおくこと。
(4) 「5」に掲げる重要事項の決定又は変更は、評議員又は運営委員の意見を聴き、役員の全部又は大部分の賛成を得てされること。
(5) 公益が主として特定の者及びその者と特別関係がある者に与えられること。
(6) 高度の公益事業のために支出される費用の額が社団等の収入からみて過少であるなど社団等の経理がその事業の目的に照らして適正でないこと。
(7) 社団等の運営がその規約等に違反して行われたこと。
7 令第4条の5において準用する令第2条第3号に規定する「特別の利益を与える」とは、社団等の機関の地位にある者若しくは贈与者又はこれらの者と特別関係がある者について次に掲げる事実がある場合又はその事実があると認められる場合がこれに該当するものとして取り扱う。(昭55直資2-182改正)
(1) 社団等の施設その他の財産を居住、生活資金その他私的の用に利用していること。
(2) 社団等の余裕金をこれらの者の行う事業に運用していること。
(3) 当該社団等が解散した場合に残余財産がこれらの者に帰属することとなっていること。
(4) 過大給与の支給を受け、又は当該社団等の機関の地位にあることにつき報酬を受けていること。
(5) 債務が社団等によって保証されていること。
(6) 当該社団等の事業の廃止等により、不用に帰する財産がこれらの者に帰属することとなっていること。
8 法第21条の3第1項第3号に規定する「公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」であるかどうかは、次により判断することに取り扱う。
(1) 調査時において、贈与により取得した財産が令第2条の規定に該当する事業の用に供されている場合には、その時までに当該事業以外の用に供されたことがなく、かつ、最初に当該事業の用に供した日から調査時まで引き続き当該事業の用に供されていること。
(2) 調査時において、贈与により取得した財産が令第2条の規定に該当する事業の用に供されていない場合には、事業計画等から判断して財産を取得した日から2年を経過した日までに当該事業の用に供されることが確実と認められること。
9 法第21条の3第1項第3号に規定する「贈与により取得した財産」とは、原則として贈与により取得した財産そのものをいうのであるが、令第2条の規定に該当する事業を行う者が社団等である場合には、次に掲げる財産は、これに該当するものとして取り扱う。
(1) 贈与により取得した財産を譲渡して得た譲渡代金の全部又は当該譲渡代金及び譲渡代金により取得した財産の全部を当該事業の用に供することが確実である場合における当該財産
(2) 贈与により取得した財産との交換により取得した財産(交換差金を取得した場合には交換差金の全部を含む。)を当該事業の用に供することが確実である場合の当該財産
(3) 贈与により取得した財産の果実の全部を当該事業の用に供することが確実な場合における当該財産
10 法第21条の3第2項において準用する法第12条第2項に規定する「2年を経過した日において、なお当該財産を当該公益を目的とする事業の用に供していない場合」とは、財産取得の日から2年を経過した日(以下「2年を経過した日」という。)において、贈与により取得した財産を令第2条の規定に該当する事業の用に供していない場合のほか次のいずれかの事実があると認められる場合をいうのであるから留意する。(昭55直資2-182改正)
(1) 財産取得の日から2年を経過した日まで、贈与により取得した財産の全部又は一部を令第2条の規定に該当する事業以外の用に供した事実があること。
(2) 贈与により取得した財産を最初に令第2条の規定に該当する事業の用に供した日から2年を経過した日まで引き続き当該事業の用に供している事実がないこと。
(3) 2年を経過した日以後も事業計画等によって贈与等により取得した財産の全部を令第2条の規定に該当する事業の用に供すると認められないこと。
11 「8」の(2)の事実が認められないため、令第2条の規定に該当する事業を行う者が取得した財産を贈与税の課税価格に算入した場合においても、2年を経過した日において当該財産を当該事業の用に供しており、かつ、「10」の(1)から(3)までの事実が認められないときは、当該事業を行う者からその旨の申出がある場合に限り、当該財産は公益を目的とする事業の用に供することが確実であったものとして課税価格及び税額を更正することができることに取り扱う。