第4章 納税の猶予及び担保

第1節 納税の猶予

第1項の猶予

(その他これらに類する災害)

1 この条第1項の「その他これらに類する災害」とは、財産の損失に直接因果関係を有するおおむね次の事実をいう。

(1) 地すべり、噴火、干害、冷害、海流の激変その他の自然現象の異変による災害

(2) 火薬類の爆発、ガス爆発、鉱害、天然ガスの採取等による地盤沈下その他の人為による異常な災害

(3) 病虫害、鳥獣害その他の生物による異常な災害

(相当な損失)

2 この条第1項の「相当な損失」とは、災害による損失の額が納税者の全積極財産の価額に占める割合(以下この項において「損失の割合」という。)がおおむね20%以上の場合をいう。この場合において、災害により損失を受けた財産が生活の維持又は事業の継続に欠くことのできない重要な財産(住宅、家庭用動産、農地、農作物及び事業用固定資産・棚卸資産)である場合には、上記の損失の割合は、その重要な財産の区分(上記かっこ書の財産ごとの区分)ごとに判定しても差し支えない。
 なお、保険金又は損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされた又は補てんされるべき金額は、上記の損失の額から控除する。

(予定納税に係る所得税等)

3 この条第1項第3号の「予定納税に係る所得税その他政令で定める国税」は、損失を受けた日の属する年分、事業年度又は課税期間(消費税法第19条(課税期間)に定める課税期間をいう。)に係るものに限られる。

(被災した被相続人等に係る国税)

4 この条第1項の規定は、災害により財産に損失を受けた納税者につき、相続、合併、人格のない社団等に属する権利義務の包括承継、信託に係る新たな受託者の就任等があった場合には、その相続人等が納付する承継国税についても適用される(通則法第5条から第7条の2まで参照)。この場合の損失の割合は、被相続人等につき判定した割合によるものとする。

(猶予期間)

5 この条第1項の規定により猶予する期間は、損失の割合が50%を超える場合は1年、20%から50%までの場合は8月を基準として、別に定めるところによる。

第2項の猶予

(猶予金額)

6 この条第2項の「納付することができないと認められる金額」とは、損失の復旧費等の支出を必要やむを得ないものに限ってもなお納付することができないと認められる金額のうち、同項各号に掲げる事実と因果関係を有する範囲の金額をいう。

(猶予期間)

7 この条第2項の規定により猶予する期間は、1年を限度として、納税者の財産の状況その他の事情からみて、その猶予に係る国税を完納することができると認められる最短期間とする。

(猶予期間の始期)

8 この条第2項の規定により猶予する期間の始期は、猶予の申請書に記載された日とする。ただし、その日が同項各号に掲げる事実が生じた日より前であるなど、その日を始期とすることが適当でないと認めるときは、別にその始期を指定することができる。
 また、災害を受けた場合など、同項各号の事実が生じた日が明らかであると認められる場合は、その事実が生じた日を猶予する期間の始期とすることができる。

(納税者の帰責性)

8-2 この条第2項各号に該当する事実は、納税者の責めに帰することができないやむを得ない理由により生じたものに限る。

(その他の災害)

8-3 この条第2項第1号の「その他の災害」は、1と同様である。

(生計を一にする)

9 この条第2項第2号の「生計を一にする」とは、納税者と有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいい、納税者がその親族と起居を共にしていない場合においても、常に生活費、学資金、療養費等を支出して扶養している場合が含まれる。
 なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。

(親族)

10 この条第2項第2号の「親族」とは、民法第725条各号(親族の範囲)に掲げる六親等内の血族、配偶者及び三親等内の姻族をいう。
 なお、婚姻又は縁組の届出はしていないが、事実上、納税者と婚姻関係又は養親子関係にある者は、親族と同様に取り扱うものとする(民事執行法97条1項参照)。

(事業の休廃止)

11 この条第2項第3号の「事業を廃止し、又は休止した」とは、法令の規定又は業績の著しい悪化等のやむを得ない理由により、事業の全部又は一部を廃止(転業したものを含む。)又は休止したことをいう。

(事業上の著しい損失)

11-2 この条第2項第4号の「事業につき著しい損失を受けた」とは、猶予期間の始期の前日以前1年間(以下この項及び第46条の2関係1において「調査期間」という。)の損益計算において、調査期間の直前の1年間(以下この項及び第46条の2関係1において「基準期間」という。)の税引前当期純利益の額の2分の1を超えて税引前当期純損失が生じていると認められる場合(基準期間において税引前当期純損失が生じている場合は、調査期間の税引前当期純損失の額が基準期間の税引前当期純損失の額を超えているとき)をいう。

(その他の事実)

12 この条第2項第5号の「前各号のいずれかに該当する事実に類する事実」とは、おおむね次に掲げる事実をいう。

(1) 第1号又は第2号に類するもの

イ 詐欺、横領等により財産を喪失したこと。

ロ 交通事故の損害賠償(使用者責任による場合を含む。)をしたこと。

ハ 公害の損害賠償をしたこと。

ニ 納税者の取引先等である債務者について、おおむね次に掲げる事実が生じたため、その債務者に対する売掛金等(売掛金のほか、前渡金、貸付金その他これらに準ずる債権を含み、また、これらの債権について受領した受取手形のうち割り引かれていない部分の金額及び割り引かれているものであっても、不渡り等のため買戻しを行ったものを含む。)の回収が不能又は著しく困難になったと認められること(従前に比べて決済に要する期間が著しく長期化したと認められる場合を含む。)。

(イ) 所在不明又は無財産になったこと。

(ロ) 事業の不振又は失敗により休廃業に至ったこと。

(ハ) 企業担保権の実行手続の開始決定があったこと。

(ニ) 破産手続開始の決定があったこと。

(ホ) 会社法の規定による特別清算開始の命令があったこと。

(ヘ) 法律の定める整理手続によらないが、債権者集会による債務整理の決定があったこと。

(ト) 手形交換所において取引の停止処分を受けたこと。

(チ) 災害、盗難、詐欺、横領により財産の大部分の喪失があったこと。

(リ) 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の決定があったこと。

(ヌ) 民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったこと。

(ル) 外国倒産処理手続承認の決定があったこと。

ホ 納税者と生計を一にしない親族(納税者の親族と同視できる特殊の関係にある者を含む。)が病気にかかり、又は負傷したこと。

(2) 第3号又は第4号に類するもの

イ 納税者の経営する事業に労働争議があり、事業を継続できなかったこと。

ロ 事業は継続しているものの、交通、運輸若しくは通信機関の労働争議又は道路工事若しくは区画整理等による通行路の変更等により、売上の著しい減少等の影響を受けたこと。

ハ 市場の悪化、取引先の被災、親会社からの発注の減少等により、従前に比べ納税者の事業の操業度の低下又は売上の著しい減少等の影響を受けたこと。

ニ 著しい損失の状態が生じたとまではいえないものの、それに近い税引前当期純損失の状態が生じる原因となった売上の著しい減少又は経費の著しい増加が生じたこと。

ホ 納税者が著しい損失(事業に関するものを除く。)を受けたこと。

(注) 「売上の著しい減少」とは、単に従前に比べて売上が減少したというだけでは足りず、事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できる か又はこれに準ずるような重大な売上の減少があったことをいう(平成23.5.26名古屋高判参照)。

(猶予該当事実と納付困難の関係)

12-2 この条第2項の「その該当する事実に基づき」納付することができないとは、納税者に同項各号に掲げる事実があったことにより、資金の支出又は損失があり、その資金の支出又は損失のあることが国税を一時に納付することができないことの原因となっていることをいう。

(納付困難)

12-3 この条第2項の「国税を一時に納付することができない」とは、納税者に納付すべき国税の全額を一時に納付する資金がないこと、又は納付すべき国税の全額を一時に納付することにより納税者の事業の継続若しくは生活の維持を困難にすると認められることをいう。

第3項の猶予

(猶予金額)

13 この条第3項の規定により猶予する金額は、6と同様である。ただし、納付困難な金額の判定に当たっては、その国税の確定手続等との因果関係を考慮する必要はない。

(猶予期間)

13-2 この条第3項の規定により猶予する期間は、1年を限度として、納税者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当な金額に分割して納付した場合において、その猶予に係る国税を完納することができると認められる最短期間とする。

(猶予期間の始期)

13-3 この条第3項の規定により猶予する期間の始期は、猶予を受けようとする国税の納期限の翌日とする。
 なお、やむを得ない理由があって納期限後に納税の猶予の申請書を提出した場合は、当該申請書の提出日をその始期とする。

(期限内に申請できないやむを得ない理由)

13-4 この条第3項の「やむを得ない理由」とは、例えば、通則法第74条の11第2項の国税に関する調査結果の内容の説明を受けた時など、納税者がこの条第3項各号に規定する納付すべき税額を知った時から、納税の猶予の申請書及び添付書類の作成のために通常必要と認められる期間(おおむね1月程度)内に納税の猶予の申請書が提出されたことその他納税者の責めに帰することができないと認められる理由をいう。

分割納付

(分割納付)

13-5 この条第2項又は第3項の規定により納税の猶予をする場合は、災害、病気等により納税者の資力が著しく低下している場合を除き、その猶予に係る金額を猶予期間内の各月(税務署長等がやむを得ないと認めるときは、その期間内の税務署長等が指定する月)に分割して納付させるものとする。

(合理的かつ妥当な金額)

13-6 この条第4項の「その者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なもの」とは、納税者の財産の状況その他の事情からみて、納税者の事業の継続又は生活の維持を困難にすることなく猶予期間内の各月において納付することができる金額であって、かつ、その猶予に係る国税を最短で完納することができる金額をいう。

担保

(猶予に係る税額)

13-7 この条第5項の「猶予に係る税額が百万円以下である場合」の判定は、納税の猶予の申請時において、その猶予を受けようとする国税以外に猶予の申請中の国税又は既に猶予をしている国税があるときは、これらの国税の額を含めて行う。

(担保を徴することができない特別の事情)

14 この条第5項の「担保を徴することができない特別の事情」とは、おおむね次の場合をいう。

(1) 通則法第50条各号(担保の種類)に掲げる種類の財産がなく、かつ、保証人となる適当な者がいない場合

(2) 通則法第50条各号に掲げる種類の財産があるものの、その財産の見積価額(第50条関係10参照)が猶予に係る国税及びこれに先立つ抵当権等により担保される債権その他の債権の合計額を超える見込みがない場合

(3) 担保を徴することにより、事業の継続又は生活の維持に著しい支障を与えると認められる場合

(差押財産の価額)

15 この条第6項の滞納処分により差し押さえた「財産の価額」は、その財産の見積価額(第50条関係10参照)から差押えに係る国税に先立つ抵当権等により担保される債権その他の債権の合計額を控除した額とする。

猶予期間の延長

(猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由)

16 この条第7項の「やむを得ない理由があると認めるとき」とは、おおむね次に掲げる事情がある場合をいう。

(1) 納税の猶予をした時において予見できなかった事実(納税者の責めに帰することができない理由により生じた事実に限る。)の発生により予定していた入金がなかったため、猶予金額を猶予期間内に納付できなかった場合

(2) 納税の猶予をした時において予見できなかった事実(納税者の責めに帰することができない理由により生じた事実に限る。)の発生により、臨時の支出(事業の継続又は生活の維持のため必要不可欠なものに限る。)を行ったため、猶予金額を猶予期間内に納付できなかった場合

(3) 納税の猶予をした時において、猶予に係る国税の完納までに要する期間が1年を超えると見込まれた場合であって、納税者の資力がその猶予をした時に見込んだ状態でおおむね推移していると認められる場合

分割納付計画の変更

(分割納付計画の変更の方法)

17 この条第9項により分割納付の各納付期限(以下19まで、第47条関係1並びに第49条関係1及び3において「分割納付期限」という。)及び各納付期限ごとの納付金額(以下19まで、第47条関係1及び第49条関係1において「分割納付金額」という。)を変更する場合は、その猶予期間内において、その変更をしようとする日以後に到来する分割納付期限及び分割納付金額について、変更しようとする時の納税者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに変更する。

(分割納付計画を変更するやむを得ない理由)

18 この条第9項の「やむを得ない理由があると認めるとき」とは、おおむね次に掲げる事情にある場合をいう。

(1) 納税の猶予をした時において予見できなかった事実(納税者の責めに帰することができない理由により生じた事実に限る。)の発生により予定していた入金がなかったため、分割納付金額をその分割納付期限までに納付することができなかった場合

(2) 納税の猶予をした時において予見できなかった事実(納税者の責めに帰することができない理由により生じた事実に限る。)の発生により、臨時の支出(事業の継続又は生活の維持のため必要不可欠なものに限る。)を行ったため、分割納付金額をその分割納付期限までに納付することができなかった場合

(猶予期間内の変更)

19 この条第9項による変更後の分割納付期限は、その猶予期間(猶予期間を短縮する場合は短縮後の猶予期間)を超えることができない。


目次

● 国税通則法基本通達(徴収部関係)の制定について

● 引用の法令番号

● 省略用語